FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第111話 亜人の子供たち 後編

ハルトたちの視線の先に洞窟があり、松明で照らされており、その側には何にか見張りをしていた。

 

「あそこか……」

 

「盗賊の数はざっと数えて500人以上だったよ」

 

「500!?多くない!?」

 

「確かに……そんな大人数をよく隠せていたな」

 

ハルトたちは洞窟を確認しながらどうするか話し合う。

 

「突撃してぶっ倒しちまえばいいだろ!!その方が手っ取り早いしよ!!」

 

「バカ、500人もいるんだぞ。俺たち8人で戦うんだぞ?500人も同時に相手にできるか」

 

グレイがナツの提案を却下すると、クスコが手を挙げた。

 

「すいません。僕は戦えないんです……」

 

クスコが申し訳なさそうにそう言った。

確かにクスコは線が細く、戦えそうには見えなかった。

 

「そうなんですか?」

 

「付いてきたのに申し訳ないです……」

 

「いや、構わない。しかし、そうなると7人か……どうするハルト?」

 

「……ナツの言う通り正面から突っ込むぞ。洞窟だから狭い空間で戦うなら少人数のほうが有利だ」

 

そうしてハルトたちは正面から見る洞窟に突入した。

 

「ハァッ!!」

 

「アイスメイク"ランス"!!」

 

「開け!金牛の扉!タウロス!!」

 

「火竜の鉄拳!!」

 

「覇竜の剛拳!!」

 

あっという間に見張りを倒したハルトたち。

すると、洞窟から騒ぐ声が響いてきた。

 

「まだ奥にいるな……ナツ合わせろ!」

 

「おう!火竜のォ……」

 

「覇竜の………」

 

「「咆哮ォッ!!!」」

 

2人のブレスが洞窟の中をめぐり、大爆発を起こした。

 

「すごいなぁ……!」

 

「うわぁ……」

 

「メチャクチャよ!!」

 

「ひゃーー」

 

それ草陰から見ていたウェンディたちは驚きの声や呆れた声を上げた。

 

「相変わらず派手だね」

 

それをクスコは少し懐かしそうに見ていた。

盗賊を全員倒し終えたハルトたちは少し違和感を感じていた。

 

「なぁ…おかしくないか?」

 

「あぁ……敵の数が少なすぎる」

 

そうハルトたちが倒した数はせいぜい50程度で少なすぎる。

 

「クスコ、確かに500人もいたのか?」

 

「ああ、確かにいたはずなんだけどね……」

 

クスコも不思議そうにしているとエルザが奥から盗賊を1人連れてきて、剣を突きつけて尋問していた。

 

「答えろ。お前たちの仲間はどこにいる?」

 

「へへ……まんまとハマりやがったな……」

 

「なんだと?」

 

「俺たちはただの囮なんだよ……お前たちが来ることはわかってたからなぁ……」

 

「何!?」

 

『!?』

 

盗賊の言葉に全員驚く。

 

「どうして私たちが来ることがわかった!!」

 

「ひひ……親切な村人もいたもんだよ」

 

その時、全員の頭に麓の村人の姿がよぎった。

 

「あいつらか……!!」

 

「でも、なんで!?」

 

ハルトは悔しがり、ルーシィはなぜ村人が盗賊に協力しているのか困惑の声を上げる。

 

「今ごろ亜人のガキどもは……ヒヒヒッ!!」

 

「貴様ぁ……!!」

 

エルザが怒りで拳を振るおうとするが、それより速くクスコがその盗賊の首を締め上げた。

その細腕からは信じられないくらいに軽々と男を締め上げる。

 

「クスコ!!」

 

「教えてくれないかい?なんで僕たちの家を狙うのかを?」

 

クスコは声を荒げずに冷静な声で質問するが、その目には怒りが宿っており、首を絞める力が強くなっていく。

ハルト以外の皆は突然のクスコの変わり様に驚いていた。

 

「がぁ……あ…ぁ……」

 

「答えられないかな?」

 

「クスコ、もうやめろ。気を失っている」

 

「…………」

 

ハルトにそう言われたクスコは手を離し盗賊を解放するが、盗賊は気を失ってしまっていた。

 

