FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS   作:マーベルチョコ

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第93話 少女と亡霊

連合軍がウェンディとハッピーの救出の決意を固めているころ……六魔将軍は古代人が祭壇として使っていた洞窟を拠点とし、そこに集まっていた。

 

「痛みが和らいでいくな……」

 

「助かったぞ。エンジェル」

 

「別にいいゾ〜」

 

「ピーリ、ピーリ。あんまりこのおっさんに変身したくないんだけどなぁ」

 

「はいはい。仕事なんだから文句言わない」

 

傷ついたコブラたちをエンジェルのジェミニが一夜に化けて、痛み止めのパルファムで回復していた。

 

「アーウェングスの実力を見誤っていた。まさかあそこまでの実力があるとはな」

 

「魔導核爆弾から逃げれたのも納得、デスネ」

 

「それでブレイン……そのガキを連れてきたのはどういう意味なんだ?」

 

レーサーが目を向ける先には怯えるウェンディとそれを守るハッピーがいた。

 

「ひぃ…!」

 

「大丈夫!オイラが守るからね!!」

 

「ニルヴァーナに関係してんのか?」

 

「そんな風に見えないゾ」

 

「そうか!!売ってお金に……!!!」

 

「こやつはウェンディ、こやつは天空魔法…治癒魔法の使い手だ」

 

「治癒魔法だと!!?」

 

「失われた魔法」

 

「これは金の匂いがしますね」

 

「こんな小娘が……まさか!?」

 

コブラは何かに気づき、ブレインを見ると怪しい笑みを浮かべた。

 

「その通り、奴を復活させる」

 

ウェンディは自分が悪いことに利用されると言うことはわかり、反抗する。

 

「わ…私!!!悪い人たちには手を貸しません!!!」

 

「貸すさ……必ず……うぬは必ず奴を復活させる」

 

しかしウェンディの反抗など意にも介さないブレインだった。

 

「レーサー、奴をココにつれてこい」

 

「遠いなァ、1時間はかかるぜ」

 

「かまわん」

 

「確かに…あいつがいればニルヴァーナは見つかったも同然」

 

「コブラ、ホットアイ、エンジェル、ミッドナイト、貴様等は引き続きニルヴァーナを探せ」

 

「でもあの人が復活すればそんな必要は無いと思うゾ」

 

「万が一という事もある。私がここに残ろう」

 

「わかりました」

 

「しゃあねえ、行ってくるか」

 

「父上、僕もですか?」

 

「貴様は覇王とジュラを中心に狙え。奴らの実力は侮れん」

 

「わかりました」

 

「ねえ? 競争しない? 先にニルヴァーナを見つけた人が」

 

「100万J!!のったァ!!! デスネ」

 

「高いゾ」

 

「興味ないね」

 

ホットアイ、コブラ、エンジェル、ミッドナイトが外に出て行こうとするなか、エンジェルが何かを思い出したか、ブレインに振り返る。

 

「ねえ、ブレイン。お願いがあるんだゾ」

 

「なんだ?うぬが頼みとは珍しい」

 

「ニルヴァーナを手に入れたらハルトを欲しいんだゾ」

 

「ほう」

 

エンジェルの申し出にブレインは面白そうだと思った。

 

「ハルトがお前らなんかの味方になるもんか!!」

 

ハッピーが強く言い返すがブレインは笑みを浮かべるだけだ。

 

「いいや、なる。ニルヴァーナの力さえあればな」

 

「一体どんな魔法なの……?ニルヴァーナって……」

 

呟いたウェンディにブレインは邪悪な笑みを濃くして答えた。

 

「光と闇が、入れ替わる魔法だ」

 

 

連合軍はそれぞれ分かれて六魔将軍の拠点を探しに行き、集合場所では青い天馬のヒビキ、ルーシィと毒で動けないエルザがいた。

 

「うぅ……」

 

「みんな…急いで…お願い……」

 

ルーシィが看病するがやはりエルザは苦しそうなままだ。

ヒビキは自身の魔法『古文書(アーカイブ)』を使い、樹海に入ったメンバーのサポートしていた。

 

「君は行かなくていいのかい?」

 

「エルザが心配だし……ハルトに頼まれたから……」

 

「君はハルト君のことが好きなのかい?」

 

「うえっ!?ちょっ……いきなり何言って…!!」

 

「ハハッ、そんなに慌てなくても僕は女性の機敏には鋭いからね。すぐにわかったよ」

 

ルーシィが顔を赤くして慌てるのをヒビキは面白そうに笑う。

 

「でも…本当はハルト君について行きたいんだろ?」

 

