FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
翌日ハルトたちはホブスに教えられた喧嘩街を進んで、ハルトの師匠オーガがいるところに向かっていた。
「ここは2つの街とはまた違った様子だな」
「そうですね……」
「なんでアタシ達をジロジロ見んのよ〜……」
ハルト達が歩いているとガラが悪い男達がハルト達をジロジロと見てくる。
「ここじゃ余所者だからな。睨まれるんだよ。それと気をつけろよ。ここじゃスリや人攫いは起きないが……」
ハルトが説明している途中で目の前の建物から男2人が揉み合いながら、転がり飛び出してきた。
「こういうことが起きんだよ」
「なにごと!?」
「楽しそうだな!!」
「どういう感性してんのよ!?」
男2人はそのまま殴り合いを始めてしまったが、ハルト達は先を急ぐため無視して行った。
「あのままにしていてもいいの?」
ルーシィが心配して、ハルトに聞くと、
「ここの奴らは一番ボスコらしい奴らでな。力が全てなんだよ。だけど、その中でも礼節はわきまえてる。邪魔したら逆に失礼になるんだよ」
「礼節……?」
ルーシィはさっきの光景を思い浮かべて首を傾けた。
やがてハルト達は切り立った山の中腹を掘られた急な石の階段を上がっていた。
「ハァ……ハァ……まだ着かないのぉ?」
「つ、疲れましたぁ〜」
「ぼ、僕も少しキツイです」
かれこれ2時間も階段を登り始めて、ルーシィとウェンディは体力がなくなり、疲れた様子を見せ、レインも2人ほどでは無いが辛そうだ。
「あともうちょいだ。頑張れ」
「ハルトー……せっしゃたちも歩き疲れたでごじゃる」
「疲れたよ〜…」
「お前らは飛べよ……そら、見えてきたぞ」
ハルトが呆れながらも指をさす先には武骨ながらも荘厳な門が見えてきた。
「ここは鬼妙院(きみょういん)って言って修行院なんだ」
「修行院ってことは修行するところってこと?それならここにいる人たちは安全そうね!」
ハルトの説明にルーシィが漸くまともな人間に会えるのが嬉しそうにするが、ハルトは少し残念そうにする。
「いや、そうでもないんだよな……ここにいる奴らの方が一番血の気が多い」
「へ……?」
「行くぞ」
ハルト達がその門を開けるとその先には大勢の屈強な男達が二人一組で組手を行っていた。
組手と言っても、それはほぼ完全に殴り合い。
その苛烈さに少し圧倒されていると男達がハルト達に気づき、ジロジロ見ながら近づいてきた。
「なんだテメェら?」
「どこのもんだ?」
「じ……オーガに用があって来たんだけど、どこにいる?」
すると続々と組手や練習をしていた男達がハルト達の周りに集まりだした。
「師匠に何の用だ?」
「別に……古い仲だってだけだ」
男達とハルトが険悪な雰囲気になっていく。
「もぉ〜…何でこうなるのよ〜」
「いいじゃねぇか!退屈せずに済みそうだしよ!!」
ルーシィはボスコに着いてから厄介ごとにしか巻き込まれていない状況にため息をつき、ナツは拳を掌にぶつけてやる気を見せる。
すると、ハルト達を囲んでいた男達の一部がルーシィ達に目を向けた。
「へー結構可愛いじゃねえか。ちょっと俺たちと付き合えよ」
「やっ!ちょっと!離して!!」
男がルーシィの手首を無理矢理引っ張り、連れて行こうとすると突然男が吹き飛び、壁に激突し、気絶した。
「ルーシィから手を離せ」
「ハルト!」
ハルトが男を殴り飛ばしたのを皮切りに一斉に両者が激突する。
「火竜の翼撃!!」
ナツが炎で男を振り払うとナツと同じくらいの丸坊主の少年がナツに殴りかかる。
「ラァッ!!
