トリオン兵ちゃんは幸薄い   作:看取る人

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死を知りたい

「はぁっ……! はぁっ……!」

 

 少女は駆ける。

 見慣れた市街地を駆け抜けて、自らの家へと駆けてゆく。周囲からは絶え間なく爆音が響いており、通り過ぎた家が瞬く間に瓦礫になっていくのが視界の端に写った。

 その原因は、空に浮かぶ爆撃型のトリオン兵、イルガーだ。上空に浮かんだイルガーが、空襲の如く市街地に爆弾を落としているのである。

 

「お父さん……お母さん…!」

 

 家にいる筈の家族は無事だろうか。それに、今お母さんが造っているあの子は無事なのだろうか。

 頭の中に、嫌なイメージが流れ込んでくる。どうか、どうか無事でいて。そんな祈りも、届きそうになくて。

 

「あっ!?」

 

 地面に転がっていた瓦礫につまずいて、少女は勢いよく地面へとダイブしてしまう。口の中いっぱいに鉄の味が広がって、ジャリッと不快な音がした。

 

「あ……う……いか、なきゃ」

 

 口の端から血を流しつつも、少女は立ち上がって再び走り出す。

 走る、走る、走る。

 世界の半分が赤く染まって見える。転んだときに頭でも切ったのだろうか。目を擦りつつ、ぐらぐらと揺れる視界を突き進む。

 ほどなくして家に辿り着いた頃には、周囲は火の海と化していた。例外なく少女の家にも火の手が回っており、それが少女の不安を一層掻き立てた。

 

「お父さんっ! お母さんっ! --っ!」

 

 家のドアをこじ開けて、玄関へと入る。壁が崩れて、床が燃えている事以外、いつもと変わらない光景だ。しかしその変化が、絶望的なまでのそれが、少女の胸中を嫌な予感で満たしていった。

 廊下を通って、リビングへ。人の姿はまだ見えない。いつも朝食を食べていたダイニングテーブルは破壊され、少女の父がいつも料理を作っていたキッチンは炎に飲まれていた。

 たくさんの"いつも"が破壊されている。それだけでも、少女の絶望は途方もなく深かったというのに。

 

「…………!」

 

 部屋のドアを片っ端から開け放ち、順々に部屋の中を確認していく少女。浴室、寝室、談話室。そして、実験室。

 しかし、どの部屋にも人間らしき人影はなく--それは少女に少しばかりの安堵と、底知れない不安を刻み込んだ。

 

「どこにも居ない……じゃあ、あそこに……!?」

 

 少女は実験室の床に目を向け、何かを探しだした。燃え盛る炎に目もくれず、そこにあるであろうものを探している。

 

「……あった! 地下室への階段!」

 

 むき出しになっていたその無骨な階段を見つけ、少女はその階段を躊躇なく降りていった。

 いつもは隠されている筈の階段がむき出しになっていたということは、誰かが使ったということ。そしてその誰かとは--自分以外では--お母さんしかあり得ない。

 一縷の希望に望みを託し、少女は暗い階段を下りきった。そうして、その先へと続く暗い通路を駆けてゆく。すると、やがて目の前に扉のようなものが見えてきた。

 

「あそこだ! あそこにっ、お母さんが!」

 

 息も絶え絶えに少女は走り続け、勢いよくその扉を開け放った。

 しかして、そこに待っていた光景は--

 

 

「……アハハ。オカアサンガ、コワレチャッタ」

 

 

 血だまりの中央で倒れ伏すお母さんと--それを見下ろすトリオン兵()の真っ赤な横顔だった。

 

「--え?」

 

 少女の思考が一瞬でパニックに陥る。なんで、どうして--が動いてるの。嘘だ。そんなの嘘だ。あの子はまだ動けないはずなのに。

 だけど、色素の抜け落ちたような白髪は、紛れもなく--のものだ。それだけは、間違いない。だって、"そこ"は少女自身が作った部分なのだから

 混乱する頭で必死に現実から目を逸らそうとしていた少女に、髪と相反するような深紅に染まったその目が--少女を見つけて--ニタリと嗤った。

 

