FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第78話 友のために友を討て!!

ラクサスと雷人衆が消えた直後、グレイとエルフマンが動き出した。

 

「ラクサスの野郎!!ふざけやがって!!!」

 

「姉ちゃんを元に戻しやがれ!!」

 

2人は入り口に向かうが全員が動かないのが目に入った。

 

「何したんだよお前ら!さっさとラクサスの野郎を探しに行くぞ!!」

 

グレイがそう言うがほとんどの者が何かを怖がっているようだった。

 

「だけどよ……ラクサスのやつ相当強くなってぜ。ハルトとマスターより強くなってたじゃねえか……正直言って勝てる気しねぇぜ」

 

メンバーの1人がそう零した。

全員の足を止めているのはハルトとマカロフにパワーで勝ってしまったラクサスに対する恐怖だ。

 

「そんなのやってみなきゃ分かんねぇだろうが!!」

 

「………」

 

グレイがそう焚きつけるがメンバーは動かない。

そこにある男が口を開いた。

 

「何やってんだお前ら……行くぞ」

 

ハルトだ。

ハルトは出口に向かって歩いて行く。

 

「は、ハルト……」

 

「さっきパワー負けしたのにラクサスと戦うのかよ」

 

「何言ってんだお前ら?俺がいつ本気だって言った?」

 

その言葉にメンバーはハッとする。

確かにはるとは一度も本気を出したとは言っていない。

 

「次は本気でやる。絶対に負けねぇ」

 

その言葉にメンバーは闘争心を燃やす。

 

「おぉしっ!!こんなところでグズグズしてられるか!!俺は行くぜ!!」

 

「俺も!!」

 

「私も!!」

 

「ハルトがいるんだ!ラクサスに負けるはずがねぇ!!」

 

「俺もだ!!ビスカを助けるために……!!」

 

メンバー全員が勇気付き、ラクサスに対する恐怖心を克服していく。

 

「よし!行くぞ!!」

 

ハルトを中心に出口に向かって行くメンバーたち、それを見ていたグレイとエルフマンは感心した。

 

「へっ、一瞬で全員の恐怖心をなくしやがった」

 

「ああ、さすがフェアリーテイルの覇王だ!」

 

グレイとエルフマンもハルトに続いて出口に向かう。

ここからが妖精たちの本番だ。

 

ゴチーン!!!

 

「イテッ!!!」

 

しかしハルトは見えない何かに顔をぶつけて止まってしまった。

ハルトは顔を抑えてその見えない壁に手を触れ、呆然としてしまう。

 

「え……?」

 

『え……?』

 

 

ラクサスがいるのはマグノリアの象徴とも言うべきカルディア大聖堂。

その中でフリードに右手を治療してもらっていた。

 

「流石にマスターの一撃はこたえたか?」

 

「はっ!あんなジジイの一撃なんかどうってことねぇよ」

 

フリードは火傷を負っているラクサスの右手に薬を塗り、包帯を巻いていく。

その右手はひどく焼けただれていた。

 

「これはハルトのやつだ」

 

「ハルトだと?だが今は牙をもがれたと言っていたではないか?」

 

フリードがそう言うとラクサスは楽しそうに笑みを浮かべる。

 

「ああ、まぁな。だがあん時は昔のハルトの時の一撃だった。途中で力緩めやがったがな」

 

ラクサスはステージの上で拳をぶつけた時を思い出す。

 

「昔の……アイツが本当の『覇王』だった時の一撃だ。やっぱりアイツを元に戻すなら怒りだ」

 

「そうか……」

 

フリードは包帯を巻き終わり、カルディア大聖堂を出る。

 

「ラクサス。俺はどんな時でもお前の味方だ」

 

「ふん……さっさと配置につけ」

 

ラクサスは不敵に笑ってそう返した。

この時フリードはラクサスを嬉しそうにしたハルトに少し嫉妬したのは誰も知らない話だ。

 

 

戻ってギルドではハルトがギルドから出れないとわかり、仕切り直してラクサスを探しに行こうとしていた。

 

「ハルトたちが動けねぇなら俺たちでやるしかねぇ!!行くぞ!!!」

 