「っぶね!!」
間一髪のところでナツは拳を避け、カウンターをあびせる。
「火竜の鉄拳!!」
「おらっ!」
「がっ!?イッテェー!!」
しかし、ナツが鉄拳を放つがはたき落とされ、逆にカウンターを食らってしまう。
「どうしたよ?そんなもんかぁ!!?」
「まだまだぁ!!!」
ナツと少年は再びぶつかり合う。
「アイスメイク“ハンマー”!!」
グレイは遠距離から氷の鎚を放ち、数人を気絶させるとその奥から剣を持った細身の男が走って向かって来るのが見え、迎撃しようとする。
「アイスメイク“ランス”!!」
グレイは氷の槍を次々と放つが剣で全て切り落とされる。
「まじかよ……」
今まで防がれた事はあっても切り落とされるのは初めて見たグレイは驚きの表情を見せる。
「ハアァァァァッ!!!」
エルザは剣を二振り換装して次々と男達を倒していくと、その中の槍を持った男に剣を防がれる。
「やるな」
「お前も……女にしてはやるな」
2人は一旦距離を取り、再びぶつかり合い、激しく打ち合う。
「ハアァァァァッ!!」
「オオオオォォォッ!!」
2人の太刀筋は残像を残すほど早く、風が生まれる。
その頃レインはウェンディを庇って、槍を男達に向けており、その後ろにはマタムネたちも隠れていた。
「レイン〜…」
「来るなら来い!受けて立つぞ!!」
怯えるウェンディを庇ってレインは槍の切っ先を男達に向けるが、男達はバツが悪そうな表情をしていた。
「いやなぁ〜…来るなら来いって言われてもなぁ……なぁ?」
「嬢ちゃんたち相手に流石に拳は振るえねぇよ。あっちの方が安全だから行こうぜ」
男たちはさっきの険悪な表情とは打って変わって優しそうな態度になり、レインたちを戦いの被害に合わない場所に誘導していく。
「え?あれ?」
「ど、どういうこと?」
「アンタたち私たちが狙いじゃないの?」
困惑するレインたちを代表してシャルルが誘導してくれている男の1人に質問した。
「確かに狙ったのは事実だけどよ。師匠に言われたからやってるだけなんだよ」
「師匠?それって……」
「そう。お前たちが探してるオーガだよ。師匠は3日前からお前らが来ること知ってたみたいだけどな」
○
ハルトたちが男たちと戦っているころ。
ハルトたちが戦っている大きな庭より先にある大きな屋敷の奥にある広い場所に酒瓶をあちらこちらに転がしながら、着物をはだけさせた男と体に服を上から被せているだけの綺麗な女性が2人、男に抱きつきながら寝ていた。
そこに綺麗な女性が近づいていく。
「ご主人様、起きてください。ハルトたちが着きましたよ」
「グゴ〜………zzzz」
女性が男の肩を揺すりながらそう声をかけるが、男は全く起きる気配がない。
「はぁ…まったく……」
女性は仕方がないと立ち上がり、いきなり男のみぞおちを踏み抜いた。
「ふんっ!」
「うごっ……!?」
踏み抜いた瞬間、踏み抜いた衝撃は男の体を貫き、床に大きなヒビを走らせ、穴を開けた。
「「キャーッ!!」」
その衝撃で目を覚ました女たちは突然のことに驚き、悲鳴を上げて逃げていった。
「イタタタ……何をする?」
「何をする?、じゃありませんよ。ハルトが来ましたよ」
「ハルト?………なんでまた?アイツは昨日出て行ったばかりだろうが」
「まだ寝ぼけているんですか?あの子が出て行ってもう7年ですよ」
「そうか………………ハルト?ハルトが帰って来たのか!!?」
「だからそう言っているじゃないですか。とりあえず起きてください」
女性にうながされ、男が立ち上がるとその身長は2メートル後半はあり、肌が全体的に赤褐色をしており、その体には入れ墨のような線が全身に走っている。
その顔はまさに鬼と言っていいような、威圧感がある顔で髪は獅子のように広がっている。
この男こそがハルトの師匠であり、ここ梁山泊の頭領オーガである。
「よし!さっそく行くとするか!!」
「その前にお風呂に入って、着替えてください。酷い臭いですよ」
女性は鼻を摘んでしかめっ面をしながらそう言った。
