FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第106話 緋色の空

動力源を失ったニルヴァーナは崩壊を始めた。

 

「うおおおおっ!?」

 

「ナツ!!」

 

ゼロを倒したナツは全ての魔力を使い切り、体が動けず崩れるニルヴァーナに巻き込まれ、ジェラールが手を伸ばすが届かず、ジェラールも崩れるニルヴァーナに巻き込まれた。

 

「きゃあああっ!!」

 

「うわああぁっ!!」

 

落ちてくる瓦礫を避けながらルーシィとハッピーは逃げ道を探す。

 

「やべーぞこりゃ…」

 

グレイは降り注ぐ落石を見て毒づく。

 

「くっ!」

 

振ってくる落石を間一髪で避けながら出口へと向かうエルザ。

 

「メエーン!」

 

落石が頭に直撃し、妙な悲鳴を上げる一夜。

 

「シャルル!」

 

「ウェンディ、こっちよ!!」

 

シャルルに先導されながら、落石が降り注ぐ中を走るウェンディ。

 

「きゃあっ!」

 

すると、足元の岩に躓いたのか、ウェンディはその場で転んでしまう。

 

「ウェンディ!!

 

しかもそんなウェンディの頭上から複数の落石がガラガラと音を立てて振ってくる。 

もうダメかと思われたその時、間一髪で復活していたジュラが岩鉄壁で落石を防ぎながらウェンディとシャルルを救出した。

 

「ジュラさん!!」

 

そしてジュラはそのままウェンディとシャルルを抱えたまま、脱出していった。

 

「レインー!道が塞がっちゃったよー!!」

 

「任せて!霊槍スイレーン!!第ニ形態!!群れ(ショール)!!!」

 

レインはミントに抱えてもらい、飛びながら塞がった道を切り開きながら避難する。

 

「みんな無事か!?」

 

その後、脱出に成功したグレイは他の面々が無事か確認を取る。

 

「ぷはー」

 

「あぎゅー」

 

そのすぐ近くにはギリギリ脱出に成功し、グッタリとしているルーシィとハッピーがいた。

 

「エルザさ~ん! よかったぁ」

 

「な…何だその体は!?」

 

頭にタンコブを作りながらも脱出し、エルザに駆け寄る一夜と、そんな一夜のマッチョ姿に軽く引いているエルザ。

 

「みなさーん!!

 

「大丈夫ー?」

 

そこへ脱出に成功したレインとミントが降り立つ。

 

「ハルトさんとナツさんは!?」

 

「見当たらんな」

 

「マタムネくんもいないよー」

 

「ジェラールって奴もいないわね」

 

ジュラの助けによって脱出できたウェンディとシャルルは、ハルトとナツ、ジェラールを探して周囲を見渡すが、そこに彼ら3人の姿はなかった。

 

「そんな…ハルトぉ……!」

 

「マタムネー!!どこにいるのー!!!」

 

「何してやがんだ…クソ炎!!」

 

(ハルト……ナツ……)

 

全員ハルトたちの安否を心配していると……

 

ボヨンッ!

 

「ひっ!」

 

「うわっ!」

 

突然ルーシィとハッピーがいた足場が盛り上がる。

そしてそこから穴を開けて現れたのは……

 

「愛は仲間を救う…デスネ」

 

「んあ?」

 

ナツとジェラールを抱えたリチャードだった。

 

「ナツさん!!!」

 

「六魔将軍が何で!!?」

 

「色々あってな…大丈夫……味方だ」

 

ナツとティアナの無事を喜ぶウェンディ。

そして頭に疑問符を浮かべているシャルルに、ジュラが簡単に説明する。

 

「それと……」

 

ジェラールが腕を上げるとそこには……

 

「う〜……」

 

「マタムネ!!!」

 

「途中で見つけたんだ……」

 

「死ぬかと思ったでごじゃる………」

 

目を回したマタムネが抱えられていた。

 

「これであとは……」

 

「ハルトさんだけですね……」

 

姿を現していないのはハルトだけになったが……いつまで経っても姿を現さない。

 

「おい…いくらなんでも遅くねえか!?」

 

「まさか……倒壊したニルヴァーナに巻き込まれた……とか?」

 

「そんな……ハルト!!」

 

