FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第104話 負の記憶が呼び起こしたモノ

目覚めた災厄、『超魔獣ニルヴァーナ』。

ニルヴァーナと対峙したハルトは体が震えて仕方なかった。

 

「やっぱり……アレと同じか……!!『アスラ』と……!!!」

 

それは怒りか、悲しみか……それとも恐怖からか……ハルトは震えを止めることができなかった。

ニルヴァーナはハルトに向かおうと体を動かすが、鎖が邪魔をして動けない。

 

(しめた……!今動けないならここで仕留める!!!)

 

ハルトは拳を腰にため、構え、魔力を集中させる。

 

「付加(エンチャント)…………!!!」(殺す気でいく!!!)

 

ハルトの目は本気でニルヴァーナを殺そうとしているもので、自身の最強の魔法『竜戟弾』を発動し、ジャンプでニルヴァーナに近づく。

 

「竜戟弾ッ!!!!」

 

ハルトの拳から放たれた竜戟弾は一直線にニルヴァーナに向かう。

しかし、ニルヴァーナに当たる瞬間、ニルヴァーナと竜戟弾の間に魔法陣が展開され、輝く。

そして竜戟弾はニルヴァーナに当たることなく、なぜかハルトに当たった。

 

「がはぁっ!!?」

 

突然のことに防御も何もできなかったハルトは竜戟弾の威力で地面に埋まり、口から血を吐くほどの大ダメージをくらう。

 

「な、何が………?」

 

ハルトは起き上がりながら、自分に何が起こったか確かめるが、それよりも早くにニルヴァーナが動き出した。

 

「アアアアアッ!!!」

 

鎖を振り解こうにも頑丈にできており、壊すことができない。

そうだとわかったニルヴァーナは壁ごとひきちぎり、地面に降りてきた。

 

「アアアアアッ!!?」

 

地面に落ちたニルヴァーナは地面に打ち付けられ、悲痛な悲鳴を上げてのたうち回る。

 

「今のうちに体勢を……」

 

ハルトは立ち上がり、自分の具合を確かめる。

跳ね返った竜戟弾はハルトの腹に入り、肋骨を何本か破壊した。

さっきから血が止まらない。

そして、ハルトには気がかりなことがあった。

 

(何で俺の魔法が俺自身に効いたんだ?)

 

ハルトたち滅竜魔導士は自身と同じ属性のまほうは効かず、さらには自分の魔法もダメージをくらわないはずだが、ニルヴァーナに跳ね返された竜戟弾は確かにハルトに効いた。

考えていると目の前にニルヴァーナの巨大な手が迫っていた。

 

「っ!?くっ!!!」

 

ハルトは寸前のところで気づき、その場から飛び退く。

地面は爆発したように砕け散る。

砕けた地面から手が起き上がると手のひらの目がハルトを捉える。

 

「アアアアアッ!!!」

 

ハルトを目視したニルヴァーナは飛び上がり、ハルトに向かって落ちてくる。

6本の腕を器用に使って地面に着地しながら腕を振るうのに対して、ハルトは剛腕を発動し防ぐ。

 

「ぐっ……!?」

 

しかし、ニルヴァーナの腕力は凄まじいもので踏ん張っていたハルトを簡単に吹き飛ばし、ハルトは釘を巻き込みながら倒れた。

 

「がはっ!!」

 

ニルヴァーナはそこに追撃をかけようと再び飛び上がって、ハルトを潰そうとするが、ハルトはそれをなんとか起き上がってかわす。

 

「くそっ…!!動きも早いが重い!!」

 

ハルトは追撃してくる手を全てかわし、一定の距離を取り、反撃に出た。

 

「覇竜の……咆哮ォッ!!!」

 

「アアアアアッ!!!」

 

黄金のブレスはまっすぐにニルヴァーナに向かうが当たる直前に、またあの魔法陣が現れ、咆哮はハルトに跳ね返っていく。

 

「ぐわぁっ!!!!」

 

跳ね返った咆哮はハルトを包み込んだ。

ハルトの体から跳ね返ったブレスにより煙が上がる。

 

「ハァ……ハァ……くそ……!」

 

ハルトは腕をクロスして防いだが、ダメージは防ぎきれなかった。

しかも腕で顔を隠した時にニルヴァーナの姿を見失った。

 

「どこに……!!っ!!」

 

その時ハルトに影が覆い尽くす。

上を見上げるとそこにはニルヴァーナがいた。

 

「がっ!!!?」

 

ニルヴァーナの剛腕がハルトを叩きとばし、ハルトの口から血が飛び散るのと同時に体から嫌な音が聞こえた。

立っている釘に打ち付けられたハルトはズルズルと崩れ倒れる。

 

「ハッ!ハッ!ごふっ……!!」

 

息を吸い込もうとするが血が出てきて、呼吸がうまくできない。

 

(ま、まずい…….!体が……!!)

 

体を動かそうとすると激痛が走り、動けない。

するとニルヴァーナはキョロキョロと辺りを見渡してハルトを探し出す様子を見せた。

 

(俺に気づいていないのか……?)

