FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第122話 変わる思い

ウルフヘイムとの戦いから翌日。

エミリアは暖かなものに包まれていることを感じながら目をゆっくりと開けると、洞窟のゴツゴツした壁が目に入った。

働かない頭で何かと考えていると、声が聞こえてきた。

 

「起きたか?」

 

「ハルト……?」

 

「前とは立場が逆になったな」

 

横になっているエミリアの横でハルトが座っており、その手元には果物とイモリやらの焼いたものが置いてあった。

 

「食べれるか?」

 

「うん……果物ぐらいだったら」

 

エミリアは手渡された果物をゆっくりと食べる。

 

「今は取り敢えず食って休んで魔力を回復させるんだ。一晩寝ても魔力がこれっぽっちも回復してないからな。……って言いたいところだけどあの化け物がいつ復活するかわかんねぇからな。飯食ったら移動すんぞ」

 

「……うん、だけど私まだ歩けないよ?」

 

「俺が背負うさ」

 

「卵はどうするの?私を背負いながら運ぶのは難しいでしょ?」

 

「それなら、ほら」

 

ハルトがエミリアの足元を指すとハルトの上着をかけてあった足からもぞもぞと動く何かがいた。

エミリアが上着をめくるとそこには白と黒の模様がある猫だった。

 

「にゃー!」

 

「ねこ?」

 

猫というよりは少し大きく、何より今エミリアの目の前で飛んでいるのだ。

 

「なんなんだろうなその生き物」

 

「わからないけど……」

 

エミリアの胸に顔を埋める猫をハルトを睨む。

エミリアは猫を抱きしめて、その暖かさを確かめる。

 

「あったかい……」

 

微笑みながらそう呟くエミリアは疲れていてもとても綺麗に見え、思わずハルトは見惚れてしまう。

 

「どうしたの?」

 

「え?いや何でもない!」

 

見惚れていたことを慌てて隠すハルトの様子にエミリアはクスッと笑った。

 

「名前どうする?その猫?」

 

「うーん……ブルゾン?」

 

「え?」

 

「に"ゃーー!!!」

 

エミリアのネーミングセンスの無さに呆気にとられるハルトと首を激しく降ってマタムネは拒否した。

 

「ま、まぁ名前はゆっくり考えようぜ。とにかく今は移動しよう」

 

「いいと思うんだけどなぁ、ブルゾン」

 

「ニャ〜……」

 

猫の疲れたような不安そうな鳴き声が響いた。

その後ハルトはエミリアを背負い、猫を頭の上に乗せて森の中を歩きながら、猫の新しい名前を考えていたがあまりいい名前が思いつかないのか、ハルトはずっと唸るばかりで、エミリアは次々と名前を思いつくがどれも奇抜というか、なんとも言えない名前ばかりで猫は否定している。

そしてもうすぐ夕暮れになるという時にハルトの目の前にあるものが見えてきた。

 

「あれは……」

 

「それじゃあねぇ……どうしたの?」

 

ハルトが見る方向にエミリアも目を向けるとエミリアは少し悲しそうな表情になる。

彼らの前に見えてきたのは荒れた小さな村だった。

捨てられて荒れた感じではなく、

「今日はここで寝よう。夜は危険だからな」

 

「…………うん」

 

エミリアは力なく答えることにハルトは少し違和感を感じたが、とりあえずは寝れる家に入りしばし休息をとった。

 

ふと目が覚めたハルトは周りを見ると暖炉の側で猫と寝ていたはずのエミリアの姿がなく、慌てるハルトだがすぐ外からエミリアの匂いがしたので外に出るとエミリアは周りの家や建物を見ていた。

 

「ここ……私が育った村なの」

 

エミリアは悲しそうな、だがどこか怒りが込められているようにも感じた。

 

「私が村を出るときは何もなかったのに、多分私を狙ってやったんだと思う………何でかな?村を壊されたはずなのに悲しいと思わないなんて……」

 

自分が虐げられて育った村に愛着なんて湧かないものだが、エミリアはそんな自分に悲しくなっていた。

ハルトはそんなエミリアに何か言えるほど、人の気持ちが分かるわけでもない。

そんな自分にできることをないかと考えた末、ハルトは少しおどおどしながらもエミリアの手をそっと握った。

エミリアも少し驚いたが、やがてハルトの手を握り返す。

 

 

家の中に入り、エミリアの話を聞いていた。

 

「私が物心ついた頃から人の悪意に晒されながら生きてきた。だからもうこんな世界どうだっていいと思ってた……だけど好意をハルトみたいに向けてくる人は初めて……」

 

エミリアはハルトを少し恥ずかしそうに見つめる。

見つめられたハルトは照れながらエミリアと話す。

 

「エリオは違うのかよ?」

 

「エリオは村の人達に頼まれたからそうしているだけだと思う……そんなに話したことないし……でもアンタは違う。純粋に私に好意を向けてくれるし……」

 

エミリアはハルトがウルフヘイムと戦った時に叫んだ『好き』の言葉を思い出し、暖炉に照らされた顔が少し赤くなる。

 

「私はハルトのことを……」

 

(えっ!?いきなりか!?まだ心の準備が!!)