○
ハルトはルーシィを背にして襲いかかってくる男たちを次々と拳だけで倒していく。
「ルーシィ、怪我はないか?」
「うん!アタシは大丈夫!……っ!ハルト!前!!」
ハルトがルーシィの方を向いた瞬間、トンファーを持った男がとんふをハルトの脳天目掛けて振り下ろして来た。
「危ねぇな!」
「こんなの余裕だろ?」
男はトンファーを振り回しながら、ハルトを追い詰めていく。
流石にまずいと思ったのかハルトはルーシィを抱き抱え、その場から離れるが、男はトンファーを鎖鎌のように伸ばし、ハルトの足に絡める。
「くそっ!!」
「きゃあっ!」
足を取られたハルトはルーシィを前に怪我をさせないように転がすが、絡められた足を引っ張られ男に引き寄せられる。
「シュッ!」
「オラァ!!」
男のトンファーとハルトの拳がぶつかると凄まじい衝撃がその場に走る。
拮抗しているように見えたが、ハルトの拳が打ち勝ち、押し倒す。
「これで終わりだ!!」
「チッ!」
ハルトがトドメを刺そうと拳を振り下ろそうとした瞬間、その腕を突然片手で止められた。
「っ!?」
「はい、そこまでです」
ハルトの拳を片手で止めたのは先ほどオーガを起こしていた状況だ。
「げっ…!ミズチさん!?」
ハルトが驚いた瞬間、ミズナと呼ばれた女性に簡単に投げ飛ばされた。
「ああぁーーーっ!?」
「ハルト!?」
「はいはい、みなさん。歓迎会はそこまでです。怪我人がいたら治療してくださいね」
「か、歓迎会……?」
突然のことに驚くルーシィにミズチは微笑みながら近づき、ルーシィに手を貸して起こしながら説明する。
「はい、ご主人様がどうしても歓迎会をやりたいと申しまして、こんな手荒な歓迎になってしまって申し訳ありません」
「え、いや、あの……」
今だに状況が飲み込めないルーシィは戸惑いながら周りを見るとさっきまで戦っていたナツたちも状況が分からず、戸惑っている。
「つまりお前たちの歓迎と、ハルトの帰還を俺たちのやり方で祝ってわけだ」
屋敷の方から威圧感のある声が聞こえ、ルーシィたちはそちらに目を向ける。
そこにはオーガがゆっくりと歩いて来ており、ハルトたちと戦った男たちは全員オーガに頭を下げていた。
「ようこそ、鬼妙院へ」
人間とは思えないその姿にルーシィは少し固まっているとオーガはルーシィに目が止まり、ルーシィのあっちこっちをジロジロと見つめる。
「お前……だいぶと不思議な運命しとるな」
「へ……?」
するとハルトが投げ飛ばされたところから小さな爆発が起こる。
「ん?なんだぁ?」
「忘れてました」
「イッテェー!何すんだミズチさん!!」
ハルトが少し汚れた姿で現れ、ミズチに怒鳴るとオーガの姿も目に入った。
「げっ!?じーちゃん!!」
「ハルトォォッ!!」
「ヒィィッ!」
ハルトが驚くと同時にオーガがハルトの名前を叫ぶとあまりの声量にルーシィは軽く悲鳴を上げてしまった。
オーガは一瞬でその場から消えて、ハルトの目の前に現れ、ハルトを抱きしめた。
「お前この野郎!すっかり大きくなりやがって!!少しくらい連絡をよこさんか!!」
「ぐぉおおお……!!!苦しいってぇ……!!!」
オーガに抱きしめられハルトの体からバキバキと嫌な音が鳴り、ハルトは苦しそうにする。
「ご主人様、そのくらいにしておいて続きは後にしましょう」
「おう、そうだな!ハルト!!久しぶりに稽古つけてやるから付いて来い!」
「話聞いてました?」
オーガの身勝手ぶりでハルトたちは屋敷内にある練習場に連れてこられた。
「申し訳ありません。ご主人様もハルトが帰ってきて嬉しいらしくて振り回してしまって」
「いえ、いいのですよ」
ミズチは移動する際にエルザたちに事情を説明していた。
「しっかしこの屋敷だいぶ広いな」
「ええ、ここはご主人様一人でお造りになりましたから、出来るだけ広いところがいいと山1つを切り抜いたんです」
「山1つって……どんだけよ……」
「ルーシィ殿の実家も変わらないでごじゃる」
