FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第117話 覇王の追憶

ハルトたちはオーガより教えられた追憶の谷に続く道を歩いていたが……

 

「いってぇ……」

 

「大丈夫ナツ?」

 

ボロボロになったナツが痛む身体を無理矢理動かして移動していた。

 

「だらしないぞ。しっかり歩け……くぅっ……!」

 

「エルザさんも無茶しないでください!ナツさんと同じくらいひどい怪我なんですから!!」

 

エルザがナツを叱咤するが、そのエルザもナツと同じくらいひどい怪我を負っており、痛みでウェンディに支えられてしまう。

何故この2人がひどい怪我を負っているかというと、前日にオーガに戦いを挑んだ2人は約束通り戦ったが、それは最早戦いとは言えず、一方的にナツとエルザが倒されてしまった。

しかし、ナツとエルザは戦った後、満足できたのか清々しい顔だった

 

「オーガさんが言ってた通りだともうすぐね」

 

「案外ラトゥータの近くにあったでごじゃるな」

 

するとハルトたちの周りが霧に包まれていき、目の前が見えなくなりそうなほどだった。

 

「霧が濃くなってきたな。全員逸れるなよ」

 

ハルトがそう注意を呼びかけながら先に進んでいくと、突然ハルトの耳に声が聞こえてきた。

 

『ハルト………』

 

「っ!!」

 

突然のことで振り向くハルトの隣を歩いていたルーシィが驚いた。

 

「どうしたの?」

 

「いや、だけどあの声は……」

 

するとハルトたちを包んでいた霧は徐々に晴れていき、目の前の光景が見えてきた。

 

「あれが追憶の谷……」

 

目の前には2つの山に挟まれた谷があり、いくつかの建物見えた。

 

 

谷に降りたハルトたちは辺りを見渡すが人の気配がなく、寂しい印象を受けた。

 

「ハルト、ここに依頼人が待っているはずなんだろう?」

 

「ああ、依頼書通りならな」

 

「手分けして辺りを散策するんだ!人がいたら知らせてくれ」

 

エルザの指示により全員がそれぞれ散らばり、人を探すが人のいた痕跡すら見つからず、ハルト、ルーシィを除いた全員がまた集まった。

 

「どうだった?」

 

「ダメだ。匂いすらしねぇ」

 

「誰もいないじゃないのかな?」

 

「……だとすれば、あの依頼書はいったい……?」

 

エルザが考え込んだ瞬間、突風が吹き荒れエルザたちを包み込む。

 

「なんでごじゃる!?」

 

「総員戦闘準備!!!」

 

エルザの号令で全員が身構えると、突風が止まり、周りの光景が一変していた。

 

「これは……!?」

 

 

ハルトは1人建物の1つを調べているが、頭の中ではさっきの声が気になって仕方なかった。

 

(あの声はエミリアのものだった……間違いない……)

 

ハルトは最愛だった人の声が聞き間違えるわけでもなく、間違い無くエミリアの声だった。

 

「ハルト……?大丈夫?」

 

「っ! ルーシィか…驚かすなよ」

 

突然ルーシィに声をかけられ驚いたハルトにルーシィは少し言いにくそうな表情になる。

 

「ハルト、何かあった?」

 

「いいや、何も見つからなかった」

 

「そうじゃなくて!エミリアさんのこと……」

 

「……そんなわけないだろ」

 

「ハルト、エミリアさんのこと考えているときいっつも悲しそうな顔してるから……今もそう」

 

ハルトハルトいつもエミリアのことを考えているときは悲しい顔になっていることにルーシィはとっくの前から気づいていた。

図星を言われたハルトはここに来てからルーシィとエミリアのことを言われ続けて、少し苛立ちが溜まっていたのかツライ当たり方をしてしまう。

 

「そんなわけねぇだろ。なんでそんなことがわかるんだ」

 

「それは……!ハルトのことが……その………」

 

ルーシィは顔を赤くして、その先の言葉を続けることはできなかった。

ハルトもバツを悪そうにして頭を掻く。

 

「悪い……言い過ぎた。ありがとうな、心配してくれて」

 

「ううん……」

 

ハルトとルーシィが建物から出た瞬間、そこは谷の風景はなく、昼間だった空は夜空となり、どこかの古代都市の風景が広がっていた。

 

「どこなのここ!?さっきまで谷にいたのに!?」

 

ルーシィが驚くのを他所にハルトにはその古代都市に見覚えがあった。

 

「ここは………っ!!」

 

するとハルトは背後に大きな気配を感じ振り返るとそこには先ほどの建物はなく、少し遠くに巨大な竜のような影が見えた。

 