ヒビキがそう言うとルーシィは少し悔しそうにする。

 

「うん…本当はついて行きたいけど、ハルトがどうしてもって言うから……」

 

「……女性と多く接してきた僕の考えだけど、時には強引に迫るくらいが男にとっては嬉しい時があるんだよ」

 

ヒビキの言葉にルーシィは考えこんだ。

 

 

その頃、樹海を進んでいたナツたちはレインとシャルルに質問していた。

 

「天空の滅竜魔導士ってさぁ……何食うの?」

 

「空気」

 

「うめえのか?」

 

「さあ?」

 

「酸素と何が違うんだよ……?」

 

グレイが呆れたように言い、ナツは後ろを走っていたレインのほうを見て質問したら、

 

「レインは水竜だったよな。やっぱ水を食うのか?」

 

「はい!澄んだ水のほうが美味しいですよ!」

 

「そりゃ普通のことじゃねえか?」

 

またグレイのツッコミが入ると、シャルルが語り始めた。

 

「あのコ、アンタと覇王に会えるかもしれないってこの作戦に参加したのよ」

 

「レインもだよー」

 

「オレとハルト?」

 

「はい!同じ滅竜魔導士なら知ってるかもしれないって思って……ナツさんもドラゴンに育てもらったんですよね?」

 

「おう!!レインもそうなのか!?」

 

「はい!それで聞きたいんですけど…そのドラゴン、どこに行ったか知りませんか?」

 

「レインとこの親もいなくなったのか!?それって7年前の7月7日か!!?」

 

「はい、そうです。僕のお母さん、水竜シーペントとウェンディのお母さん、天竜グランディーネが同じ日にいなくなったちゃったんです」

 

「イグニールとガジルのドラゴンも、ウェンディとレインも7年前……んがっ!!?」

 

ナツは考えこんでしまい、目の前の根っこに頭をぶつけて倒れてしまった。

 

「そうだ!ハルトとラクサスは!!」

 

「ジーさんが言ってたろ、ラクサスは天然の滅竜魔導士じゃねえ。ハルトは物心ついた頃には使えたって言っただけでドラゴンに育てられたとは言ってなかったな」

 

グレイがそう答えるとレインが気になることを尋ねた。

 

「ラクサスさんって誰ですか?」

 

「今は破門されちまってギルドに居ねえが俺たちのギルドにラクサスっていう男がいたんだよ。アイツもハルトなナツと同じで滅竜魔導士だったんだよ」

 

「えっ!?そうなんですか!!でもそのラクサスってドラゴンに育てもらってないって……」

 

「ラクサスは滅竜魔導士のラクリマを体に埋め込まれて雷の滅竜魔導士になれたらしいぜ」

 

「か、雷ですか……」

 

レインが少し顔を青くしたことにグレイが気になった。

 

「どうしたんだよ。レイン」

 

「い、いえ…その……」

 

「レイン、雷苦手だもんね〜」

 

「言わないでよ!!ミント!!」

 

「雷が怖いのか!まだまだお子様だな!!」

 

「ちょっと!気を引き締めなさいよ!!」

 

あまりに朗らかな雰囲気に緊張感を取り戻すためシャルルが注意するがナツは気にも止めない。

 

「そういやレインはハルトのファンだったんだろ?ハルトについていかなくていいのか?」

 

グレイがそう聞くとレインは少し残念そうにした。

 

「本当はハルトさんの方について行って、色々な話を聞きたかったんですけど、ハルトさんが1人で行きたいって言ったので……」

 

「そういやハルト、少し変だったな。大丈夫か?」

 

グレイも少し不安そうに考えるがナツが起き上がりながら笑う。

 

「大丈夫だって!マタムネがついてんだ。何も心配することなんかねえよ」

 

それを聞いたグレイもニッと笑った。

するとシャルルがあることに気づいた。

 

「ちょっ……ちょっと何よコレ!!」

 

シャルルが見る先には黒く染まった木がたくさんあった。

 

「木が……」

 

「黒くなってる!!」

 

「気持ち悪いー」

 

すると別の方向から足音と声が聞こえてくる。

 

「ニルヴァーナの影響だって言ってたよな、ザトー兄さん」

 

「ぎゃほー。あまりにすさまじい魔法なもんで、大地が死んでいくってなァ、ガトー兄さん」

 

「誰だ!!?」

 

そこにはやけに猿っぽい大男が2人立っていた。

するとその後、いたるところから人が現れる。

全員がナツたちに敵意を向けていた。

 

「ちょっ…ちょっと!囲まれているわよ!!」

 