「コワレチャッタ。オカアサンコワレチャッタ、マタアタラシイノツクッテヨ--ネェ、オネエチャン」

「い、いや……いや……いやあああぁぁぁッ!!』

 

 

 

 

 

 

『いやああああぁぁぁぁッ!」

 

 ガバッと反射的に飛び上がり、掛けられていた毛布をはね除けてノアは目を覚ました。

 髪は汗でベッタリと額に張り付いており、いつも着ている白いワンピースは白というより、もはや透明になっていた。

 

「はぁ……はぁ……なに、今の……」

 

 夢だった。

 夢だった?

 夢--だった?

 

「夢にしては……リアルだったような……」

 

 不安に駆られて周りを見渡せば、まだ薄暗い部屋に数人の人影が寝転がっているのが見てとれた。それはA級一位太刀川隊のメンバー、太刀川、出水、唯賀。そしてオペレーターの国近である。

 全員が床に突っ伏して寝息をたてており、ノア以外に起きている者は誰もいなかった。コントローラが四つテレビに繋がっているのを見るに、多人数対戦型のゲームをやっていたのだろう。

 

「……また徹夜でゲームしてたんだ」

 

 まるでダメ親父を見るような視線でノアは四人を一瞥し、そこらに置きっぱなしになっていた毛布を一人一人に掛けてゆく。

 出水と唯賀は巻き込まれたのだろうが、太刀川と国近は多分巻き込んだ側であろう。そのくらいの予測を立てられる程度には、ノアはこの隊の雰囲気に馴染んできていた。

 

「だれだ……サンダー使ったやつ……」

「……はちのすにしてやるぜ……すかー……」

「うーん……赤コウラが……赤コウラが……」

「むにゃ……やったー……一位だー……」

「………………はぁ」

 

 それぞれの寝言を断片的に聞き取りつつ、ノアは全員の体に毛布を掛け終えた。今の時刻は午前五時、熟練度の低いゲーマーがちょうど寝落ちする時刻だ。

 無論、国近たちはハイレベルゲーマーなのだが、それでも二日間ぶっ続けでの徹夜は限界だったようである。

 

「ん……ちょっと早いけど、もう行こうかな。多分、起きてるだろうし」

 

 正しくは起きているというより、寝ていないと表現した方がいいだろうか。目的は異なるが、国近たちと同じように徹夜をしているだろうから。

 特に、あの室長は。

 

「でもこれ--うわ、服べとべとだ……着替えていかなきゃ」

 

 着替えの服を探して、ノアはぺたぺたと隊室の中を歩き回る。そうして、机の上にキチンと畳み置かれた子供用の服を発見した。

 これは着替えの服がないと何かと不便だろうと言って、国近が自分の持っている服をノアにプレゼントしてくれたものなのである。「トリオン体だから汗はかきにくいんだけど……」と一度は拒否したノアだが、「持って帰るのめんどくさ~い」とごねた国近のせいで未だに隊室に置きっぱなしなのだ。

 

「まさか、着ることになるなんてね……」

 

 ひとりごちて、畳まれていた服を広げるノア。しかして、それを見たノアは途端に絶句した。

 

「…………これ、着るの?」

 

 そこにあったのは、フリルとレースがふんだんに使われた、黒い色調のとびきり派手な服であった。いわるゆる、世間一般で言うところのゴスロリである。

 今までシンプルな無地の白ワンピースくらいしか着てこなかったノアには少々難易度の高い服装だろう。

 

「……パスで」

 

 再び服を畳み直し、そっともとの場所に戻した。国近は子供の頃あんな服を着ていたのだろうか。いや、持っていると言っていただけから着てはいないのだろう。新品同様だったし。

 色気よりゲーム気の国近だ。きっと子供の時もラフな服装をしていたに違いない。

 

「他には無いのかな……」

 

 ごそごそと隊室の中を漁ってみるも、出てくるのはゲームのキャラが描かれたセーターや、千発百中といった四字熟語が書かれたTシャツだけ。どちらもぶかぶかで、とてもじゃないがノアには着れそうにない。

