FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第34話 白い死神

時間は少し前に遡る。妖精の尻尾のギルドを攻撃していた幽兵達はその勢いをさらに強め、ギルドメンバーをほぼ全員を倒し、ギルドの破壊に移っていた。元からボロ酒場だったにも関わらず、ガジルの攻撃と、ハルトが防いだがジュピターの余波でもう倒壊寸前だった。そこに幽兵達は一つの存在になり、巨大な幽兵となってギルドに攻撃をしていた。

 

「くそっ、この野郎!!」

 

「やめろー!!」

 

他のみんなが未だに幽兵に抵抗している時にカナの叫びが響きわたる。その瞬間、巨大幽兵はトドメだ、と大きく振りかぶる。そして拳を振り下ろした瞬間、巨大幽兵は上下真っ二つに切れて倒れた。全員が呆然とするなか、戦場の中心から白い雷が全体に行き渡るように広がった。しかし、妖精の尻尾のギルドメンバーに当たらないように広がり、幽兵だけに当たり、消していく。

 

「いったい何が……」

 

カナが辺りを見渡し、何が起こったか確認すると壊れたファントムMK-Ⅱに向かって飛んで行く白い人影が見えた。

 

「あれは……」

 

「カミナだ……カミナが戻って来たぞーー!!!」

 

一人がそう叫ぶと、周りのみんなも歓声を上げる。

 

「妖精の尻尾のトップクラスの一人が戻って来た!!」

 

「形勢逆転だ!!」

 

「いけるぞ!!」

 

「押せ!押せー!!」

 

幽兵達はカミナの魔法により大多数が消えてしまい、残った幽兵達も雷の余波で弱っている。反撃が始まった。

 

 

カミナとジョゼが睨み合う。

 

「今更1人増えようと何も変わらない。お前たちの負けだ」

 

ジョゼがそう告げるが、カミナは無視し顔だけをハルトに向ける。

 

「体の調子はどうだ?」

 

「魔力は大丈夫だけど、体力がもう無いな……」

 

「そうか」

 

その態度に怒りを覚えたジョゼは叫ぶ。

 

「おい!貴様!! エルザがどうなってもいいのか!!?」

 

ジョゼはエルザを捕まえている魔法を操っている手を握る。するとエルザを縛っている魔法はさらにエルザを締め付ける。

 

「ぐうぅ……」

 

「フハハ! エルザを殺してもいいのか!さあ、早くルーシィを渡せ!」

 

ジョゼはエルザが苦しむのを得意気に笑いながらそう言うがカミナは一切表情を変えない。

 

「殺せるものなら殺してみろ」

 

「……何?」

 

「できるものならな」

 

カミナは冷静にそう告げる。

 

「そうか……そんなに言うなら殺してやろう!!」

 

そう言ってジョゼが魔力をさらに込めようとした瞬間、エルザを縛っていた魔力が霧散した。

 

「何!?」

 

ジョゼが驚くのを他所に、解放されて地面に落ちてくるエルザを大きな白い狼が背中に乗せてカミナの元にやってくる。

 

「よくやった狼(ろう)」

 

「クゥ〜ン」

 

カミナは狼の頭を撫でて褒めると、狼は嬉しそうに尻尾を振る。

 

「この人がミラさんの恋人で、妖精の尻尾の最強の1人……」

 

カミナは立ち上がり、ジョゼを見据え、腰に差してあるいくつかの巻物の一つを取り出し、上空に開く。

 

「召喚(来い)、繭姫」

 

人1人を覆うくらいの魔法陣が展開され、そこから花魁の格好をした美女が現れる。

 

「あらぁ? 私を呼ぶなんて珍しいわね。滅多に怪我なんてしないのに」

 

「治してほしいのは俺じゃなくてハルトだ。魔力はしなくていい。体力を一番に治してくれ。怪我はその後でいい」

 

カミナがそう言うと繭姫は後ろからハルトに抱き着く。

 

「ちょっ、ちょっと何してるのよ!? てか、アンタ誰よ!?」

 

「そいつは繭姫。俺の式神の一体だ」

 

「ふふっ、今はハルトさんを癒してるのよ。貴女も混ざる?」

 

「へっ!? いや私は……!」

 

「繭姫、新人を苛めるな。そいつは治癒の効果があるから、そうやっているだけだ」

 

「貴様!私を無視するな!!」

 

ジョゼはカミナ達に向かって大きな魔力の波動を放った。襲いかかる魔力の波動はカミナの寸前で止まる。カミナの前には呪文が書かれた札が空中に浮いている。

 

「東方の結界か!?」

 

「これなら暫くもつだろ」

 

「おいカミナ! 俺も治せ! 一緒に戦う!」

 

