FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第127話 何もできなかった過去

人質を取られ、ハルトも負傷した状況の中、ジェイドは選択を迫られた。

エミリアを渡し、人質を解放するか。

エミリアを渡さず、人質を見殺しにするか。

 

「さぁ、どうする?王子」

 

ジェイドは目的の為なら非情になれる人間だ。

しかし、それでも人の子だ。

人がましてや自分を慕い、部下になってくれた者を見殺しになんてしたくない。

 

「………わかった」

 

ジェイドは俯き、苦しそうにしているエミリアに歩み寄る。

 

「ジェイド……!てめぇ……!」

 

血を流すハルトはエミリアを渡そうとするジェイドを止めようとエミリアを庇う。

 

「ハルト、聞け」

 

ジェイドはハルトにしか聞こえない声で話し始めた。

 

「君は意外と仲間思いなんだな。仲間を助けるために仲間を犠牲にするなんて」

 

レペゼは皮肉の言葉をジェイドに向ける。

ジェイドはハルトをどかし、レペゼの方を向く。

その顔には悔しそうな表情ではなく、笑みを浮かべていた。

 

「そうだろ?」

 

その笑みを不可解に思った瞬間、レペゼの背後からマタムネが高速でぶつかって来た。

 

「ごじゃるー!!」

 

「なぁっ!?」

 

魔法を向けていたレペゼに隙ができる。

 

「ハルト!」

 

「覇竜の咆哮ォッ!!」

 

ジェイドの合図でハルトは信者たちを薙ぎ払うように咆哮を放ち、部下から信者を遠ざけた。

その間にジェイドは部下を回収した。

 

「ファル!しっかりしろ!」

 

「王子……ダメです。早く逃げてっ!」

 

ジェイドが部下ファルを抱えて逃げようとするがファルはそれを拒み、ジェイドを押しのけた。

その瞬間、ファルの体が光輝き爆発した。

 

「ぐあっ!」

 

「うあっ!?」

 

「ごじゃー!?」

 

爆発に巻き込まれたハルトたちは吹き飛ばされてしまった。

 

「保険は付けておくべきだな」

 

「…エミリア……」

 

爆発のせいで目が霞むハルトはエミリアに手を伸ばすが、信者たちがエミリアを回収し、祭壇に乗せた。

 

「これより!魔神『アスラ』様の復活の儀を執り行うッッ!!」

 

レペゼは興奮したように大声を上げる。

祭壇に魔法陣を描き、ブツブツとどこの言葉かわからない呪文を唱えるとアスラの石像とエミリアが怪しく輝く。

 

「あ…アアアアァァァッ!?」

 

エミリアは悲鳴を上げ、体が痙攣している。

すると体から光が石像に伸びてゆき、吸い込まれていく。

やがて光は消え、全て石像に吸い込まれた。

エミリアは役目を終えたのか、地面に落ちていく。

 

「エミリアッ!」

 

ハルトは地面にぶつかる寸前に受け止めた。

 

「エミリア!しっかりしろ!エミリア!!」

 

「は、ハルト……」

 

「よかった!大丈夫か!?」

 

「あ、アスラが……復活しちゃう」

 

エミリアがそう言った瞬間、遺跡全体の地面が激しく揺れる。

まるでそれは何かに怒りを表しているかのようだ。

 

「今だ!従属魔法をかけるぞ!」

 

『ハッ!』

 

レペゼがそう指示すると彼らは新たな呪文を唱え始める。

今度は周りに並べてある死体から怪しいオーラが現れ、石像に吸い込まれていく。

全てのオーラが吸い込まれ、揺れがより激しくなる。

 

「魔神『アスラ』様の復活だァァァッ!!!!」

 

レペゼがそう叫んだ瞬間、光がハルトたちを包み込んだのと同時に凄まじい爆発が遺跡全体を襲った。

 

 

爆発に巻き込まれたハルトはエミリアを庇い、滅竜奥義『覇竜の剛腕・包華』で自分たちを包み込みなんとか身を守ったが、瓦礫に埋もれてしまった。

瓦礫から這い出たハルトたちは周りの惨状に唖然とする。

 

「ひでぇな……」

 

全ての遺跡は崩壊し、辛うじて建物の跡が残る程度しかない。

エミリアを瓦礫から出し、地面に座らせる。

 

「大丈夫か?」

 

「うん……少し怠いかも……」

 

