話の構成上会話多めです
――歴史は勝者によって記される。
――だが勝敗を決めるのが血を流した戦士達とは限らない。
<07:22>
伊丹耀司 陸上自衛隊・二等陸尉/タスクフォース141・サバイバー
立川飛行場
立川飛行場は都市部より西寄りに数十キロ離れた土地に存在する防衛省所轄の飛行場である。
定期的に航空自衛隊や海上保安庁が訓練に用いている場所とあって、各種航空機が離着陸を行うに足りる規模の滑走路も備えており、伊丹らを乗せたIL-76は空自の戦闘機による誘導を経てそこに着陸する事と相成った。
着陸した伊丹達を出迎えたのは完全武装した陸上自衛隊の隊員らである。各種輸送車両のみならず、空からは飛行場に隣接する駐屯地から飛来したUH-1Jも飛来するという、文字通りの厳戒態勢を敷いて輸送機を取り囲んだのだ。
しかし物々しさとは裏腹に、一応武装は解かぬまま機体から姿を見せた伊丹達への応対に当たった幹部自衛官の物腰は極めて丁寧であった。
「伊丹二等陸尉ですね。防衛大臣ならびに内閣総理大臣からの命令により、我々が貴方がたの護衛に当たります。ハードな一夜を過ごされて皆さんお疲れでしょう。どうぞこちらで衛生科の診察を受けて下さい」
そう促す幹部自衛官が伊丹へ送るまなざしには、過剰なまでの敬意と畏怖が籠められていた。問題児として名を馳せた当人から、してみればくすぐったいやら居心地が悪いやらでちょっと腰が引けてしまう。
案内されるがまま格納庫内に臨時で設置されたテントに移動すると、男女に分かれて衛生科の医官相手に診察と治療を受けた。
女性側はまだしも、男性側の医療テントに集まったのはつい数十分前まで苛烈な実戦に参加していた為に未だ鋭い気配をプンプン漂わせる屈強な男達(しかも半分以上が外国人)ばかり。
暴力と殺気の名残を敏感に感じ取ってしまったのか、医官や女性の看護官が少しばかり怯えていたのが印象的で、同情を覚えつつもついつい苦笑まで漏らしてしまった伊丹である。
診察と治療を終えると、今度は医療テントと隣接する別のテントへ案内された。中には折り畳み式の簡易ベッドが並んでいた。しばらくここで休んでいて欲しいと言われたのでめいめい好きなベッドに腰を下ろす。
途端にずっしりとした疲労に襲われ、伊丹はすぐ手の届く所にそのままベッドへと倒れ込んだ。途中で痛めた左肩の事を思い出して、右側を下にして体を投げ出す。簡素なパイプ製のフレームがギシギシと悲鳴を上げた。
「つかれたー……チクショー、このまま寝ちまいてぇー」
口ではそう言いつつも目は冴えたままだ。レレイやピニャらを『門』の向こう側まで送り届けるまではまだ任務は終わっていないと、兵士としての精神が頭の奥底で主張しているからである。
すると、隣のベッドで同じように体を投げ出した富田が疲れのせいで掠れた声をあげた。伊丹よりも若く体格もタフネスも上である筈だが、流石の富田でも今晩は過酷に過ぎたようだった。
「隊長……隊長も日本に戻られるまであのような戦いをずっと体験してたんですか?」
「んーそうだな、今日一晩ひっくるめてだと中の中ぐらいかなぁ。仲間もいたし武器も支援もそれなりにあった分、まだマシな方じゃないの?」
「……どれだけ過酷だったんですか今まで隊長が参加してきた任務って」
「んー、特にヤバかったのだと、武器も戦力も馬鹿みたいに揃えた警戒厳重な軍事基地に、航空支援も火力支援も無い状況でたった3人で攻め込んだ時かなぁ」
隣から帰ってきた反応は無言であった。顔を向けなかったので、部下が大口を開けて絶句している姿は伊丹の目に入らなかった。
伊丹と富田以外の面々、戦友の窮地に駆け付けた兵士連中もまたベッドに寝寝転がったり、仲間内で雑談を始めたり、診察の為に一旦外しはしたものの自衛隊に預けたりはせずそのまま持ち込んだ装備類の点検をしたりとそれぞれ好きなように暇を潰し出す。
テント内に紫煙がうっすらと広がっては溶けていく。プライスが愛用の葉巻を吸い始めたからであった。テントの外、そしてテントが設置された格納庫の更に外からヘリのエンジン音が鳴り続けている。
