FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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日常篇 4
第109話 亜人の子供たち 前編


ウェンディたちが妖精の尻尾の仲間になってから数日が経った。

 

「どお?このギルドにも慣れた?」

 

「はい!」

 

「女子寮があるのは気に入ったわ」

 

「そう、よかった。レインはどこに住んでいるの?」

 

ルーシィはウェンディの隣に座っていたレインにも質問する。

 

「はい。僕はいい借家が見つかるまでハルトさんの家に泊まらせてもらっているんです」

 

「えっ!?ハルトの家に泊まらせてもらっているの!!?」

 

「は、はい」

 

「アタシもだよー」

 

レインの言葉にルーシィはとても驚いて、レインは少し動揺してしまう。

 

「羨ましいなぁ〜……」

 

ルーシィはレインがハルトの家に泊まっていることに羨む。

初めてルーシィがハルトの家に訪ねてから、まだ一度も家に入れていないのだ。

 

「あら、ルーシィ。ちょうどよかったわ」

 

そこにミラが一枚の依頼書を持ってルーシィのところにやってきた。

 

「ミラさん!どうしたんですか?」

 

「ハルト見てないかしら?」

 

「いいえ。今日はまだ会っていませんよ」

 

「そう……困ったわね」

 

ミラは依頼書を見て、少し困った様子を見せた。

 

「どうしたんですか?」

 

「実はハルトを指名に依頼が来ているの。早めに来て欲しいってことなんだけど……まだ来ていないわね」

 

ミラはルーシィに依頼書を見せる。

 

「村を襲う闇ギルドを退治して欲しい……依頼者はクスコ・ガーデン」

 

「よお、何見てんだよ」

 

「おはようでごじゃる」

 

そこにハルトがやって来た。

 

「あっ!ハルト!!ハルトに指名の依頼が来てるの。クスコ・ガーデンって人なんだけど」

 

クスコの名前を聞いた瞬間、少し眉に皺を寄せ、ルーシィから依頼書を貰う。

 

「クスコ?また懐かしい名前だな」

 

依頼書をしばらく見たハルトは荷物を持ってギルドを出ようとする。

 

「マタムネ行くぞ」

 

「どこに行くでごじゃる?」

 

「サルビア村だ」

 

 

クスコの依頼を受けたハルトはさっそく出発しようとしたが……

 

「なんでお前たちも来るかな……」

 

「いいじゃねーか!チームなんだしよ!!」

 

「あい!」

 

「ハルトだけにおいしいところ持っていかれるのも癪だしな」

 

「我々は仲間なのだ。ついて行くのは当然だ」

 

「アタシはハルトが行くならどこへだって行くわ!!」

 

いつものメンバーが付いて来ていた。

さらに……

 

「すいません……私たちまで……」

 

「ごめんなさい……」

 

「アンタたちが謝る必要なんて無いでしょうが」

 

「そだよー」

 

申し訳なさそうにハルトに謝るウェンディとレインに、シャルルとミントも付いて来たのだ。

もともとウェンディたちの指導はハルトに一任されており、マカロフがこれも経験だとハルトについて行くように言ったのだ。

 

「はあ……まあ、お前たちなら大丈夫か」

 

「大丈夫?何のこと?」

 

ハルトは少し真剣な顔になってルーシィたちを見る。

 

「これから見ることにあまり驚くなよ」

 

ハルトはそれだけ行ってマグノリア駅に向かって行く。

 

 

ハルトたちは汽車に乗り、ハルジオンよりさらに遠くにある海に近い村、サルビア村を目指していた。

 

「そういえばクスコって人とハルト知り合いなの?依頼書見たとき表情が険しかったから……」

 

ルーシィがハルトの隣に座り、聞いてくる。

 

「昔の友人だよ」

 

ハルトはそれだけ言って窓からの景色を眺め、口を閉ざした。

ルーシィは他にも聞きたいことがあったがハルトはそれ以上言わない様子だった。

 

「サルビア村って海辺の小さな村ですよね」

 