相対するハルトとオーガだが、ハルトは緊張した表情で身構え、オーガは自然体で立っているだけだ。
「よしハルト、全力で打ち込んで来い」
「全力でいいんだな?」
「ああ、全力だ」
オーガは不敵な笑みを浮かべながら腕を組み、仁王立ちの姿勢を崩さない。
「後悔すんなよ!」
ハルトは手に魔力を集中させて竜牙弾を作り出す。
「付加ッ!!」
「待てハルト!!竜戟弾を放つつもりか!?」
「そうでもしねぇとアイツは満足しねぇよ!!」
ハルトは地面を踏み込み、一気にオーガの懐に入り込み、その腹に拳を放つ。
「竜戟弾ッ!!!」
放たれた全身全霊の竜戟弾はオーガの体に突き刺さり、その衝撃はオーガの後ろにまで走った。
「ふふふっ……だいぶ強くなったな」
「くそっ……これでも無理かよ」
しかしオーガは全く効いた様子はなく、指1つ分だけ後ずさっただけだった。
それどころかハルトの攻撃を受けて、嬉しそうだった。
「ご褒美だ」
そう言うとオーガはハルトの額に向かってデコピンをすると、凄まじい音と共にハルトは吹き飛ばされた。
「ハルト!?」
「なんつー威力だよ……」
「ハルトの全力を受けて少し後ずさるだけだとは……」
屋敷の壁を何枚も突き破って、漸く止まったハルトを見て、オーガの凄まじい実力にナツたちは驚愕した。
「終わりましたか?」
「おう。まぁまぁ満足だ」
「それでは食事にしましょうか」
「あのハルトは……?」
ミズチが皆をそう促すがルーシィたちは吹き飛ばされたハルトを心配する。
「そのうち気を取り戻して戻ってくるでしょう。それでは行きましょう」
「すごい放任主義でごじゃるな……」
いつものような口調で突き放すような台詞にマタムネは呆れてしまう。
○
食事も終わり、風呂の時間となり、女性陣は屋敷内にある大きな露天風呂で寛いでいた。
「うーん!気持ちいいわね〜!」
「疲れがとれます〜」
ルーシィは腕を伸ばし、ウェンディは風呂に肩まで浸かって疲れをとっていた。
「まさか修行院にこんな天然風呂があるとは……」
「まあ修行院って言う割には荒っぽいけどね」
「でも修行僧の人たち優しかったけどねー」
鬼妙院は修行院であり、過酷なボスコで生き抜くためには自分を鍛えないといけない。
そのため多くの若者が鬼妙院で己を鍛えている。
そして鬼妙院のトップはオーガであり、それを支えているのがミズチなのだ。
「でもハルトさんたちには申し訳ないですね。私たちだけ温泉いただいちゃって、レインも楽しそうにしてたのに」
「男どもには温泉の良さなんてわからないでしょ?勿体ないわよ」
ルーシィはハルトのことを考えず、ナツとグレイのことを言った。
すると温泉の奥からハルトの声が聞こえてきた。
「失礼だな。俺だって温泉は好きだぞ?」
「いやハルトのことじゃなくてナツとグレイ……ってなんでいるのよ!!?」
「キャッーー!!!」
ハルトは当然のようにいることにやっと気づいたルーシィは慌てて顔を赤くしながら胸を腕で隠し、ウェンディは恥ずかしで湯に深く浸かってしまう。
「なんでってな……俺らが入ってたら勝手にルーシィたちが入ってきたからな」
「混浴だったのね……まぁ、アタシは嬉しいけど……」
ルーシィの最後の言葉は誰にも聞こえなかった。
「俺たちって……ハルトさん以外もいるんですか?」
ウェンディが顔を真っ赤にしながらハルトに聞くと、ハルトは左を指す。
その先にはナツとグレイ、ハッピーもいた。
「よおっ!」
「いい湯だな」
「気持ちいいねー」
「なんでアンタらはそんなに自然に接せれるのよ!?ちょっと待って……ということはマタムネも!!」
ルーシィは慌てて周りを見る。
オッパイ魔神であるマタムネがここにいないはずがないと周りを見るがどこにもいない。
「マタムネならもう沈められてる」
ハルトが見る先には寛ぐエルザの近くで頭にいくつものタンコブを作りうつ伏せで浮いているマタムネの姿があった。
「もう油断も隙もないわね!」
「なんでそう言いながら俺に近づくんだ?」
「い、いいじゃない……たまには……」
