FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
第26話 幽鬼の支配者
ハルト、マタムネ、ルーシィ、ナツ、ハッピー、グレイ、エルザは仕事を終え、ギルドに帰っていた。
「いやー今回の仕事は楽勝だったな!」
「あい!」
ナツは今回の仕事を思い返し、元気よく言う。
「まあ、俺がいたから楽にできたな」
「でしゃばってくんじゃねぇよ! グレイ!」
「あぁ? やんのかナツ!」
いつものようにケンカを始める二人に止めに入るエルザ。
「じゃれるな」
「「うごっ!」」
「いつも通りだね」
「お前らも飽きないな」
「ケンカするほど仲がいいでごじゃる」
それを見て呆れるハルトと、マタムネ。すると、ずっと眉間に皺を寄せていたルーシィが声を出した。
「あのー今回の仕事は私とハルトたちで行こうって決めてたのになんでナツたちがついてくるの?」
口元をひくつかせながら、若干言葉に怒りを乗せて言うとナツはあっけらかんに答える。
「だって俺らチームだろ!」
ルーシィは晴れやかに笑うナツを見て毒気を抜かれてしまい、仕方ないといった風に一息つき、笑顔を見せた。
「それもそうね」
ルーシィがそうナツに返事をするとハルトが周りをキョロキョロと見ていることに気づいた。
「ハルトどうしたの?」
「いいや……なんか見られてるなって思って……」
ルーシィも周りを見ていると確かにマグノリアの住人たちは遠巻きにハルトたちを見て、ひそひそと話している。しかし、その視線はどこか憐れみを含んでいるように感じた。
「なんだ?」
「奇妙だな……」
するとギルド周辺に人だかりができている。ハルトたちは人をかぎ分け進んで行くと目に入ったのは、いつものギルドではなく、いたるところに鉄柱が刺された無惨な姿だった。
「俺たちのギルドが!!」
「なんだよ……これ……」
「そんな……まさか……」
「誰がこんなことを……」
「ひどいでごじゃる……」
みんながギルドを見て、悔しそうに言うがハルトは何も言わずにいたことにルーシィは気づいた。
「ハルト?」
「………」
ハルトギルドに近づき、鉄柱に触れる。鉄柱に僅かに残っていた魔力を感じ取ると自分やナツによく似ていることに気づき、眉間に皺を寄せ怒りが溢れる。
「あいつらか……!」
「そう、ファントムよ……」
そこにミラが現れた。いつもの明るい笑顔はなく、悔しそうに目を伏せていた。
「悔しいけど…やられちゃったの……」
○
ハルトたちはミラに連れられ、ギルドの地下一階にある酒置き場についた。そこには他のメンバーもいており全員、悔しそうな表情をしていた。しかし、その中でいつも通り酒を飲んでいるマカロフがいた。
「よっ、おかえり」
「ただいまじーさん」
「ただいま戻りました」
「じっちゃん!酒なんか飲んでる場合じゃねぇだろ!!」
ナツがそうまくし立てるがマカロフは表情を変えず、酒を煽る。
それを見て流石のエルザも我慢の限界が来たのか、詰め寄る。
「マスター!! 今がどんな事態かわかっているんですか!!?」
「ギルドがこわされたんだぞ!!」
マカロフは一息つくと2人を宥めるように話す。
「まぁまぁ落ち着きなさいよ。そう騒ぐことでもないでしょ」
「!!」
「何ぃ!?」
マカロフの言葉に全員が驚く。
「ファントムだぁ? あんなバカタレ共にはこれが限界じゃ。誰もいないギルド襲って何が楽しいやら」
「襲われたのは夜中で、誰もいなかったの」
「不意打ちしかできんような奴らに目くじら立てることはねぇ。放っておけ」
マカロフは何もするな全員に聞こえるように言った。詰め寄ったエルザもとりあえずはマカロフの言葉に従ったがナツはそうもいかなかった。ナツはテーブルを叩き、抗議する。
「納得いかねぇよ!!俺はアイツら潰さなきゃ気がすまねえ!!」
「この話は終わりじゃ。上が直るまで仕事の受注はここでやるぞい。 ハルト、後で話がある。ここに残っといてくれ」
「仕事なんかしてる場合じゃねぇだろ!!」
マカロフはこれ以上取り合わないと話を遮る。ナツはまだ納得がいかないと詰め寄るがハルトが肩を掴み止める。
「やめろ」
「ハルト! お前は悔しくねぇのかよ!!?」
「悔しいに決まってんだろ!………だけどそれはここにいる全員がそうだ。 もちろんじーさんもな。じーさんには何か考えがあるんだろ。だから、ここは我慢するんだ。ナツ」
ナツは自分の肩に置かれている手が若干震えていることに気づき、ハルトも我慢していることがわかった。そのまま全員が悔しそうにしながら解散となった。