 

それに気づいたハルトは釘に身を隠して、出方を伺う。

 

(あいつはニルヴァーナの核だ。なら、ニルヴァーナの魔法の『反転』が使えてもおかしくねぇ……魔法が反転されるなら肉弾戦だ!!)

 

ハルトは釘から姿を現し、ニルヴァーナに近づく。

 

(あいつ自身は目が見えていない。目の役割を担っているのはあの手の目玉だ……さっきはその手で攻撃したから見失ったなら手が届かない背後からなら!!)

 

ハルトはニルヴァーナの背後から飛びかかり、後頭部を狙おうとするが、その瞬間手のひらがハルトの方を向き、凝視する。

 

(バレた!?だけど止まらねえ!!これで終わりにしてやる!!!)

 

ハルトは何も魔法を使わず、ただ全力で右の拳をニルヴァーナに向かって振り下ろす。

しかし、またしても魔法陣がハルトが狙っていたニルヴァーナの背後に現れたが、ハルトは魔法だけ反転されると考え、腕を止めなかった。

 

(このまま殴り倒すっ!!)

 

「オオオオッ!!!!」

 

ニルヴァーナを殴ったその瞬間……ハルトの腕から血しぶきが飛びちった。

 

「ぐあああぁぁぁっ!!!」

 

ハルトは激痛が走る右腕を抑えながら倒れる。

 

「ぐううぅぅぅ……!!」

 

痛みでうずくまるハルトにニルヴァーナは腕を振り下ろし、ハルトを叩き潰す。

 

「がはっ!!?」

 

何度も何度もハルトに腕を潰す勢いで振り下ろす。

 

「がっ!?あ"っ!!ゔっ!!」

 

ニルヴァーナが振り下ろすたびに鈍い音とハルトの悲鳴が聞こえてきた。

 

 

化猫の宿ではローバウルが神妙な顔で超魔獣ニルヴァーナについて語っていた。

 

「ニルヴァーナのなぶら恐ろしいところは普通の攻撃では一切傷をつけられんところじゃ……彼奴は全ての攻撃を『反転』させてしまう……」

 

ローバウルは一呼吸を置き、言葉を続ける。

 

「さらに恐ろしいのは奴自身も善悪反転魔法を使えること……しかもそれは100%ニルヴァーナの味方になる………」

 

「何か対策は無いのかよ!!」

 

ギルドメンバーの1人がローバウルに聞くが、ローバウルは首を横に振るだけだった。

 

「彼奴を葬ることはできん……儂等は凄腕の魔導士たちを人柱にして封印するしかできなかった……いや…それしかなかった………彼奴は天災と一緒じゃ……」

 

ローバウルは膝の上で拳を握り、その悔しさを露わにしていた。

 

 

ニルヴァーナは腕を振り下ろすのを止めるとハルトの足を持って投げ飛ばす。

ハルトはダメージで受け身も取れず、投げ飛ばされる。

さらにニルヴァーナはハルトに向かって口を開き、魔力を溜めると魔力のビームを放った。

 

「ア"ッ!!!!」

 

ハルトは防ぐこともできずにニルヴァーナの攻撃が直撃し、爆発とともにまた空中に投げ飛ばされた。

地面に落ちたハルトの体は傷と火傷だらけになっていた。

 

(まず…い……意識…が………)

 

ニルヴァーナはハルトが動かなくなったのを確認するとゆっくりと近づき、ハルトの頭を両手で掴む。

するとハルトの目の前に魔法陣が現れ、白と黒の雷のような閃光が走ると同時にハルトは苦しみ出した。

 

「がああああぁっ!!!?」

 

「アアアアアッ!!!」

 

ハルトの苦しむ声とニルヴァーナの歓喜の叫びが部屋に響き渡る。

ハルトの頭の中ではハルトの後悔の記憶が次々と思い起こされる。

その中でも一番鮮明に出てきたのはエミリアとの最後の記憶だった。

 

 

辺りの建物は全て破壊され、黒煙があっちこっちから立ち上り、空から雨が降っている。

その中心で傷だらけのハルトは座り込み、その腕の中には口から血を流し、胸には血がにじみ出て死んでいるエミリアが抱きしめられていた。

ハルトはエミリアを抱えながら、涙を流していた。

 

『ごめん……ごめん…エミリア………!!』

 

 

ニルヴァーナの魔法は物理攻撃、魔法攻撃を反転させる魔法と反転を利用した意識改変の魔法と2つだけだが、最強の矛と盾にもなる魔法に、無限に味方を増やし続ける魔法。

この2つだけでもニルヴァーナの凶悪さがわかる。

そしてハルトは今まさにニルヴァーナに意識を改変させられそうになっている。

ハルトの最も辛いトラウマを強く呼び起こし、心を闇に落としたところで一気にニルヴァーナに意識を向けさせる。

それがニルヴァーナの意識改変魔法だ。

 

「ごめん……ごめん…エミリア……」

 

「アア……」

 

ハルトはうわ言のようにエミリアに謝り続けながら涙を流す。

それを見たニルヴァーナは骸骨のようにやせ細った顔で不気味に笑みを浮かべた。

 

 

