FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第121話 星の狩人

まるで大砲を打ったかのような打撃音が森の中に響くとハルトが両腕に剛腕を展開して、ウルフヘイムの拳を受け止めるが殴られた勢いが止まらず、木に叩きつけられる。

 

「がはぁっ!」

 

「その年でワシの拳を受けて意識があるとはなぁ……中々才能があるわい。修行を積めば良き魔導士になれるはずじゃ」

 

「年寄りは一々上から目線で鬱陶しいな……いい加減くたばったとけよ」

 

ウルフヘイムの上からの発言にハルトも負けじと言い返すが、肩で息をするほど疲れと痛みが蓄積していた。

 

「痩せ我慢も大概にしておいたほうがいい……大人しくしとりゃぁ、拳骨一発で済むわい」

 

「そういうわけにもいかないんだよ!!」

 

ハルトはウルフヘイムに向かって魔力を帯びた拳を振るう。

連打を叩き込むがウルフヘイムの岩よりも硬い皮膚には効いておらず、ガードすらしていない。

 

(エミリアはどこまで逃げれた!?ここから離れても大丈夫か!?)

 

ハルトはウルフヘイムの硬い皮膚を殴り、血がにじみ出る拳を振りながらエミリアの安否を頭の中で気にかける。

そしてそれは殴られているウルフヘイムにもわかってしまった。

 

「拳に力が入っとらんのう……さっきの小娘のことを考えとるのか?」

 

「!!」

 

ハルトの顔が驚愕に染まる。

その隙をついてウルフヘイムはハルトの顔を掴み上げる。

 

「ぐああぁっ!!」

 

万力のように力を込められたハルトの顔はギリギリと嫌な音を立てる。

 

「か弱い少女を身を呈して守るのは見上げた根性じゃ……じゃがそれだけか?なぜお前たちはあの少女を守る?あの娘はいったい何者なんじゃ?」

 

ウルフヘイムの質問にハルトは歯を食いしばって答えない。

 

「答えんか!!」

 

「あああぁっ!!?」

 

ウルフヘイムが少し力を加えるとハルトは苦しそうな声を上げる。

ウルフヘイムからしてみれば少し力を加えただけかもしれないが、それは常人からしてみればとんでない力だ。

 

「ハハ……」

 

「何がおかしい?」

 

ハルトが突然笑みを浮かべた。

ウルフヘイムが睨むが、ハルトはそれに臆さず笑みを浮かび続ける。

 

「何者かなんて関係ねえ。ただ……」

 

ハルトの足に魔力が纏われ、振り上げる。

 

「あいつに笑顔になって欲しいんだッ!!!」

 

「ガッ!?」

 

振り上げた足はウルフヘイムの顎に直撃し、ハルトを掴んでいた手を放した。

 

「アイツがこの世界に希望なんてないって言うなら俺が希望になってやる!!絶対に死なせねえっ!!好きな女を守れなきゃ、男じゃねぇんだよ!!!」

 

ハルトの拳に今までにない魔力が込められる。

 

「覇竜の螺旋拳!!!」

 

ハルトの拳がウルフヘイムの横頬に突き刺さる。

まともに入った拳はウルフヘイムの体を仰け反らせた。

が、その瞬間ウルフヘイムはハルトの殴ってきた腕を掴み、地面に叩きつけた。

その威力に地面が陥没する。

 

「がはっ!!」

 

「なかなか気合が篭った拳じゃ……だが、それとこれは別じゃわい!小僧!お前がワシに敵意を向けるならこっちもお前を敵と見なしてお前を倒す!」

 

ウルフヘイムは倒れたハルトを見下ろしながら睨みつける。

ハルトが痛みで震える体に鞭を打って立ち上がろうとすると、ウルフヘイムは容赦なくハルトの背中に拳を何度も叩きつける。

 

「がっ!?あ"っ!!」

 

