FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
途方も無い実力に身震いするカミナ達にサツキは初めて攻撃に出ようと、2人に一歩踏み出す。
カミナ達はサツキが動き出したことに警戒し、武器を構える。
サツキは姿勢を低くし、前屈みになると地面が抉れる程の力で踏みつけ、一瞬で2人に近づく。
「「っ!?」」
剣を振るうサツキに2人は咄嗟に刀で防ぐが弾丸のように弾き飛ばされてしまう。
「がはっ……!」
「ぐっ……!」
立ち上がろうとするカミナとエルザにサツキは容赦なく襲い掛かる。
そこからは一方的な蹂躙だった。
いくら2人が抵抗しようともサツキの剣戟に全て破られて攻撃を受けてしまう。
剣が弾かれる音と打たれる音が延々と響く。
やがてサツキの足元にはボロ雑巾の状態になったカミナとエルザが倒れていた。
「ここまで…実力が……!」
エルザはサツキと自分の実力差が圧倒的過ぎて慄いてしまう。
(少しでも隙ができれば……活路が…)
カミナは僅かな勝ち筋を見出すが、そのためには手数が足りないことに悔しく思う。
「そろそろ終わりにしましょう」
サツキは刀を振り上げ今度こそトドメを刺そうとするが、その手を止め背後の入口に顔を向ける。
その表情は複雑そうだ。
「まさか貴方もここに来るなんて」
入口の影から現れるのは濃い緑の髪を持ち、翡翠の剣を持つ男。
「久しぶりだな、サツキ」
フィオーレ王国王子ジェイド・E・フィオーレだ。
「ジェイド王子!?何故ここに?」
「王国も今回の件は重く見て、漸く軍隊を派遣した。評議会の魔法部隊、王国の軍隊も外の信者と戦っている。俺は王国軍の指揮を命令されてな………それにいい加減俺たちの過去に決着を付けないといけない」
ジェイドは神剣フィオーラを抜き、サツキに向かって駆け出す。
2人の剣がぶつかり合い火花が散る。
サツキの剣戟がジェイドを襲うがジェイドは攻撃を防ぐ。
大きな攻撃にジェイドはカミナ達のところまで弾き飛ばされ、片膝をついて苦しそうな表情になる。
どうやら目で追えない速さでいくつか攻撃を食らってしまったらしい。
「ジェイド王子!」
苦しそうにするのを心配するエルザをジェイドは手で制する。
「チッ……これでは格好がつかないな。やはり剣では勝てないか」
「ジェイド、奴のことを知っているのか?」
カミナがジェイドに質問するとジェイドはサツキを見て目を細め、彼女のことを説明する。
「彼奴の名はサツキ・シーセン。かつては西の大陸の国で幹部の1人だったらしい。が、数年前に我が国に亡命してそれ以来大人しくしていたんだがな」
「あのギアスは?」
「隣国の最高戦力の1人をそのままにしておくことはできなかった。保険としてギアスをしたんだがあの様子では今はなかったようだな」
「………」
ジェイドの言葉にカミナは黙ってサツキを見る。
「それよりカミナ。勝算はあるんだろう?」
「………あるにはある」
「では、早速取り掛かろう」
エルザが立ち上がろうとするのをカミナは止める。
「この作戦はお前に大分と負担が掛かる。下手したら死ぬかもしれん。それでもやるのか」
カミナの質問にエルザは笑みを浮かべて自信有り気に答える。
「仲間が建てた計画だ。私はただそれを信じて突き進むだけだ」
エルザの言葉にカミナは一瞬驚いた表情になるがすぐにいつもの顔に戻り、エルザに自分の刀を渡す。
「持っていけ。無いよりはマシな筈だ」
「あぁ、ありがたく使わせて貰おう」
エルザはカミナの刀をしっかりと握り、一度振って感触を確かめる。
「作戦を伝える。………」
こうしてサツキに反撃の狼煙が上がった。
○
サツキは恐らく自分を倒すために話し合っているカミナ達に追撃することなく、一定の距離を保ち観察していた。
カミナ達が何かしてくるのでは?と警戒しているのではなく、いつでも倒せる余裕と罪悪感で手が止まってしまっていたのだ。
着物の袖から取り出した最愛の娘が折ってくれた鶴の折り紙を見つめ、こうなった経緯を思い出す。
サツキの父は西の大国アルバレスで王を守る幹部の1人だった。
父は凄まじい魔力と魔法の才能を持っており、サツキにもその魔力と才能はあった。
やがて、父と同じ幹部になり国のため王のためと日々戦いに身を投じた。
サツキはその類稀なる刀剣の才と国のためならと冷酷に敵を葬り、血濡れになる姿から『
そのことに何も思わなかった。
それどころか国に貢献し、父が誇らしく見てくれることが嬉しく思っていた。
しかし、ある時部下の影響で自身がしていることが正しいのかどうかわからなくなり、国王のやり方に疑問を持ち始めてしまった。
そしてある時、王の正体とその残虐性に気づいてしまい、逃げ出すことを決めた。
自分を変えて支えてくれた部下が愛しい恋人となり、共に逃げ出そうと計画した。
その時に男の子供を身篭ったことに気づき、より一層逃げると決心した。
恋人は国の追っ手から自分を逃がすために犠牲になり、命からがらフィオーレに亡命することができたが、フィオーレ国王は何度も攻撃を仕掛けてくるアルバレスの元幹部であるサツキに対して処遇を悩ませていた。