「ああ、確かニルヴァーナがあったワース樹海が近くにあったはずだ」

 

「またあそこら辺に戻るのかよ」

 

グレイが少しウンザリしたような顔になる。

 

「てっことは……また船に乗るのかぁ〜……うぷっ……」

 

ナツが気持ち悪そうにしながら、また船に乗ることに嫌そうにした。

 

 

汽車から船に乗り継いでサルビア村に着いたハルトたち。

 

「ついたー!!」

 

「やっとか」

 

「結構時間かかったわね」

 

「まだ着かねーのか……?」

 

「もう着いたよナツ」

 

「さっそくクスコがどこにいるか聞かねえと」

 

「アタシ聞いてくるわ!」

 

「あっ!おい待て!ルーシィ!!」

 

ルーシィが率先して依頼主のクスコがどこにいるか近くにいた村人に尋ねた。

 

「すいません。クスコ・ガーデンさんのお宅がどこにあるか知りませんか?」

 

ルーシィがクスコの名前を出した瞬間、村人は嫌そうな顔になる。

 

「…………アンタらあの変わり者に用があんのかい」

 

「へ?」

 

村人はそう言ってルーシィから離れて行った。

その顔はルーシィたちを睨んでいた。

 

「どうしたんでしょうか?」

 

「何か怒らせちゃったかしら?」

 

さらに周りを見ると村人はハルトたちをただジッと睨んでいた。

 

「な、なんか怖いですね……」

 

「気味ワリぃな」

 

レインは睨んでくる村人に少し怯えてしまい、ナツはそれを不満そうに睨み返した。

 

「放っておけ。クスコの場所なら俺が知ってる」

 

ハルトを先頭に村の中を通って行く。

ハルトたちは村を抜け、その先にある山を登っていた。

 

「クスコって人、この山にいんのか?」

 

「ああ、アイツは事情があって人がいるところには住めないからな」

 

グレイがハルトに質問する。

どうやらクスコには事情があるらしく人が住む村や町に住めないらしい。

 

「村からだいぶ離れましたね」

 

「でもそのクスコさん。いったい何をしたんでしょうか?名前を出しただけであんなに睨まられるなんて……」

 

「別に何をしたってわけじゃないんだがな」

 

レインが後ろを振り返り、サルビア村が小さく見えた。

ウェンディがさっきの村人の態度に疑問を持つが、ハルトが苦笑いしながらフォローする。

 

「見えてきたぞ」

 

ハルトが前を向いて、そう言うと目の先に大きな洋館が建っていた。

 

「あそこがクスコさんの家なの?」

 

「大きいねー」

 

ハルトたちが洋館の前にたどり着くと突然ハルト目掛けて石が飛んでくるが、ハルトはそれを容易に掴んだ。

 

「え!?」

 

「誰だ!!!」

 

突然のことに驚くルーシィたち。

エルザが声高く叫ぶと、声が聞こえてくる。

 

「ここから出ていけ!!!」

 

その声は押さない声だった。

ハルトは辺りをキョロキョロと見渡しながらその声に話しかける。

 

「俺たちは依頼できた妖精の尻尾の魔導士だ」

 

「ウソつけ!!そう言ってまたボクたちをいじめにきたんだろ!!!」

 

「ウソじゃねーて、のっ!!」

 

「イダッ!!」

 

ハルトは右にあった木に向かって石を投げると木からフードを被った少年が落ちてきた。

ハルトは痛みでうずくまる少年に近づき、襟部分を持ち上げて顔を向けさせる。

 

「うわわっ!」

 

「クスコどこにいるか知ってるか?」

 

「ギニーを放せ!!」

 

ハルトがクスコの居場所を尋ねると、さらに木から少年がハルトの顔に飛び降りた。

 

「おい!離れろ!!」

 

「この!この!」

 

「ハルト!?」

 

ハルトの頭にしがみついた少年もフードを被っており、ハルトの頭をポカポカと殴っていた。

突然のことに驚くルーシィたちはハルトのところに行こうとすると周りから十数人のウェンディとレインより幼い子供が次々と現れた。

 