最早虫の息のハルトはボヤける視界にウルフヘイムが拳を構える姿をかろうじて捉える。

 

(や…べぇ…逃げない…と……)

 

朦朧とする意識の中、逃げようとするが体が動かない。

 

「これで終いじゃ。話は後で聞いてやる」

 

ウルフヘイムはハルトに向かって、その拳を振り下ろした。

ハルトは目を閉じて痛みに耐えようとするが、いつまで経っても痛みが来ず、目をゆっくり開けるとウルフヘイムの拳を片手で受け止める美男の姿があった。

 

「よく言った、少年。後は我輩に任せろ」

 

ハルトに優しく労わるように言いながら、その言葉には逞しさが溢れる。

 

「このオリオンにな」

 

 

オリオンが助ける少し前、エミリアはハルトとウルフヘイムが戦っているすぐ近くの木に隠れながら、機を窺っていた。

 

(卵は少し離れたところに置いてきたから大丈夫だと思うけど……木に隠れていてもあのウルフヘイムって奴の魔力がバシバシ当たって辛い)

 

エミリアはウルフヘイムから流れる圧倒的な魔力に冷や汗が流れる。

 

(なんでアイツはあんなに戦えるの……?)

 

エミリアが戻ってきた理由はハルトを助けることもそうだが、もう一つはハルトに何故自分を助けたのか本当の理由を知りたいからだ。

そしてハルトがウルフヘイムに捕まり、痛みつけられている姿を見て懐から金と銀の鍵、オリオンの鍵を取り出した。

 

(このままじゃアイツがやられる!)

 

エミリアが鍵に魔力を込める瞬間、ハルトの言葉が聞こえてきた。

 

「あいつに笑顔になって欲しいんだッ!!!アイツがこの世界に希望なんてないって言うなら俺が希望になってやる!!絶対に死なせねえっ!!好きな女を守れなきゃ、男じゃねぇんだよ!!!」

 

それを聞いたエミリアは顔が熱くなって、両頬を両手で押さえて、恥ずかしそうにする。

 

(す…好きってどういうことよ!?あ、アイツあんな恥ずかしいこと大声で……!!)

 

エミリアは混乱する頭の中でなんとか整理をつけると、再びオリオンの鍵を構える。

 

(今はアイツ……ハルトを助ける!そ、それからさっきの話を聞けばいいわ!)

 

「開け!狩人宮の扉!オリオン!!」

 

 

ハルトを助けたのは最強の星霊の1人である狩人宮のオリオンだ。

ウルフヘイムが力を込めてオリオンを押し潰そうとするが、オリオンはビクともしない。

 

「くっ!貴様は何者じゃ!!」

 

「言ったであろう。オリオンだと!」

 

オリオンはウルフヘイムの拳を押し返し、即座にウルフヘイムの懐に入り込み、鳩尾に拳を叩き込む。

ハルトの攻撃が全く通用しなかったウルフヘイムの体にオリオンの拳が深々と突き刺さる。

 

「ぐおぅっ!?」

 

オリオンはその場で跳び上がり、ウルフヘイムの顎に回し蹴りを放ち、ウルフヘイムを吹き飛ばす。

 

「だ…誰だ?」

 

「ハルト!大丈夫!?」

 

「エミリア!?何で戻ってきたんだ!!」

 

「それは…心配だったから……」

 

エミリアが少し恥ずかしそうに言う姿に敵が目の前にいると言うのにハルトはドキドキしてしまう。

 

「フッ……若いな」

 

オリオンはそれを微笑ましい物を見るような目で見る。

 

「よそ見をするな!!」

 

「していないであろう」

 

ウルフヘイムが拳を振るうがオリオンはそれを捌いてカウンターで拳を顔に叩き込む。

殴られ、後ろに下がるウルフヘイムにオリオンは腹に掌底を叩き込み、吹き飛ばした。

 

「ふむ。こんなものか……」

 

「すげぇ……あの化け物を一方的に倒しやがった」

 