そこで王は『国に対して反逆行為を行う』と発動するギアスをかけ、サツキの身を自由にした。
サツキはそれからある魔導士ギルドに勤めながら、産まれた娘と慎ましく生きていた。
命を奪っていた分、サツキは危険なクエストを積極的に受け、少しでも娘に誇れる母親になろうとしたがある時悲劇が起こってしまった。
娘と家で過ごしているとアルバレスの密偵が2人を襲ったのだ。
かつてとはいえ、アルバレスで最強の1人であったサツキは難なく撃退したが、その時密偵が娘に呪いをかけてしまった。
ありとあらゆる解呪を試みたがどうやらその呪いは東洋に存在する国『倭国』の呪いで通常の解呪では効かなかった。
日に日に弱っていく娘を見て無念に押しつぶされている時にエリオから勧誘され、アスラの心臓を求め、エリオの一味に加わった。
罪悪感に押しつぶされそうになるが娘のためには形振り構うことができない。
サツキはもう一度血濡れ将軍に戻ることに決心したのだ。
○
サツキは今まで軽くあしらい相手が諦めるまで待とうと思っていたが、カミナ達は何度倒しても諦めない。
だから、徹底的に潰すと決め、刀を強く握りしめてカミナ達を見据える。
対するエルザ達もサツキと対峙する。
エルザは自身の刀とカミナの刀を両手握り、その隣にジェイドが神剣フィオーラを構えて立っている。
そしてカミナは2人の後ろで魔力を滾らせていた。
「いくぞ!!」
エルザが先頭を走り、サツキに向かっていく。
あらん力を持って二刀でサツキに斬りかかる。
サツキは半身に構えて迎撃しようとするが背後で待機していたカミナが白雷を打ってエルザを援護し、サツキの動きを封じようとする。
しかし、サツキは白雷を素手で弾き飛ばし、エルザの腹に横腹に蹴りを蹴り飛ばす。
すると背後から迫っていたジェイドが上段斬りを放つが刀で受け止め、鍔迫り合いが起こる。
「スラッシュ」
ジェイドが一言そう呟くと剣から魔力の斬撃がサツキに向かって放たれ、至近距離で受けたサツキは爆発に巻き込まれるが爆煙の中から手が伸び、ジェイドの顔を掴むとその勢いのまま地面に叩きつける。
「がはっ!?」
「ハアアアアアッ!!!」
背後からエルザが飛び掛るとサツキはジェイドをエルザに投げ飛ばしてぶつけると2人に目掛けて飛び上がると斬りつけた。
「あああぁぁぁっ!?」
「ぐああぁぁぁっ!」
一瞬で無数に打たれ、悲鳴をあげる。
「天嵐!」
カミナがサツキに竜巻が迫るがそれも刀で切り裂かれ消されてしまう。
地面に降りたサツキは今度はカミナに向かってくる。
(一瞬だけでいい…!隙さえできれば勝てる……!)
カミナはエルザ達に伝えた作戦を思い返す。
○
「奴を仕留めるには大きな攻撃が必要だ。それもとても強力な攻撃をだ」
カミナはサツキの方を見て話を続ける。
「そのための魔法は使えるが隙を作らないといけない。ジェイド、奴のギアスを最大まで高めることはできるか?」
「出来たとしても精々3秒くらいが限界だ」
「十分だ。それだけあれば奴を魔法に嵌られる」
「だが、そのためには俺がサツキに触れないといけない。この実力差で近づけるかどうか……」
「大丈夫。私がジェイド王子を導く」
エルザが覚悟を決めた目で宣言する。
カミナはエルザの目を見て、頷く。
「作戦実行だ」
○
今のカミナは魔法を発動するために魔力を溜めており、簡単な魔法しか使えない。
迫り来るサツキを見て、カミナは地面に手をつける。
「
煙が噴き出し、カミナとサツキを包み込む。
サツキは片手を振るい、風を巻き起こし煙を蹴散らすと横からエルザとジェイドが再び切り掛かってきた。
果敢にサツキに攻撃を仕掛けるが全て捌かれ、反撃される。
戦いが続けば続く程、エルザとジェイドに傷ができていく。
しかし、それでも引き剥がされないように食らいつく。
「スラッシュ!」
ジェイドが複数の斬撃を飛ばすが全てエルザに受け流されてしまう。
「ぐああぁぁっ!……くぅぅっ!!」
切り裂かれたエルザは足を踏ん張り、サツキに追撃する。
二刀の攻撃を防がれるがそれでもサツキを押し通す。
「私は負けられない!」
「私もよ」
互いにの信念がぶつかり合い、一歩も譲らない状況にジェイドがサツキに近づく。
サツキはそれに気づき、エルザを引き離そうとすると違う方向から白雷が打ち込まれ咄嗟に避けてしまう。
その一瞬の隙を突いてジェイドはサツキの肌に触れた。
「ギアス、最大出力!」
言葉と共に魔力を限界まで押し流すとサツキの背中に描かれたギアスが今までにないくらいに輝きが増す。
「あああぁぁぁっ!?」
激しい痛み悲鳴をあげるサツキにカミナは貯めに貯めた魔力を開発する。
「滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧きあがり・否定し 痺れ・瞬き 眠りを妨げる 爬行する鉄の王女絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ !」
向けた手から黒い魔力が纏わりつき、カミナも辛そうな表情になりながらもこの戦いを終わらせるために今自分が使える最大の魔法を放つ。
「『黒棺』」