『オォーーッ!!!』

 

グレイの合図とともに一斉にメンバーはギルドから出ていき、ラクサスを探しに行った。

 

「ねぇねぇハルト今どんな気持ちでごじゃる?」

 

「………」

 

マタムネはハルトにニヤニヤしながら話しかけ、ハルトはどこか我慢しているようだ。

 

「『次は本気でやる。絶対に負けねぇ』………プーッ!恥ずかしいー!!」

 

マタムネはハルトの真似をしてからかうと我慢の限界がきたハルトはマタムネを掴み、投げた。

 

「ああぁぁぁあっ!!!」

 

「にぎゃーーーー!!!!?」

 

壁にめり込んだマタムネは動かなくなった。

肩で息をしているハルトにハッピーが話しかける。

 

「でもなんでハルトが出られないんだろうね?」

 

「わかんねぇ……」

 

ハルトとハッピーは入り口に目を向けるそこには空中に紫の文字が広がっており、『ルール:80歳を超える者と石像の出入りはできない』と書かれてあった。

これは雷神衆の1人、フリードが得意とする魔法術式で書いた条件が必ず起こる魔法なのだ。

その条件の多さ、範囲は熟練度によるがフリードはその中でもトップクラスなのだ。

 

「ラクサスはマスターと戦う気がなかったのか?」

 

「それもわかんねぇな。だけどなんで俺が出られないんだよ?」

 

「は、ハルトは本当はおじいちゃんでごじゃるか……?」

 

「んなわけねぇ」

 

「マタムネー!!」

 

マタムネがヨロヨロと戻って来て苦し紛れの言葉を出し、慌ててハッピーが駆け寄った。

 

「それでは頼んだぞ」

 

「ウィ……ま、任せて」

 

マカロフはリーダスに街はずれの森に住んでいるポーリュシカに石化を解く薬を貰ってくるよう頼んだ。

ハルトは立っていても仕方なくマカロフの隣に座る。

マカロフはラクサスの打ち合った拳を見ており、その拳は雷で火傷を負っている。

 

「………ラクサスのやつ、とんでもなく強くなっておった」

 

「だな。まさかパワー負けするとは思ってなかったぜ」

 

「……他の者の前では本気ではなかったと言っておったが、あれは嘘じゃろう?」

 

「…………ああ、嘘だよ。本気で殴った、が負けちまった」

 

「孫の成長喜びたいがこんなことになるとはのう……」

 

「何がアイツをそこまで突き動かすんだ?じーさんは知らないのか?」

 

「…………」

 

ハルトの問いかけにマカロフは黙ったままだが、ハルトはマカロフは知ってはいるが黙っているのがわかった。

 

「まっ、今はラクサスを止めるのが先だ。なんとかしてここから出ねえと……カミナがいたら楽だったのに」

 

「なぜお主は出れんのじゃ?はっきり言って今のラクサスに勝てるのはこの街にワシかお主しかおらんぞ!」

 

「俺だって知りてぇよ」

 

するとステージ上で爆炎が上がる。

 

「ぬああぁぁぁっ!!!!イッテエェェェェッ!!!!」

 

「「ナツ!!?」」

 

驚く2人にナツは今の状況がわからなかった。

 

「あれ?なんで誰も居ねえんだ?つーかラクサスはどこ行ったんだよ!!」

 

「(ナツが本気を出せば、もしくは……)ナツ!ラクサスはこの街のどこかにいる!!見つけ出して倒してこんかい!!!!」

 

「よっしゃあああぁぁぁぁっ!!!!」

 

ナツは勢いよく出口を抜けようとすると、

 

ゴチーン!!