「ひゃ〜」

 

「うわわ……」

 

「六魔将軍傘下『裸の包帯男(ネイキッドマミー)』」

 

「ぎゃほおっ!!!遊ぼうぜぇ」

 

「傘下……!?もしかして、この樹海に六魔将軍傘下の闇ギルドが勢ぞろいしている!!?」

 

「敵は……6人だけじゃなかったっていうの……!?やられた……」

 

「大変だぁ〜」

 

レインとシャルルが慌て、ミントは気の抜けた声を出すが慌てているようだ。

 

「こいつァ丁度いい」

 

「ウホホッ、丁度いいウホー」

 

「えっ!!?ナツさん!?グレイさん!?」

 

「何言ってんのアンタたち!!!」

 

慌てるレインたちをよそにナツとグレイは好戦的な笑みを浮かべる。

 

「拠点とやらの場所をはかせてやる」

 

「今行くぞ!!ハッピー!!ウェンディ!!」

 

「なめやがってクソガキが…」

 

「六魔将軍オラシオンセイス傘下〝裸の包帯男ネイキッドマミー〟」

 

「死んだぞテメーら」

 

そう言って睨み合う妖精の尻尾フェアリーテイルと裸の包帯男ネイキッドマミー。

 

「スゴイ……これだけの人数相手に、一歩も引かないなんて……」

 

「何なのよ妖精の尻尾フェアリーテイルの魔導士は……今の状況わかってるのかしらっ!!!」

 

 

そして別に分かれた全員のところに闇ギルドは襲いかかっていた。

青い天馬チームには

 

「黒い一角獣(ブラックユニコーン)!?」

 

「こいつらもここにいたのか!!てかっ、一夜さんどこに行ったんだ!!」

 

蛇姫の鱗チームも闇ギルドに囲まれていた。

 

「これは一体……!」

 

「囲まれているだと!!」

 

「こんなに伏兵がいらしたなんて……」

 

そして1人になってしまった一夜も……

 

「なんだこのおっさん?」

 

「やっちまおうぜー」

 

「ちょっ……!!わ、私…みんなとはぐれて……1人に……いや、だから……決して怪しい者では…メェーン……」

 

側から見ればただのオヤジ狩りだった。

 

 

ハルトは1人、樹海の中を進んで行き、巨木の前に立っていた。

 

「アアアアァァァァァッ!!!!!」

 

突然ハルトは目の前の巨木を殴り、雄叫びを上げた。

それは怒りをぶつけているように見えたが、どこか懺悔しているようにも見えた。

一通り殴ると巨木の殴られたところは煙を上げ、メキメキと音を立てて折れてしまった。

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

「落ち着いたでごじゃるか?」

 

「!!」

 

息を落ち着けているとハルトの背後からマタムネの声が聞こえ、振り返るとマタムネが立っていた。

 

「なんでここにいる?ルーシィのところにいとけって言っただろうが」

 

「せっしゃはハルトの相棒でごじゃるからな!!どこに行こうと一緒でごじゃる!!」

 

マタムネが胸を張って得意気にそう宣言するとハルトは一瞬ポカーンとしてしまうが、途端に吹き出した。

 

「プハッ!ハハハッ!そうか、そうだよな……マタムネは俺の相棒だよな」

 

ハルトの顔がさっきまで強張っていたのが、いくらか和らぎ笑顔を見せた。

 

「そうでごじゃる!だから悩む時は一緒に悩むでごじゃる。ほら、相棒のせっしゃに悩みを相談してみるでごじゃる!」

 

マタムネはドヤ顔でそう言うと、ハルトは殴り倒した木の根っこに座り、隣をポンポンと叩いた。

 

「マタムネ、こっちに座れよ」

 

「ごじゃる」

 

マタムネが隣に座るとハルトは話し始めた。

 

「ジェミニがエミリアの姿をした時に一瞬頭が真っ白になっちまったんだ。そしてその後、嬉しさ込み上げた」

 

「せっしゃも嬉しかったでごじゃるよ。だけどその後怒りが出てきたでごじゃるな!」

 

マタムネがプンプンしながらそう言うとハルトも少し眉間に皺を寄せる。

 

「ああ、そうだな」

 

ハルトもエミリアを利用した攻撃に怒りもしたが別の感情もあった。

 

「俺はこれが罰なんだな、って思った。エミリアは俺のせいで死んじまった」

 

「そうかもしれないでごじゃるが、エミリアのことを利用されたのは腹が立つことでごじゃる!!そうでごじゃろう!!?」

 

「…………」

 