「ハルト、僕は先に行くよ。あの子達が心配だ」

 

「待て!クスコ!!」

 

ハルトが止めるのを聞かずにクスコは風のようにその場から離れた。

 

「不味いな……」

 

「あ、ああ、このままではクスコ殿と子供たちが危険だ」

 

「いや、逆だ……」

 

ハルトの額から汗が流れる。

その汗は焦りから来る汗だった。

 

「盗賊の奴らの方が危険だ」

 

 

盗賊たちは屋敷を取り囲み、ネズミ1匹すら取り逃がさないように構えていた。

そしてその盗賊たちの後ろには大きな檻があり、その中には子どもたちが閉じ込められていた。

 

「へー、本当に獣の耳や尻尾が生えてやがる」

 

「な、なかなかかわいいな……」

 

盗賊たちは珍しそうに子どもたちを眺めていた。

 

「なんだよお前ら!!おれたちをどうするつもりだ!!」

 

「うるせぇ!!」

 

捕まっている子どもたちの1人が盗賊に怒鳴るが、盗賊は檻を叩いて黙らせた。

 

「お前らは裏取引で売り飛ばされるんだよ。大人しくしてろ」

 

「くそぅ……」

 

理不尽なことに悔しがり、売り飛ばされることに恐怖し泣きそうになる子どももいる。

すると屋敷の扉が開いた。

 

「おーい!まだ亜人のガキどもがいたぞ!!」

 

「離せ!離せよ!!」

 

「やめてー!!」

 

また子どもたちが盗賊たちに捕まり、檻に入れられる。

 

「今度は羽がついたタイプか」

 

「こりゃ高値で売れるな!」

 

盗賊たちの下品な笑い声が響く。

すると高笑いしているところに2人の男が近づく。

 

「これで全部か?」

 

「ぎゃほー!これだけでも高値になるぜ!!」

 

その2人は六魔将軍傘下の闇ギルドであった『裸の包帯男』のザトーとガトーだった。

 

「ザトーさん!ガトーさん!アンタたちのおかげだぜ。アンタらがこんな大人数で俺たちの仕事を手伝ってくれるおかげで金がたんまり入る」

 

ザトーとガトーはニルヴァーナの事件の後、なんとか新生評議会の手から抜け出した闇ギルドの残党を集め、新たに盗賊として動いていた。

その時に元は十数人だったこの盗賊たちに出会い、仕事を手伝うから分け前を寄越せと言ったのだ。

 

「こんだけいりゃあ1億……いや5億は行くな!なぁ、ガトー兄さん」

 

「そうだなザトー兄さん」

 

(前から思ってたがなんでどっちも兄さん?)

 

その時また屋敷の扉が開かれ、現れたのは盗賊でも闇ギルドの者でもなかった。

 

「みんなに酷いことしないで!!!」

 

現れたのはレジーだった。

その手にはハルトの時に使った鎖を持っていた。

 

『レジーお姉ちゃん/姉ちゃん!!!』

 

「なんだぁ?あのガキは?」

 

「亜人じゃねえのか?」

 

ザトーとガトーは亜人じゃないレジーに疑問を持つ。

 

「みんなを檻から出して!!」

 

「ギャホホホ!出すわけねぇだろうが」

 

「こいつらは貴族に高く売れるんだよ」

 

ザトーとガトーは悪い笑みを浮かべて、レジーを睨む。

それに気押されたレジーは一歩後ろに下がってしまうが、捕まっている家族を見て、勇気を振り絞ってさらに前に出る。

 

「だったら!力づくでも返してもらうんだから!!」

 

「ギャホホホ!!!ガキに何できるんだよ。やれお前ら」

 

ザトーの命令で部下たちがゆっくりと嫌らしい笑みを浮かべてレジーに近づいて行く。

 

「いけぇっ!!」

 

レジーは鎖を操って攻撃しようとするが、やはりまだ魔法は未熟でヘロヘロと鎖が動くしかなかった。

 

「なんだこれ?お遊戯か?」

 

「うぐっ…!」

 