 

「イテーー!!!?」

 

「「「「えーー!?」」」」

 

ナツもフリードの術式に阻まれ、ギルドから出ることができない。

 

「なんだこれ?」

 

「ナツ!なんでお前も出られねぇんだよ!!」

 

「ナツもおじいちゃんだったの!?」

 

ナツが不思議そうに術式の壁に触れているとその壁に文字が浮き出た。

 

「バトルオブフェアリーテイル途中経過速報?」

 

マカロフが不思議そうに現れた文字を読むと次に信じられない言葉が出た。

 

[ジェットVSドロイVSアルザック]

 

「な、なんじゃこれは!?」

 

「なんでこいつら戦ってんだよ?」

 

[勝者アルザック]

 

[ジェットとドロイ戦闘不能]

 

[妖精の尻尾:86人]

 

バトルオブフェアリーテイルは仲間同士で戦う潰し合いでもあったのだ。

 

[マックスVSウォーレン]

[勝者:ウォーレン]

 

[クロフVSニギー]

[相打ちにより両者戦闘不能]

 

[ワンVSジョイ]

[勝者:ワン]

 

[ワカバVSマカオ]

[戦闘開始]

 

「よせ!!やめんかガキども!!!」

 

次々と表示される仲間同士の戦闘にマカロフは叫ぶが、それは届くことはない。

 

「みんなフリードの術式に嵌ってるんだ。……それでみんな強制的に戦って……」

 

「これがラクサス殿が言っていたバトルオブフェアリーテイルでごじゃるか」

 

「くぅ〜〜っ!!!俺も混ざりてぇっ!!!なんだよこの見えない壁はァ!!!」

 

ナツは次々と戦うみんなを見て、より闘争心を燃やすがフリードの術式に阻まれて動けない。

 

「お前が参加してどーすんだよ?」

 

「最強決定トーナメントだろっ!!!これ!?」

 

ハルトが呆れて言うと興奮したように話す。

するとあることに気づいた。

 

「なんでハルトここにいんだよ?」

 

「お前と同じでここから出られねぇんだよ」

 

「マジか!!じゃあここで俺と戦おうぜ!!」

 

「なんでだよ!?」

 

「だから最強決定トーナメントだって言ったろ!!」

 

興奮してハルトに対して構えを取るナツにマカロフがチョップを落とす。

 

「どこがトーナメントじゃ。仲間同士で潰し合うなど……」

 

「ただのケンカだろ?いつものことじゃねーか」

 

「これのどこがいつも通りじゃ。仲間の命がかかっておる!!皆必死じゃ!!正常な判断ができておらん!!!」

 

マカロフの言葉にナツは黙って聞く。

 

「このままでは石にされた者たちが砂になってしまい、二度と元には戻らん……」

 

「いくらラクサスでもそんな事はしねーよ。ムカツク奴だけど、同じギルドの仲間だ。ハッタリに決まってんだろ?」

 

ナツは笑ってマカロフにそう返す。

それにハルトもつられてわらう。

 

「そうだな。アイツもそこまでしねーか」

 

「だろ?だから戦おうぜ!ハルト!!」

 

「なんでだよ」

 

「じゃあ何でラクサスに思いっきり殴りかかったでごじゃるか?」

 

「いやそれは、その……ラクサスがルーシィにもたれかかったから……」

 

「「でぇきぃてぇるぅ」」

 

ハルトの顔が赤くなり、ハッピーとマタムネがからかう。

 

(お前たちはあのラクサスを仲間だと言うのか? そこまではやらない…と信じられるのか…?ワシは……)

 

マカロフの心中で困惑しているとまた経過速報が出される。

 

[残り時間2:18]

 

「残り人数:43人]

 

(43人!?仲間同士の潰し合いで、もう半数がやられたのか!!?)

 

 

一方マカロフに石化を解く薬をポーリュシカからもらってくるように頼まれたリーダスは街の端っこを走っていた。

 

「東の森、東の森、ポーリュシカさんの家。街を抜けて……」

 

そして街を出ようとした瞬間、リーダスの顔に見えない壁がぶつかる。

 

「こ、これはもしかして術式の……!?まさか街全体に術式を張っているのか!?」

 

「街を出ることは許されない」

 

突然声が響き、空から文字が流れるように落ちてきて集まる。

集まった文字は形を作り、フリードが現れた。

 

「俺の掟に背くことはできん。ラクサスが言ったはずだ」

 

「ふ、フリード!!」

 

「バトルフィールドは街全体。魔導士なら戦え。力を見せろ」

 

「くう……」

 

リーダスは絵筆とキャンパスを持ち、フリードと対峙する。

 

「それが掟だ」

 