 

そう言う雰囲気になったことは14歳のハルトにも分かり、突然のエミリアの告白紛いな雰囲気に慌ててしまう。

 

「良い人……!だと、思う……」

 

「い、良い人?……そっか、そうだよな……」

 

告白だと思ったハルトは少しガッカリし、肩を落とした。

 

「ハルトみたいな良い人はいるのはわかっているんだけど……やっぱりこんな世界は好きになれない……」

 

エミリアの言葉には恨みが込められているようにハルトは感じた。

生まれてから周りが敵しかいなかったエミリアの心情を、ハルトもボスコという生きていくために戦ってきたハルトには少しわかった。

しかし、ハルトには敵が多かったがその代わり仲間も多かった。

仲間や友人、家族がおらず、ずっと1人だったエミリアの闇をハルトは全部知ることはできない。

 

「それでも俺はお前に心の底から笑ってほしい……って思ってる」

 

「ハルト……」

 

気の利いたことを言えないハルトにはこんなことしか言えない。

しかし、それでもエミリアの胸に暖かいものが広がる。

 

「ありがとう」

 

微笑むエミリアを見てハルトはまた顔を赤くしてしまう。

するとそこに寝てたはずの猫が戻ってきた。

 

「どこ行ってたの?」

 

エミリアが猫を抱っこしてあげると今まで「にゃー」としか言わなかった猫が別の言葉を話したのだ。

 

「ごじゃるー!」

 

「ごじゃる?」

 

「喋った!?」

 

ハルトは完全に猫だと思っていたために喋ったことに驚くと、猫が持っていた何かを落とした。

 

「何これ?」

 

「これってシネマ魔水晶じゃないか。これ見てごじゃるとか言い出したのか」

 

ハルトが拾って見るのは侍がかっこよくポーズを決めた写真が貼られている厚紙の本の真ん中に魔水晶が取り付けられたもので、手軽に映画を観れるものだ。

 

「『忠義の侍 マサムネ』か。だいぶと古いな」

 

「マサムネ……ねえ、ハルト。この子の名前マタムネってどう?」

 

「マタムネ?」

 

「マサムネじゃ少しかっこよすぎるから、猫が好きなマタタビのマタを取って『マタムネ』なの」

 

「ごじゃるー!」

 

「いいんじゃねえか。こいつにぴったりだと思う」

 

ハルトがマタムネの頭を撫でようと手を伸ばすが猫、改めマタムネはプイッとエミリアの方を向き、エミリアの胸に頭を擦り付けた。

 

「あ……?」

 

「どうしたの?甘えたいの?」

 

「ごじゃる〜」

 

(このネコォ……なんて羨ましいことを……!)

 

ハルトは顔に出さないようにしているが心の中ではマタムネに怒りを覚えた。

 

「今日はもう寝よう?明日も早いし」

 

「そ、そうだな。じゃあマタムネは俺が預かるよ」

 

「いやでごじゃる」

 

「テメェ……」

 

結局ハルトはエミリアと一緒に寝るマタムネを羨ましながら、1人寝た。

 

 

翌日、街に向かいなが2人は会話を楽しんでいた。

どうやらエミリアはハルトに心を許したらしく、仲睦ましい。

 

「ハルトはボスコ出身なんだ。ボスコってどんなところなの?」

 

「一言で言えば……無法地帯?」

 

「そうなの?」

 

「強盗、喧嘩は日常茶飯事で生きていくには厳しかったな」

 

「中々ハードな幼少期ね……」

 

エミリアは少し引きつったような表情だった。

その時今までハルトの頭の上で寝ていたマタムネが目を覚まし、指をさした。

 

「ごじゃるー!」

 

「どうした?」

 

「ハルト、あれ」

 

背負われていたエミリアが見る先には街が見えた。

 

「ついたな」

 

「うん……」

 

2人は街に入り、人目につかないように街の中を進んで行くが人の姿が見られなかった。

 

「全然人がいないな」

 

「みんな避難してるのよ。ハルトはみんなの居場所がわかるの?」

 

「おう、カミナの魔力の匂いがするからな」

 

進んで行くとカミナたちが隠れている家にたどり着いた。

 

「あそこだな」

 

「おい!お前たち!ここで何している!!」

 

