FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
バトル・オブ・フェアリーテイルが終了してから翌日……昨日と同じく、お祭り騒ぎで賑わっているマグノリアの街。
その街のとあるオープンカフェでは、数人の男性たちが話し合っていた。
「ファンタジア大パレードは明日に延期だってよ」
「何があったんだ?」
「昨日はギルドの奴等が騒がしかったからな」
「噂じゃ、マスターの容態がよくねえらしいぞ」
「次のマスターはどうすんだよ?」
「そこまではわからねえけど、普通に考えればラクサスじゃねーか?」
「あの暴れん坊がマスターねえ」
「なんか感慨深いものがあるな。あいつがガキだった頃から知ってるもんな」
「うちらも歳をとったって事だ。はははっ!」
そんな男達の談笑を聞きながら、近くを通ったポーリュシカは街の中へと消えていったのであった。
○
一方その頃妖精の尻尾のギルドでは、
「ポーリュシカさんのおかげで一命は取り留めたようだ。安心してくれ。マスターは無事だ」
エルザのその言葉にギルドメンバー全員が安心した。
「よかったぁ、一時はどうなるかと思ったケド」
「あのじーさんがそう簡単にくたばる訳ねーんだ」
ルーシィとグレイがそう会話するがエルザが注意する。
「しかし、マスターもお歳だ。これ以上心労を重ねればまたお体を悪くする。皆もその事を忘れるな」
「エルザ殿が言うことじゃないでごじゃる」
「何か言ったか?」
「いや別に」
エルザが皆にそう注意するが問題の種の一つであるエルザが言うのか、とマタムネは思った。
「だけどこんな状態でファンタジアできるのかしら?ケガ人だらけだし」
「じーさんがやるって言ったんだ。やるしかねえだろ」
「それにこんな状況だからやるべきでごじゃる」
ルーシィが少し不安そうに言うが、どうやら周りはケガなど気にせず、全然やる気のようだった。
「ジュビアもファンタジア観るの楽しみです!」
「アンタは参加する側だよ」
「ええっ!」
ジュビアが参加することに驚き、恥ずかしそうにする。
「だってジュビア、入ったばかりだし」
「ケガ人多いからね。まとも動ける人は全員参加だって」
「プーン」
「じゃああたしも!?」
「当然だろ?それにあんなのがどうやって参加すんだよ」
「!!」
グレイが指を向ける方向には全身を包帯でグルグル巻きにされたナツとガジルが並んで座っていた。
「そうね」
「ふぁがふんごが! あげがあんぐぐ!」
「何言ってるかわかんないでごじゃる」
何か反論しているナツだが、口まで包帯で覆われているため言っていることがまったく伝わらない。
「無理だね、参加できるわけねーだろクズが」
「おがえガベおごおご…」
「それは関係ねーだろ」
なぜかガジルだけには伝わっていた。
「なんでガジルがわかるのかしら?」
「バカだからです」
「アンタ酷いわね」
何気に酷いことをハッピーは呟き、ルーシィは引きつった笑みを浮かべた。
「でもまぁこれで……ギルド内のごたごたも、一旦片付いたわけだ」
そう言うエルザの視線の先には、昨日の事などなかったかのように仲良く大騒ぎをしているギルドメンバーの姿があった。
しかしそこにある男が現れることで一気に緊張の空気が流れる。
「ラクサス!!?」
「お前……!!!」
ラクサスが皆と同じで包帯で体のいたるところを巻いた状態でギルドに現れた。
「ジジイは?」
「テメェ……どのツラ下げてマスターに会いに来やがった!!!」
「そーだそーだ!!」
周りは敵意をむき出しにマカロフに会おうとするラクサスを非難する。
「よさないか」
「!!!」
しかしエルザがそれを止め、皆も非難するのをやめた。
エルザはまっすぐラクサスを見て、マカロフがいる場所を教えた。
「奥の医務室だ」
「オイ!エルザ!!」
ラクサスは何も言わず、エルザの横を通り過ぎ、マカロフのいる場所に向かう途中でナツが割って入る。
「んぐあーっ!!ふぁぐあぐー!!!」
「ナツ」
「%$%#&$%#$%#!!!!」
ラクサスを指差しながら、訳の分からない言葉を言い放った。