鋼鉄の唸り声と空気を叩く音の合間から、また隣から部下の声がポツリと伊丹へ投げられた。
「自分達、これからどうなるんでしょうね」
「さあねぇ。どうも嘉納さんや首相はアメリカに歯向かってまで俺達をこうして保護してくれたみたいだから、そんなに悪いようにはしないと思いたい所だけど」
「そうだと良いんですが……隊長達の時みたいにもしかして、って事も……」
部下の発言を聞き、伊丹は富田もまた現役米軍将官であったシェパード中将の裏切りというTF141壊滅の真相を知ってしまった事を悟った。
おそらくは空港で裏切りの符丁をプライスへ伝えた際にその由来を老兵から教えられたに違いない。今の富田の場合は壮絶な一夜に肉体のみならず精神も疲弊し、ついついこのような考えが口を吐いてしまったのだ。
「あの爺さんから言われた事は忘れちまえ。うっかり教えられたのがバレたら身の安全は保障できないぞ。世の中知らないフリして黙ってた方が良い時もあるんだ」
「肝に命じておきます……」
「けどよ、これからの処遇云々についちゃ俺も気になってるぜ。イタミらと違って俺達ゃ正式な部隊に所属してない傭兵なわけだからな」
「エンリケの言うとおりだ。個人の火器弾薬に関してはまだ手弁当で済ませられるが
そうだそうだ、と話に加わったのは傭兵組である。なお、
「そういえば
という野本の呟きは伊丹の耳には届かなかった。
「それについては私の方からこれから説明しましょう」
エンリケらの疑問に答えたのはテント外からの声であった。
内外を仕切る幕がめくられ、仕込み刀を思わせる気配をスーツの下に秘めた人物、警視庁公安部所属の駒門が、男性陣よりやや遅れて検査を終えた女性陣を引き連れてテントに姿を現した。
この公安警察官と別れたのは一昨日の夜中なのだが、伊丹はこれまた数か月ぶりに顔を合わせた錯覚に囚われた。
「そちらの兵隊さん方は初めての顔合わせになりますな。防衛省情報本部から参りました駒門と申します。どうぞお見知りおきを」
「情報本部ってどんな組織なんだ?」
「そりゃ読んで字の如く日本の情報機関の事だろ」
「つまりスパイか、日本にもいたんだな」
とはモンゴメリとエンリケのやり取りである。CIAだのMI6だのKGBといった欧米の情報機関ほど創作のネタにされない分、彼ら外国人傭兵からしてみれば日本の情報機関は耳慣れない存在なのだ。
「それで、日本のスパイが何の話だ」
プライスが葉巻を吹かしながらさっさと話を進めろとばかりに言う。
「実は私、元々こちらの来賓がたのエスコート役を命じられていた者でして。まぁ途中からお役目御免にされましてね、それからはお偉いさんとの折衝役などに専念していた訳ですが」
お役目御免、の所でほんの一瞬細く覗く駒門の瞳が伊丹を見た。
駒門にスタンガンを食らわせ、来賓一行から無理矢理離脱させた犯人こそ伊丹である。「アハハ……」と伊丹は引き攣った苦笑いを浮かべながら、気まずそうに顔を背ける他なかった。
「手短に今後の事について皆さんに説明させて頂きます。まず来賓の方々についてですが」
公安警察官の視線が伊丹ら同様ベッドに腰を下ろしたピニャらへと向いた。例によってレレイと栗林が通訳として傍に付き、テュカとロゥリィは鉄パイプのフレームと普通の織布とも毛皮とも違う材質のシートで構築された簡易ベッドを珍しそうに触っていた。
ちなみにロゥリィのハルバードはテントや簡易ベッドに立てかけようものなら重みに耐え切れず崩壊しかねないという事で、初めて銀座に足を踏み入れた時のように刀身を布で覆った上で足元に置いてもらっている。
「来賓の方々には受け入れ準備が整い次第、『門』がある銀座駐屯地までヘリで直接送り届けますのでそのまま特地へ帰還していただいて結構です。その際に昨晩山海楼閣に残されました皆様の荷物を―こちらで回収でき、目立った破損の無かったものに限られますが―お返しいたしますので、後ほどご確認願います」
などと駒門が説明を終えた途端、特地女性陣の間にあからさまな程の喜びと安堵の溜息が漏れた。