その瞬間、背後から声をかけられた。

振り向くとフィオーレ王国の兵士が2人立っていた。

 

「今は内戦中だ。外に出ていると危ないぞ」

 

声をかけた兵士がハルトたちに注意するともう1人の兵士が怪訝そうな顔をした。

 

(まずい……)

 

「なぁ、こいつらってウルフヘイム様が言ってた奴らじゃないか?」

 

「オレンジ髪と金髪の子ども2人……確かにそうだな。少し話を聞かせてもらうぞ!」

 

兵士がハルトたちに手を伸ばし、身構えるハルトたちだが次の瞬間兵士たちは膝から崩れ落ち、寝てしまった。

 

「縛道の四十一、睡勺香」

 

「カミナ!」

 

「無事にたどり着いたか、こっちだ。拠点を移した」

 

カミナの案内により町から離れた小屋に連れてこられた。

そこに入るとジェイドたちが所々怪我をしていた状態だが、全員揃っていた。

 

「エミリア!無事だったか!?」

 

「うん、ハルトが守ってくれたから」

 

エミリアが笑みを浮かべながらそう言うと詰め寄ったエリオは少し面を食らった表情になる。

 

「そ、そうか……それは良かった……」

 

エリオは少しショックを受けた様子だった。

 

「ごじゃるー!」

 

「ねえ、この猫何?」

 

「さあ?ハルト君たちに着いてきたらしいけど」

 

「ハルトこの猫は何だ?……ハルト?」

 

カミナがハルトに聞くが、ハルトはそれを無視してジェイドに近づく。

 

「ジェイド、少し話がある。一緒に来てくれ」

 

「何だ?ここで話せばいいだろう」

 

「少し込み入った話なんだ。2人で話したい」

 

小屋から出て行く2人をエミリアは少し不安そうに見つめていた。

小屋からだいぶ離れた雑木林の中で向き合う2人の間には緊張感が流れていた。

 

「単刀直入に言う。エミリアを殺す気なのか?」

 

「……何のことだ?」

 

「エミリアから聞いた。超魔獣って奴を封印するためにエミリアを殺すんだろ?」

 

表情が変わらなかったジェイドが顔をしかめ、ため息を吐いた。

 

「エミリアめ……あれほど話すなと言ったのに、隠していても無駄だと思うから話すがその通りだ。この国を救うためにエミリアを死んでもらう」

 

またいつもの冷たい表情に戻ったジェイドは淡々とそう告げ、それを聞いたハルトは激昂した。

 

「ふざけんな!!エミリアが死んでもいいって言うのかよ!!」

 

「1700万人の命と1人の命、どっちが大事かなんて比べるもないだろう」

 

「1人の命も救えない奴が国を救えるかよ!」

 

睨み合う2人だが、ジェイドはハルトに背を向けて去ろうとする。

 

「アーウェングス、お前は仕事から降りてもらう。もうギルドに戻っていいぞ」

 

秘密を知ってしまったからには今回の作戦には支障が出るためハルトには退場してもらうしかない。

本当のことを皆に知られてしまえば、カミナはあの性格のため犠牲を厭わないし、ラナ、クスコは契約があるため裏切ることがないと思うがエリオは違う。

エリオはエミリアに対して過保護が過ぎるためこのことを知られてしまえば、エミリアを連れてどこかに逃げてしまうかもしれない。

そうなってしまえば面倒なことになってしまう。

 

「俺に考えがある。この国もエミリアも助ける方法だ」

 

「……却下だ。急作りな作戦なんて失敗するだけだ」

 

「ならこのことを皆んなに言う」

 

ハルトがジェイドの横を通り過ぎようとした瞬間、翡翠の剣がハルトの首に添えられた。

 

「余計なことをするな。黙ってこの場から消えろ」

 

「だったら俺の作戦に乗れ」

 

「無理だ」

 

殺気が込められた視線に常人なら震え上がるがハルトは物ともせず、ジェイドを睨む。

そしてハルトが魔力を纏った拳でジェイドの剣を弾く。

 

「じゃあこっからはフェアリーテイルらしく力づくで俺の言うことを聞いてもらう」

 

「……馬鹿か?誰が聞くか」

 

その瞬間ハルトはジェイドの顔めがけて殴りかかった。

ジェイドは寸前に避けたが頬に拳が掠り、擦り傷ができてしまう。

 

「正気か。仮にも俺は一国の王子だぞ」

 

「一国の王子だろうが仲間を殺そうって言うなら止めてやるよ」

 

翡翠と黄金がぶつかる。




お久しぶりです。
色々と忙しく投稿できませんでしたが、今年中に最後の投稿ができました。
皆さん良いお年を
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