プレシア女史がそうすることを。
だからオレたちは持てる全てを使って彼女を目覚めさせようとしていた。
でも、遅すぎた。
きっと、彼女はあれを狙うだろう。
自分の……娘たちのために。
sideカシム
「それで……良いのか?」
「ええ。娘の為なら例え火の中水の中娘のスカートの中までよ」
「「すまない黙ってろ
「ははは。過去これまでカシム君とジェイル君がシンクロしたことは無いね」
シリアスだったのにプレシアの言葉でその空気が霧散してしまった。
そしてプレシアは真面目な顔をしてオレたちに理由を述べた。
「仕方ないでしょ?貴方達はともかく私はそれほど逃げる宛は無いしそれに、私は癌。それも末期癌なのよ?それならアリシアを目覚めさせてフェイトを私と同じようにさせない様にするのが私の努めよ」
その言葉で全員が本気だと思った。
だがプレシア女史ー。
「そのセリフ、鼻血がなければ感動した」
「同感だね」
「私も同意するよ」
「仕方ないでしょ!!今フェイトとアリシアのあんな姿やこんな姿を想像したら……ごめんなさい鼻血が止まらないわ」
「いい加減子離れしろ」
この面子が揃った時点でおそらくシリアスなんてものは無くなるのだろう。
今、それがよくわかった。
「それじゃあカシムはどうするの?」
「オレは……こいつを追わないと行けないからな」
そうして指をさすのは現場写真。
「そうね。お願いするとして」
「次はこちらの話か」
今度はグランツ博士が写真を置く。
「やはり管理局は裏で『アマルガルム』と繋がっていたよ」
『アマルガルム』ラムダ・ドライバ搭載型のデバイスを使用する犯罪組織。
構成員のほとんどは昔傭兵として活躍していた魔導師であること以外不明の組織。
奴らの目的はヤムスクに居る『とある生物』を捕まえること。
そのためにラムダ・ドライバの研究をしているらしいが……無理だろう。
ラムダ・ドライバは基礎理論を知っているジェイルでも解明できなかったものだ。
それ以前に『彼女』を見ることが奴らにはできないのだから。
「……以上だ。ほかになにかあるのなら今ここで言うべきだけど」
「……オレから一つだけ良いか?」
するとジェイルもグランツ博士も意図を察してくれてプレシア女史に目配せする。
「プレシア女史なぜここまでする?」
「そんなの決まってるわよ!!」
プレシア女史は何処からか取り出した1枚のポスターを広げながらオレに説明してくる。
「私は娘を愛している。だから、」
プレシア女史が広げたポスターは
「私は例えその愛すべき娘に恨まれても娘を幸せにしたい!!」
プレシアの娘の昼寝姿だった。
ここ一帯の時が止まった気がした。
プレシア女史はそれに気づいていないのか鼻息をどんどん荒くする。
そして、オレたちはああ、いつものプレシア女史だと思いながら解散していった。
そして次の日新しい殺人現場に残されていたメッセージを見てオレの顔にとある男の顔が浮かんだ。
『翼なき鳥の子供に告げる。
虎の子は還り虎の親は血を流す。
沈める血は輪廻を外れた生き血。
翼を持たない鳥よ待っていろ。
俺はお前たちを喰う』
「何だよ?この文意味がわかんない」
「そうだねぇ〜まぁ、関係ないし良いか!」
「良くない!!」
美咲の気楽な言葉につい声を荒立ててしまう。
その様子を見て美咲と智春はそんなオレを見て目を瞬きさせている。
だけど、この時のオレはそんな美咲達の様子など知らない。
今オレの頭を支配しているのはあの男に対する敵意だけだ。
「……カシムは、あの文の意味を理解したんだね」
「アレはオレにしか理解できないメッセージだ」
「内容を聞かせてもらっても良い?」
美咲がオレに聞いてくる。
それで、オレは少し冷静さを取り戻した。
「まず『翼なき鳥の子供に告げる』これはオレのいたレジスタンス組織のことだ。
次の『虎の子は還り虎の親は血を流す』これはオレたちは死んだが虎の親、オレたちに人を殺す術を教えたある男のことを指す。
その次の『沈める血は輪廻を外れた生き血』これは、
その次の『翼を持たない鳥よ待っていろ』これは奴がターゲットを見つけたと暗に指している。
最後の『俺はお前たちを喰う』これは奴が確実に仕留める時に使う言葉だ」
そして、オレは一呼吸置いてから2人に言う。
「あいつはオレたち転生者の居場所を知りオレたちを殺すと宣言した」
その言葉を聞くと2人とも乾いた声で笑う。
「まさか、そんな馬鹿なこと」
「あり得る」
2人とも無いと言おうとしていたのだろう。
だが、お前たちは忘れてないか?
「オレたち転生者は無意識の内に精神年齢の高さが出ている」
「でも、それだけで判断なんて」
「できない。普通ならな、だが
そう言うと2人ともこれが現実だと思ったらしくいつに無く真剣な様子になっていた。
「このこと、耀ちゃんには?」
「まだだ、今気づいたからな」
そう。と言いながら美咲と智春は学校へ行く準備をし始める。
「オレは……一人で奴を探す」
小声で2人に聞こえないように言った。
これがオレたちの運命を決めた日だった。
彼女は娘のために悪になる覚悟を。
オレは大切な仲間を守る為に再び地獄を進む覚悟を決めた。
この時のオレたちの覚悟が産んだものに目を背けて。
例えそれがこの日々を壊すことになろうとオレたちは止まれない。
いずれ裁かれる日までオレたちは進み続ける。
『次回予告』
その日は僕たちにとって一つの分岐点だった。
主人公とライバル。2人の少女が出会う。
僕らはそれぞれハッピーエンドへ向けて行動し始める。
だけど、僕らは忘れていた。
忠告されていたのに
ちゃんと言われたのに
それがあんな事になるなんて
この時の僕らは知らなかった。
次回『覚悟がないだそうですよ?』