FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第102話 ゼロ

突然姿が化け物に変貌したミッドナイトにハルトは覇王モードになって立ち向かう。

 

「ルアァッ!!!」

 

ミッドナイトが爆発のような一歩踏み出しながら手のひらから黒い魔力を放つ。

ハルトはそれを剛腕で防ぐが、マタムネが耐えきれずに吹き飛ばされてしまう。

 

「うわあぁっ!!」

 

「マタムネ!!」

 

「ホラ!ドンドンイクヨ!!!」

 

ミッドナイトの腕から魔力弾が連射されるのをマタムネは全て避けていく。

すると突然ハルトの体に衝撃が走る。

自分の体を見ると腹にいつのまにかミッドナイトから生えている角が突き刺さっていた。

 

「ごふっ……!」

 

ハルトの口から血が溢れ出てしまう。

 

「ハルト!?」

 

「ハハハッ!!コレデ終ワリダヨ!!!」

 

さらにマタムネの背後から黒い影が伸びてきてマタムネを絡め取ろうとする。

 

「ハルト!!!」

 

マタムネは体が闇に囚われながらも必死にハルトの体を揺すったり、呼ぶが、ハルトは角が刺さってから目に生気が宿らず動かない。

 

「キミヲ殺シタラ、仲間モアトヲ追ワセテアゲルヨ!!!!」

 

それを見たミッドナイトがほぼ意識のないハルトに向かってそう言うと、残り僅かに残っていたハルトの意識がミッドナイトの言葉を聞き取った。

 

(あとを……追わせる?仲間を殺す……ルーシィを殺す………)

 

「やらせるわけねェだろうがあァァァァッ!!!!!」

 

「!!!!?」

 

「ハルト!!」

 

怒りで覚醒したハルトは魔力でマタムネを覆うとしていた闇を消し去り、腹に刺さっていた角も消えていった。

 

「ボ、僕ノ魔法ガ!!!」

 

「マタムネェッ!!!」

 

「ぎょい!!!」

 

ハルトの合図でマタムネは巨大なミッドナイトの足に向かって滑空して下がるとハルトは覇竜の断刀で足を切りつける。

 

「グアァッ!?」

 

ミッドナイトは膝をつき、ハルトは旋回しながら飛燕拳を放ち牽制して、そのすきにハルトは顎にアッパーを放ち、顔を上に向けさせ再び上空に上がる。

 

「マタムネ!!行くぞォ!!!」

 

「ぎょい!!!」

 

ハルトの魔力がマタムネを包み込み、羽にも魔力が帯びていき巨大なな翼となる。

そしてミッドナイトに向かって蹴りの姿勢で一気に速度をつけて降下する。

その勢いと高まっている魔力の蹴りはミッドナイトの体を破壊していき、本物のミッドナイトに蹴りがはいる。

 

「あああぁぁぁぁああっ!!!!!」

 

「オラアァァァァッ!!!!!」

 

「いけーー!!!」

 

ミッドナイトは地面に打ち付けられ、そこにクレーターができた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

「ぼ、僕の幻覚が……」

 

「さっきの幻覚だったでごじゃるか……」

 

ミッドナイトの幻覚はハルトの魔力に圧倒され、破壊されていってしまったのだ。

 

「僕は最強なん…だ……父上をも越える最強の…六魔。誰にも負けない最強の…魔導士」

 

「お前じゃまだまだ弱ぇよ」

 

ハルトのその言葉を聞いて、ミッドナイトは意識を失った。

 

「うぷっ……!ま、マタムネ!はやく上がれ!気持ち悪くなってきた……」

 

「ハルトー、最後くらいしっかりするでごじゃる」

 

「いいから早くしろ……」

 

 

ハルトがミッドナイトを倒す少し前に、ブレインがリチャードに扮し、ナツたちを罠に嵌め、爆発に巻き込まれたがジュラがその身を犠牲にしてナツたちを守った。

しかし、その時七人目の六魔将軍であるブレインの杖であるクロドアが立ちふさがり、ナツたちを翻弄していた。

 

「ぐおっ!!」

 

「いでっ!!」

 