エミリアは顔色が悪いが大丈夫だと言う。

その時、突如信じられないくらいの重圧感がハルトたちを襲う。

 

「な、なんだ!?これ……!?」

 

「これって……!?」

 

その圧力にハルトは膝をつき、エミリアは冷や汗を流し震える。

すると瓦礫が動き出し、その下にいたモノが現れた。

身体は赤銅色の鱗で包まれ、血のような色の筋が入っている。

その四肢は巨木を思い起こさせるように太く、爪は全てを切り裂かんとばかりに輝いている。

目は赤く輝いており、怒りで染め上がっている。

その山のように大きく、見た者に恐怖を与える化け物は超魔獣『アスラ』。

かつて世界を滅ぼさんばかりの大厄災を引き起こした化け物だ。

 

「これが……」

 

「アスラ……」

 

 

『GYAAAAaaaaaaaa!!!!!!』

 

 

その瞬間、2人の言葉に反応したかのようにアスラは雄叫びを上げた。

それは空に響き、大地を揺るがす。

 

「おお……これが怒りの神……『アスラ』!!!」

 

ハルトたちから少し離れたところでレペゼが跪き腕を広げ、その後ろで多くの信者たちが土下座をして復活したアスラを崇める。

 

「さあ!アスラ様!この間違った世界を正してくださいませ!!」

 

叫び続けるレペゼにアスラは顔を向け、しばらく見つめる。

従属魔法が効いているのか、アスラは大人しい。

そのアスラの様子を見たレペゼは魔法が成功し、自分の野望を叶えるとほくそ笑むが、次の瞬間アスラは巨体に似合う巨大な尻尾を叩きつけた。

レペゼは下敷きとなり見るも無残な死骸となった。

それを見た周りの信者たちは恐れ、慌てふためき逃げようとする。

しかし、アスラはそれを逃がさんと踏み潰していく。

信者の中には魔法で反撃する者がいるが魔法はその強靭な鱗で弾かれてしまい、アスラの餌食になった。

アスラの威圧感に呆然としていたが、信者たちが殺されていくのを見て止めようと立ち向かう。

 

「……っ、アスラを止める!」

 

ハルトが拳を構え、魔力を滾らせた瞬間にアスラの目がハルトの方を向く。

それに気づいたエミリアはハルトに叫ぶ。

 

「ダメっ!!」

 

ハルトが攻撃態勢になったのを見つけたアスラは胸を淡く光らせ徐々に口まで光を灯す。

 

『GAAAaaaaaaaa!!!!!!』

 

咆哮と共にその口から紅蓮のブレスが放たれ、ハルトたちを包み込んだ。

放たれたブレスは地面を割り、周りの建物を消し去ってしまった。

辺りはさらに荒れ、逃げようとしていた信者たちの姿はなくなっていた。

瓦礫に巻き込まれたか、それともブレスに当たり消え去ったか。

そのなかで土煙の中から金色の球体みたいな物が勢いよく飛び出して建物の壁にぶつかり、動きを止めた。

球体が崩れると中からはレペゼにやられた傷だけではなく、多くの傷から血を流すハルトが荒い呼吸をしながら倒れ、エミリアもハルトの手を繋いだ状態で倒れた。

 

「はぁ…….はぁ……くそっ」

 

ハルトは痛む体を感じながら、か細く悪態をつく。

ブレスを放たれた時咄嗟にハルトは全方向に盾を作る『覇竜の剛腕・包華』を発動し、防ごうとしたが簡単に破壊され直撃しそうになるが、エミリアが魔力を譲渡してくれたおかげ、何倍もの硬度を持つ盾を形成できた。

なんとか防いだが完全ではなく、何度も破壊され壊された瞬間に新しいのを作り防いだ。

しかし、そのせいでハルトの体には浅くない傷ができてしまった。

 

「大丈夫か……エミリア?」

 

「うん……なんとか」

 

エミリアの安否を確認し、アスラの方に目を向ける。

アスラはハルトたちの方にゆっくりと向かって来ていた。

先ほどのブレスで絶対的な力の差を感じたハルトは恐怖し、震えてしまう。

 

「くそ……歯が立たねぇ……」

 

「このままじゃ『アスラ』が完全に復活しちゃう……」

 

「完全って……あれでまだ完全じゃないのか!?」

 

エミリアの言葉にハルトは驚く。

まさに天災と言った存在が未だに全力ではないと言うのだ。

 

