それではご覧ください。
喫茶店での食事を済ませ、時刻はまだ14時という、かなり余裕がある。
「次はどこに行くんだ?」
「イオンに行こうか♪」
太宰の提案により、駅の近くにあるイオンモールにやってきた。
「本屋に行くけど、いいかな?」
「いいぞ。俺も本屋行きたいし」
確か、ラノベの最新刊があったはずだ。まだ買っていないからちょうどいい。
ラノベの最新刊と気になった本を手に持ちながら、太宰の方をちらっと見た。太宰の手には、『人間失格』『女生徒』という、太宰治著の本があった。ややこしいなぁ・・・。
「それ、読むのか?」
「うん、なんか気になっちゃって。比企谷君も好きって言ってたし」
「でも、現国苦手なやつとか、本読まない人にとってはそれ、きついと思うぞ」
「やっぱりそう思う?」
「最初は手ごろな短編小説から手を出した方がいいぞ」
「そっかぁ。じゃあそうしてみようかな。ありがとう」
その後も、太宰におすすめを聞かれ、中学の時に読んでいた本を薦めた。
「あ、そこの服屋寄っていい?」
「わざわざ俺に確認しなくてもいいんじゃないか?そんじゃ、外で待ってるわ」
「一緒に行くの!折角だから見てもらう!」
いや、俺に人の服を選ぶなんて、そんな高尚なことできるわけがない。
「こっちとこっち、どっちがいいかな?」
太宰は並んでいる服を2着俺に見せてきた。・・う~ん、さっぱり分からない。どれも一緒に見えてしまう。
2着の服を見極めていると、ふと横を見ると別の服が目に入り、何故かこの服がピンときた。
「この服とかどうだ?」
その服を薦めたら、太宰は驚いたように口をポカーンと開けた。え、そ、そんなに変だったかい?
「あー、悪い。気に入らなかったな」
「え!違うよ!ちょっと驚いただけだから!それ着てみるよ」
「いや、無理に着なくてもいいんだが」
「いいから!」
俺が手に取った服を取られ、試着室に入っていった。本当にあれでよかったのだろうか?決めた俺が言うのも何なんだが。
「どうかな?」
カーテンが開き、着替えを終えた太宰の姿を見た瞬間、自然と目が吸い込まれてしまった。
俺が選んだ服は、白い生地に花が描かれたワンピースなんだが、「今の太宰の体形といい感じに合っていて、ポニーテールとも相性がいい。そして、何より可愛い。」
「そ、そっか・・。可愛い、か。・・ありがとう♪」
太宰は照れた様子で頬を朱色に染めながら、俺に笑みを向けた。え?どうしてだ?俺まだ何にも言ってないのに・・・。
「声に出てたよ」
「え、マジか・・・」
うわあああ!恥ずい!思いっきり可愛いとか言っちまったよ!でも太宰は引くことなく、純粋な笑顔を向けてくれている。内心どう思っているか怖いが、これが唯一の救いだ。
「折角薦めてくれたし、可愛いって言ってくれたから、これ買おうかな♪」
太宰は上機嫌な様子で、くるりと一回転した
「・・・あ、でも結構高いな」
「それなら、俺が払うからいいぞ」
「え?そんな、悪いからいいよ」
「いや、遠慮する必要ない。それに、俺も太宰にお礼がしたかったしな」
「私、お礼されるようなことしてないよ」
太宰には心当たりがないらしい。・・当たり前だ、これは普通の事なんだろうけど、俺にとっては大事なことなんだ。
「俺と、友達になってくれただろ」
「・・・でも、それって普通なんじゃないの?」
「いや、俺にとっちゃ友達関係なんて無縁な人生を送ってきたからな。太宰が友達になろうって言ってくれた時は、驚きこそしたが結構嬉しかったんだぜ。人生で初めての友達だからな」
「そうだったんだ・・・。なら、お言葉に甘えようかな♪」
太宰からワンピースを受け取り、俺は会計に行った。
「ほい」
「ありがとね。比企谷君」
「どういたしまして。もう夕方だな」
「そうだね。それじゃあ帰ろっか」
「あ、ここでいいよ。わざわざ送らなくてもいいのに・・・」
「またナンパにでもあったら嫌だろ?」
「ありがとう。じゃあ、またね」
「じゃあな」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
結構進展したんじゃないかな。
また明日。