『GYAAAAaaaaaaaa!!!!!!』

 

「何アレ!?ドラゴン!!?」

 

「そんな……なんでアレが……!!くそっ!!!」

 

「ハルト!!どこに行くの!!?」

 

竜の地を割くほどの叫びで気づいたるルーシィはそのドラゴンにも驚くが、ハルトはそれ見た途端に驚きと恐怖に染まり、そのドラゴンに向かって走って行き、ルーシィはハルトの跡を追った。

 

 

ナツたちもハルトたちと同じ古代都市に突然いた。

 

「どこだよここ?」

 

「突然景色が変わりましたね」

 

「ここって……」

 

「マタムネ何か知ってるの?」

 

全員が辺りを見回していると、突然あっちこっちで爆発が起こった。

 

「何だ!!?」

 

「気をつけろ!!」

 

すると何かがナツたちの近くに何かが落ちてきた。

全員が身構える中、落ちてきた穴から何かが動く音が聞こえてくる。

 

「来るぞ!」

 

「グギャアアァァァッ!!」

 

ナツがそう言った瞬間、穴から小型の竜が出てきた。

すると次々と空から小型竜が空から落ちてくる。

 

「おいおい……どんだけ落ちて来るんだよ」

 

「あれ全部そうなのー!?」

 

グレイが空を見上げると夜空から無数のの光が飛来してきていた。

全ての光が落ちると、それらは全て小型竜だった。

 

「くっ……!ハルトたちと合流してここから逃げるぞ!!」

 

多勢に無勢と判断したエルザは剣を構えて、迎え撃ちながらハルトと合流してこの場から退避しようとした瞬間、エルザたちの周りにいた全ての小型竜に白い雷が落とされ、上空から人が現れた。

 

「あれは……」

 

「カミナ!!?なんでここに!!」

 

「いや、でもなんかいつもと違くねぇか?」

 

グレイが言った通りいつものカミナより幼く見えるが間違いなくカミナだった。

驚くエルザたちに向かってカミナは無表情で人差し指と中指を揃えて向け、魔力を込める。

 

「おい……カミナ、何して……」

 

「白雷」

 

ナツが言い切る前にカミナの指から白雷が放出され、ナツの体を貫いた。

 

「ナツーー!!」

 

「カミナ一体何を!!大丈夫かナツ!!」

 

「俺死んだ……」

 

「傷なんてねぇぞ?」

 

「あれ?本当だ……何しやがんだカミナ!!」

 

傷がないことに気づいたナツはカミナに向かって怒鳴るとカミナは刀を抜いてナツに振りかぶる。

 

「あばばばばっ!ごめんなさ〜い!!」

 

ナツが涙を流しながら謝るがカミナはナツの体を通り抜け、背後にいた小型竜を斜めに断ち切った。

 

「カミナがナツの体を通り抜けちゃった!!」

 

「幽霊でごじゃる!!」

 

「やっぱり俺死んじまったのかーー!!?」

 

「馬鹿者!!これは違う……追憶の谷……そういうことなのか?だとすればこれは一体誰の……」

 

エルザが1人つぶやいているとまた小型竜がカミナを取り囲んだ。

カミナが刀を構え、襲いかかってきた小型竜を迎撃しようとすると、先ほど切り捨てた小型竜が体が斜めに切り捨てられても驚異の生命力でカミナの足に噛み付いた。

 

「ぐっ!!」

 

カミナは小型竜の頭に刀を突き刺し、今度こそ絶命させたが襲いかかって来る小型竜に対処が遅れる。

 

「カミナ!」

 

「今助けます!」

 

グレイとレインが魔法を発動しようとするが、それよりも早く蒼雷と翡翠の剣戟が小型竜を倒した。

 

「誰だっ!?」

 

「あれは……」

 

カミナを助けたのは少し幼いジェイドとルーシィと同じ金髪を後ろでまとめた少年だった。

 

「大丈夫か、カミナ」

 

「あれぐらい一人で対処できた」

 

「結構危なかったように見えたけどな」

 

「ぬかせ」

 

3人は軽口を叩き合って少し笑みを見せている。

するとさらに多くの小型竜が姿を現した。

 

「チッ……いったいどれだけいるんだ」

 

「文句を言わず倒すだけだぜ」

 

3人が構えると小型竜の背後から漆黒の棘が全ての竜に突き刺さった。

 

「やっと合流できた。無事かい3人とも?」

 

「クスコ殿!?」

 

そこに現れたのは少し若いクスコだった。

 

「クスコか。ハルトたちと一緒じゃないのか?」

 

「ああ、爆発で離れ離れになってしまってね」

 

すると今度は20m近く背丈がある竜が降ってきた。

 