ルーシィは顔を少し赤らめ、上目遣いでハルトを見つめる。
温泉でいつもより色気が増したルーシィに流石にハルトもドキッときた。
『ハルト……あの娘のこと好きだろ?』
咄嗟にホブスの言葉を思い出したハルトは首を横に振って間際らした。
「ハルト?どうしたの?」
「い、いや……なんでもない」
「あの……ハルトさん。レインはどこに行ったんですか?」
誤魔化すハルトにウェンディがレインの居場所を聞く。
「レインは……そういや食事の後から見てないな」
「レインなら一人で中庭に行ったぜ」
「なんか用があるんじゃねぇか?」
そんな風に談笑しているとまた声がかけられた。
「おう!楽しんでいるようだな」
「あっ、オーガさん。気持ちのいいお風呂ありがとうござい………キャアァァァァッ!!!」
ウェンディがオーガにお礼を言おうと後ろを振り向いた途端にウェンディは悲鳴を上げて、エルザの後ろに隠れた。
「どうしたウェンディ……おい!前ぐらい隠せ!!!」
心配したハルトがオーガのほうを向くとそこには何も隠さずに全裸のオーガが立っていた。
「別にいいだろうが、何も減るもんじゃないしな」
「減るんだよ!あぁ……クソっ!目に焼き付いちまった!」
ハルトがオーガの腰にぶら下がったモノを忘れようと顔に湯を浴びせる。
そんなことは知らないと言った顔でオーガは湯船に浸かってくるとエルザは堂々とオーガの方を前で向くが、一般的な恥じらいがあるルーシィとウェンディはそれぞれルーシィとエルザを盾にして隠れる。
「おいルーシィ.あんまりくっつくな。当たっちまう……」
「だ、だってぇ…そこにオーガさんがいるんだもん」
「ナツとグレイなら大丈夫なのかよ……それより大丈夫だ。じーちゃんにはルーシィたちの姿は見えていない」
「え?どういうこと?」
「俺は目が見えない」
ハルトが答えるより先にオーガが答える。
するとエルザが質問した。
「目が見えていないのにここで修行をつけているのですか?」
「そんなの息をするように簡単なことだ。逆に目が見えない分色々なモノが見えてくるからな」
そう言ったオーガはハルトたちをそれぞれ見えない目で全員を見ていく。
「なるほどな……お前らにそれぞれアドバイスをくれてやる」
「どうしたんだよ、急に」
「まぁ、いいから聞け。まずナツ」
「おう」
「お前はもう少し自分の感情を理解しろ。制御しろって言ってるわけじゃねぇんだ。そう難しくねぇだろ」
「お、おう…」
ナツは少し戸惑いながらも答える。
「グレイ、お前は想像力はいいんだ。次は創り出す物の理解を深めろ」
「理解を深めろって言われてもなぁ」
「エルザ、お前は剣と鎧を扱うのはそれでいい。もっと新しいことをしてみろ」
「新しいことを……」
「ウェンディ、お前に足りないのは勇気だ。それさえできればお前は強くなる」
「勇気ですか」
「ハルト」
「なんだよ」
「お前は恐怖に立ち向かえ。逃げてばかりじゃ進むもんも進めん」
「………」
ハルトオーガのその一言に黙ってしまった。
「最後にルーシィだが……お前が一番難しい」
「そうなんですか?」
「………もうすぐ選択の時が来る。その時に決めろ」
オーガは謎めいた言葉を言い、それ以上何も言わなかった。
するとグレイが思い出したかのようにナツに声をかけた。
「そういやナツ、お前珍しいな」
「何がだよ」
「お前オーガさんに勝負を挑んでねぇじゃねぇか」
「そういえば……」
「いつもならすぐさま挑んでもおかしくないのにね」
グレイのその言葉にルーシィとハッピーも思い返してみると、喧嘩早いナツがハルトを歯牙にも掛けないオーガを見て勝負を挑まないのは、いつものナツらしくないと思った。
「そ、そうか?」
「そうだろうがいつもならハルトが倒された後、『俺と勝負しろー』って五月蝿いのによ。なんだ?ビビったのか?」
「なんだとグレイ!!」
グレイが揶揄うように笑みを浮かべてそう言うとナツは怒り、立ち上がる。
「ちょ、ちょっと!前隠しなさいよ!!」
「見えちゃってます!!」