「待てルーシィ!!今ニルヴァーナに近づくのは危険だ!!!」

 

現れないハルトに心配になった全員に最悪の事態が頭によぎると、ルーシィはフラつく体を無理に動かして崩壊したニルヴァーナに近づくが、エルザに肩を捕まえられ止められる。

その時……積み重なった瓦礫が僅かに動いた。

 

「!!」

 

「ハルト!?」

 

瓦礫が動いた場所が盛り上がり、ハルトが現れると誰しもが思ったが………

 

「アアアアアッ!!!」

 

「なっ!!?」

 

「なんだこいつ!!!」

 

現れたのは腕の数が半分になり、腹に穴が空いたニルヴァーナが青い血を流しながら現れた。

 

「なんだこの化け物は!!!」

 

「魔力が残り少ない者は下がれ!!!」

 

「メェーン!!!」

 

ジュラとエルザ、一夜が全員の前に立ち、いつでも戦えるように構える。

下がれと言われたルーシィたちは下がろうとするが、ニルヴァーナの不気味な姿に足が引けて動けない。

 

「うわああぁ……」

 

「うぅ……」

 

「な、なんだよ。こいつ……」

 

「これがブレインが言ってた……ニルヴァーナの核?」

 

ウェンディとレインは完全にニルヴァーナに怯え、グレイはそのニルヴァーナの姿を不気味に思い、ルーシィはブレインの言葉を思い出し、ニルヴァーナの核だと考えた。

 

「アアア……?」

 

ニルヴァーナは残った手のひらの目を向け、エルザたちを観察する。

エルザたちは不気味な目を向けられたことで身構え、ニルヴァーナは

一通り見て、魔力がゼロであるルーシィに目をつけた。

それに気づいたエルザがルーシィに向かって叫ぶ。

 

「逃げろ!!ルーシィ!!!」

 

「え?」

 

「アアアアアッ!!!」

 

ニルヴァーナは残った足を動かし、ルーシィに迫る。

突然のことでルーシィは反応が遅れてしまう。

 

「アアアアアッ!!!」

 

「ルーシィィィィィッ!!!」

 

ルーシィに迫るニルヴァーナの手……しかしその時、突然上から降ってきた釘によりニルヴァーナの腕は地面に串刺しになった。

 

「なっ!!」

 

「何だ!!」

 

全員が突然降ってきた釘の上を見るとそこには傷だらけのハルトの姿があった。

 

『ハルト/さん!!!』

 

全員が驚きの声を張り上げ、ハルトはルーシィの前に守るように降り立つ。

 

「ハルト……」

 

ルーシィが傷だらけのハルトに手を伸ばすとハルトはルーシィの伸ばしてきた手を優しく片手で握り、振り返り笑顔を見せた。

 

「大丈夫だ、ルーシィ……すぐに終わらせる」

 

「………」

 

「アアアアアッ!!!」

 

ルーシィは何か言おうとするがニルヴァーナの叫び声が邪魔する。

 

「援護するぞ!!ハルト!!!」

 

「岩鉄錘!!!」

 

「アアアアアッ!!!」

 

エルザが天輪の鎧で武器を遠隔操作し、ジュラが岩の槍で攻撃するがその瞬間…ニルヴァーナの体の周りに複数の反転の魔法陣が現れ、全て反転させられる。

 

「くっ!!」

 

「なんと!!?」

 

突然跳ね返ってきた自分の攻撃に驚くエルザたち、隙ができたニルヴァーナにハルトが一気に駆け出す。

 

「お前ら!何もするな!!」

 

ハルトはニルヴァーナの腕を串刺しにした釘を抜き、ニルヴァーナに近づく。

 

「アアアアアッ!!!」

 

ハルトに気づいたニルヴァーナは腕を振るうがハルトはそれをしゃがんでかわし、釘でニルヴァーナの顔を殴る。

 

「オラぁッ!!!」

 

「ア''ッ!?」

 

何度も殴りつけ、ニルヴァーナの顔が変形するほど殴ると我慢の限界がきたニルヴァーナが顔をハルトに向けてビームを放とうする。

しかし……

 

「フンッ!!!」

 

「ガッ!!?」

 

口を開けた瞬間、ハルトは釘をニルヴァーナの口に突き刺した。

 

