FAIRYTAIL SEVEN KNIGHTS 作:マーベルチョコ
ヒビキから集合場所を教えてもらったナツはすぐにたどり着いた。
そこには毒に苦しむエルザとエルザを看病しているルーシィ、そしてヒビキがいた。
「着いたー!!!」
「ナツ!!」
「スゲーな。お前の魔法!!ここまでの道が頭の中にスラスラと出てきたぜ!!」
「ナツ君!それよりウェンディちゃんをエルザさんに!!」
「おう!そうだな!!」
「ウェンディ!!起きて!!ウェンディ!!!」
レインがウェンディを地面に下ろして、優しく揺さぶるとウェンディはゆっくり目を開けた。
「ひっ!」
「ウェンディ!僕だよ!!」
気がついたウェンディは咄嗟に後ろに退いてしまうが、レインが腕を広げて安心させるように語りかけると、ようやく理解出来たのか、落ち着いてきた。
「レ…イン?レインなの?」
「そうだよ」
「うぅ…レイン〜!」
ウェンディは泣きながらレインに抱きついた。
幼い少女には怖かったのだろう。
「ウェンディ!!頼む!!」
そこにナツが頭を下げてきた。
「ナツさん……ごめんなさい……私……」
「ウェンディ、落ち着いて」
暗く、怯えた表情でジェラールを復活させたことを謝るウェンディにレインが落ち着かせるように優しく諭す。
「今はそんなことどうでもいい!!!頼む!!!エルザが毒ヘビにやられて大変なんだ!!!!」
「治せるのはウェンディしかいないの!!!お願い!!!」
そう言って頭を下げるナツとルーシィにウェンディは今の状況が理解できなかった。
「毒?」
「エルザさん、六魔将軍と戦った時に毒ヘビに噛まれて、死んじゃうかもしれないんだ」
「六魔将軍と戦うにエルザさんの力が必要なんだ」
「お願い!!!助けて!!!」
「も、もちろんです!!!はい!!やります!!!がんばります!!!」
とりあえずウェンディはジェラールのことを忘れ、エルザを助けることに集中し、さっそく治療に取り掛かる。
「よかったぁ~」
「ねー」
「いつまで伸びてんのよ、だらしない」
「あ、ハッピーとシャルル、ミントも目が覚めたんだね」
レインはハッピーたちが目を覚ましたのに気づいた。
(ジェラールとこんなところで再会するなんて思わなかったな……僕たちのこと忘れちゃったのかな……?)
(ジェラールがエルザさんに酷いことをしたなんて……)
レインとウェンディの心中はジェラールのことでいっぱいだった。
○
そして、そのジェラールはと言うと一人樹海の奥地へと歩いていき、その背後には物陰に隠れたコブラの姿があった。
(それにしてもこいつ…心の声が聴こえねえ。心の声さえ聴こえれば、後をつける必要もねえのに)
そんな事を思いながらジェラールの尾行を続けるコブラ。
すると、ジェラールが立ち止まる。
(止まった)
そんなジェラールの視線の先にはいくつのも鎖に繋がれ、他よりもひと際大きい大木があった。
(なんだここは…!!?樹海にこんな場所が。まさかブレインの言った通り…ここにニルヴァーナが……)
そしてジェラールが大木に手を翳すと、繋がれていた鎖が外れ、大木が爆発するようにハジケ飛ぶと、そこから一筋の光が溢れ出した。
(おおっ!!!ついに見つけた!!!オレたちの未来……!!!)
○
「終わりました。エルザさんの体から毒は消えました」
「ん」
エルザの顔色がみるみる良くなっていく。
「おっしゃー!!!」
エルザの顔から苦しそうな表情は消えたのを見て、ナツたちは歓喜の声を上げる。
「ルーシィ、ハイタッチだーっ!!!」
「よかった~~!」
ナツはルーシィと喜びを分かち合い、レインとウェンディにも振り返る。
「レインとウェンディも!!!」
「はい!!