「オリオンは星霊の中でもトップクラスの実力なの。今の私じゃ本来の力の半分しか引き出せないんだけどね」

 

吹き飛ばされたウルフヘイムを見て、ハルトはオリオンの強さに戦慄する。

すると吹き飛ばされたウルフヘイムが起き上がり、オリオンを睨む。

 

「貴様ァ……よくもやってくれたなァ。ワシをここまで痛みつけた奴は久しぶりじゃ。貴様に敬意を評して本気デ戦ッテヤル……ウオオォォォォォッ!!!!」

 

ウルフヘイムから魔力が溢れ出し、周りの木や地面倒れ、捲れる。

獣のような体はより大きくなり、至る所から刃物のような突起部が生える。

ハルトとエミリアはその姿、魔力の大きさに何よりも先に恐怖を感じた。

オリオンはそんな2人を守るように彼らの前に立つ。

 

「行クゾ」

 

その瞬間ウルフヘイムの姿は消え、オリオンの頭を横から捕まえていた。

 

「!!」

 

「グオォォォォッ!!!」

 

オリオンは地面に叩きつけられ、地面にバウンドしながらも態勢を整えるが、もう目の前にウルフヘイムの拳が迫っていた。

 

「チッ!」

 

オリオンは腕で顔を防ぐが、吹き飛ばされてしまう。

吹き飛ばされたオリオンはすぐさまウルフヘイムに近づき、殴打の嵐を食らわせる。

しかし、先まで効いた拳がウルフヘイムの分厚くなった皮膚に全て防がれる。

 

「なんと……」

 

「離レロ!!」

 

ウルフヘイムはオリオンの腕を掴み投げる。

投げられたオリオンに向かってウルフヘイムは口を開き、口に光源が現れ、集まっていきオリオンに放たれる。

放たれた光線はオリオンに直撃し、大爆発を起こした。

 

「オリオンッ!」

 

「ダメだ!今行ったら巻き込まれるぞ!!」

 

エミリアがオリオンを心配するがハルトが抑える。

光線による煙が晴れると、そこには片腕から血を流すオリオンが立っていた。

 

「やるな……人間だと思って油断していたが、どうやら甘かったようであるな」

 

オリオンは傷ついた右腕をウルフヘイムに向け、人差し指を伸ばすと手から銀の光の弓が現れる。

 

「『星弓アルテミス』……愛しい人よ、我輩に力を」

 

オリオンがゆっくりとした動作で弦を引く動作をするとそこに銀の矢も現れ、ウルフヘイムに向けられ放たれる。

 

「ソンナモノ……ッ!!」

 

ウルフヘイムは最初は舐めた態度で受け止めようとしたが、目の前に矢が来た瞬間、体を後ろに逸らし、矢を避けた。

 

「なんだ今の?矢を避けた?」

 

「オリオンの武具の一つ、『星弓アルテミス』。あれに撃たれた者は苦痛を感じずに命を落とす」

 

オリオンが矢を連続で放つがウルフヘイムは矢を避けていき、木をもぎ取り受け止める。

ウルフヘイムは矢を受け止めた木をオリオン目掛けて投げる。

オリオンはそれを跳んでかわすが、ウルフヘイムは間髪いれずに次々と木を投げつける。

オリオンは体を晒したり、木を踏み台にして攻撃を避けるが、どんどん逃げ場がなくなっていく。

そしてオリオンが行こうとした先に木を落とし、追い込まれたところを狙ってウルフヘイムは光線を放つ。

 

「コレデ終ワリダ!!!」

 

ウルフヘイムから放たれた光線はオリオンに向かっていき、オリオンはそれを真っ直ぐに見つめ、弓を構え、一言呟いた。

 

「アクセル」

 

その瞬間オリオンの姿は消え、光線はオリオンが立っていたところを通過し、大爆発を起こした。

しかしそれと同時にウルフヘイムの体に数本の銀の矢が突き刺さっており、ウルフヘイムが元の小柄な爺の姿になって倒れていた。

 