「ドラゴンか!?」

 

「いやなんか違ぇ!」

 

その大きさにグレイが本物のドラゴンかと思ったが、本当のドラゴンを知っているナツが違うと言い切る。

その竜はカミナたちに向かって口から魔力を放出するが、カミナたちの手前でそれは防がれる。

 

「何やってんのよ。だらしないわね」

 

「ラナか!」

 

「ついでにエロ猫も一緒よ」

 

「ごじゃる〜!」

 

「マタムネも一緒かい。よかった」

 

それを見ていたエルザたちは驚いていた。

 

「せっしゃでごじゃる!!」

 

「でも小さいねー」

 

「カミナにラナ、クスコ、マタムネまでいやがる。いったいどうなったんだ?」

 

「それよりあそこのいらっしゃるお方に私は驚いている」

 

「なんだよエルザ。あの緑髪の男と金髪の男知ってるのかよ?」

 

「金髪の男の方は知らないが、もうひと方は少し幼いが間違いない。フィオーレ王国王子、ジェイド・E・フィオーレ様だ」

 

「マジかよ!」

 

「王子様なんですか!?」

 

「ああ、私が知っている姿より少し幼いが……」

 

そんなことを話していると魔力を出した竜が今度はラナに向かって拳を振るって来る。

 

「もう、鬱陶しいわね」

 

ラナはそう言うと竜に向かって手を向け、空間を固定したものを打ち出し竜の頭を吹き飛ばした。

 

「はん。案外超魔獣ってのもの大したことないわね」

 

「いや、あれらは『アスラ』が蘇った際に出てきたカスみたいなものだ。本体はあれと比べ物にならない筈だ」

 

ラナが余裕そうに笑みを浮かべるがジェイドが注告する。

すると金髪の男がラナに詰め寄った。

 

「おい!エミリアとハルトはどうした!!」

 

「落ち着けエリオ!2人は一番近くにいたんだ。遠くに飛ばされているかもしれない」

 

詰め寄るエリオと呼ばれた少年を落ち着かせるジェイド。

 

「それよりアレをどうにかしないといけないんじゃないかな?」

 

クスコが苦笑いしながら見る先には何とさっきの小型竜と大型の竜が何十何百体とカミナたちに迫ってきていた。

 

「ここ周辺の住民はまだ避難が終わっていない。俺たちで食い止めるぞ」

 

「そんなことよりエミリアを助けに……」

 

「ハルトが一緒にいるはずだ。恋人のエミリアを放っておくはずがないだろ」

 

エリオはエミリアを助けに行きたいみたいだが、カミナがエリオをそう説得して止める。

エルザたちはそのカミナの言葉に驚いた。

 

「今、恋人って……」

 

「ハルトさんの恋人?」

 

「ハルトさんって恋人がいたんですか!?」

 

「いや、いるって話聞かねえな」

 

全員がエミリアがハルトの恋人だと言う発言にエルザたちは驚く。

するとマタムネが突然声を挙げた。

 

「思い出したでごじゃる!!!」

 

「どーしたの!?」

 

マタムネは翼をだし、突然飛んで行った。

 

「どこに行くマタムネ!?」

 

「おい!カミナたちはいいのかよ!?」

 

エルザたちはマタムネを走って追いながら、グレイがそう言うとエルザは落ち着いた口調で説明を始めた。

 

「今私たちが見ている風景は全て現実ではない」

 

「どういうことだよ?」

 

「ここは追憶の谷……今私たちが見ているのは恐らくマタムネの記憶だ」

 

「マタムネの?」

 

「あそこに幼いマタムネがいたのが証拠だ。それに私たちはここのものに触れることができない」

 

エルザはそう言って建物に真っ直ぐに突っ込むと壁にすり抜けてしまう。

 

「なるほどな」

 

「となるとハルトさんもここいいるみたいですから、ハルトさんの記憶でもあるかもしれないですね」

 

「そうかもしれない。マタムネはどうやら何か心当たりがあるみたいだ。とにかく追うぞ!」

 

 

「もうハルトどこ行ったのよ?」

 

突然巨大なドラゴンの影に向かって走って行ってしまったハルトを追いかけたルーシィだが、走る速さが違いすぎたため途中で見失ってしまった。

 

「それにここどこなのよ〜」

 

いきなり訳の分からない場所に移され、1人になってしまったルーシィは泣きたくなっていた。

泣きそうになった時に突然ルーシィの背後の壁が爆発とともに破壊された。

 

「きゃあっ!!いったい何!?」

 

煙の中から現れたのは頭から血を流し、傷だらけの少し幼いハルトだった。

 

