FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

121 / 141
第119話 迫る魔物

教会で顔合わせの後、ハルト達7人とナミーシャは評議会で情報を集めるべく、別行動となった。

そしてハルト達一行は汽車に乗り、フラスタを目指していた。

カミナはジェイド、クスコ、ラナと同じ座席に座っており、会話もないまま時間が経つ。

するとカミナの横からクッキーが差し出された。

 

「1つどうだい?」

 

クスコが笑顔で差し出したクッキーを見て、カミナは首を横に振った。

前を見るとラナがクッキーをポリポリと食べていた。

 

「そう警戒しないで欲しいな。これから一緒に戦う仲間なんだし」

 

クスコは笑顔を浮かべながらそう言うが、カミナはもう用がないのか目を閉じた。

 

「ハクシロ君は警戒心が強いなぁ……アーウェングス君はだいぶと友好的みたいだけど」

 

クスコがそう言ったので隣の席でエミリアとエリオと共に座っていたハルトに目を向けた。

 

「それでエミリアの好きな物ってなんかあるのか?」

 

「………………」

 

「おい!あんまりエミリアに近づくな!」

 

「………星」

 

「エミリア!?」

 

ハルトはエミリアと仲良くなりたいのか、エミリアに話しかけ、反応は薄いがエミリアも返事を返してくれる。

それが面白くないのかエリオは2人の間に入って邪魔をしていた。

 

「ハルト君はみんなと仲良くなりたいのかな?」

 

「ただの馬鹿でしょ」

 

クスコはその光景を微笑ましく見て、ラナは呆れたように呟いた。

カミナもそんなハルトを半ば呆れた目で見ていると、ジェイドが話しかけてきた。

 

「アーウェングスはいつもああなのか?」

 

カミナはそれに首を横に振って否定した。

 

「この先不安だな」

 

今回の件は命がけだ。

あんな浮ついた気持ちでは支障が出るのではないかと危惧していた。

 

「どんな星が好きなんだ?星座とか?」

 

「だから!エミリアに近づくなって言ってるだろ!!」

 

「わっ!押すなよ!!」

 

ハルトがエミリアに漸く返事を返されると嬉しくなり、さらに詰め寄るとエリオがハルトとエミリアを引き離そうとハルトを押した瞬間、ハルトの尻が席に着いてしまい、

 

「うぷっ……!」

 

「ええ!?」

 

ハルトの顔色は一気に悪くなり、倒れてしまった。

 

「おい、どうした?」

 

「い、いや……エミリアから引き離そうとして押したらいきなりこんな風に……」

 

ジェイドがエリオに聞くが、エリオも何が起こったかわからない様子だった。

するとそこにカミナが割って入ってくる。

 

「ハクシロは知っているのか?」

 

「……ハルトは極度に乗り物に弱いんだ」

 

「えっ?これって乗り物酔いなのか?」

 

カミナの説明にエリオは驚く、初めて見る人には乗り物酔いとは思えないほど、顔色が悪かった。

 

「ふぅ……本当に大丈夫なのか?」

 

カミナに手当てされているハルトを見て、ジェイドはため息を吐きながら、そう零した。

カミナの魔法で浮かび上がったハルトは顔色が悪いままだが、少しなら話せるようになった。

 

「しっかりしろハルト」

 

「うぅ……なんかくる……」

 

ハルトがそう呟き、カミナが外を振り向いた瞬間、凄まじい衝撃とともに汽車が揺れ、線路から外れ横転した。

 

「チッ……全員無事か?」

 

「なんとか……」

 

ジェイドたちは全員怪我もなかったが、カミナとハルトの姿がなかった。

 

「アーウェングスとハクシロはどうした?」

 

「わからない。逸れてしまったのかも」

 

クスコの言葉にジェイドはこの程度の事故に対応できないあの2人を雇ったことを失敗したと思ったが、とりあえず外に出ると視線の先には黒いローブを着た集団が、人ほどの大きさの魔水晶が装着された砲台をこちらに向けていた。