○
夜になりルーシィは自宅に帰っていた。しかし、その顔はくもっていた。
「なーんか大変なことになっちゃったな〜」
「プーン」
ルーシィの言葉に答えるように鳴くプルー。
「ファントムって妖精の尻尾と仲が悪いって有名だもんね。私本当はどっちに入ろうか迷ってたんだー」
「プーン?」
「だってこっちと同じくらいぶっ飛んでいるらしいし。でも、今はこっちに入ったよかったって思ってる。だって妖精の尻尾は……」
そう言いながら、家のドアノブに手を掛け、中に入ると、
「おかえり」
「おかー」
「おかえりでごじゃる」
「いい部屋だな」
「よぉ」
「おかえり、ルーシィ」
「サイコーーーー!!!?」
何故かいたハルトたちに出迎えられた。
「多過ぎるってのーー!!」
ルーシィは怒りに任せ、荷物をナツに投げつけた。
「ファントムの件でな。奴らがここに来たということは我々の住所が調べられているかもしれん」
「えっ?」
エルザはルーシィになぜ集まっているか説明する。それを聞いてゾッとしてしまう。
「だから、こうやってみんなが集まっている方が安全っていうミラの考えなんだ」
ハルトが付け足すように言う。
「そ、そうなの」
(まぁ、俺はそれだけじゃねぇんだけどな)
ハルトは心の中でそう独り言を言った。真意はわからないがハルトは別の目的があるようだ。すると少し顔をしかめたエルザが男たちのほうを向いた。
「お前も年頃の娘だしな。ナツにグレイ、ハルトだけをここに泊まらせるのは気が引けてな。だから同席してることにしたわけだ」
「別にハルトだけでもいいのに……」
「何か言ったか?」
エルザが理由を説明するがルーシィとしてはハルトと近づくいいチャンスだったのだが、そうはならず周りには聞こえない小さい声で不満言い、エルザの質問に首を横に振って誤魔化した。
「プーン」
「おぉ、プルー! なんだその食べ物!! 俺にも食わせてくれ!」
「俺はもう寝っからよぉ。起こすなよ?」
「エルザ見て〜エロい下着見つけちゃった」
「す、すごいな……こんなものをつけるのか……」
「ハルトも見てみるでごじゃる」
「こっちに向けなくていいっての」
「清々しいほど人ん家エンジヨイしてるわね」
ルーシィは諦めたようにため息を吐いた。
「それにしてもお前たち汗臭いな。風呂に入れ」
エルザはハルトたちをしかめっ面で見る。
「いいや。今日は面倒くせぇし」
「眠みーんだよ」
「ふぉれほひはれ」
ハルト、グレイ、ナツが答える。ナツは口にペロペロキャンディーをくわえて何を言っているかわからない。エルザは仕方がないと言った風に首を振り、ナツとグレイの肩を組むように手を置き、驚きの発言をした。
「仕方ないな……昔みたいに一緒に入ってやってもいいぞ? ハルト、お前もどうだ?」
「お前は羞恥心を学べ」
「「……」」
ナツとグレイは何も言えず黙るが、ハルトはエルザの天然発言に冷静に返す。そしてここにもう一人、黙っているのがいる。
(ハ、ハルトとお風呂………!)
それに気づいたマタムネとハッピーはニヤニヤしながら近づく。
「ルーシィ殿も一緒にお風呂どうでごじゃるか?」
「えっ!? ハルトと一緒なんてそんな……!」
「誰もハルトと一緒なんて言ってないよ?」
ルーシィは嵌められた怒りからか、それとも恥ずかしさから顔を真っ赤にした。
「と、とにかく! 私は後で入るから!!」
「ヘタったね」
「ごじゃるな」
○
そんな一悶着があったが女性陣は全員お風呂に入り、ルーシィは髪を拭きながらハルトたちに聞いてきた。
「ねぇ、例のファントムはなんで急に襲ってきたの?」
「さあな、今までも小さな小競り合いはあったけど、こんな直接的なのは初めてだ」
「じっちゃんもビビってねぇでガツンとやっちまえばいいんだ!」
「じーさんはビビってるわけじゃねぇだろ。一応、聖十大魔導士なんだからよ」
「ってか、何読んでんのよ!!」
ルーシィはグレイが読んでいた自分の書いた小説の原稿を取り返した。
「あっ!おい、気になるだろーが。このあとイリスはどうなんだよ」
ルーシィはグレイを無視し、ハルトのほうを向く。
「ねぇ、聖十大魔導士って?」
「魔法評議会議長が決めたこの大陸で最も優れた10人の魔導士につけられた称号だ」
「へぇーすごい!!」
ルーシィが興奮しているところにハッピーが一言付け足す。
「ファントムとマスター・ジョゼも聖十大魔導士なんだよ」
その言葉に反論するかのようにナツは大声を上げる。