「完全に復活したら、誰も手をつけられない……」

 

迫り来るアスラをハルトは焦りがこもった目で睨む。

 

「どうしたらいい……」

 

「……………ねぇ、ハルト。お願いがあるの」

 

「どうした?」

 

エミリアが真剣な表情でハルトのほうを向く。

 

「アスラを止めることができないけど、もう一度封印する方法ならあるの」

 

「本当か!!なら早速……」

 

「でも完全に封印するには1人ではできない。ハルトの助けがいるの」

 

エミリアはハルトの手を握る。

 

「アスラを封印する方法は星霊魔導士の体内に取り込んでその命に封をするの」

 

「星霊魔導士たってここには………」

 

「そう私がいる。私の体にアスラを閉じ込めるの」

 

「ダメだ危険すぎる!!また超魔獣を取り込んだらどうなるか分からないんだぞ!!」

 

「星霊魔導士の特殊な魔力じゃないとダメなの」

 

「それに命に封をするって……!」

 

エミリアはハルトに金と銀の鍵、『オリオンの鍵』を渡す。

 

「これで私の胸を刺して」

 

「無理だ……俺にはできない……」

 

ハルトは首を横に振る。

せっかく想いを遂げられたのに、その想人を殺せと言われているのだハルトにできるはずがない。

しかし、エミリアが無理やり持たせる。

 

「ハルト。私ね、貴方に会うまでこんな世界どうでもいいと思ってたの。だけどね……今は貴方と出会ったこの世界を守りたいの」

 

エミリアはこれから死ににいくとは思えない笑顔でハルトを見つめる。

 

「愛してる。ハルト」

 

「待てエミリア!!!ぐっ……!」

 

エミリアはアスラに向かって走りだし、ハルトが止めようとエミリアの手を掴もうとするがダメージで体が動かずエミリアの手を掴み損ねてしまう。

 

「空に輝く全ての星よ!悪しき存在を封じるために我が身に力を貸したまえ!!」

 

エミリアがアスラの足元で呪文を唱えると周りに数多くの光球が現れれる。

自分を害するものだと判断したアスラはエミリアを踏み潰そうと足を振り下ろす。

しかし、それより早くエミリアの魔法が完成する。

 

「ダスト・トレイル!!!」

 

エミリアが叫ぶと光球はエミリアとアスラを中心に回転し、アスラを巻き込んでエミリアに集まり、アスラをエミリアの体に封じ込めた。

 

「エミリア!!」

 

「…は、ハルト……」

 

エミリアは胸を押さえて苦しそうにして、倒れてしまうがハルトが抱きとめる。

 

「エミリア!!しっかりしろ!!」

 

「はや……く。鍵を……」

 

「無理だ!!俺にはできない!!!」

 

ハルトは涙を流しながら叫ぶ。

しかしエミリアは苦しそうにしながらも穏やかな笑みを浮かべる。

 

「お願い……ハルト………うぅっ……!」

 

その途端、エミリアの心臓部分が赤黒く光りだす。

アスラが無理やり抜け出そうとしているのだ。

ハルトはエミリアが助からないことがわかってしまった。

無理やりエミリアの中から出てもエミリアの体は保たずに破壊され、封じても命を落としてしまう。

ハルトは震える手で鍵を握る。

 

「アアアァァァッ!!!」

 

ハルトは叫び、鍵をエミリアの胸に突き刺した。

 

「ありがとう……ハルト」

 

エミリアの安らかな呟きと共に鍵を締める音が響き、凄まじい光と衝撃波が辺りを襲った。

 

 

光の中心に駆けつけたカミナたちが見たのは、涙を流しながらピクリとも動かないエミリアを抱きしめるハルトだった。

事情を聞いたエリオは激昂し、ハルトを殴った。

すぐにカミナたちに止められたが、エリオはその場で泣き崩れてしまう。

エミリアはフィオーレで二度とアスラが復活しないように管理されることとなった。

こうしてアスラを巡った戦いはエミリアを犠牲にして終わった。

 

「これが、俺とエミリアの過去だ」

 

ハルトは目に悲しみを滲ませ、俯いた。

エミリアを犠牲にするしかできなかった自分が腹ただしくて仕方なかった。

 

「ハルト……」

 

ルーシィは励ましの言葉をかけてやりたかったが、そんな簡単にかけられるものではなかった。

 

 

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