「今はクヨクヨしたって仕方ないでごじゃる!!過去に起こったことはどうしようもないでごじゃる!!今は苦しんでいる仲間のために戦うでごじゃる!!」

 

「……そうだな!!」

 

「六魔将軍にこのイライラをぶつけるでごじゃる!!」

 

「おう!!」

 

ハルトはマタムネの元気にやる気を取り戻し、立ち上がる。

 

「それじゃあ、とりあえず周りの奴らからどうにかするか」

 

「そうでごじゃるな」

 

すると周りの茂みから多くの闇ギルドの人間が現れる。

それを見たハルトとマタムネは好戦的な笑みを浮かべ、戦闘態勢になる。

 

「気をつけろよ。お前ら、今の俺たちは……」

 

「ちょっと機嫌が悪いでごじゃる!!」

 

 

一方その頃…六魔将軍オラシオンセイスの拠点の洞窟では……

 

「重てぇ…これじゃスピードが出ねえぜ」

 

「主より速い男など存在せぬわ」

 

ブレインの遣いに行っていたレーサーが、1つの鎖で巻かれた巨大な棺桶を担いで帰ってきていた。

 

「ひっ」

 

「棺桶!!?」

 

その棺桶を見て、怯えるウェンディ、そして驚愕するハッピー。

 

「ウェンディ、お前にはこの男を治してもらう」

 

「わ…私……そんなの絶対やりません!!!」

 

「そーだ!そーだ!!」

 

「いや、お前は治す。治さねばならんのだ」

 

そう言いながら鎖を解き、棺桶をゆっくりと開くブレイン。

そしてその中には鎖で拘束され、意識を失った1人の青年が入っていた。

 

「!!!」

 

そしてその青年の姿を見て、驚愕するウェンディ。

 

「この男の名はジェラール、かつて評議院に潜入していた。つまりニルヴァーナの場所を知る者」

 

その青年は、かつてハルトたちと楽園の塔で激しい戦いを繰り広げ、後にハルトを助けるため塔の崩壊と共に姿を消したエルザの因縁の相手ジェラール・フェルナンデスであった。

 

「ジェラールって…え?え!?」

 

「ジェラール…」

 

「知り合いなの!?」

 

 

ウェンディがジェラールの知り合いだと言う事に、驚愕するハッピー。

 

「エーテルナノを大量に浴びてこのような姿になってしまったのだ。元に戻せるのはうぬだけだ。うぬの恩人……なのだろう?」

 

ウェンディは戸惑う表情だ。

 

「ジェラールって、あのジェラール?」

 

「ハッピー、知ってるの?」

 

「知ってるも何も、こいつはエルザを殺そうとしたし、評議院を使ってエーテリオンを落としたんだ!」

 

「そうみたいだね……」

 

「生きてたのかコイツ~」

 

ハッピーは憎々しげに目の前のジェラールを睨みつける。

 

「この男は亡霊に取りつかれた亡霊……哀れな理想論者。しかし……うぬらにとっては恩人だ」

 

「ダメだよ!!!絶対こんな奴復活させちゃダメだ!!!」

 

「…………」

 

「ウェンディ!!!」

 

ハッピーはウェンディを説得しようとするが、彼女は何も言わずにただ俯くだけであった。

 

「早くこの男を復活させぬか」

 

すると、ブレインは一本のナイフを取り出して、ジェラールの腕に突き立てた。

 

「やめてぇーーーーっ!!!!」

 

ウェンディは悲鳴に似た大声を張り上げたが、ブレインが杖でウェンディを殴り黙らせる。

 

「あう!」

 

「治せ。うぬなら簡単だろう」

 

「ジェラールは悪い奴なんだよ!!!ニルヴァーナだって奪われちゃうよ!!!」

 

ブレインは命令するようにそう言い放ち、ハッピーはやめるように説得する。

 

「それでも私……この人に助けられた。私もレインも大好きだった……」

 

大粒の涙を流しながらそう言うウェンディに、ハッピーは何も言えなくなった。

 

「なんか…悪い事したのは噂で聞いたけど、私もレインも信じない」

 

 

「何言ってんだ、現にオイラたちは…」

 

「きっと誰かに操られていたのよ!!!私たちの知ってるジェラールが、あんな事をするハズがない!!!お願いです!!!少し考える時間をください!!!」

 

「ウェンディ!!!」

 

ウェンディの頼みに対し、ブレインは少々考える素振りを見せる。

 

「よかろう。5分だ」

 

彼女に5分だけの猶予を与えた。

 

(ナツ~…まずいよ……早く来てよ~…)

 

事態は悪いほうへと進んでいく。

 

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