「何? グレイくんも抱きしめて欲しいの? 可愛いわね♪」

 

「ばっ!? そんなんじゃねぇ!!俺も戦うって言ってんだ!!」

 

グレイは顔を赤くして叫ぶが、カミナは冷酷に告げる。

 

「ダメだ。今のお前では邪魔になるだけだ。そこに座っていろ」

 

カミナはそう言い、前を向いた。

 

「なんだ……っ!?」

 

グレイが言い返そうとした瞬間、後ろから手が伸び、肩を掴まれた。ミラが少し悲しそうな顔をして首を横に振る。グレイを冷たく突き放すカミナの態度にルーシィは憤りを覚え、カミナに言い返そうとするが、

 

「ちょっとそんな言い方…」

 

「いいの、ルーシィ。カミナが言ってることは正しいわ。グレイやエルフマンじゃジョゼに勝てない」

 

「ミラさん……」

 

ミラの言うことを理解したのかルーシィは渋々、後ろに下がった。ミラはカミナのほうを向いて少し悲しそう微笑む。

 

「気をつけてね」

 

「ああ」

 

カミナが前を向くと、ジョゼは魔力を放ち続けるが、一向に結界が破れる予兆はない。カミナは人指し指と中指を合わせてジョゼに向ける。

 

「白雷」

 

指から凄まじい速さで白い雷が放たれ、一直線にジョゼに向かう。

 

「ぐあぁっ!」

 

「白炎」

 

今度は手のひらから白い炎が放たれる。白炎はジョゼを覆い囲み、ダメージを与えていく。

 

「くそっ!こんなもの……! 」

 

ジョゼは炎を吹き飛ばそうとするが、上手く魔法が発動しない。それを確認したカミナは今度はエルザのほうを向く。

 

「エルザ、そろそろ狼を放せ」

 

「相変わらず狼はフサフサで気持ちがいいなぁ」

 

エルザはさっきの緊張した顔とは打って変わって、気の抜けきった顔で狼の身体に頬ずりしていた。若干狼は迷惑そうなにしている。そこに何故か鼻息を荒くしたマタムネが割って入ってくる。

 

「エルザ殿!フサフサ感ならせっしゃも負けていないでごじゃる!どうかせっしゃを代わり抱きしめて欲しいでごじゃる!」

 

今のエルザの格好は鎧が壊れ、扇情的な格好をしている。そこに目を付けたエロ猫マタムネは出てきたのだ。

 

「嫌だ。狼のほうが気持ちいい」

 

「ガーン!」

 

エルザの言葉にショックを受けたマタムネはその場に崩れ落ちた。

 

「アンタは何やってんのよ……エルザもいい加減離れなさい」

 

「あぁ!ルーシィ待て!せめてあともう少し……」

 

崩れ落ちたマタムネとくっ付いて離れないエルザをルーシィが呆れて回収してくれた。ジョゼは一際大きく魔力を放ち、炎をかき消した。

 

「くそっ!忌々しい炎だ……」

 

「属性の強みがでたな」

 

「何だと?」

 

「俺の魔法は聖属性が主体の白魔法。お前のは闇属性の魔法が主体だ。相性は最悪だ」

 

「それがどうした!デッドウェイブ!!」

 

ジョゼは魔法を放つ。カミナはもう一本の巻物を広げる。

 

「召喚(来い)、断亀(たちき)」

 

魔法陣から現れたのは海亀くらいの大きさで甲羅の真ん中が青色の宝玉の亀が現れた。断亀はカミナの前に出ると宝玉を輝かせ、結界を張るとデッドウェイブを完全に防ぐ。

 

「断亀、ミラ達を守れ」

 

断亀はキュルルと鳴くとカミナの後ろに行き、ミラ達を守る。

 

「さて、やろうか」

 

「二回攻撃を防いだくらいでいい気になるなよ!小僧!!」

 

ジョゼが魔法を放とうとするよりも早くカミナはクナイを投げ、牽制する。ジョゼはそれを素手で弾くとクナイと同じタイミングで走り出した狼が迫って来ていて、腕に噛み付く。

 

「ぐっ!このクソ犬が!!」

 

ジョゼが狼を振り払うと、カミナが気づかれず後ろに移動していて切りかかって来た。

 

「ぐあぁっ!」

 

「白雷」

 

さらに至近距離からの白雷と一旦離れた狼が体を回転させ体当たりして来た。立て続けに攻撃を食らうジョゼは防御をする暇がなかった。しかし、ジョゼもやられてばかりじゃない。もう一度攻撃してこようとするカミナと狼にデッドウェイブを放ち、距離を取らせる。しかし、カミナは容赦なく攻撃する。