「ハルト!?でも少し幼いような……ん?」

 

するとハルトの横に誰かがいることに気づいた。

 

「大丈夫か……エミリア?」

 

「うん……なんとか」

 

「エミリア!?ハルトが言ってた……」

 

煙が晴れ、ルーシィはエミリアの顔が見えてきた。

それは金髪の短髪だがルーシィと瓜二つの顔をした少女だった。

 

「え、あ、あたし?」

 

ルーシィも一瞬自分と見間違うほどそっくりだった。

ルーシィが驚いていると巨大なドラゴンがハルトたちのすぐ前に来ていた。

 

「くそ……歯が立たねぇ……」

 

「このままじゃ『アスラ』が完全に復活しちゃう……」

 

ハルトは悔しそうにして、『アスラ』と呼んだドラゴンを睨みつける。

 

「どうしたらいい……」

 

「……………ねぇ、ハルト。お願いがあるの」

 

「どうした?」

 

エミリアが真剣な表情になってハルトのほうを向く。

 

「『アスラ』を止めることができないけど、もう一度封印する方法ならあるの」

 

「本当か!!なら早速……」

 

「でも完全に封印するには1人ではできない。ハルトの助けがいるの」

 

エミリアはハルトの手を握る。

 

「『アスラ』を封印する方法は星霊魔導士の体内に取り込んでその命に封をするの」

 

「星霊魔導士たってここには………」

 

「そう私がいる。私の体にアスラを閉じ込めるの」

 

「ダメだ危険すぎる!!超魔獣を取り込んだらどうなるか分からないんだぞ!!」

 

「星霊魔導士の特殊な魔力じゃないとダメなの」

 

「それに命に封をするって……!」

 

エミリアはハルトに金と銀の鍵、『オリオンの鍵』を渡す。

 

「これで私の胸を刺して」

 

「無理だ……俺にはできない……」

 

ハルトは首を横に振るが、エミリアが無理やり持たせる。

 

「ハルト。私ね、貴方に会うまでこんな世界どうでもいいと思ってたの。だけどね……今は貴方と出会ったこの世界を守りたいの」

 

エミリアはこれから死ににいくとは思えない笑顔でハルトを見つめる。

 

「愛してる。ハルト」

 

「待てエミリア!!!ぐっ……!」

 

エミリアはアスラに向かって走りだし、ハルトが止めようとエミリアの手を掴もうとするがダメージで体が動かずエミリアの手を掴み損ねてしまう。

 

「空に輝く全ての星よ!悪しき存在を封じるために我が身に力を貸したまえ!!」

 

エミリアがアスラの足元で呪文を唱えると周りに数多くの光球が現れれる。

 

「ダスト・トレイル!!!」

 

エミリアが叫ぶと光球はエミリアとアスラを中心に回転し、アスラを巻き込んでエミリアに集まり、アスラをエミリアの体に封じ込めた。

 

「エミリア!!」

 

「…は、ハルト……」

 

エミリアは胸を押さえて苦しそうにして、倒れてしまうがハルトが抱きとめる。

 

「エミリア!!しっかりしろ!!」

 

「はや……く。鍵を……」

 

「無理だ!!俺にはできない!!!」

 

ハルトは声を張って叫ぶ。

しかしエミリアは苦しそうにしながらも穏やかな笑みを浮かべる。

 

「お願い……ハルト………うぅっ……!」

 

その途端、エミリアの心臓部分が赤黒く光りだす。

アスラが無理やり抜け出そうとしているのだ。

ハルトはエミリアが助からないことがわかってしまった。

無理やりエミリアの中から出てもエミリアの体は保たずに破壊され、封じても命を落としてしまう。

ハルトは涙を流し、震える手で鍵を握る。

そこに慌てた様子の今のハルトが現れた。

 

「ハルト!!」

 

「よせぇーーー!!!」

 

ハルトがエミリアに突き刺そうとする自分に手を伸ばして叫ぶが、記憶のハルトはエミリアにオリオンの鍵を突き刺し、眩ゆい光がその場を包み込んだ。

 

 

光が収まるとそこは追憶の谷だが、先ほどの建物は一切なくなっており、雨が降っていた。

座り込んでしまっているハルトとその側でルーシィが立っており、雨に濡れていた。

そこに逸れてしまったエルザたちがやってきた。

 

「ハルト!!ルーシィもいたか!!」

 

「よかった。無事だったか」

 

ナツたちが声をかけるが何か様子がおかしく、少し離れたところから見るしかなかった。

するとハルトが重い口を開いた。

 

「俺が……エミリアを殺したんだ………」

 

ハルトのつらい呟きは雨の音に消えていった。

 

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