それを聞いていたギルドメンバーたちは全員ポカーンとしている。
「二対一でこんなんじゃ話にならねえ、次こそはぜってー負けねえ。いつかもう一度勝負しろラクサス!!だとよ」
ルーシィの横にガジルが立ち、ナツが言っていることを通訳した。
「次こそは負けない……って勝ったんでしょ?一応」
「オレもアレを勝ちとは言いたくねぇ……アーウェングスとの戦いでの雷野郎のダメージが無けりゃ負けていた。アイツはバケモンだ。ファントム戦に参加してたらと思うと ゾッとするぜ……」
ガジルが冷や汗を流しながらそう呟く。
それ程までにラクサスの実力はエルザ、ミストガン、ハルトを超えて高かった。
ラクサスは何も言わずにナツの横を通り過ぎた。
「ふぁぐぁぐ!!」
無視されたナツは怒るが、ラクサスは片手を上げて返事をした。
今までろくに返事もしてくれなかったラクサスが答えてくれて、ナツは嬉しくなる。
「さあみんな、ファンタジアの準備をするぞ」
「オイ!!ホントにいいのかよ!!ラクサスを行かせちまって」
「大丈夫よ。きっと」
「ナツ….お前ラクサスよりひでー怪我ってどういうことだよ」
「んがごがー!!!」
「こんなのなんともねーよ、だとよ」
「ナツー血!!血が出てるよ!!」
「そういえばハルトはどこにいるの?」
「覇王モードの副作用で寝込んでるでごじゃる」
そんないつも通りの喧騒が……ギルドから響いていた。
○
医務室の扉から皆が楽しそうに騒ぐ音が聞こえてくる。
ラクサスは医務室の壁にもたれかかりながらそれを聞いていた。
「騒がしい奴らだ」
「………」
ラクサスとマカロフの間に無言の時間が流れ、マカロフがゆっくりと起き上がり、ラクサスに話しかける。
「お前は…自分が何をしたかわかっているのか」
マカロフはラクサスにそう問い掛けるが、ラクサスは顔を背ける。
「ワシの目を見ろ」
そう言われ、真っ直ぐとマカロフの目を見るラクサス。
マカロフの目は妖精の尻尾のマスターとしての責任を持つ者の目でラクサスを真っ直ぐに見る。
「ギルドと言うのはな、仲間の集まる場所であり、仕事の仲介所であり、身寄りのねえガキにとっては家でもある。お前のものではない。ギルドは一人一人の信頼と儀によって形となり、そしてそれはいかなるものより強固で堅固な絆となってきた」
マカロフのマスターとしての言葉を、ラクサスは黙って聞いている。
「お前は儀に反し、仲間の命を脅かした。これは決して許される事ではない」
「わかってる」
以前なら反発していたマカロフの言葉もラクサスは素直に聞き入れる。
「オレは…このギルドをもっと強く…しようと……」
拳を握り締めながらそう言うラクサスを見て、マカロフは小さく溜息を漏らす。
「まったく…不器用な奴じゃの…もう少し肩の力を抜かんかい。そうすれば今まで見えてこなかったものが見えてくる。聞こえなかった言葉が聞こえてくる。人生はもっと楽しいぞ」
そう語りかけるマカロフの顔はマスターとしてではなく、暴れ坊を大事に見守る祖父の顔だ。
ラクサスにそう言われ、ラクサスは再び目を背けた。
「ワシはな…お前の成長を見るのが生きがいだった。力などいらん、賢くなくてもいい……何より元気である。それだけで十分だった」
そう言うと、マカロフは顔を俯かせ、ラクサスはその言葉に心を打たれ悲しげな顔をし、何か耐えるように震える。
「ラクサス……」
マカロフもラクサス同様に何かに耐えるように拳を震わせながら、その言葉を紡ぐ。
「お前を破門とする」
マカロフはマスターとしてケジメをつけなければいけない。
ラクサスはその言葉に僅かにショックを受けるが、ゆっくり口を開く。
「ああ……」
特に反論もなくラクサスはマカロフに背を向けて医務室を出て行こうとし、マカロフもラクサスに背を向けて顔を見せないようにする。
「世話になったな……じーじ」
幼少の頃にずっと呼んだいたマカロフの愛称を再び言い、ラクサスは微笑みを浮かべながら医務室を後にする。
「体に気をつけてな」
「出てい“げ…」
マカロフはそんなラクサスに、自分の大切な家族に涙を流しながら言い放った。