「な、何が起こったんだ?オリオンの姿が消えて、気づいたらあの化け物が倒れてやがる」

 

「我輩がやったのだ」

 

「うおっ!?いつのまに!?」

 

いつのまにかオリオンはハルトたちのすぐ側に立っていた。

ハルトは痛む体を抑え、倒れたウルフヘイムに近づく。

 

「死んだのか?」

 

「いや、元々殺す気なんぞなかった。気絶するように威力を抑えたものであるしな。それにこの者も大したものである。急所に当たらないように寸前で体を晒した」

 

オリオンは感心したように言った。

すると、後ろで立っていたエミリアが突然フラつき膝から崩れ落ちた。

 

「おい!エミリア!大丈夫か!?」

 

「ふむ、ここら辺が限界か。少年後のことは頼んだぞ」

 

「えっ、ちょっ、おい!どういうことだよ!」

 

オリオンはそのまま何も言わずに星霊界に帰っていった。

 

「大丈夫……じゃないよな?どうしたんだ?」

 

「ご、ごめん……私オリオンを召喚するとほとんどの魔力をつかっちゃうの……使った後は1日2日は動けなくなるし……」

 

ハルトはエミリアを背負い、取り敢えず隠れれるところを探していると背負われていたエミリアがか細い声でハルトに話しかけてきた。

 

「ねぇ、ハルト……」

 

「どうした?」

 

「なんで……私を助けてくれたの?」

 

「なんでって…そりゃあ……」

 

「私のことが…好きだから?」

 

「なっ!?えっ!?な、なんで!!?」

 

エミリアが知らないハルトの秘密を言われ、慌てふためく。

 

「わ、私はハルトのこと……」

 

「お、俺のこと……?」

 

エミリアの次の言葉を緊張しながら待つハルト。

 

「………」

 

「エミリア?」

 

しかしいつまで経っても続きの言葉が出てこないエミリアを不思議に思い、後ろを見るとエミリアは寝てしまった。

 

「………そりゃねぇよ」

 

ハルトのガッカリした声が漏れるが、エミリアの寝顔を見て、ふと笑みがこぼれる。

 

「まっ、いっか」

 

 

ハルトが卵が置かれていた洞窟を見つけ、今日はそこに野宿することを決め、エミリアを葉っぱを集めた寝床に寝かせ、焚き火をつけながら、エミリアを見ていた。

 

「やっぱり可愛いよなぁ。思えばあれが一目惚れってやつか、まさか俺がするなんて思わなかったぜ。なあ?」

 

そう言ってハルト、隣に佇んである卵に話しかけた。

勿論返事が返ってくるわけでもないが何故かハルトは卵に向かって話しかけていた。

自分の中でエミリアに対する想いを整理したかった。

 

「一目惚れして、守ってあげたいと思った。今はそれだけ十分か」

 

そう言ってハルトが少し微笑むと、卵も少し震えた。

 

「お!お前もそう思うか!」

 

するとエミリアが身じろぎしだした。

 

「どうした?」

 

「さ…さむい……」

 

「寒いって……」

 

ハルトがエミリアの手に触れると氷のように冷たかった。

 

「冷たっ!?魔力が無くなって体力も無くなっているのか。どうすりゃ……」

 

取り敢えずハルトは卵をエミリアの横に寝かせ温めるようにした。

 

「これでどうだ?」

 

しかし、エミリアはまだ寒そうに震えている。

 

「どうすりゃあ……よし」

 

そう言ってハルトは横になっているエミリアの後ろに寝転がり、エミリアを後ろから抱きしめた。

 

「こ、これでだいぶと暖かいだろう!」

 

ハルトは少し興奮した様子で自分に言い聞かせるように言うと、心なしかエミリアの表情は安心したようなものになった。

 

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