「ア"ア"ア"ッ!!!」

 

「ぐうぅっ!!!」

 

それでももがくニルヴァーナにハルトは踏ん張る。

 

「ぶっ飛べぇっ!!!」

 

ハルトは突き刺した釘に目掛けて全力のパンチを放った。

釘とともに吹き飛ばされるニルヴァーナは古代都市ニルヴァーナの瓦礫に突っ込み、今度こそ動かなくなり……その体が塵となって消え去った。

ニルヴァーナが消えたのを確認したハルトはルーシィたちの方を振り向き、ゆっくり歩いて行く。

ルーシィもハルトのほうに小走りで走り寄っていくと、ハルトは途中で足がガクッと崩れ、こけそうになり、ルーシィが慌てて受け止める。

 

「ただいま………」

 

微かな声でハルトがそう呟いた。

ルーシィは優しく微笑む。

 

「おかえり……」

 

 

ニルヴァーナの一騒ぎがあったが漸く落ち着いたハルトたち。

ハルトはルーシィに膝枕をしてもらいながら、ウェンディに治療してもらっていた。

 

「ふぅ……すいません……今の私の残り魔力じゃここまでが限界です………」

 

「ううん、ありがとうウェンディ。さっきより顔色が良くなってるわ」

 

ルーシィがそう言いながらハルトの頭を優しく撫でる。

この中で最もひどい怪我を負っていたハルトの傷をウェンディに治してもらっていたが、ウェンディの残り魔力と疲労により治療にも限界があった。

それでもハルトの傷は少し治り、顔色も良くなった。

 

「ハルト、大丈夫?」

 

「ああ……少し楽になった……もう大丈夫……」

 

ハルトがルーシィの膝枕から起き上がろうとするとルーシィがそれを止めた。

 

「ダメよ!まだ横になってなくちゃっ!!」

 

「でもよ……ルーシィもツライだろ?」

 

「そんなことないわ……い、今はこうしているほうがいいの…!」

 

「お…おう……」

 

ルーシィが顔を赤くしながらも微笑んで言うのを見てハルトはルーシィのその優しい微笑みを見て、胸が少しドキッとして顔を赤くしてしまう。

そして顔を赤くしているのはルーシィとハルトだけではない。

 

「ひゃあ〜……ルーシィさんって大胆……」

 

「す、すごいなぁ……(僕もウェンディとこんな風にできたら……)」

 

側にいたウェンディはルーシィの言動に顔を赤くして、その隣にいたレインは密かに想いを寄せているウェンディとこんなことができたらと想像して顔を赤くする。

 

「実際のところハルトくんとルーシィってどうなのー?」

 

「ルーシィ殿はヘタって最後までいけなくて、ハルトは微妙なところでごじゃるな」

 

「情けないわね」

 

「だよねー、ところで魚いる?」

 

「結構よ」

 

その近くでネコ組がハルトたちを見て、ミントがマタムネに聞いて、シャルルがそれを辛辣にコメントし、ハッピーは呆気なく撃沈していた。

 

「聞こえてるっての……」

 

「ハルト、イチャついているところ悪いけどよ」

 

「いいいいいイチャつつつついて、なななんか……!!!」

 

「ルーシィ落ち着けって……イチャついてねえよグレイ。どうした?」

 

「アイツ誰だ?ラミア、ペガサスにもいなかったろ?」

 

グレイが指さす先には1人離れたところ座っているジェラールがいた。

 

「ジェラールだ」

 

「えっ!?」

 

「アイツがか!!?」

 

「待ってください!ジェラール……記憶喪失みたいで……」

 

「自分のことも覚えていないみたいなんです……」

 

楽園の塔の首謀者であるジェラールだと教えられたルーシィとグレイは驚き、それをウェンディとレインが少し悲しそうに弁解する。

 

「そう言われてもよう……」

 

「安心しろ。アイツは味方だ」

 

記憶がないと言われてもやや納得がいかないグレイにエルザがそう言うとしぶしぶ納得した。

そしてエルザはジェラールに歩み寄る。

 

「とりあえず、力を貸してくれた事には感謝せねばな」

 

「エルザ…いや……感謝されるような事は何も……」

 

「これからどうするつもりだ?」

 

二人で岩場に腰掛けながら、エルザはそう問い掛ける。

 

「……わからない」

 

「そうだな……私とお前との答えも簡単には出そうにない」

 

「怖いんだ…記憶が戻るのが……」

 

そう言って怯えるように体を震わせるジェラール。

そんなジェラールに対してエルザは……

 

「私がついている」

 

と…優しい笑みを浮かべながらそう言った。

予想外の言葉だったのか、ジェラールは驚いた表情を浮かべている。

 

「たとえ再び憎しみ合う事になろうが……今のお前は放っておけない……私は…」

 

エルザがそう何かを言い掛けたその時……

 

ゴチィン!