「ナツ!グレイ!」

 

ルーシィがクロドアに殴り飛ばされるナツとグレイを心配するが……

 

「ほう」

 

「キャー!!!」

 

クロドアがいつのまにかルーシィのスカートをめくり上げてパンツを覗いていた。

 

「へンタイ!!」

 

「おっと!」

 

ルーシィは咄嗟に蹴りを放つがクロドアは簡単に避けてしまう。

 

「少し大人びた下着を着ているようだが背伸びしているように見えるぞ。小娘」

 

「う、うるさいわね!!」

 

ルーシィは常日頃ハルトとあわよくばと思っており、結構攻めている下着を着ているが、それを言われて相当恥ずかしかった。

そのときクロドアは感じ取ってしまった。

最後の六魔、ミッドナイトが倒されてしまったことを……

 

「六魔が…全滅!!?」

 

叫びながら信じられないと言いたげな表情をするクロドア。

 

「いかん!!! いかんぞ!!!あの方が…来る!!!!」

 

「あ?」

 

「あの方?」

 

尋常ではない怯え方をするクロドアの言う「あの方」と言う言葉に、グレイとナツは首を傾げる。

 

「あわわわ…」

 

「何だっていうんだよ…」

 

「ブレインにはもう一つの人格がある」

 

グレイの問い掛けに答えるように、クロドアは震える言葉で話し始める。

 

「知識を好み〝脳”(ブレイン)のコードネームを持つ表の顔と、破壊を好み〝無”(ゼロ)のコードネームを持つ裏の顔」

 

「ゼロ!?」

 

「あまりに凶悪で強大な魔力の為、ブレイン自身がその存在を六つの鍵で封じた」

 

「もしかしてそれが…六魔将軍!?」

 

「生体リンク魔法により、六つの〝魔〟が崩れる時……〝無”の人格は蘇る……」

 

そう言葉を終えると同時に、ぞわっと寒気を感じ取ったクロドアは、部屋に大きく開いた穴を凝視する。

するとそこには一つの人影が見えていた。

 

「お…おかえりなさい!!!マスターゼロ!!!!」

 

「マスター!?」

 

そう言って人影に向かって地面に頭を付けるクロドアを見て、ナツたちも穴の方に視線を向ける。

そこには顔と服装こそはブレインの物だが、肌の色が白くなり、声も荒々しいモノとなり、まるで別人のような男が歩み寄ってきた。

 

「ずいぶん面白ェ事になってるな、クロドア。あのミッドナイトまでやられたのか?」

 

「はっ!!! も…申し訳ありません!!!!」

 

「それにしても、久しいなァこの感じ。この肉体…この声…この魔力…全てが懐かしい」

 

そう言うと、男は着ていたブレインの服を脱ぎ捨てる。

 

「後はオレがやる。下がってろクロドア」

 

「ははーっ」

 

そして男は体中に魔力を纏い、魔力で新たな服を作り、身に纏うと目の前のナツたちを睨みつける。

 

「小僧ども、ずいぶんとうちのギルドを食い散らかしてくれたなァ。マスターとして、オレがケジメを取らしてもらうぜ」

 

 

その男こそブレインの裏の人格であり六魔将軍のギルドマスターゼロであった。

 

「こいつが、ゼロ!!?」

 

「六魔将軍の…ギルドマスター!!?」

 

「燃えてきただろ? ナツ」

 

「こんな気持ち悪ィ魔力初めてだ……」

 

ゼロと真正面から向き合う。

ただそれだけでナツたち妖精メンバーは、ゼロから漂う気味悪い魔力で、体を震わせていた。

 

「そうだな……まずはこの体ブレインを痛めつけてくれたボウズから……消してやる」

 

ゼロが目を付けたのは、目の前のナツたちではなく、気を失い倒れているジュラであった。

 

「動けねえ相手に攻撃すんのかよテメェは!!!!」

 

「動けるかどうかはたいした問題じゃない。形あるものを壊すのが面白ェんだろうが!!!!」

 

そう言って、ゼロはグレイに向かって怨霊のような不気味な魔力を放つ。

 