 

「何者だ?」

 

「我らは黒魔術教団『フェアニヒター』!!命が惜しければ、そこにいる金髪の少女を渡して貰おう!!」

 

黒ローブの集団はジェイドたちの話でもフラスタで内戦を引き起こした黒魔術教団『フェアニヒター』。

ジェイドたちはそれぞれエミリアを守るようにフェアニヒターと対峙する。

すると背後から音が聞こえ、振り向くとそこには横倒しになった車両を持ち上げるハルトがいた。

 

「テメーら、よくも……乗り物酔いになったらどうすんだ!!!」

 

叫びながら汽車を投げ、フェアニヒターたちは突然投げられた汽車に慌てて避ける。

すると投げた汽車の中からカミナが車両を切り裂いて現れ、フェアニヒターに襲いかかる。

次々と敵を倒していくカミナにフェアニヒターは慌てる。

 

「な、なんだこのガキ!?」

 

「相手は1人だ!囲んでしまえぐへっ!!」

 

「俺もいるぞー!!」

 

そこにハルトも参加し、フェアニヒターを次々と倒していく。

それを見ていたジェイドたちは構えを解いて、その様子を眺めていた。

そして数分後……。

 

「いやースッキリしたぜ!」

 

さっきまでの気持ち悪そうな表情とはうって変わって、爽やかな笑顔でそう言ったハルトの背後には呻き声をあげるフェアニヒターたちが倒れていた。

 

「よくやったな。だが1人くらい残しても良かったが……」

 

「それなら大丈夫だって、カミナ!」

 

ハルトがカミナを呼ぶとカミナは1人の男を首元を持って引きずって来た。

 

「それじゃあ尋問を始めるか」

 

「その必要はない」

 

そう言ったカミナの手は血で汚れていた。

 

「彼奴らはフェアニヒター。王子が言っていた教団だ」

 

「何故こいつらが俺たちの居場所がわかったか、聞いたか?」

 

「……おい」

 

カミナは男の腹を踏みつけ、男を無理やり起こし尋問を続け、聞き出そうとするが、男は何も知らないと言った。

 

「俺たちの行動を知らせてるのは王国と評議会の一部の人間だけだ。特定するのはそう難しくない。今は先を目指そう」

 

「あとどれぐらいかかるんだ?」

 

エリオが質問すると、ジェイドは懐から小型の魔水晶が嵌められた装置を取り出し起動すると空中に地図が出た。

 

「歩いて2日だな」

 

「なんだそれ!すげぇー!!」

 

ハルトがキラキラした目でジェイドが持つ機械を見るが、ジェイドは無視した。

 

「2日もかかるのか……走って行くかい?」

 

「嫌よ!そんなの疲れるじゃない」

 

ラナはそう言うと全員を魔法で浮き上がらせ、空中を高速で移動し始めた。

 

「最初からこれで行けばよかったんじゃないか?」

 

「なるべく隠密に行動したかった。これじゃあ目立つ」

 

「何よ。文句があるなら歩いて行けば?」

 

エリオとジェイドの会話に不満そうにするラナだがハルトがワクワクした声でラナに言った。

 

「ラナ!お前の魔法すごいな!めちゃくちゃ便利じゃねぇか!」

 

「フフン!もっと褒めてもいいわよ」

 

ラナは得意げな表情になる。

案外チョロい。

 

「チビで態度がでかいと思ってたけど見直したぜ!」

 

「…………」

 

さっきまで得意げだったラナの顔が真顔になった。

 

「あばばばばばっ!!」

 

高速で移動しているため全員の体にシールドを張っていたラナだがハルトだけのシールドを解き、ハルトの顔に物凄い風が当てられる。

 

「私は二十歳を過ぎてるわよ!!」

 

「ぼべん"んんんん(ごめんんんんん)!!!」

 