それぞれ自分が担当して破壊する魔水晶に向かっている中で、ルーシィの足取りは重かった。

 

「ハァ…ハァ……」

 

「ルーシィ、急ごうよ。もう残り時間が10分切っちゃったよ」

 

「う、うん……わかってる……うっ……」

 

「ルーシィ!!」

 

ハッピーが声をかけ、ルーシィも急ごうとするが足に力が入らず、崩れ落ちてしまう。

 

「ルーシィ大丈夫?」

 

「うん、大丈夫……みんなも頑張ってるんだ。アタシも頑張らなくちゃ……!」

 

ルーシィは足に力を入れて、立ち上がり先に進む。

 

「ハルトが戦ってる……!!こんな所でヘコタレてなんていられない!!」

 

ルーシィは改めて気合いを入れて、道を進んだ。

 

 

ハルトの意識の中でハルトはエミリアに謝り続けていた。

ニルヴァーナの魔法が前向きなことを考えさせずに負のほうへと導いていき、追い込んでいく。

すると意識が呆然としているハルトの背後に綺麗な女性が現れ、手を差し伸ばした。

この女性はニルヴァーナ自身であり、精神的に追い込んだ者に手を差し伸べることで自身の配下として迎え入れる最終段階である。

ハルトがこの手を掴んだ瞬間、ニルヴァーナの従順な手下になる。

ニルヴァーナは安心させる微笑みを浮かべて、ハルトに向かって手を差し伸べると、ハルトはゆっくりとその手を掴もうとする。

もう少しで手を握ろうとした瞬間、ハルトの手は止まる。

 

「………か…….」

 

「?」

 

「お前か………こんな記憶を見せてるのはァッ!!!」

 

ハルトはニルヴァーナの手を取るのでは無く、手を掴み握り潰した。

 

「アアッ!!?」

 

現実ではハルトが意識を取り戻したことにニルヴァーナが驚き、意識改変が無理だと判断し、ハルトを殺そうと腕を振り下ろす。

しかし、ハルトはその腕を掴んで、握り潰した。

 

「アアアアアッ!!!?」

 

ニルヴァーナの腕は折られ、悲痛な叫びが響き渡る。

 

「よくも俺の記憶を弄りやがったな……」

 

ハルトの体から魔力が溢れ出る。

しかしそれは覇王モードのように不規則に溢れ出るものでは無く、ハルトを覆っていき、形作っていく。

それはどこか竜の形に見える。

 

「ブッ殺ス!!!!」

 

目は碧眼からハルトの魔力の色と同じ、黄金色に変わった。

ハルトはさっきまでの瀕死のダメージが無かったかのようなスピードで飛び出して行く。

ニルヴァーナは迎え撃とうと腕を振り下ろすが、その瞬間ハルトの姿が消え、ニルヴァーナの背中に激痛が走る。

振り向くとそこにはハルトが獣のように四つん這いで、手に帯びた魔力が指先から爪のように伸びて、その爪を突き立てていた。

 

「アアアアアッ!!!」

 

ニルヴァーナが振り落とそうとするが、両手両足の爪が体に深くつき

刺さって抜ける様子はない。

ニルヴァーナは振り落とさないと分かるとジャンプして背中を壁にぶつけたが、ぶつかるより早くハルトは飛び退いて壁に捕まる。

その動きは最早人間のものではなかった。

 

「グルルルルル……」

 

まるで竜の呻き声のようなものがハルトの口から聞こえてくる。

ニルヴァーナが口からまたビームを放つがハルトはそれをスレスレでかわしながら、ニルヴァーナに飛びかかり、ニルヴァーナが反応するより早く拳を振り、横顔に右拳が深く突き刺さる。

 

「アア"ッ!!?」

 

さっきまではニルヴァーナの力に負けたハルトの力がニルヴァーナを吹き飛ばすほどに上がっている。

しかもニルヴァーナの殴られた頬には鱗で傷つけられたような痕ができていた。

ハルトを覆っていた魔力は少しずつ形が作られていく。

腕を覆っていた魔力は爪がハッキリと作られ、鱗が!でき始める。

さらには尻尾のようなものまで出来始めた。

ニルヴァーナは痛みに耐えながら、手の目でハルトを見る。

その時ハルトの姿から過去のあるものの姿を彷彿させた。

それは聖戦時代、何度も対峙し、恐怖を植え付けられた存在…………ドラゴンを!!!

 

「アアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」

 

ニルヴァーナは今まで一番の叫びを張り上げ、ハルトに背中を見せて逃げ出した。

一目散にハルトが通ってきた通路に向かっていき、その巨体には狭い通路を無理やり通ろうとし、周りの壁を破壊して行くが、突然ガクンと後ろに引っ張られる。

 

「どこに行ク!!」

 

ハルトがニルヴァーナに打ち付けられていた鎖を引っ張るとニルヴァーナは抗うが簡単に引っ張られ、部屋に戻されてしまう。

 

「簡単に逃ゲラレると思うナヨ……」

 

ニルヴァーナは竜の逆鱗に触れてしまった。

 




新しく違うのを書きました。

『ありふれていない者たちの英雄譚』

です。
こっちもよろしくお願いします。
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