木更たちと合流し車を走らせ少したった頃、後部座席から声を掛けられた。
「ねぇ黎さん…質問があるのですが…いいですか?」
「ん?…いいぞ、それと桜香後ろの二人にサンドイッチ渡してやれ」
「は~いでは木更さん蓮太郎さんどうぞ」
「ありがとうございます黎さん桜香ちゃん」
「ありがとう」
そう言って木更たちが桜香から渡されたサンドイッチを食べ始めた。しばらくして二人が食べ終えそれを確認してから黎は木更に声をかけた。
「食べ終えてすぐで申し訳ないが社長俺に質問があると聞いてたが何だ?」
「あ…そうでしたね…こほん……で質問ですが黎さんは何台車を持っているのですか?」
「え~と…今、乗ってるの含めて四台だなぁ」
「よ…四台も……」
「まぁ後三台はまた今度な」
黎はそう言って話を切り上げた。
その後蓮太郎が木更に声をかけた。
「そういえば延珠は呼ばなくて良かったのか?」
そういった後蓮太郎は自分の前の席に座っている、黎のイニシエーターである桜香を横目でみる。
「あぁ…桜香ちゃんがいるから気になったのね?」
「あぁ…まぁな」
「別に戦いになるわけじゃないの、むしろ眠くなるような話よ」
「なるほど」
蓮太郎は合点がいった。前回の事件についてなにか聞かれるということか。しかしなぜいつもの報告書だけでは駄目なのだろうか。
「私も詳しくわ聞かされてないわ、とにかく来い、だからね。役人は嫌い。東京エリアを守ってる民警に、仕事をくれてやってるだけありがたいと思えとか真顔で言うもの」
「じゃあ今回の話、断れば良かったじゃねぇか」
木更は蓮太郎の顔をちらっと見ると意味深に肩をすくめた。
「まさか。私たち見たいな弱小は、仕事を回さないたと仄めかされれば従うしかないわ」
蓮太郎は溜め息をついた。
「『民間』警備会社なのに、政府のひも付き、か…」
「嫉妬深いのよ。イニシエーターの能力に理論上の限界はないわ。最強クラスのイニシエーターは単独で世界の軍事バランスまで左右すると言われてるほど強いもの。だからあまねく政府は、すべての民警を自分の手元に置いておきたい、管理したがる」
今まで沈黙していた黎が木更たちの会話に口を挟んだ。
「社長…会話中に口を挟んで悪いがお前らはもう弱小というわけではないぞ。今回の召集に俺がボディーガードとしてついていくことで注目が集まるだろう…それに…今しがた社長が言った最強クラスのイニシエーターは簡単に言うと序列百位以内の民警ペアのことでもある。
この意味をしっかり理解してくれ。因みに二人は俺たちの序列は知っていると思うがなww」
そう言って黎は運転に意識を戻した。今の黎の発言に木更たちは自分たちが飛んでもない人物を迎え入れたと改めて感じたのだった。
それを元に蓮太郎は思ったことを口にした。
「虫のいい話だな。………ってことはこれから俺たちはある意味、敵地に乗り込むわけじゃねえか」
木更と黎は小さく首を振った。
「やれやれいまさら気付いたの?だから私がボディーガードに里見くんと黎さんを拾って来たのよ。頼りなんだからしっかりしてよ」
「黎さんはともかく俺はいなくても良かったんじゃ…」
「なにいってるの?確かに黎さんどっかの誰かよりすごくものすご~く頼りになるけども…まだそこまで信頼できてる訳じゃないのよ…黎さんには悪いけど…」
「まぁそうだよな~まだ入社して一日しかたってないからなまるごと信頼なんか出来ないよな~だからこそのお前何だよ…蓮太郎」
二人の言葉が頭の中で何度も木霊してじんわりと感慨が沸いてくる。
その時、おもむろに肩に柔らかな重みがかかりドキリとする。蓮太郎の肩に首をもたせかけているのはほかでもない木更だった。彼女は重い目蓋を億劫そうに震わせている。
「ごめ……ちょっと眠い。肩、貸して。食後はいつもこれ。学校じゃ眠れないし……」
「眠れない?どうしてまた?」
「私は……天童よ。みんなの鏡。無様な姿なんて、さらせない」
そこまでが限界だった。瞳を閉じた彼女の体から力が抜けると、ぐぐっと肩に重みがかかる。どうやら本当に寝てしまったらしい。
ブオォォォォ、と静かなエンジン音を響かせ車が走る。窓から差し込む光が陰影を変えて木更の表情を照らした。
蓮太郎は木更の寝姿に心奪われながらも綺麗だ、と素直にそう思った。
「里見……くん」
あやうく返事しそうになって、それが彼女の寝言であることに気づいた。だが次の瞬間苦しげに吐かれた言葉は、れの胸を深く抉った。
「里見く………私の復讐。手伝っ……天童を、殺す……の」
「………………………………はい」
木更は眉を八の字にして体を丸めるとビクッビクッと震えはじめた。
「おと……様、お母様……やだ、死なないで……ッ。里見く……助けてッ」
蓮太郎は木更の肩に腕を回すと、そのまま無言で強く抱きしめた。
黎と桜香は後ろからの声を聞こえない降りをしながら防衛省への道を急いだのだった。