 

「メエーン!」

 

「「!!」」

 

何かがぶつかる音と、一夜の奇妙な悲鳴が響いた。

 

「どうしたオッサン!!」

 

「トイレの香りパルファムをと思ったら、何かにぶつかった~」

 

「何か地面に文字が……」

 

「こ…これは……術式!!!?」

 

「いつの間に!?」

 

「閉じ込められたー!?」

 

「誰だコラァ!!!」

 

いつの間にか連合軍一同は、術式による結界の中に閉じ込められていた。

 

「な…なんなの~」

 

「一体誰が……」

 

「もれる……!!」

 

結界の中に閉じ込められ、一同が動揺していると……近くの草場から複数の部隊のような人たちがハルトたちを囲むように歩いてあらわれた。

 

「手荒な事をするつもりはありません。しばらくの間、そこを動かないで頂きたいのです」

 

すると、その部隊のリーダー格のようなメガネの青年が代表して口を開いた。

 

「私は新生評議院第四強行検束部隊隊長、ラハールと申します」

 

「新生評議院!!?」

 

「もう発足してたでごじゃるか!!?」

 

メガネをかけた青年……ラハールの言葉に、驚愕する一同。

 

「でもオイラたち、何も悪い事してないよっ!!」

 

「お…おう!!

 

「捕まえるならマタムネだけにしてくれ」

 

「ハルト!?」

 

「存じております。我々の目的は六魔将軍の捕縛。そこにいるコードネーム、ホットアイをこちらに渡してください」

 

「!!」

 

ラハールがそう言って、リチャードを指差す。

 

「ま…待ってくれ!!」 

 

「いいのデスネ、ジュラ」

 

「リチャード殿」

 

異議を唱えようとしたジュラを、リチャード本人が引き止める。

 

「善意に目覚めても、過去の悪行は消えませんデス。私は一からやり直したい」

 

そう言うリチャードを見て、ジュラはある事を申し出る。

 

「ならばワシが代わりに弟を探そう」

 

「本当デスか!?」

 

「弟の名を教えてくれ」

 

「名前はウォーリー。ウォーリー・ブキャナン」

 

「ウォーリー!!?」

 

「「!!」」

 

 

その名前を聞いたエルザは驚愕し、ナツとハッピーの脳裏には楽園の塔で戦った…顔がカクカクでダンディーを自称する男の顔が浮かんだ。

 

「その男なら知っている」

 

「何と!!?」

 

「!!!」

 

エルザのその言葉に驚愕するジュラとリチャード。

 

 

「私の友だ。今は元気に大陸中を旅している」

 

そう言うエルザの嘘偽りのない優しい表情を見て、リチャードは大粒の涙を流す。

 

「グズ…ズズズ……これが光を信じる者にだけに与えられた奇跡というものデスか。ありがとう、ありがとう……ありがとう!!!!」

 

こうしてリチャードは、大粒の涙を流しながらエルザやジュラたちに感謝の言葉を言ったあと……評議院に連行されていったのであった。

 

「なんか可哀想だね」

 

「あい」

 

 

「仕方ねえさ」

 

リチャードの姿を見送りながらそんな会話をするルーシィとグレイ。

 

「もうよいだろ!! 術式を解いてくれ!!! もらすぞ!!!!」

 

「いえ……私たちの本当の目的は六魔将軍オラシオンセイスごときじゃありません」

 

「へ?」

 

「!!!」

 

闇ギルドのバラム同盟の一角を担う六魔将軍オラシオンセイスを『ごとき』と言ってのけたラハールに、一夜は目を点にし、他の面々も少なからず驚愕する。

 