 これ以上探しても無駄だと悟ったのか、ノアはそれらをキチンと畳んで部屋の隅っこへ放置した。

 

「はぁ……もういいや、行っちゃお。そのうち乾くはずだし」

 

 扉を潜くぐり抜け、太刀川隊の隊室をあとにするノア。その際に後ろを振り向き、寝ている四人を一瞥した。

 

「--大丈夫、だよね。みんな」

 

 頭のなかでフラッシュバックする光景を、頭を振って振り払い、ノアは扉を閉めた。

 大丈夫。みんな、強いから--あ、でもユイガだけは別だったよね。なんて、内心で呟くノアだった。哀れ、唯賀。

 

 

 

 

 

 

 開発室の朝はとても早い。

 なぜならば、とある人物が毎日の睡眠時間を削ってでも仕事にいそしんでいるからである。その人物とは何を隠そう、開発室の室長である鬼怒田本吉だ。

 ほとんどの日を休み返上で働いている鬼怒田さんは、今日も例に漏れず開発室の中で一夜を明かした。特に鬼怒田さんが今必死になって調べているものは、つい最近ボーダーの預りとなったあのトリオン兵のことだ。

 ここ最近毎日のようにデータ解析と理論分析を進めているのだが、一向にその体の仕組みが分かる気配がない。まるで雲を掴もうとしているかのごとく進展がないのである。

 

「……お、おはよー」

 

 噂をすれば、例のトリオン兵のお出ましである。

 白いワンピースに身を包み、おっかなびっくりに開発室に入ってくる姿は、ただの子供にしか見えない。

 しかし、その実態はあのA級一位の部隊と同等の戦闘力を持つ人型のトリオン兵なのである。

 

「…………おぉ、来おったか」

「わっ、目の下のくまがすごくなってる……」

 

 二人が顔を会わせるのはこれで10回目である。最初は、捕まってここに来たとき。2回目は、会議室で話をしたとき。3回目から10回目は、こうして開発室で検査をするとき。

 何だかんだで太刀川の次に顔を会わしている人物なのである。

 

「……さて、早速解析だ。いつもの部屋に行っていてくれ。少しデータを纏めたら行くからな」

「あ、うん。分かったけど……」

「……どうかしたのか?」

「ちょっと寝た方がいいんじゃない? アタシが来てからまともに寝てないんでしょ?」

「………………」

 

 このトリオン兵は、時々人間みたいな事を言ってくるのだから困る。

 こちらはただ単に未知の技術を解析するためだけに会っているというのに。これでは本当の人間と会話しているみたいではないか。

 

「……ふん。お前がそんなことを気にする必要はない。わしはまったくもって平気だ」

「でも」

「平気だと言っておるだろう。早く行け」

 

 食い下がるトリオン兵を、鬼怒田さんはぶっきらぼうな態度で突き放す。するとトリオン兵は少し考えたような態度を示したが、ぺたぺたといつもの解析部屋へと入っていった。

 その後ろ姿が少し寂しそうだったのは、きっと気のせいじゃないだろう。

 

「…………はぁ」

 

 こめかみを抑さえ、ひとつ大きなため息を吐いた鬼怒田さんは、散らかった机の上の資料を纏め、腰を上げた。

 とりあえず、今はあのトリオン兵の解析が先だ。それ以外の余計なことは考えている暇はない。

 鬼怒田さんはこれまでの解析で得られたデータを頭の中で反芻しつつ、トリオン兵が待っているであろう部屋に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

「今日はどんなデータを集めるの?」

『戦闘時のデータを集める』

「…………えぇ」

『露骨に嫌そうな顔をするな!』

 

 ガラス張りの壁の向こうから、鬼怒田さんがマイクで話しかけているのが見える。

 戦闘時のデータ収集。これは今現在判明しているトリオン兵各種と戦うことで、ノアの戦闘力を測るというものである。

 とは言え、通常状態のノアは戦いがすこぶる苦手なので、ちょっとした手順を踏む必要があるのだ。その手順というのが、ノアにとってはかなり嫌なものなのであるが。

 