 

どうにかギルドから出れないかハルトたちが考えているとまた経過速報が出された。

 

[フリードVSリーダス]

[勝者フリード]

 

[エバーグリーンVSエルフマン]

[勝者エバーグリーン]

 

[妖精の尻尾:残り41人]

 

 

「リーダス殿がやられたでごじゃる!」

 

「エルフマンもやられちゃった!」

 

「ラクサスめ……外との連絡を断つ気か」

 

マカロフは悔しそうにすると、ナツも悔しそうだ。

 

「くっそー、みんな戦ってんなぁ。グレイもビッグスローと戦ってるし……」

 

「お前はそっちかよ。てかリーダスがやられたのはまずいな。アイツに石化を解く薬を頼んでたのに」

 

「治すことねえよ。どうせハッタリだ」

 

「ハッタリだと思ってんのか?ナツ」

 

ナツの言葉に答える声のほうを向くとラクサスが不敵な笑みを浮かべて立っていた。

 

「ラクサス!!」

 

「思念体でごじゃる!」

 

「つーかなんでお前らがここにいんだよ。ハルト、ナツ」

 

「知らねーよ!!なんでかここから出られねえんだ!!」

 

「ラクサス……貴様……」

 

マカロフがラクサスを睨むが、ラクサスは好戦的な笑みを浮かべたままだ。

 

「仲間……いやアンタはガキって言ってたな。ガキ同士の潰し合いは見るに耐えられないだろ?あ〜ぁ、ハルトにナツ、エルザがが参加できねえなら雷神衆に勝てる兵なんか残ってんのかよ?」

 

「まだグレイがいるよ!!」

 

ラクサスが挑発するような言い方でそう言うと、ハッピーがすぐさまそう返す。

しかしラクサスの表情は崩れない。

 

「グレイだぁ?アイツに何が出来んだよ?」

 

「グレイ殿はナツ殿と同じくらいの強さでごじゃる!簡単には負けないでごじゃる!!」

 

「おい!俺はグレイより強いぞ!!」

 

「へーそりゃ楽しみだ」

 

しかし結果は、

 

[ビックスローVSグレイ]

[勝者ビックスロー]

 

「ハハッ!ダメじゃねえか!!」

 

「そんな!?」

 

「なにか卑怯な手を使ったに違いないでごじゃる!!」

 

グレイとビックスローの戦いはグレイが優勢だったがビックスローがグレイをフリードの術式に誘い込み、一方的に倒されてしまった。

 

「で、あとは誰が残ってるんだ?」

 

「ガジル殿が残っているでごじゃる!!」

 

「残念〜!アイツは奴は参加してねーみてーだぜ。元々ギルドに対して何とも思ってねえ奴だしな」

 

そんな言い合いを見ていたマカロフは目を伏せ、静かに口を開いた。

 

「もうよい……ワシの負けじゃ。もうやめてくれラクサス」

 

「じーさん!!」

 

マカロフがラクサスに降参すると言うがラクサスはさらに笑みを深めた。

 

「ダメだなァ……天下の妖精の尻尾のマスターともあろう者が、こんな事で負けを認めちゃあ。どうしてもリザインしたければ、妖精の尻尾のマスターの座をオレに渡してからにしてもらおう」

 

「何っ!?」

 

「はなっからそれが狙いか……」

 

ラクサスの言葉にマカロフは驚く。

 

「女の石像が崩れるまであと1時間半。リタイアしたければ、ギルドの拡声器を使って街中に聞こえるように宣言しろ。妖精の尻尾のマスターの座をラクサスに譲るとな。よーく考えろよ。自分の地位が大事か、仲間の命が大事か」

 

ラクサスがそう言い残し、消えようとしたがハルトが待ったをかけた。

 

「待て、ラクサス」

 

「なんだよハルト」

 

「俺とは戦わなくていいのか?」

 

ハルトはラクサスの目論見が自分と戦うことも入っていると考え、そう言うとラクサスはハルトを睨みながら低い声で答えた。

 

「お前とは必ず決着をつける。ここから出られないなら俺がマスターになった後でな」

 

そう言ってラクサスの思念体は消えていった。

 


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