「は…はい……」
レインも元気よく、ウェンディは少し恥ずかしそうにしながらナツとハイタッチした。
「シャルル!ミント!オイラたちも!!」
「仕方ないわね」
「イエ〜イ」
ハッピーたちもエルザの無事を喜び、ハイタッチをする。
「……しばらく目を覚まさないと思いますけど、もう大丈夫ですよ」
ウェンディは少し疲れた様子でナツたちに言う。
「すごいね…本当に顔色がよくなってる。これが天空魔法」
「近いなー」
ヒビキがエルザの顔色を至近距離で確認しており、ミントがそれを見てとりあえずツッコむ。
「いいこと? これ以上天空魔法をウェンディに使わせないでちょうだい」
「ウェンディの天空魔法は結構魔力を使っちゃうんです」
「私の事はいいの。それより私……」
そう言ってどこか申し訳なさそうな表情をしているウェンディ。
「とにかく、これでエルザさんは無事だ」
「あとはエルザが目を覚ませば反撃開始だね!!」
「おっーーーー!!!ニルヴァーナは渡さねぇぞぉ!!!!」
全員が改めて打倒六魔将軍の気合いを入れた。
しかし、その瞬間突然樹海から黒い光の柱が現れた。
「なに!?」
全員がその光に目を向けるとその光は天を突かんばかりにそびえ立っている。
「黒い光の柱……」
「まさか……」
「あれは……ニルヴァーナ!!?」
「まさか六魔将軍に先を越された!?」
「いや、六魔将軍じゃねえ……あれはジェラールだ!!」
「ジェラール!!?」
ナツの言葉にルーシィは驚く。
ナツは怒りの表情で突然走り出してしまった。
「ちょっとナツ!!ジェラールってどういう事!!?」
「私の…私のせいだ……」
「ウェンディ……」
ルーシィがナツにジェラールのことを聞こうとするが、怒りでナツは聞こえておらず、光のほうに走ってしまった。
ウェンディはニルヴァーナの封印を解かれたのが自分のせいだと落ち込み、レインが声をかけるがそれに気づかないほど落ち込んでいる。
そしてその時エルザの目が僅かに開いていることに誰も気づかなかった。
○
ニルヴァーナの封印が解かれたことは各地で戦っている連合軍、六魔将軍も気づいていた。
「あれがニルヴァーナ……不気味な光だゾ。でも……」
エンジェルの服は少しはだけており、汗が浮かんで顔は上気していた。
その下にはハルトが寝ており、ハルトのジャケットは脱がされ、シャツは破かれていた。
そしてその肌には赤い斑点があっちこっちにあった。
エンジェルはそんなハルトを面白そうに見る。
「目を覚ませばハルトはこっち側に来ることに間違い無しだゾ♪」
エンジェルはそう言ってまたハルトの体に倒れる。
そしてそれを聞いた吊るされてるマタムネは焦る。
(マズイでごじゃる……!ニルヴァーナが目覚めたら、ハルトどうなっちゃうでごじゃる!?そして……このままじゃせっしゃが出血死しちゃうでごじゃる!!誰かー!!助けてでごじゃるぅぅぅっ!!!)
マタムネは鼻から血を流しながら心の中で叫んだ。
○
「ナツ君を追いかけよう。さすがにこの状況で1人は危険だ」
ヒビキがそう提案し、全員が頷く。
「ナツ、ジェラールって言ってたよね……」
「説明は後よ!!それより今は追いかけに……」
「あーーーーー!!!」
ルーシィはやはりナツの言葉が気になるようだが、シャルルはそれよりナツを追いかけることに集中するように呼びかけるが、ミントの驚く声がそれを遮った。
「どうしたのよ!!」
「エルザがいないよー」
『ええ!?』
エルザがいつのまにかいないことに全員が驚く。
「なんなのよあの女!!ウェンディに一言の礼もなしに!!!」
「エルザ……もしかしてジェラールって名前を聞いて……」
その事に対し、シャルルは憤慨し、ハッピーはエルザが消えた理由をそう考えた。
「どうしよう…私のせいだ…」
「ウェンディのせいじゃないよ」
頭を抱えて自責の念に駆られるウェンディを慰めるレインだが、ウェンディの自責は止まらない。
「私がジェラールを治したせいで……ニルヴァーナ見つかっちゃって、エルザさんや…ナツさんが……」
涙を浮かべて自責の言葉を口にするウェンディ。
すると突然ヒビキがウェンディに向かって魔法弾を放ち、吹き飛ばした。
「ちょっ……!!」
「何するのー!」
「アンタいきなり何するのよ!!!」
「ヒビキさん!!何するんですか!!!」
ヒビキの突然の攻撃にルーシィは驚き、レインたちはヒビキを責めるが、ヒビキは冷静な表情をしていた。
○
「ジェラール……」
ナツは怒りがこもった目で光の柱を睨む。
実際にはそのもとにいるであろうジェラールに対しての怒りだ。