ルーシィとウェンディが慌てるが、エルザはいつものように気にした様子はなく、逆にナツに質問した。
「ナツ、実際のところはどうなんだ?」
「そんなことは…………」
ナツはそんなことはない、と言いたいが自分でもわかっているため言えない。
「私ははっきり言ってオーガ殿に勝つ想像が全くできない。ナツもそうなんだろう?」
エルザがそういうとナツは不貞腐れたようにそっぽを向いてむくれてしまった。
「なんだそんなことだったのか?」
「そんなことってなぁ……大概じーちゃんと戦おうとしてもあんたのプレッシャーで誰もがビビっちまうよ」
するとオーガは大きくひと笑いし、ナツたちのほうを向いた。
「お前らはまだまだ若いんだ。そんなことで足がすくまず、なんでもやってこい。お前らの未来は無限だ。まだ見ぬ恐怖に臆せず進めよ。ガキども」
オーガのその一言に全員がいい顔つきになって、笑みを浮かべた。
「よっしゃあっ!!なら明日俺と勝負しろ!!!」
「そうこなくてわな!!!」
ナツとオーガ立ち上がり、やる気を見せる。
「2人とも前を隠しなさいよ〜…」
「それならば私も闘いたい。よろしいだろうか?」
エルザも立ち上がり、オーガに勝負を挑む。
「エルザさん!前を隠してください!!女性なんですから!!」
○
ハルトたちがオーガの話を聞いているころ、レインは1人中庭でスイレーンの素振りを行なっていた。
レインはハルトたちが修行僧と戦っている時に自分が相手にされなかったことに少なからずショックを受けていた。
自分が弱いからと必死に素振りを行なっていた。
「霊槍スイレーン!第3形態……!!」
レインが魔力を込めるが、スイレーンは光り輝くだけで何も変化が起こらない。
「はぁ……はぁ……やっぱりダメだ……」
「何をしているのですか?」
そこにミズチが現れた。
「ミズチさん……僕みんなと比べて弱いからもっと練習しないとって思って……」
落ち込んだ表情のレインにミズチはレイン以外が持てるはずのない神器霊槍スイレーンを持ち上げた。
「え?僕にしか持てないはずなのに……」
「霊槍スイレーンはあらゆる水の魔物、さらには水の妖精の一部を材料にした神器です。その本質は水。水は掴めない存在です」
「そうなんですか……」
「掴めない存在ということは自分で存在を決めれるということではないですか?」
「どういうことですか?」
ミズチは微笑んでスイレーンを投げ返した。
「全てを教えては意味がありません。私が教えるのはヒントだけです。後は自分で考えてみてください」
ミズチは屋敷に戻っていき、レインはスイレーンを見つめていた。
人物紹介 ボスコ編
ホブス・マーキンリー
23歳
容姿
茶髪のウェーブがかかった長髪に顎髭がある。
備考
ハルトが育った場所、娼婦館『amour(アムール)』のオーナー。
ハルトとは幼馴染で、幼少期は共に過ごし、生き抜いた。
現在では妻もいており、お腹には新しい生命がいるらしい。
スジャータ
18歳
容姿
緑色の短髪に切れ目
口元には布を巻いて口を見られないようにしている。
備考
娼婦館『amour(アムール)』の用心棒。
ハルトの幼馴染で、幼少期に口元を傷つけられ、女性としての自信を無くしてしまうがオーガの元で修行を積み、今はホブスたち家族を守っている。
ミズチ・ナーガ
?歳
容姿
薄い水色の長髪でできる女性感がある。
(イメージは恋姫無双の周瑜を肌を白くした感じ)
備考
鬼妙院のナンバー2。
その実力は未知数だか、我儘なオーガに指示できる貴重な人物。
ハルトのことは幼少の頃から知っており、弟か息子のように思っている。
オーガ・マジニ
?歳
容姿
アスラズラースのオーガスと同じ
備考
鬼妙院のトップ。
その実力は化け物クラス。ハルトを指1つで倒せる。
我儘で自分のやりたいことをやらないと気が済まない。
建国約100年経つボスコができる前よりその土地に住んでいた。
今ではラトゥータのトップでもある。
ハルトのことを本当の孫のように可愛がっている。