 

「頑風(がんふう)」

 

指を上から下へ降り下ろすとジョゼの頭上に風の塊が降ってくる。

 

「があっ!」

 

突然のことに防御ができなかったジョゼはモロに受けてしまい、少したたらを踏む。

 

「縛道の六十一、六条光牢」

 

その隙にカミナは魔法でジョゼを六つの光で動けなくした。

 

「な、なんだ!この魔法は!?」

 

「君臨者よ、血肉の仮面、万象、羽搏き、ヒトの名を冠す者よ心理と節制、罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ」

 

カミナの詠唱が続くとその手に大きな魔力が溜まっていく。

 

「破道の三十三、蒼火墜」

 

手から放たれた蒼い爆炎はジョゼを包み込んだ。

 

「す、すごい……あのジョゼが一方的に……」

 

「カミナは敵に対しては一切容赦がないの。敵を倒すまではその手を緩めない。その容赦無さと的確に相手を追い込んでいく様から、いつしか『白い死神』って呼ばれるようになったわ」

 

驚くルーシィにミラはそう付け加える。蒼い炎が燃え盛っていると突然の突風にかき消された。ジョゼは全身に火傷を負っており、確実にダメージが入っている。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、くそっ!こんなガキに……!」

 

「そういえばここにくる途中目障りな連中がいたんだ。邪魔だったから全員倒してきた」

 

カミナがそう言うと外套から大量の布が出てきた。その布には幽鬼の支配者のマークがある。それを見たジョゼはワナワナと震える。

 

「まさか……貴様……幽鬼の支配者の支部をすべて破壊してきたと言うのか!?」

 

「全てじゃない。半分はミストガンがやってくれた。これでお前の隠れ家も無くなったわけだ」

 

ジョゼはその瞬間自分の何かが切れた感じがした。

 

「貴様アァァァァッ!!!!」

 

ジョゼから凄まじい魔力が放出され、カミナに迫る。ジョゼは魔力が篭った手を振り回して攻撃してくる。キレてしまったジョゼの攻撃は力任せに振るうばかりで、カミナには全く当たらない。カミナは避けながら手で印をきる。

 

「怒りで周りが見えなくなって単調になってきたな。だからこうやって……」

 

カミナが少し刀をジョゼの首元に添えるだけで当たりそうになる。

 

「危険な目にあう」

 

「ぐっ!?」

 

辛うじてかわすが首から僅かに血が流れる。

 

「ガアァァァァッ!!!」

 

ジョゼが腕を振り下ろすと衝撃波が放たれ、カミナは飛び退き、顔の前で印をきる。その瞬間ジョゼの足元に白い光線の五芒星が描かれる。

 

「白芒星・天衝」

 

五芒星から上空に向かって白い光が溢れ出る。

 

「アアァァァァッ!!?」

 

白い光はジョゼは苦しめている。

 

「縛道の六十三、鎖状鎖縛」

 

太い光の鎖がジョゼに巻きつき、身動きを取れなくする。すかさずカミナは刀の根元に二本の指を置き、切っ先までなぞる。するとなぞった所から白い光を放つ。一旦鞘に収め、中腰になり居合の構えを取る。そして苦しむジョゼを見据える。

 

「白絶斬」

 

神速で放たれた居合は光の軌跡を残し、ジョゼを切り裂いた。白芒星と鎖が無くなり、ジョゼは声も出さずに倒れた。

 

「た、倒したの?」

 

「やったでごじゃる!」

 

ルーシィたちが喜ぶ中、カミナ、ハルト、エルザは倒れたジョゼを睨む。そして小さくハルトが呟いた。

 

「いや、まだだ」

 

その言葉の瞬間、ジョゼの腕がピクリと動き、ゆっくりと立ち上がろうとする。それにみんなが驚く中、カミナは即座に刀に魔力を込めてジョゼに斬りかかる。しかし、その寸前で魔力の壁が出現し、それを防ぐ。カミナは無理だとわかり、飛び退いた。

 

「いや、流石は白い死神。的確に私の弱い所を突いてくる。私の弱点はこの怒りぽっい所ですね。反省しなければ」

 

そう言いながらカミナに拍手を送るジョゼの表情は笑みを浮かべ、不気味なものだ。

 

「しかし、怒ったせいか一周回って冷静になりましたよ。貴方を倒すには勢いだけではダメなようだ」

 

そう言って顔をうつむかせてから、もう一度顔を上げる。

 

「今度はこちらも一切の容赦無く、貴方を殺しましょう」

 

その顔は一切の油断が無くなった。本気の表情だとわかった。

 

 