『では行くぞ、最初はモールモッドだ』

 

 鬼怒田さんの言葉と共に、ノアの眼前に昆虫のようなフォルムをしたトリオン兵、モールモッドが姿を現す。

 脚についたブレードをカタカタと動かし、獲物を認識する単眼でノアをギョロリと睨んだ。

 

「うっ……」

 

 最初がモールモッドなのには理由がある。というのも、モールモッドのブレードが一番効率的だからである--痛みを与えるのに。

 モールモッドが脚についたブレードを振り上げて、ノアに迫る。

 

「…………ッ!!」

 

 右手を前に差し出したノアは、そのブレードを特にどうすることもなく--ただ受けた。

 細く白い右腕が、軽い音を立てて宙に舞った。

 

「----ッ!! う、あああああぁぁぁっ!!」

 

 刺すような激痛。感覚の消えた右腕。視界の端に写る、宙を飛ぶ右腕。

 それらの事実が、ノアの思考を鈍化させてゆく。たった今見ている光景が、まるでピントが外れたカメラのように遠くに遠ざかっていく。

 それと同時に、体のコントロールが自分の意識から離れたような感覚があった。

 

(----あ)

 

 瞬間、ノアの体はモールモッドの頭上を一息に飛び越え、部屋の端に着地していた。

 着地したノアの右腕を見れば、その腕はどこにも異常が見当たらない。元通りの腕へと生え変わっていた。

 しかし、完璧に元通りかと言えば--そういうわけではなく。

 

「グルル--グルアアアアァァァッッ!!」

 

 生え変わった腕からは更に黒い体毛が生え、その手の先には鋭い爪が生えていた。左腕も同様に、獣の腕と化している。

 頭からは黒色の獣耳が生え、目は瞳孔が狭まった獣の目となっていた。

 

「グルゥッ!」

 

 部屋の壁を足場にして、ノアは思いっきりモールモッドに向かって突撃した。そうして、右手を振り上げると、まるでさっきのお返しだと言わんばかりにモールモッドのブレード部分を右手の一振りで破壊する。

 粉々になったブレードが、ノアの周囲に飛び散った。

 

『おぉ……やはり攻撃力は凄まじいな』

 

 トリオン兵の中でも随一の硬度を誇るモールモッドのブレードを、真っ向から叩き壊せる程のパワー。そしてモールモッドの反応精度を上回るスピード。そして狂暴極まる性格への変化。

 どれを取っても、普段のノアとは似ても似つかない状態である。

 

「グァウッ!」

 

 右腕を下から振り上げ、そのままモールモッドのボディを両断するノア。姿が変化してからおよそ十秒。その短時間で、一匹目のモールモッドは無惨な残骸と化してしまったのだった。

 

『よし、次はバムスターだ。装甲をかなり厚めに設定しておいてくれ』

 

 鬼怒田さんの指示と共に、捕獲用トリオン兵のバムスターがノアの目の前に出現する。

 芋虫に四本の脚が生えたような独特なフォルムをしたそのトリオン兵は、こちらの世界へ送り込まれる中でも最も一般的なトリオン兵の一種だ。

 鬼怒田さんの要望通りなのか、普段見かけるバムスターよりも二回りくらい大きいことが見てとれる。

 しかし、

 

「グルウァァァッ!!」

 

 ザクン、と。まるでレタスが半分に切り落とされるかのような音を立てて、バムスターは真っ二つに両断されてしまった。言うまでもない--ノアが両断したのだ。

 これには開発室の面々も驚いたようで、口々に驚きの声を上げている。そんな中、鬼怒田さんだけが表情を変えず、いつも通りのしかめっ面を保っていた。

 

『次はバンダー、その次はバド、最後にイルガーだ。それが終わったらランダムに十匹出現させてくれ』

 

