ここは物事のはじまりの街,ファングタウン。街の三方を木々で囲まれた静かな町だ。
その1つ,真新しい一軒家の庭先に大型トラックが停車する。その途端荷台部分から数匹のゴーリキーが飛び出し,家財道具を運び入れていった。
「わぁ…パパ!ここが新しい町?」
荷台からゴーリキーに続いて降りてきた少年は無邪気に色々な感情を全身で表現する。
「おぉい,ショウタ!はしゃいであまり遠くへ行くなよ…!」
「わかってるってば!」
ショウタと呼ばれた少年はタタタと森へ駆けていってしまった。
「はぁ…全く…」
木の鬱蒼と生い茂った森をずんずんと歩き,森の奥へと冒険する。
枝の上を見上げるとヤヤコマが高らかに歌い,草影からはジグザグマが飛び出して目の前を通り過ぎていった。
みな,ショウタの訪れを歓迎している様だ。
だが同時に,日は傾き,空は次第に紅から橙に染まっていく。それに従って森は濃霧に包まれ,夜の訪れをポケモン達に告げる。だがそんな事はショウタの意識の蚊帳の外であり,気がついた時には一寸先も見えないくらい深い霧に包まれてしまった。
「あれ…ここは…?家はどこ…?今何処にいるの…?」
ショウタの心は次第に恐怖と孤独の霧に包まれ,すっと整った顔はくしゃりと歪み涙が頬を伝う。
「パパ…ママ…どこ…」
ショウタは当ても無く霧の中を歩き続ける。だがどこまで行っても霧が晴れる事はなくただただ霧の張った森の中を延々と歩き続けるだけであった。
「あ…あれ…!やった…!」
霧が少しずつ晴れてきて,視界がはっきりし始める。
ショウタは一刻も早くここから抜け出そうと駆け出した。
「あ…」
彼の目の前には家…ではなく大きな湖がぽっかりと広がっていた。
空は完全に闇が覆い,月が輝き星が瞬く。
今宵は雲ひとつない。従って月光は草木を照らし,小さな草花の滴ひとつひとつまで映し出している。
「っ…!」
突然,湖の中心が発光したかと思うと碧のキラキラと煌めく何かが現れた。
その何かは湖を踊るように飛ぶ。
その様子はまるで妖精が水面でホールダンスを舞っているようだ。
「…!」
「あっ…!待ってよ…!」
ショウタの存在に気がついたのだろう。何かは一声鳴くとさっと姿を消してしまった。
「あ…」
何かが行ってしまうと,ショウタの心は再び恐怖と孤独の感情に支配され,その場にぺたんと崩れ,そのまま記憶を失ってしまった。
「おい,ショウタ!」
幾時間経ったのだろうか,父親の声が聞こえゆっくりと目を開ける。
面前に涙を浮かべた両親の心配そうな顔があった。
「ここ…は…?」
ショウタは声ともとれない声を上げる。
「ここはお前の部屋だ」
「え…?俺は湖畔で気を失ったはず…」
「何を言っているんだ,お前は森の入口で倒れていたところを博士に救ってもらったんだ。心配したんだぞ?」
涙で両目をいっぱいにした父親がショウタをがっちり抱きしめた。
「あ,そうだ。これがお前の脇に落ちていたのだが…」
父親はポケットから枝の輪を取り出し目の前に差し出す。
古木で作られたのだろう,黒ずんだ枝を輪っかにして周りには青々とした蔦がしっかりと絡み付いている。
「こんな汚らしい物は捨ててしまうな…?」
「だめ!」
ショウタは父親から分捕り,手首に嵌める。
輪はその瞬間を待っていた様にきゅっとショウタの手首に絡み付いた。
「ショウタ…?」
「ここから何かエネルギーを感じる...言われぬものを...」
ショウタは父親をまっすぐ見据えて決然と言う。
「そうか。お前がそこまで言うならお父さんは何もしないよ」
「うん,ごめんなさい」
「いいんだ。それが一人の立派なトレーナーとしての決断なら...。さ,今夜はごちそうだぞ?」
「うん!」
ショウタは父親とともに,笑顔で待っているであろう家族の元へ向かった。
後々そのブレスレットに纏わる,この世界を大きく揺るがす事件が起ころうとは夢にも思わずに…。
久方ぶりの投稿にして,シリーズ物です!
ポケモンGOが国内配信される前に完成できてよかったです…ε-(´∀`*)ホッ
のんびり亀投稿ですがこれからポケットモンスターシリーズをお願いします!
なお,主の諸事情により不定期投稿とさせていただきます。よろしくお願いします。