「アホだ」

 

怒るラナに必死に謝るハルトを見て、カミナはボソッと呟いた。

 

「……………」

 

それを見ていたエミリアはどこか悲しそうだった。

 

 

ラナの魔法のおかげで予定よりもだいぶ早く着いたハルトたちはフラスタ国の手間にある大きな森にたどり着いた。

 

「なんで国じゃなくて森なのよ。奴らを叩くなら国に直接行けばいいじゃない」

 

「今回の目的はあくまでアスラの摘出がメインだ。俺たちは表立って動くことができない」

 

ラナの不満そうな言葉に魔法で髪色を変えたジェイドは説明すると全員で森の中を進み始めた。

 

「今回の件は世間にバレるわけにはいかないんだ。バレるといらん心配が増える。俺たちは今から徒歩でフラスタ国に入って、そこからエミリアに封印されているアスラを摘出する」

 

一行が森の中を進んでいくとハルトとカミナが足を止めた。

 

「どうしたんだい?」

 

クスコが2人に尋ねるが、何かに集中して聞き耳を立てている。

 

「来る!」

 

カミナがそう言った瞬間、エリオはエミリアを抱えて、みんながそれぞれ飛び退いた。

皆がいた場所に突然影が現れたとともに地面がえぐれるほどの爆発が起きた。

 

「なんじゃい。不審な奴らと聞いて跳んできてみれば只のガキじゃ」

 

土煙の中から声が聞こえ、全員が身構える。

やがて煙が腫れてくるとその巨大な影の正体がわかった。

 

「さて、おまえらはどこの誰じゃ?」

 

その正体は聖十大魔導士序列3位、ウルフヘイム。

彼の魔法である巨大な魔物の姿のウルフヘイムに全員が驚く。

 

(ウルフヘイム!?親父め、四天王に依頼してやがったのか!!)

 

ジェイドは内心焦り始める。

もしここでウルフヘイムに捕まってしまえば、自分が企てた計画が全て水の泡だ。

 

「おい、どうする?」

 

カミナがジェイドに確認を取るとジェイドは焦った表情からいつものクールな表情に戻った。

 

「全員散開して目的の場所を目指せ!!」

 

ジェイドがそう叫ぶと全員が散り散りになってその場から離れる。

 

「なんじゃあ?鬼ごっこか?今はフィオーレ王からの依頼で忙しいってのに。たくっ……」

 

ウルフヘイムはそう零しながら、足に力を入れると地面が爆発したように弾け、ウルフヘイムは目にも留まらぬ速さで追いかける。

 

「まずは血の匂いが濃い。お前たちからじゃ」

 

カミナとともに走っていたクスコはすぐ後ろに来ていたウルフヘイムに向かって手を振るうと黒い魔力の針が数本ウルフヘイムに向かって飛んでいくが、ウルフヘイムはそれを防ぎもせず、当たるが全て弾かれてしまった。

 

「白雷!」

 

カミナの手から白雷が放たれるが、それも防がれる。

 

「なんじゃ?静電気か?」

 

「チッ」

 

平然とするウルフヘイムにカミナが舌打ちすると、逃げの姿勢から迎え撃つ姿勢に変わる。

 

「破道の三十六、蒼火墜!」

 

蒼い爆炎がウルフヘイムを襲い、包み込む。

カミナはやったか、と様子見ようとすると炎の中から巨木のような腕が現れ、カミナを捕まえようとする。

 

「詰めが甘いわい!」

 

ウルフヘイムの手がカミナを捕らえようとした瞬間……

 

「覇竜の剛拳!!!」

 

「ぬおっ!?」

 

ハルトの剛拳がウルフヘイムの頬を捉え、吹き飛ばした。

 

「大丈夫か!」

 

「あぁ」

 

吹き飛ばされたウルフヘイムは木々を下敷きにして仰向けで倒れていた。

 