 このくらいは予想の範囲内とでも言いたいのか、更にトリオン兵の追加を要求する鬼怒田さん。何だかんだ言いつつも、ノアのこの力を認めているのかもしれない。

 その後も木の葉のように次々とトリオン兵を破壊していくノア。がむしゃらだが最速で最短なその動きは、まるで本能で動く獣そのものである。

 

(……このプログラムを作成したやつは、いったい何を考えてこんなものを作ったのだ? 自己防衛にしてもやり過ぎている……過剰防衛という言葉ですら生ぬるい)

 

 不可解だと言いたげに鬼怒田さんは眉をひそめ、ノアがトリオン兵を蹂躙する光景を眺めていた。

 

(このトリオンの瞬間計測値……やはりブラックトリガーレベルだ。こやつの小さな体のどこにそんなエネルギーが隠れている? まさか--)

 

 そうしていると何かに思い至ったのか、鬼怒田さんは側にあるモニターに触れ、何かを打ち込んでいく。タッチパネル式はジッサイ便利。

 

(--やはりそうか)

 

 納得がいったとばかりの顔でモニターから視線を外し、再びガラス窓の向こうに居るノアに視線を向ける。

 今までに収集したデータを組みあわせ、ノアの構造の秘密を解き明かす--それを現状第一の目的として、徹夜を積み重ねてきた。しかし、これは。予想外というか、そんなことが理論上可能なのかと疑ってしまうようなノアの体の秘密に、鬼怒田さんは頭を抱えた。

 言うべきか、言わざるべきか--それはもちろん、城戸司令に対してである。

 これを報告すれば、ボーダーによるノアの扱いは劇的に変わるだろう。それもほぼ確実に、悪い方向に。

 

『……もういいぞ。戦闘データの収集、終了だ』

 

 どうしたものか。これを伝えればボーダーの戦力は飛躍的にアップするだろう。しかし、それはそれで相応のリスクがあるのもまた事実。

 かといって、ノアをこのまま放置しておく訳にもいかない。この力は見た目以上に危険で、使い方を間違えればそのままこちらに跳ね返ってくる可能性を秘めているからだ。

 諸刃の剣。

 この力にはそんな言葉が相応しい。今はまだ何の問題も起きていないが、これからもそうだとは限らないのだから。

 

「グルル……フーッ……フーッ……あ」

 

 スゥッ、とノアの目が元に戻り、それを皮切りに手足に生えた爪と体毛も消えていく。いつ見ても不思議な光景だが、常からトリオン体だということを鑑みれば不思議でもなんでもない。

 トリオン体の外見を変えている隊員はいるし、その応用プログラムが組み込まれていると考えるのなら納得のできる話だ。

 

「あ……おわった」

 

 手を握ったり開いたりして、感触を確かめるノア。どうやら時間が経てば元に戻る仕組みらしい。そのタイムを計るのも、データ解析の内の一つだ。敵が一掃されたから戻った--というのも、あるかもしれないが。

 

「今日のデータ集めはもう終わり?」

『……ああ、終わりだ。帰っていいぞ』

「あれ、珍しいね。いつもならこれから身体検査とかやるのに……」

『……お前の忠告を聴くべきだと思ったのでな』

 

 一応鬼怒田さんの中だけとはいえ、結果が出たのだから考えを纏める必要がある。そう考えた鬼怒田さんは、この一週間徹夜後のぼんやりとした頭では判断を下せないと考えたのだ。

 そんなに重大な決断を下さなければいけないほどに、ノアの存在は大きいという事でもあるのだが。

 

「じゃ、じゃあ……帰るよ? 本当にいいの?」

『いいと言っておるだろう……早く行け』

 

 ぺたぺたと部屋の出口まで歩き、そこから退室するノア。

 それを見送った鬼怒田さんは心底困ったといった表情を浮かべ、眉間のしわを手で押さえた。

 

「……本当に、厄介なものを拾ってきてくれたわい」

 

 開発室の扉から出ていくノアをモニターで確認しつつ、鬼怒田さんは極大のため息をその場で吐き出したのだった。

 

 




 カバー裏風キャラクター紹介

※お休み。
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