「シールド!!!」

 

すぐさま造形魔法で氷の盾を展開し、それを防ごうとするグレイだが……

盾は数秒も保たずにヒビが入り、破壊されていく。

 

「オレの盾が!!?こんな簡単に…ぐああああああっ!!!!」

 

そして盾を完全に破壊され、ゼロの魔力によって吹き飛ばされるグレイ。

 

「!!」

 

すると、拳に炎を纏ったナツがゼロの懐に入り込み、拳を叩き込もうとする。

しかし、ゼロは素早く体を捻ってそれを回避し、裏拳をナツの顔面に叩き込んだ。

 

「ぐああぁぁぁあ!!!」

 

グレイに続いてナツまでもが吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

「そんな…」

 

次々とやられていく仲間を見て、ガクガクと体を震わせるルーシィとハッピー。

 

(体が動かない……怖い……ハルト……!!)

 

恐怖により動けなくなったルーシィに対し、ゼロは手を翳し……

 

「きゃあああああ!!!」

 

「わぁああああ!!!」

 

地面から怨霊のような魔力を出現させ、ルーシィとハッピーを吹き飛ばす。

ゼロは瞬く間にナツたち妖精の尻尾の4人を倒してしまった

 

「さ…さすがマスターゼロ!!!お見事!!!!この厄介なガキどもをこうもあっさり……」

 

そんなゼロに対してクロドアは賞賛の言葉を口にするが、ゼロはこれでは終わりではなかった。

 

「まだ死んでねえな」

 

「へ?」

 

ゼロのそんな言葉を聞いて、クロドアは呆気に取られる。

 

「まだ死んでねえよなァガキどもォォ!!!だって形があるじゃねえか!!!!!」

 

そう言って、ゼロは倒れているナツたちに更なる追撃を行なう

 

「ガハハハハハハッ!!!!!」

 

「ひいいいっ!!!マスターゼロ!!それ以上は……」

 

それからその部屋にはゼロの不気味な笑い声とクロドアの恐怖の悲鳴。

そして、何かが壊れるような耳障りな音だけが響いていった。

 

 

 

「ちくしょー、ブレインのやつどこにいるんだよ……ニルヴァーナ全然止まんねえじゃねえか」

 

ハルトたちは空からニルヴァーナを動かしていると考えているブレインを探すが全く見当たらない。

 

「ハルトー、ちょっといいでごじゃるか?」

 

「なんだ?」

 

「下ろしていいでごじゃるか?疲れたでごじゃる」

 

「はぁっ!?何言ってんだ!!下ろしたら俺動けなくなるぞ!!……ん?この匂いは……マタムネ!下に降りろ!!」

 

「ぎょい!」

 

下に降りるとそこには化猫の宿のメンバーとエルザ、そしてジェラールがいた。

 

「ハルト!」

 

「「ハルトさん!!」」

 

「あーマタムネくんだー」

 

「アンタたちもいたのね」

 

ジェラール以外がハルトと再会できたことを喜ぶがハルトはそれに反応せず、ジェラールを凝視する。

それに気づいたエルザは気まずそうにする。

 

「は、ハルト……ジェラールは……」

 

「よお!ジェラールじゃねえか!!無事だったんだな!!」

 

ハルトは怒るでもなく、ジェラールに親しげに話しかけ、エルザとジェラールは鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。

 

「ん?どうした?」

 

「ハルトはジェラールに対して何も思っていないのか?」

 

エルザは妖精の尻尾のメンバーは少なからずジェラールに恨みを持っていると思ったがハルトの態度に驚いた。

 

「ジェラールは俺を助けてくれたんだ。それにエルザが一緒にいるってことは少なくてもそういうことなんだろ?」

 

ハルトはそう言ってくれて、エルザは安心した。

 

「すまない……俺は君のことを覚えていないんだ……」

 

「ジェラール、私たちのことも覚えていないみたいなんです……」

 

「ウェンディたちと知り合いなのか?」

 

ウェンディがジェラールと旅をしたことを説明し、ハルトは納得した。

 

「なるほどな……覚えていないのは爆発に巻き込まれたせいだな」

 