「なんだぁ!?」

 

「子供?」

 

取り囲まれたルーシィたちだが、身構えようにも相手がウェンディ、レインより幼い子供のためどうすればいいかわからない。

そして一斉に子供たちが石を投げてくる。

 

「いたたたたっ!!」

 

「くっ!危ないだろう!!」

 

「邪魔だ!」

 

「どいてください!」

 

「いたっー!!」

 

投げられる石に腕で顔を庇うルーシィたち。

 

「ルーシィ!たくっ……!」

 

「うわっ!」

 

頭から引っ張り剥がしたハルトがルーシィを助けに行こうとすると、ハルトの前に茶色のおさげで鎖を持った女の子が現れた。

 

「待ちなさい!ギニーを放しなさい!!」

 

「レジーお姉ちゃん!!」

 

「だったら石を投げるのをやめてくれ」

 

「それはできないわ!!貴方たちがあたし達にヒドイことするからよ!!!」

 

レジーと言う名の女の子は鎖をハルトに向かって投げるとまるで意思を持ったかのように動き、ハルトを襲う!………がそれはヒョロヒョロと動いて1mくらいで落ちてしまった。

 

「…………」

 

「……あぅ………」

 

ハルトはレジーに白けた目を向けて、レジーは恥ずかしそう俯く。

ハルトはレジーに近づき、ギニーと同じく首根っこを掴む。

 

「ひゃあっ!」

 

「おい!ガキども!!この嬢ちゃんに酷いことされたくなかったら石投げるのをやめろ!!!」

 

ルーシィ達に石を投げていた子供たちはハルトに捕まったレジーを見て、石を投げるのをやめた。

 

「さてとクスコはどこにいるんだ?」

 

「誰が話すもんか!!またパパにヒドイことするつもりなんでしょ!!!」

 

「だから違うって……」

 

ハルトは少し疲れた表情でそう言うと洋館の扉が開き、そこから男性が現れた。

 

「騒がしいですよ。何をしてるんですか?」

 

男性は細身で眼鏡をかけて黒髪を後ろでまとめた髪型をしており、全体的に物腰が柔らかい印象を受ける。

そして最も大きい特徴は右腕が無いことだった。

子供たちはその男性が現れるとバツが悪そうな表情になり、男性は周りをぐるっと見渡しハルトと目が合う。

 

「ハルトかい?」

 

「久しぶりだな、クスコ」

 

 

洋館に招かれたハルトたちは客間に通され、クスコから謝罪を受けていた。

 

「申し訳ありません。妖精の尻尾の皆様。うちの子供たちがとんだ勘違いをしてご迷惑をお掛けしました」

 

「別に気にしておりません」

 

代表としてエルザがクスコの謝罪を受け取る。

頭を下げるクスコにクスコの後ろで立っている子供たちも申し訳なさそうにする。

 

「ほら、君たちもフードを取って頭を下げなさい。お客様の前でフードを被るのは行儀が悪いですよ」

 

「で、でも先生!」

 

フードを取るように言われた子供たちは少し焦る様子を見せる。

 

「この人たちなら大丈夫ですよ。だからフードを取りなさい」

 

クスコは優しく語りかけると、子供たちはゆっくりフードを脱ぐ。

そして露わになった頭には動物のような耳がほぼ全員に生えていた。

 

「ええっ!?」

 

「なんだそりゃ!!」

 

「かわいい……」

 

ルーシィたちが驚きの声を上げるなかエルザがボソッと呟いた。

しかし子供たちは少し居心地が悪そうにする。

 

「おー!すげぇっ!!それって本物なのか!!ちょっと触らせてくれ!!!」

 

「ふぇ……」

 

「やめろバカナツ」

 

「いでっ!?」

 

ナツが触ろうとしてくるのをハルトが頭に拳骨を落とすことで止めた。

 

「さぁ、謝って」

 

『ごめんなさい』

 