「ビビってんだよ! ファントムって数だけは多いし!」
ナツは怒りに任せてテーブルを叩くが、それをグレイは冷静に返す。
「だから違ぇだろ。マスターもミラちゃんも2つのギルドが争えばどうなるかわかってるから、戦いを避けてんだろ」
「魔法界の秩序のためにな」
ハルトは神妙そうな顔をし付け加える。ルーシィはそれを見て恐る恐る聞いてみた。
「そんなに強いの? ファントムって?」
「たいしたことねーよ!あんな奴ら!」
「いや……実際争えば潰し合いは必至。戦力は均衡している」
そう言って、ファントムの戦力を挙げていく。
「マスター・マカロフと互角の魔力を持つと言われている聖十大魔導士のマスター・ジョゼ。そして向こうでのS級魔導士にあたるエレメント4。そしてハルト、ナツと同じ滅竜魔導士である黒鉄のガジル。今回のギルド強襲の主犯。鉄の滅竜魔導士」
「滅竜魔導士!!?」
ルーシィはハルトとナツ以外に滅竜魔導士がいることに驚いた。ナツはそれを面白くないのかフンっとそっぽを向いてしまう。
「ハルトとナツ以外にもいたんだ……」
「まあな、それよりもそいつらより厄介な奴がいる。マスター・ジョゼを抜いてファントム最強の男、指揮者(コンダクター)っていう二つ名を持つ奴なんだが、どんな魔法を使うかわからないんだ。ただそいつはたった1人で5つの闇ギルドを相手にして無傷で圧勝したらしい」
ハルトは真剣な顔をして言うとルーシィは慄いて喉をならす。
「な……なによそいつ……無茶苦茶じゃない……」
○
一方、今回の主犯である『幽鬼の支配者』(ファントムロード)では妖精の尻尾を襲ったことに騒いでいた。そんな中で男が1人テーブルを占領し、その上には大量の鉄が置かれており、その男はガジガジと音を立てながら食い散らかせていた。この男こそ妖精の尻尾のギルドを破壊した本人鉄の滅竜魔導士、ガジルだ。そこにファントムのメンバーが酔っ払ってガジルに話しかけてきた。
「よぉ、ガジル! 聞いたぜ〜妖精の尻尾に攻撃を仕掛けたんだって?
うはぁスゲェ!!あいつら今頃ブルーだろうなっ!! ザマぁみろってんだっ!!」
ベラベラとしゃべる男にガジルは、
「うるせぇ」
「ごっ!!!?」
自身の腕を鉄柱に変え、男の顎にぶつけた。男は顎から鈍い音をたて血を流し気絶した。しかし、周りは傷ついた男を助けるでもなく冷やかすだけだった。
「あいつバカだなぁ!」
「ガジルが飯食ってるときに話しかけんなよ〜」
ガジルは鉄を食い終わり、その男だけでなく全員に聞こえるように言う。
「妖精の尻尾が何だってんだ。強えのは俺たちだろうがよ」
「相変わらずだな」
そこにルーシィより淡い金髪をキッチリとオールバックで固めた男が近づいてくる。
「ルシェドか」
「やりすぎだ」
「はっ、飯のときに話しかけたのが悪い。俺は言ったぜ? 飯のときに話しかけんなってな」
ルシェドは倒れた男に視線を向けると、手を向け魔法陣を出した。すると傷ついたところがわずかに治った。
「治したのか?」
「いいや、自己治癒力を促しただけだ」
「お優しいことで」
ガジルは若干バカにするように言うがルシェドは無視をした。すると、幽鬼の支配者のギルドマスター、ジョゼが近づいてくる。
「火種は撒かれた。見事ですよガジル君」
「甘ぇよ、マスター。それじゃあ、あのクズ共は動かねぇよ。だからもう一つプレゼントを置いて来た」
それを聞いたジョゼは口を三日月みたいに歪める。
「それはそれは……ただし間違っても“奴”だけは殺してはいけませんよ」
「ギヒッ」
○
朝、マグノリアの南口公園は騒然としていた。中央にある大木の前に多くの人だかりができていた。
「すまん通してくれ。ギルドの者だ」
エルザを始め、多くのギルドメンバーが集まった。そしてその目に入ってきたのはあまりにも悲惨なものだった。妖精の尻尾のメンバーであるレビィ、ジェット、ドロイがボロボロの状態で大木に張り付けにされている姿だった。
「レビィちゃん……」
「ジェット!ドロイ!」
「ファントム……!」
ナツを始め、妖精の尻尾は仲間を傷つけられて怒りに震える。そこにマカロフがゆっくりと大木に歩み寄りレビィ達を見上げた。片手で顔を覆い、肩が震える。
「ボロ酒場までなら許せたんじゃがな……ガキの血を見て黙ってる親はいねぇんだよ……」
あまりの怒りにマカロフは持っていた杖を握り潰す。そして怒りに染まった声でこの場にいる妖精の尻尾に聞こえるように宣言した。
「戦争じゃ」
感想待ってまーす。