盗賊はその鎖を掴んで投げ捨て、レジーを蹴り飛ばした。

 

「オラ!さっきまでの威勢はどうしたんだよ!!」

 

「俺らを倒すんじゃねえのか!?」

 

「あっ!ゔっ!痛い!!」

 

盗賊たちは幼いレジーを囲い、容赦なく拳や蹴りを食らわす。

 

「やめてぇ!!」

 

「レジーお姉ちゃんに酷いことするなぁっ!!!」

 

「ギャホホホッ!!!ガキがしゃしゃり出てくるからこうなるんだよ!!!」

 

子どもたちが涙を浮かべながら訴えるが、ガトーはそれを嘲笑う。

 

「うぅっ……」

 

「おい!もう終わりにしろ。亜人じゃなくても女なら売れるだろ」

 

「それもそうだな」

 

レジーを痛みつけ終わると盗賊は手をレジーに向ける。

 

(パパ……)

 

霞む意識の中、レジーの頭に思い浮かんだのは優しい笑みを浮かべるクスコだった。

その時だった。

一瞬強い風が吹き抜け、レジーを取り囲んでいた盗賊たちが膝から崩れ落ち、レジーの前に1人の男の姿があった。

痛みに目をつぶっていたレジーが目を開けると、そこにはガトー達を睨むクスコが立っていたのである。

 

「誰だアイツ?」

 

「いつのまに……」

 

ほとんどが突然のクスコの登場に戸惑う中、ガトーとザトーは違った反応を見せていた。

 

「なあ、ザトー兄さん。アイツどこかで見た覚えがないか?」

 

「ああ、ガトー兄さん。どこかで見たことがあるな……どこだっけ?」

 

「あともうちょっとで思い出せそうなんだかなぁ……なぁザトー兄さん」

 

「そうだな。ガトー兄さん」

 

2人はどこかでクスコを見た覚えがあるらしく、思い出そうとしていた。

クスコは睨む表情から、いつも通りの優しい笑顔を浮かべてレジーのほうを振り向いた?

 

「大丈夫かい?レジー」

 

「パ…パパ……」

 

クスコの顔を見たレジーの目から涙が堰を切ったように溢れ出した。

 

「ご、ごめんなさい……私みんなの……ぇぐ……みんなのお姉ちゃんなのに……ぐずっ……守れなかったぁ……」

 

傷ついた体で泣きじゃくるレジーを見たクスコは少し顔を怒りでしかめたが、すぐに優しい笑顔になり、レジーを抱きしめた。

 

「そんなことないよレジー。君がみんなを守ろうと戦ってくれたのはわかったよ。家族を傷つけようとする奴らから守ろうとする優しくて、強い子だということは僕が一番知ってるよ」

 

「パパ……」

 

「ありがとう。レジーのおかげであの子達も連れ去られずに済んだんだよ。流石は僕の娘だ」

 

クスコは抱きしめながら優しい声色でレジーにそう話す。

 

「パパぁ……」

 

「ここで待っていないさい。終わらせてくるから」

 

クスコは上着を脱ぎ、レジーを包むように着させて、1人で盗賊たちに近づいて行く。

 

「その子達を解放してここから消えてくれないかい?君たちを傷つけたくないんだ」

 

「……プッ、ハハハハハッ!!!お前バカか!!?この人数差で何が傷つけたくないだよ!!!」

 

1人を皮切りに多くの盗賊がクスコを馬鹿にして笑い出し、子供達も不安になる。

 

「………そうか、それはとても残念だよ…………」

 

クスコは少し悲しそうな表情を見せると、突如クスコの体から黒いオーラが溢れ出し、髪を逆上げ、体の表面の一部が闇で覆われる。

 

「消えろ」

 

 

ハルトたちはクスコを追いかけるため森を駆けていた。

 

「あともうちょっとだ!!」

 

ハルトの声で全員が走るスピードを上げて、森を抜けるとそこには地獄のような光景が広がっていた。

 

クスコの周りには血を流した盗賊たちが数多く倒れており、クスコは氷のような冷たい目で敵を見据えていた。

 

「クスコ!!」

 

「ハルトたちか……そこで待っていてくれ。すぐに終わらせる」

 