「恐らくそうだろうな」

 

「まっ、何はともあれ。俺はジェラール、お前のお陰で助かったんだ。ありがとうな」

 

「………」

 

ジェラールはハルトから礼を言われ、戸惑ってしまう。

罪人の自分がそんなことを言われると思ってなかったからだ。

 

「ハルトー」

 

「なんだ?」

 

「もう無理でごじゃる」

 

「おぼっ…!ま、マタムネ……!!テメェ……!!」

 

「あー……肩凝ったでごじゃる……」

 

乗り物酔いになってしまったハルトにウェンディとレインが駆け寄る。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「ナツさんと同じで乗り物酔いかな?」

 

「じゃあトロイアを……」

 

ウェンディの手から光が放たれると、気持ち悪そうにしていたハルトの顔色がみるみる良くなっていった。

 

「おおっ!!スゲェな!!全然平気だぞ!!!」

 

ハルトは立ち上がり、ピョンピョンとその場でジャンプする。

 

「よっかたです!」

 

「ナツくんと同じ動きしてる〜」

 

「同じバカなのよ」

 

「シャルル!そんなこと言ったらダメだよ!!」

 

 

ナツたちへの暴行を終えたゼロは、クロドアと共に王の間へとやって来ていた。

 

「マスターゼロ、化猫の宿ケット・シェルターが見えて参りましたぞ」

 

「ふぅん」

 

ゼロはニルヴァーナの行く先に見える、化猫の宿を見据える。

 

「ニルヴァーナを封印した一族のギルドです。あそこさえ潰せば、再び封印されるのを防げますぞ」

 

「くだらねえな」

 

「え?」

 

ゼロが呟いた言葉に首を傾げるクロドア。

 

 

「くだらねえんだよ!!!!」

 

「がっ!」

 

次の瞬間、ゼロの手によって杖の棒の部分が握りつぶされるクロドア。

 

「な…なにを…マスターゼロ!!! おぐはっ!」

 

そして今度は顔の部分を踏み潰され、クロドアは完全に沈黙した。

 

「オレはただ破壊してえんだよ!!!!何もかも全てなァァーー!!!!」

 

狂気を孕んだ表情で、そう叫ぶゼロ。

 

「これが最初の一撃!!!! 理由など無い!!!!そこに形があるから無くすまで!!!! ニルヴァーナ発射だァァ!!!!!」

 

ゼロがそう宣言すると同時に、ニルヴァーナから巨大な砲台が出現し、標的を化猫の宿へと向けたのであった。

 

 

ハルトが人生で初めて乗り物に乗っても平気なことに喜んでいると突然ニルヴァーナが揺れだした。

 

「なんだ!?」

 

「あれは!!」

 

突然の揺れに全員が驚くなか、レインが指さす方向には今にも魔法を放とうとする砲台の姿があった。

 

「あれはニルヴァーナを放とうとしているのか!!?」

 

「ちょっと!!あの方向には私たちのギルドがあるのよ!!?」

 

「マタムネ!!」

 

「ぎょい!!」

 

エルザが驚きの声を上げるとハルトはマタムネに抱えてもらい、砲台に向かう。

 

「ハルト!どうするつもりだ!!?」

 

「砲台を壊す!」

 

「間に合わないぞ!!」

 

「やってみなきゃわかんねぇだろ!!!」

 

ハルトはそれでもニルヴァーナの砲台に向かうが間に合わない。

 

「くそっ!!!間に合わねェえ!!!」

 

「やめてぇーーーー!!!!」

 

「みんなーーーー!!!!」

 

ウェンディとレインの叫びが響き、ニルヴァーナが放たれようとした瞬間………。

 

 

ニルヴァーナの砲身に白い巨大な塊が上からぶつかり、魔法が外れた。

 

「きゃっ!!」

 

「うわっ!!」

 

「なんだ!?」

 

「外したわ!!」

 

全員が白い塊が落ちてきた上空に目を向けるとそこには煙を上げながらも飛び続ける青い天馬が誇る魔導爆撃艇クリスティーナの姿があった。

 


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