子供たちが一斉に頭を下げて謝罪するが、ルーシィたちは獣の耳が生えていることに驚いてそれどころではなかった。

 

「さて僕はこの人たちとお話をするから、居間に行ってお菓子を食べてきなさい。レジー、お客様たちにお茶を頼みますよ」

 

クスコがそう言うと子供たちはお菓子で笑顔になって客間から出て行った。

子供たちが出て行ったのを確認するとクスコはハルトと向き合う。

 

「久しぶりですねハルト」

 

「ああ、久しぶりだな。元気だったか?」

 

「ええ。片腕が無くても元気ですよ」

 

ハルトとクスコが仲良さげに話すとルーシィがハルトに質問する。

 

「ねえ、ハルト。クスコさんと知り合いなの?」

 

「5年前に知り合ったんだ」

 

クスコがルーシィたちに体を向ける。

 

「改めまして……今回の依頼を申し込みましたクスコ・ガーデンです。本日は依頼を受けていただきありがとうございます」

 

クスコが頭を下げて礼を言う。

 

「それでは早速依頼を確認したいのですが」

 

「はい……実は数日前から近くに賊が現れまして、彼らを退治して欲しいのです」

 

「賊なら軍に頼めばいいんじゃないんですか?」

 

ルーシィがそう質問するが、クスコは首を横に振る。

 

「あの子たちを見たでしょう?」

 

「ああ……あれは一体なんだ?獣の耳に尻尾もある奴がいたな」

 

「あの子たちは亜人の子供です。僕は身寄りのない彼らの保護者をしています」

 

「親はどうしたんだよ?」

 

ナツの質問にクスコは少し辛そうな表情になる。

 

「…………何故この国に亜人がいないか知っていますか?他国では多くの亜人が暮らしているのに」

 

「いえ……アタシ亜人は初めて見たから……」

 

「俺もだ」

 

ルーシィに続いてハルトとエルザ以外が見たことがないと言う。

 

「エルザは見たことがあるの?」

 

「ああ、楽園の塔の時にな……」

 

エルザが楽園の塔建設に奴隷として捕まっていたころ、身体能力が高い亜人は多く捕まっていた。

 

「フィオーレ王国は先代王の時に亜人狩りが横行していました」

 

「亜人狩り?なんじゃそりゃ?」

 

「人間とは違い、身体能力、、魔力が高い亜人を恐れた先代国王はフィオーレ王国中の亜人たちをつかまえ、処分しました」

 

「処分って……」

 

ルーシィの想像はあっており、それはとても悲惨なものだった。

それを聞いたウェンディとレインは顔を青くする。

 

「今の国王になってからは亜人狩りは行われなくなりましたが、人々の亜人に対する意識はあまり変わらず、今でも迫害の対象です」

 

「だから麓の村の奴らはあんな態度だったのか……」

 

グレイは村人の態度を思い出した。

確かに村にいた者で冷たい態度を取っていたのは全員、高齢の人たちがほとんどだった。

 

「今の国軍の上官たちも亜人狩り時代の人たちが多く、依頼を出しても引き受けてもらえなかいことなんてザラです……」

 

「そんなっ!あんまりじゃないですか!!」

 

「そうです!ひどいですよ!!」

 

ウェンディとレインが怒りを露わにして声を荒げる。

ルーシィたちも同じようだ。

 

「亜人が無差別に処分されることはなくなりましたが、数が少なくなった亜人の価値を見出した富豪、貴族が亜人を捕まえ、競売にかけるようになったのです」

 

「じゃあ……あの子たちは……」

 

「ええ……親が逃した子供達です。他の場所では生きていくのが難しい。どうかお願いします。この子達を助けてやってください」

 

クスコが再び頭を下げて懇願する。

ハルトたちは互いに顔を見合わせ、笑みを浮かべる。

 

「わかった、その依頼を受けるよ。クスコ」

 

「ありがとう……!」

 

こうしてハルトたちは亜人の子供たちを守ることになった。


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