「その妙にゴツい杖はどうしたんですか?」
その日も冒険者たちはギルドの酒場で元気にしていた。
「いやぁ、めぐみんにプレゼントしようと思って」
俺がそう言うと、彼女は効果音が聞こえてきそうなほど、”どよーん”とした。
「・・・いいんですよ、こんな蚊取り線香にも満たない魔法しか撃てない私にそんな気を使わなくても・・・。デストロイヤーの時も・・・。私なんて火力も無く何も倒せない、蚊よけ線香ですっ!」
蚊よけ線香とはレアなものに例える。というか、こっちにもあったんだ。
「いや、流石に光子魚雷と自分を比べ続けるのはどうかと思うぞ?それに、デストロイヤーはコロナダイトとかいう凄い動力を使って防御してたんだ。しょうがないって」
言ってはみたものの、めぐみんはまだ”どよーん”としている。
「どよーん・・・」
あ、口でも言ってる。
彼女には悪いことしてたよな。皆で魔王を倒すためにポリシーを捨てて爆裂魔法以外のスキルを取ったんじゃなくて、俺が説明した光子魚雷やバスタービームの威力を聞いて心が折れてたなんて。
でも、いや、だからこそこの杖を持ってきて良かった。
「めぐみん、縮退炉の話し覚えてるか?」
「・・・例の、星すら破壊するバスタービームの動力源のことですか?マイクロブラックホールからエネルギーを取り出してるとかいう。イマイチ、ブラックホールが何なのかすら完全には分かっていませんが」
「あぁ、そうだ。縮退炉はブラックホールの特性を利用してエネルギーを生み出す、強力な動力だ。それのおかげで人類は星を砕き、光速以上の速さで移動できるようになった」
フィクションでは、核の力以上のものが欲しくなったら大体これを使う。
新スタートレックのロミュラン・ウォーバード、ふしぎの海のナディアのN−ノーチラス号、それにハヤテのごとく!の三千院家のサウナも使っている。
「実はこの杖・・・縮退炉が積んであるんだ」
「ッッッ!?」
「今のめぐみんではフルパワーの出力は出せないと思う。でも、俺は信じてみたいんだ。「爆裂魔法こそ最大最強!」と言っためぐみんのこと・・・」
「カズマ・・・さん・・・」
よかった。”蚊も殺せないですみません”という表情から、困惑しながらも何かを期待するような表情に変わった。
「なあ、私は途中からしか話しを聞いていないのだが・・・」
おや、気がつけばダクネスが椅子の後ろにまで来ていた。
「それをめぐみんがフルパワーで使ったら・・・この星に大被害がおきるのではないのか?」
「ははは 縮退炉だぜ?跡形も無くなるに決まってるだろ!」
「ダメだろそれは!!カズマは何を考えているんだ!?それにめぐみんもウットリしない!」
ダクネスはお気には召さなかったようだが、めぐみんは気に入った様で恍惚とした表情で杖に体を擦りつけ始めた。
「ハァッハァッ 縮退炉、破滅の渦から力を得るその禁断の動力がこの中にぃっ〜 ハァッハァッ」
うんうん、よく分かってくれている様で嬉しい。バスターマシンの凄さを理解してもらうために、”星とは何か”から語ったかいがあった。
「おい、私を無視するな!普段なら願ってもないけど今はするな!騎士として湖の街を守るとかそういう話しですらないだろこれ!そもそもこんなものカズマはどうしたんだ!?」
満足気に俺が頷いていたらダクネスが興奮気味に迫ってきた。この杖の話しは民を守護する存在である騎士には刺激が強すぎたのかもしれない。
「あぁ、もう
「プレゼント何かでは誤魔化されないぞ!・・・ところでこれは見たところ、く、首輪のようだが、ど、どんな効果があるんだ?・・・ッいや、あの杖の話しはまだ終わってないからな!」
俺が用意したチョーカーを取り出したらより一層興奮気味に迫ってきた。このアイテムの見た目はオークに「くっ...殺せ///」と言いそうなタイプの騎士には刺激が強すぎたのかもしれない。
「これはチョーカー型の慣性中和装置で、どんな物理攻撃が来てもダクネスが死なないようにしてくれる。例え素っ裸で魔王城のてっぺんから魔族の群れに向かって飛び降りてもこれさえあれ死なないんだ。クルセイダーのダクネスにはぴったりだと思って」
「ほ、ほぉ〜〜、そうかぁ〜〜 いや、なるほど、確かにクルセイダーである私にはぴったりの品だ。うん。さっきの杖の話しも大事だが、このような人々を守るための装備品を早く実践でこの身に慣らすことこそクルセイダーとしてもっと大事なことかもしれんな、うん」
クエストの紙が貼られている掲示板の中から高難易度のものをガン見しながらダクネスはそう言ってきた。
「二人共喜んでくれたみたいでうれしいよ」
俺とてバカではない。もう流石に二人が実は変わった
そして、危なげだった俺とノノの為に自制してくれていたことも。
でも、ノノが覚醒し、コンビニにジャンプを買いに行くぐらいの気分で魔王城にマイクロブラックホールをぶっ放せるようになった今、俺たちはロマンに浸っても良いはずだ。
「それにしても、ノノさんは物凄いものを作れるんですね。・・・そういえばノノさんは?最近見ませんですが」
めぐみんが感慨深げな顔で体全体を杖にこすり続けながら聞いてきた。
「あぁ、ノノには今、宇宙に行ってもらってる」
「宇宙に?意外だな。てっきりカズマに頼まれて魔王を城ごと消し去りに行ったのかと思った」
ダクネスは視線をチョーカーに向けたまま俺を疑ってきた。
「いや、俺、思ったんだ。やっぱり俺の手で、いや、俺達の手で魔王を倒すべきだって・・・。チートが倒すんじゃなくて、俺たちが強くなって、この星のやり方で倒してこそ、本当の意味で魔王が討伐されるんじゃないかって!」
「・・・カズマさん。・・・分かりました!それなら共に魔王を一緒に倒しましょう!!貰ったこの杖と共に!」
「ふ・・・、いいだろう!確かに騎士としてもこのままじゃ味気がなさすぎるからな!!・・・いや、でもそうすると私達が魔王を倒せるようになるまで、魔王軍は野放しということか?・・・正々堂々と魔王には立ち向かうのは騎士の本懐だが、民を守るのも大事な努めだからな・・・」
よかった、二人なら賛成してくれると思ってた。それにダクネスの懸念も・・・
「ありがとう、二人共!皆でもっと強くなろうぜ!あ、ちなみに魔王軍のことはもう気にしなくて大丈夫」
「「?」」
「ノノが手頃なブラックホールを使って作った自立型バスターマシン1千万機が魔王軍を見張ってるから、人に危害を加えようとした瞬間に殺されるんだ」
「ここ数日見ないと思ったら、ノノさんそんなことしてたんですか!?」
「あぁ、安心してくれめぐみん。ちゃんとめぐみんの分は残してるからな?魔王軍の連中は逃げ出さないように城から一歩でも出たら上空からバスターマシンがバスタービームを打つようにしてあるから、20匹ほど死んでから残りは城の中に引きこもってるぞ」
魔王はともかく、魔王軍ごと魔王城を爆裂魔法でやるのはめぐみんにとって最高のロマンになるだろうかな!
「・・・それなら人々は絶対に安全だろうが・・・それはちょっと魔王たちが気の毒ではないか?多分恐怖で泣いてるぞ?」
・・・まあ、確かに今頃魔王城にいる奴らは魔王も含めてガタガタ震えてそうだな。
でも、