ハルト以外の妖精の尻尾のメンバーはクスコの外見が変わっていることに驚き、盗賊たちは仲間が倒されたのを見て狼狽していた。

 

「な、なんだよコイツ……!」

 

「一瞬で仲間が血を出して倒れたぞ!!」

 

倒されていない盗賊たちは信じられないと言った表情で叫ぶ。

クスコは盗賊達が動揺するなか倒れている盗賊を縫いながら、ガトーたちに向かって行く。

 

「全員で囲みやがれ!!相手は1人でしかも片腕だ!!!」

 

「いかん!」

 

ガトーが部下たちに指示を出し、クスコを囲む。

エルザがいち早く次に起こることを予測して動こうとするがそれより早く、クスコに向かって魔法を放なたれた。

 

「パパァー!!!」

 

『先生ー!!!』

 

様々な魔法がクスコを襲い、爆発を起こす。

 

「そ、そんな……」

 

「いやぁ……」

 

「あいつらァ………」

 

「許せん!!」

 

「待て」

 

エルザたちは怒りを露わにして、盗賊たちに近づこうとするがハルトがそれを止めた。

 

「ハルト!なぜ止める!!?」

 

「今近づくのは危険だからだ」

 

ハルトは黙って爆発の中心を見続け、ハルトに止められたエルザたちもそこに目を向ける。

爆発で立ち込めた煙が徐々に晴れるとクスコが立っていた場所には人1人ほどの大きさの黒いえんちゅうの物体があった。

 

「な、なんだありゃ…?」

 

盗賊の1人がそう呟いた瞬間、攻撃してきた魔導士に向かって黒い円柱から一斉に黒い針が伸びて突き刺した。

盗賊たちは声も出さず倒れる。

 

「ヒィッ……!!」

 

盗賊の1人がその光景を見て、恐怖から情けない声を出してしまい、他の盗賊にも恐怖が伝染していく。

クスコが足を進めようとした瞬間、クスコが立っている地面が隆起し、クスコを襲う。

しかしクスコはそれを軽やかに跳躍してかわす。

 

「ギャホホホホッ!!!今度は俺たちが相手だ!!なぁ、ザトー兄さん」

 

「そうだな。ガトー兄さん」

 

盗賊たちをまとめていたガトーとザトーがクスコに攻撃を仕掛けて来る。

 

「そうか……君たちが彼らをまとめているのか……なら君たちを『殺せ』ば全部終わるわけだ……」

 

クスコの体から黒い魔力と同時に凄まじい殺気が溢れ出る。

 

「ぐっ…!」

 

「な、なんて殺気だ……」

 

「ぐうぅ…!!」

 

ハルト、エルザ、ナツ、グレイは殺気に当てられても耐えることができたが、他はそうでもなかった。

 

「あっ……」

 

ルーシィやレイン、ウェンディなどの殺気に耐性がない者達はその場で気を失い、倒れてしまうがすぐにハルト達が受け止める。

 

「ルーシィ!」

 

「大丈夫か、お前ら!!」

 

森はざわめき、動物達は本能に訴えて来る生存本能により、一刻も早く離れようと森の中を駆ける。

クスコの殺気だけで山一つの命が怯えている。

 

「こ、コイツはぁ……」

 

「! 思い出した……お、お前は……!!」

 

ガトーとザトーは真正面から殺気を受け、怯えるがザトーがクスコの正体に気づいたが、その言葉を続ける前にクスコが仕掛ける。

右腕を横に伸ばすと、迸っていた魔力が収束し、無いはずの右腕を形作り、魔力の腕から魔力の大鎌が作られ、クスコは大きく振りかぶる。

 

「静粛なる死(サイレントキル)」

 

鎌を振った瞬間、竜巻が辺り一面を飲み込んだ。

ハルト達も巻き込まれたが風が止み、目を開けるとそこには残っていた盗賊達は軒並み全身から血を流し、倒れており、クスコはその中でただ静かに立っていた。

 

まだ意識があったハルトを抜いたエルザ達はこの光景が強く印象に残っていた。

ただ漠然と、『死』が立っていた……と

 

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