「評議院への潜入…破壊、エーテリオンの投下。もっととんでもない大悪党がそこにいるでしょう」

 

そう言ってラハールが指差す先には……

 

「貴様だジェラール!!!! 来い!!!!抵抗する場合は抹殺の許可もおりている!!!!」

 

ラハールの本当の目的は、楽園の塔での罪を訪われているジェラールであった。

 

「そんな…!!」

 

「ちょっと待てください!!!」

 

それに対して異論を唱えようとするウェンディとレイン。

 

「その男は危険だ。二度とこの世界に放ってはいけない、絶対に!!!!!」

 

ラハールのその言葉を聞いて、エルザは切なそうな表情を浮かべる。

 

「ジェラール・フェルナンデス。連邦反逆罪で貴様を逮捕する」

 

罪状と共に、ジェラールは手首に手錠をかけられる。

 

「ま…待ってください!!!ジェラールは記憶喪失……今は何も覚えていないんです!!!」

 

「刑法第13条により、それは認められません。もう術式を解いていいぞ」

 

「はっ」

 

ラハールはレインの主張に対してあっさりそう言い返すと、部隊の者に術式の解除を言い渡す。

 

「で……でも!!」

 

「ジェラールは!!」

 

「いいんだ……抵抗する気はない」

 

それでも尚、異論を唱えようとするウェンディとレインを、ジェラール自身が抑える。

 

「君たちの事は最後まで思い出せなかった。本当にすまない、ウェンディ…レイン」

 

「このコたちは昔、あんたに助けられたんだってさ」

 

「そうか……オレは君たちにどれだけ迷惑をかけたのか知らないが、誰かを助けた事があったのは嬉しい事だ」

 

そう言うとジェラールはどことなく嬉しそうな表情を浮かべた後、エルザへと視線を移す。

 

「エルザ、色々ありがとう」

 

ジェラールの感謝の言葉に、エルザは辛そうに目を伏せる。

 

 

(止めなければ……私が止めなければ…ジェラールが行ってしまう…せっかく悪い夢から目覚めたジェラールを……もう一度暗闇の中へなど行かせるものか!!!!)

 

手を強く握り、心の中でそう決心するエルザ。

 

「他に言う事はないか?」

 

「ああ」

 

「死刑か無期懲役はほぼ確定だ。二度と誰かと会う事はできんぞ」

 

「そんな…」

 

「いや……」

 

「ジェラールさん……」

 

ラハールの冷徹な言葉に、連合軍の面々が愕然とする。

 

 

(行かせるものか!!!!)

 

そしてエルザが行動を起こそうとしたしたその時……

 

「待てよ!」

 

突然声が上がり、ラハールたちとエルザたちの動きが止まり、その声が上がったところに目を向ける。

そこにはルーシィに支えられて立っているハルトがいた。

 

「ハルト……」

 

「貴方は……ハルト・アーウェングス。何か用ですか?」

 

「ジェラールは楽園の塔の時、意識がハッキリしていなかったって言ってたんだよ。誰かに操られてた可能性があるんだ」

 

「確か貴方たち妖精の尻尾は楽園の塔の事件に貢献してくれましたね。………貴方たちの証言は確かに有効なものだが、それがジェラールの解放とは関係がない!!」

 

ラハールは強気でそう宣言するとハルトは少しため息をつき、評議院に向かって歩いて行く。

 

「仕方ねぇな……オラッ!!」

 

「がはっ!!」

 

突然ハルトは評議院の人間を殴り飛ばした。

 

「ハルト!!?

 

「相手は評議員でごじゃるよ!!!」

 

いきなりのハルトの行動に驚愕する一同。

ハルトは自身の命を助けてくれた恩と、エルザの気持ちを考えて動く。

 

「そいつを行かせるわけにいかねぇんだよ!!!」

 

「へへっ!!ハルトならそうするって思ったぜ!!!どけェっ!!!!そいつは仲間だ!!!つれて帰るんだぁっ!!!!」

 

あれほど毛嫌いしていたジェラールを『仲間』と呼び…行く手を阻む評議員を殴り倒しながらジェラールへと向かって行くナツ。

 

「ハルトさん……」

 

「ナツさん……」

 

「よ……よせ……」

 

「と……取り押さえなさい!!!!」

 

ラハールの命令で数人の評議員が、ハルトとナツを取り押さえる為に彼に向かって駆け出す。

しかし……

 

「行け、ハルト!!!