するとナツの目の前に多くの闇ギルドの集団が現れた。
よく見るとギルドマークがバラバラでその数は2、3個ある。
「来たぞ!!妖精の尻尾だ!!!」
「コブラ様の元に行かせるな!!!」
「ここで倒しちまえー!!!」
多くの闇ギルドの魔導士たちがナツを倒すべく、囲んでくる。
ナツは立ち止まり、拳に炎をたぎらせる。
「テメぇら邪魔だ!!!どけぇっ!!!」
ナツが炎を放ち、敵を蹴散らすがそれでも敵は湧いて出てくる。
「エルザには近づけさせねえぞー!!!」
○
「驚かしてごめんね、でも気絶させただけだから」
「どうして!?」
「ナツ君たちとエルザさんを追うんだよ。僕たちも光に向かおう」
あの後、ヒビキは気絶させたウェンディを背負って、ルーシィたちと共に光に向かって走っていた。
「納得できないわね。確かにウェンディはすぐぐずるけど、そんな荒っぽいやり方」
「そうだよ」
「だよねー」
さっきのヒビキの行動に異を唱えるシャルルたちだが、ヒビキは仕方ないと言った表情をする。
「仕方なかったんだよ。本当の事を言うと……僕はニルヴァーナという魔法を知っている」
『!!!』
ヒビキのその言葉に全員が驚く。
「ただ、その性質上誰にも言えなかった。この魔法は意識してしまうと危険だからなんだ。だから一夜さんもレンもイヴも知らない、僕だけがマスターから聞かされている」
「そんなに危ない魔法なんですか?」
「うん、これはとても恐ろしい魔法なんだ」
レインの問いに頷きながらヒビキは答える。
「光と闇を入れ替える。それがニルヴァーナ」
「光と闇を……」
「入れ替える!?」
「しかしそれは最終段階。まず封印が解かれると黒い光が上がる、まさにあの光だ。黒い光は手始めに、光と闇の狭間にいる者を逆の属性にする。強烈な負の感情を持った光の者は、闇に落ちる」
「それじゃあ、ウェンディを気絶させたのは……」
「〝自責の念〟は負の感情だからね、あのままじゃウェンディちゃんは闇に落ちていたかもしれない」
レインの問いに答え、何故ウェンディを気絶させたかを語るヒビキ。
「ちょっと待って!! それじゃ〝怒り〟は!?」
「ナツ君、相当怒ってたよねー」
「何とも言えない…その怒りが誰かの為なら、それは負の感情とも言い切れないし」
「どうしよう……意味がわからない」
「あんたバカでしょ。つまり、ニルヴァーナの封印が解かれたその瞬間から、光と闇…正義と悪とで心が動いてる者の性格が変わるって事よ」
「それが僕がこの魔法の事を黙っていた理由。人間は物事の善悪を意識し始めると、思いもよらない負の感情を生む」
「そんなに危険な魔法なんて……」
ヒビキのニルヴァーナの説明に息を飲むルーシィだが、そこにヒビキは付け足す。
「僕が本当に心配しているのはナツ君よりハルト君だ」
「ハルト?なんで……」
「ハルト君、さっきの六魔将軍との戦いで明らかに奴らに殺意を持っていた。もしそれがニルヴァーナで入れ替わってしまったら……」
ヒビキが眉間に皺を寄せながら難しそうな表情でそう言う。
「で、でもハルトはニルヴァーナになんかは……」
ルーシィは言い返そうとしてもヒビキは首を横に振って、それを拒否する。
「無理だよ。ニルヴァーナは魔法は絶対だ。その心が光と闇に揺れ動いているなら必ず引っかかる」
ヒビキの言葉にルーシィは何も言えなかった。
ルーシィもハルトが殺意を持っていたのを感じていたからだ。
「そして、もしハルト君がニルヴァーナの魔法にかかって、闇に傾倒するようになったら………僕たちは全滅するかもしれない」
ヒビキの衝撃的なか言葉に全員が息を飲む。
「ハルト君の実力は僕たち連合の中でもトップクラスだ。対抗できる人はここには誰もいないし……気をつけていこう」
「そのニルヴァーナが完全に起動したら、あたしたちみんな悪人になっちゃうのー?」
「でも…それは逆に言えば、闇ギルドや他の悪人たちは善人になるって事じゃないですか?」
「そういう事も可能だと思う」
レインの質問に頷きながら答えるヒビキ。
「ただ、ニルヴァーナの恐ろしさはそれを意図的にコントロールできる点なんだ」
「そんな!!!」
「善悪の入れ替えを意図的にコントロールって……そんな事したら!!!」
「あぁ…例えばギルドに対してニルヴァーナが使われた場合、仲間同士での躊躇なしの殺し合い……他ギルドとの理由なき戦争。そんな事が簡単に起こせる」
ヒビキのその言葉に、全員が驚愕し、顔を青ざめさせる。
「一刻も早く止めなければ、光のギルドは全滅するんだ」