ブラック・ブレット もう一発の銃弾   作:八咫勾玉

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第三話

「これは……」

 

 蓮太郎と黎は眉をしかめて木更の方を見ると、彼女は頷いた。

 

「ないわよね?」

 

「ああ……でも感染源の目撃報告が一つもないなんてことあり得ねぇだろ」

 

「ここにあるじゃない」

 

「確かにな……」

 

 木更は髪をかき上げ挑発的な上目遣いで蓮太郎を見る。

 蓮太郎は目を細め、もう一度ウェブサイトの地図と文字を追っていく。

 黎はお茶を呑みながら、思考を巡らす。

 

「どうして政府は周囲一帯に警告を出さない?これは一大事だッ!!」

 

「里見くん、政府は無能じゃないけど、避難警報とかの強制手段とかはほとんど取らないから、期待しても無駄よ。まあ、だからこそ民警の仕事があるんだけど」

 

「まあそうだな…」

 

 蓮太郎は、二人からそういわれ内心毒づきながら緩く頭を振った。

 

「専門家の意見が必要だ。これから『先生』に話を聞いてくる」

 

「?…先生」

 

「ああ…黎さんは知らなかったわね」

 

「先生ってのは、室戸菫って人で……」

 

「ああ…ガストレアの研究者にして日本最高の頭脳でありマッドサイエンティストだっけか?」

 

「よく知ってるな……」

 

「まあ…それはさておき私も同業者にそれとなく探りをいれてみるわ。里見くん黎さん、残りの感染源も私たちで狩りましょう、可及的速やかに」

 

「わかった」

 

「了解、社長…それじゃ早速俺も独自で調べるかな…何か分かったら連絡する…そうだ二人の連絡先教えといてくれないか?

いちいち集まったりするのメンドイから」

 

「わかったわ」

 

「了解」

 

黎は木更と蓮太郎と連絡先を交換して桜花の寝てるソファーにいき桜香を優しく揺すり起こす。

 

「桜香そろそろ帰るぞ」

 

「……うぅぅ……ふわぁ……」

 

桜香は小さなあくびを一つして目を擦りながらいそいそと上体を起こした。

 

「黎さんおはようございます」

 

「おはよう、桜香」

 

木更は今の桜花の様子を見てうずうずとしている。

 

「?…木更さんどうかしたか?」

 

それに気づいた蓮太郎は木更に問いかけた。

 

「……桜香ちゃん…かわいい……抱きつきたい……」

 

木更がそう呟き少し後ずさる蓮太郎、そんなこととは露知らず黎と桜花は帰り支度をしていた。

 

「里見くん、そういえば延珠ちゃんは?」

 

「え、ああ、眠たくなってきなって言ってたから家に帰したよ。アンタも帰るなら途中まで送んぞ」

 

「ごめんなさい、今日は血液透析の日だから病院に行かないと」

 

「ああ、そういやそうか」

 

木更は冷めかけた茶に一口、口をつけると、事務所の中を見渡した。蓮太郎もそれを目で追う。

 

応接スペースと、蓮太郎と延珠の机…これに明日黎たちの机が追加されるだろう…。

暖簾をくぐると炊事もできるよう小さなキッチンがついている。

木更たちはこの事務所が不思議と嫌いではない。

 

「もう一年になるのね、君がプロモーターになり、延珠ちゃんと出会ってから」

 

「『まだ』一年目だ。俺もアンタもまだ目的の半ばに過ぎない」

 

「そうか……お前らはまだ一年なのか…俺は六年目くらいか」

 

黎のこの言葉に木更たちは驚愕する。目の前の青年はわずか六年で今の序列へと上り詰めたのだ

自分たちは飛んでもない人物を迎え入れたとおもった。

 

「それじゃまたな……行くぞ桜香」

 

「ハイ…黎」

 

そういって二人は事務所を後にした。

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