さっきまで優勢だったのが嘘だったかのように、カミナは追い込まれていった。魔法を放とうとするもそれよりも早くジョゼが魔法を放ち、罠を仕掛けよう共それを看破する。次第にカミナの額には汗が浮かぶ。

 

「どうしました? さっきまでの速さはどこに行きましたか?」

 

「……」

 

「貴方の魔法が速いのは放つ魔法とは別にもう一つ使っていますね。魔法の工程を無くす魔法……と言ったところでしょうか。道理で私の魔法の速さが追いつかないわけだ」

 

ジョゼが言っていることは正しい。カミナの最大の特徴は魔法の速さとその魔法を放つまでの時間の速さだ。カミナは自身で編み出した魔法の工程を無くす魔法を放つ魔法にかける。しかし、過程を無くす魔法は多くの魔力を消耗するので持久戦には向かない。カミナはいつも短期決戦で片付けてきたが、ジョゼはそれを見破り、持久戦に持ち込んだ。魔力の量は支部を潰してきて、さらには全速力で戻ってきたカミナに比べてジョゼのほうが断然多い。それを利用してジョゼは常に障壁を張り続け、隙が生まれないようにしている。次第にカミナの魔法のスピードは遅くなり、不利になってきてしまったのだ。

 

「しかし、私も貴方程の速さとはいかないが、それに似たスピードは出せますよ」

 

そう言ったジョゼは手を向けると一瞬で魔力弾がカミナの顔面近くまで来た。

 

「!? チィッ!!」

 

驚いたカミナは即座に刀で斬りふせる。

 

「まぁ、こんな弱い弾しか放てませんが、経験の差ってやつですよ」

 

「チッ……」

 

(さっきは怒りで付け入る隙間があったが今は冷静だ。隙がない……)

 

「それでは幕引きといきましょうか」

 

ジョゼは両腕を左右に開き、魔力を貯める。禍々しい魔力がどんどん溜まっていく。

 

「白雷!」

 

カミナは魔法を放つがジョゼの障壁に防がれる。

 

「確かに相性はいいみたいだが、魔力が弱いぞ! さっきのでほぼ使いきったようだな!!」

 

カミナは苦虫を潰したような顔をする。貯め終わった魔力を一つにし、ジョゼはカミナに向ける。

 

「デッドリーコロナァッ!!!」

 

放たれた巨弾は地面を穿ちながら迫ってくる。

 

「縛道の八十一! 断空!」

 

カミナは地面に手をつきそう言うと地面から大きな障壁が現れた。ぶつかり合う二つの魔法は火花を散らせて、拮抗する。

 

「ぐうぅぅ……」

 

「カミナ!!」

 

苦しそうに耐えるカミナにミラの叫び声が聞こえた。顔を上げた瞬間、目の前にジョゼの手が広がっていた。

 

「終わりだ」

 

ジョゼの手から魔法が放たれた。

 

 

ジョゼの魔力弾が強く辺り一面が煙に包まれる。

 

「イヤァァァァッ!!!」

 

ミラの悲痛な叫びが広がり、ミラは断亀の結界から出ようとするのをグレイとエルフマンが止まる。

 

「止まれ!」

 

「止めろって、姉ちゃん!!」

 

「離して!カミナが……カミナが……!!」

 

涙を流して悲しみに震えるミラ。ルーシィはそれを口を押さえ震えながら見ていた。

 

「そ……そんな……最強の一人のカミナさんまで……」

 

ジョゼは煙の中を見ると感心した声を出す。

 

「ほう……」

 

煙が少し晴れるとそこには少し火傷した手で粉々に折れた刀を持ったカミナがいた。

 

「刀を犠牲にして逃れたか。あの状況でよく動けたな」

 

ジョゼはそう言うが明らかに馬鹿にしている口調だ。カミナは即座に手を向ける。

 

「白炎!」

 

白い炎が放たれるがジョゼの障壁が僅かにヒビがはいるだけだ。

 

「だから言っただろう。相性はいいが威力が弱いと」

 

「そうだな。確かに弱い……だったら強いやつに代わって貰えばいい」

 

「何……?」

 

その瞬間、障壁は粉々に砕け、ジョゼの顔に拳が突き刺さる。

 

「グハァッ!!!」

 

ジョゼは壁際まで殴り飛ばされた。

 

「おいおい……結構やられてるじゃねえか」

 

「はっ、馬鹿を言うな。油断させているだけだ」

 

「じゃあ、その手はなんだよ?」

 

「ちょっと火傷しただけだ。これから反撃する」

 

「ふーん? じゃあ、お手並み拝見だな。まっ、俺が先に倒すけどな」

 

「やってみろ……俺が先に倒す」

 

覇王と死神が並び立った。

 

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