「完全に油断したぞ。小僧どもォ……」

 

するとウルフヘイムが倒れていた場所が爆発したように衝撃波が炸裂した。

 

「っ!!」

 

ハルトが驚いてそちらを向くと眼前にウルフヘイムの拳が迫っていた。

 

「覇竜の剛腕!!!」

 

咄嗟に剛腕を出して防ぐハルトだが、殴り飛ばされてしまう。

 

「グオオォォォッ!!!」

 

獣のような咆哮を上げるウルフヘイムは吹き飛ばされたハルトに走って追いつき、吹き飛ばされたハルトを地面に殴りつける。

 

「がはっ!!」

 

口から血が吹き出るハルトにウルフヘイムはさらに追撃しようとするがそこに翡翠色の刀身の剣を持ったジェイドが背後からウルフヘイムを切りつける。

 

「ウグッ!?」

 

しかし魔物の体となっているウルフヘイムには僅かに傷をつけるだけだった。

しかし、それだけでもウルフヘイムは膝をついて苦しそうにする。

 

「何をした!!」

 

「アンタの魔法を切った」

 

僅かな切り口なのにダメージが釣り合わないことにウルフヘイムはジェイドに問うと、ジェイドは静かに剣を構えながら答える。

ウルフヘイムは先に未知の力を使うジェイドを倒してしまおうと突撃すると、見えない壁に阻まれた。

 

「なんじゃこれは!!?」

 

驚くウルフヘイムを中心に半透明の柱が周りに建てられ、最後に上に蓋をされて閉じ込めた。

 

「『ロックルーム』」

 

その上空ではラナが魔法を操作し、ウルフヘイムを魔法の檻に閉じ込めた。

 

「無事かアーウェングス」

 

「なんとか……」

 

口から血が僅かに見えているがハルトは無事だと答える。

そこに散り散りになっていた他の皆も集まった。

 

「貴様ら、こんなことをしてタダで済むとは思うなよ………」

 

「閉じ込められているのに何を言ってるのかしら?」

「俺たちには時間がない。悪いがアンタにはここにいてもらう」

 

ラナが馬鹿にするようにウルフヘイムを鼻で笑うと、ウルフヘイムは檻の柱を掴む。

 

「聖十大魔導士を舐めるなよ!!ガキ共ォォォォッ!!!」

 

ウルフヘイムが檻に力を入れると、檻はビキビキと嫌な音を立て始め、亀裂が入り始めた。

 

「くっ……!こいつなんて馬鹿力……!!」

 

ラナが苦しそうにしながら手を向け、檻に魔力を込めるが亀裂の広がりは止められない。

 

「オラァッ!!!」

 

「きゃあぁぁぁっ!!!」

 

とうとうウルフヘイムはラナの檻を破壊し、その余波が術者のラナに伝わり、気絶してしまった。

 

「ラナ!!」

 

クスコは片腕で落ちてくるラナを抱き捕まえたが、ラナは気絶してしまっていた。

 

「フンッ!!!」

 

ウルフヘイムが地面を殴りつけると地面がえぐれ、周りの木が吹き飛ぶほどの風が巻き起こる。

ハルトたちは何とかその突風に耐えるが、ハルトたちはどの身体能力を持たないエミリアは吹き飛ばされてしまう。

 

「あっ………!」

 

「エミリア!!」

 

エリオが腕を伸ばそうとするが風のせいで身動きが取れない。

しかし、その中でハルトが吹き飛ばされたエミリアに向かって跳んだ。

 

「掴まれ!!」

 

ハルトが手を伸ばすが、エミリアはその手を掴もうとしたが途中で引っ込めてしまった。

ハルトは何故引っ込めたかわからなかったが、手を掴めなかったエミリアを抱きしめだが、吹き飛ばされたハルトたちはすぐ側にあった崖の間に流れる大きな渓流に落ちて行ってしまい、2人は激しい水の流れに流されてしまった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。