○
ラクサスが荷造りをしようと自分の家に戻ろうと街を歩いていると目の前に、包帯を巻いたハルトが立っていた。
「ハルト……」
「ちょっと付き合えよ」
ハルトは酒を飲む仕草をしてラクサスを誘った。
二人は街の脇道にある酒場に入り、酒を飲むが何も話さない。
酒場にはハルトとラクサス以外の客はいなく、マスターもグラスを磨いているだけだ。
しばらく無言の時間が過ぎ、ハルトが口を開いた。
「久しぶりだよな、ここに来るの。オレ、カミナとお前でチームを組んでた時は仕事の打ち上げがここだったよな」
「ああ」
「お前がみんなの前で騒ぐのが恥ずかしいからってここにしたんだよな」
「………」
ハルトは昔話をするがラクサスは空返事するだけだ。
そしてハルトは本題に入った。
「フリードに聞いたんだ。今回の騒動、ギルドを変える他に目的があったんだってな」
「………」
ハルトはフリードから今回の騒動の目的を教えてもらっていた。
『ラクサスはギルドを変える他に、ハルトを元に戻すと言っていた』
『オレを元に戻す?』
『ああ、オレが憧れたハルトに戻すとな』
ハルトはフリードの言葉をラクサスに教え、ラクサスは少しため息を吐いた。
「フリードの奴め……言うなって言ったのにな」
「オレを元に戻すってどういうことだよ?」
ラクサスはハルトに目を向けず、手元のグラスを見ていた。
「オレがお前と最初にあったころを覚えてるか?」
「最初?ああ……確かいきなり勝負することになったんだよな」
「オレはあん時、ギルドの誰よりも強えと調子に乗ってたんだ。力を見せつけるために新人のお前に勝負を挑んだ」
ラクサスはどこか懐かしそうに話し出す。
「だけど勝負はギリギリでオレの負けだ。悔しかったがそれ以上にお前の強さに憧れた」
ラクサスはその時のハルトの力に素直なところ、自分を力を信じているその姿に憧れた。
「それと同時にお前に親近感が湧いた」
「親近感?」
「お前の出身、ボスコ王国だろ。昔それでコソコソ言われてたじゃねぇか」
ボスコ王国は昔から犯罪大国と言われ、いい噂などなかった。
ボスコ出身のハルトも陰で何かと言われていた。
「マスターの孫だからと言われるオレと、ボスコ出身だからと言われるお前……似たような奴だと思ったんだよ」
そしてハルトとラクサスは一度戦った仲から仲良くなっていき、カミナも加わってよく3人で行動するようになった。
互いに切磋琢磨し、助け合う相棒という関係だった。
「だが4年前……お前とカミナが指名の依頼が来て、それが終わったあとからお前は変わっちまった。お前が自分の力を奮うのが怖くなっていたのがわかった。オレはそんなお前を見るのは嫌だった。それに……オレを頼ってくれなかったのが腹が立った。………オレは仲間じゃねのかよってな」
「………」
ハルトは悲しそうに俯いた。
「少し飲み過ぎたな。オレはもう行くぜ。久しぶりに本気でぶつかり合えて楽しかったぜ」
まるで最初のときの勝負のように。
ラクサスは金を置いて席を立ち、店から出て行こうとするがハルトが話しかけた。
「ラクサス……。オレはお前に感謝してんだ」
「あ?」
「ここに来た時、ボスコ出身だけで影から言われのはわかっていたが馴染めるかどうか心配だった。そんな時お前が勝負を仕掛けて来て、お前と分かり合えた気がしたんだ。そこから余裕もできてオレはオレだと自信を持つことができた」
ラクサスがマカロフの孫だからと言われ続けている中、ハルトと出会い、分かり合える仲間がいたからラクサスはハルトを信頼したが、ハルトもラクサスと同じだった。
「お前が妖精の尻尾での最初の仲間だったからオレは自信を持てたんだ。ありがとな」
「………」
ハルトの感謝にラクサスは少し照れ臭さそうにする。
「俺が力を奮わなくなって、お前に相談しなかったのは悪かった。だからいつかお前に話すよ」
ハルトはラクサスのほうを向いて、まっすぐ見て話す。
「いつか……か、そうだな。またな、ハルト」
「またな、ラクサス」
ラクサスは店を出て行った。
その顔はとても穏やかだった。