 

「こいつらは私たちが相手するから!!!」

 

グレイとルーシィがハルトたちに加勢し、評議院を攻撃する。

 

「ニルヴァーナを防いだ奴に…一言の労いの言葉もねえのかよ!!!!」

 

「それには一理ある。その者を逮捕するのは不当だ!!!!」

 

「悔しいけどその人がいなくなると、エルザさんが悲しむ!!!!」

 

グレイの一言にジュラと一夜も加勢する。

 

「こうなったらヤケクソでごじゃるーー!!!」

 

「あいっ!!」

 

マタムネとハッピーも参加する。

 

「お願い!!!ジェラールを連れて行かないで!!!!」

 

「僕たちの大切な人なんです!!!!」

 

ウェンディとレインは泣きながら懇願する。

 

「来い!!!ジェラール!!!!お前はエルザから離れちゃいけねえっ!!!!!ずっと側にいるんだろ!!!!? オレたちがついてる!!!!」

 

そう叫びながら評議員を押しのけ、必死にジェラールに向かって手を伸ばすハルト。

 

「全員捕らえろォォォ!!!!!公務執行妨害及び逃亡幇助だーー!!!!!」

 

ラハールの指示によりさらに大勢の評議員たちが動き始める。

 

「ジェラーーーール!!!!!」

 

それでもナツはジェラールに向かって手を伸ばし続ける。

しかし……

 

「もういい!!!! そこまでだ!!!!!」

 

エルザの一喝により、その場にいた全員が動きを止め、彼女へと視線を向けた。

 

「騒がしてすまない。責任は全て私がとる」

 

そして静かに、エルザは淡々と言葉を発する。

 

「ジェラールを…つれて……いけ……」

 

最後は消え入りそうな声になりながらも確かにそう言ったエルザ。

 

「いいのかエルザ!!!連れて行かれたらもう……!!」

 

「いいんだ………頼む、ハルト……」

 

エルザのその言葉と周りからは分からなかったが真正面から見たハルトだけがわかったエルザの表情を見て、ハルトは何も言えなくなった。

そしてジェラールが改めて連行されるその時……

 

「そうだ…」

 

「!」

 

「お前の髪の色だった」

 

ジェラールはそう言うと、エルザに優しい笑顔を向けた。

 

「さよなら、エルザ」

 

「ああ」

 

そしてその会話を最後にジェラールは評議院へと連行されていった。

 

 

その後、連合軍の面々は休息と心の整理も兼ねて、ニルヴァーナの残骸近くで体を休めていた。

当然、さっきの出来事で全員が浮かない顔をしていた。

そしてハルトたちがいる場所から少し離れた場所にある丘にエルザは腰を下ろしていた。

 

「…………」

 

連合軍の中でも一番浮かない表情をしている彼女は幼い頃……まだ奴隷だった頃の事を思い出していた。

 

 

奴隷時代・楽園の塔。

 

「ジェラール・フェルナンデス」

 

「うわー、覚えづれ」

 

「そう言うお前も、ウォーリー・ブキャナンって忘れそうだよ」

 

「エルザ、お前は?」

 

「私はエルザ、ただのエルザだよ」

 

「それは寂しいな」

 

そう言うと、幼いジェラールはエルザのさらっとした綺麗な緋色の髪を触る。

 

「おおっ」

 

「ちょ…何よぉ」

 

「キレイな緋色(スカーレット)……そうだ! エルザ・スカーレットって名前にしよう」

 

「名前にしようってオマエ……そんなの勝手に…」

 

「エルザ…スカーレット……」

 

「お前の髪の色だ。これなら絶対に忘れない」

 

 

あの時の言葉の通り、ジェラールは最後の最後に彼女のスカーレットの意味を思い出してくれた。

 

「ジェラール…」

 

エルザはジェラールの名を呟きながら膝を抱え込み、その両目からは大粒の涙を溢れさせた。

その日の朝焼けは、今までに見た事がないくらいに美しい緋色に染まっていた。

 

エルザの髪の色のように…あたたかく情熱的に……顔を上げれば美しい空が広がっているのに……顔を上げれば……

 

 

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