レレイ・テュカ・ロゥリィは買い物でゲットした趣味の品々、ピニャとボーゼスは図書館で掻き集めた帝国にとっては値千金、どころか国家の行く末も左右しかねない大量の情報と、方向性は大きく違えど特地ではまず入手不可能な存在を危うく置いて帰るところだったのだ。ホッとするのも当然であろう。
「次に助っ人に駆けつけて下さった方々のうち、国に所属していない傭兵の皆さんに関しましては後で機密保持に関する書類をお配りしますんで、それに同意していただければ何事もなく解放させていただきますよ」
「もし同意しなかったら?」
「その時は皆さんが所持していらした物騒な品々の出所について色々と質問をしなきゃいけなくなりますな。こちらとしましても、特地来賓と同胞である自衛隊員の救出に貢献してくれた勇敢な貴方がたの痛い腹を探るなんて真似、したかないんですがねぇ」
「ケッ、陳腐な脅しなこって」
「余計な事言うなエンリケ」
「……最終的な結論は実際に書類の内容を確認してからになるが、機密保持に関してはもちろん同意しよう。
だが傭兵にも信念があるということを忘れないでもらいたい。分かっているとは思うが、もし日本政府も口封じの為に我々や伊丹達を陥れようとしたならばその時は……覚悟しておけ」
「おお怖い怖い……安心してくれ、今更そんな情けない真似はしないとも」
直接向けられていない伊丹達ですら肌がざわつくほどの本気の覚悟と殺意を漂わせながら宣言する野本であるが相手も海千山千の公安である。駒門は畏れるどころかむしろ楽しそうに笑いながら、脅しをあっさりと受け流した。
なお同意書には箱根ならびに大島空港での戦闘、更に伊丹らTF141生存者が海外で活動を行っていた当時まで遡って共同戦線を張っていた事を口外しないようにという条件も含まれていたが、最終的に傭兵勢はその条件も含め同意する事を選んだ。
野本らに後日政府から多額の報奨金が与えられた事を伊丹が知るのは、彼が特地に戻ってしばらくしてからである。
駒門の部下に促され、同意書を書く為に野本達がテントから連れ出されていく。
傭兵達は出て行く間際「元気でな」とか「また会おう」などと律義に伊丹らへ声をかけてくれたので、伊丹も男臭い笑みと共に敬礼で見送った。
「では最後に伊丹さんと同じ部隊にいたというお仲間さん方の今後についてですが、その前に伝えなければならない事がありましてねぇ」
「前置きは良い。さっさと言え」
にべもなく、どころか最早脅しのようにおっかない声色で急かすプライスに苦笑を浮かべる駒門。
「んじゃあご希望通りに率直に言いましょう――日本政府はタスクフォース141の活動に関する情報を公表する事を決定、本日未明に全世界へ公開しました」
<数時間前>
とある通話記録
『こう言っちゃなんですがね本位さん、俺ぁまさかアンタがここまで大胆な手を打ってくるとは思いもよりませんでしたよ』
『考えてみれば単純な話でしたからね嘉納さん。
アメリカがこうまでして例の部隊の生き残りに対しての口封じを望んでいるという事は、それだけ彼らが知る秘密が
『けれど大丈夫なんですかい? 裏取引を反故にされたアメリカさんは言わずもがな、あの話をぶちまけるとなると各国からも何と言われるやら分かったもんじゃありませんぜ』
『その点も大丈夫ですよ。アメリカが最も隠したい米軍将官の裏切りについては公開するつもりはありません。それに既にクレムリンとダウニング街とホットラインを使って協議し、今回の情報公開に関する協力も取り付けておきました』
『……なるほど。それでロシアとイギリスからはどんな対価を求められたんで?』
『極々シンプルかつ些細な取引ですよ。今回の情報公開の当事者である両国関係者の保護は日本で行う事、ならびに特地派遣部隊への駐在武官を派遣する許可、この2つです』
『当事者の保護と駐在武官の派遣……おいまさか』
『ええ、嘉納さんのお考えの通りです。今回の騒動で例のマカロフの残党が現在も驚異的な戦力とコネクションを保持している事が明らかになりました。
そんな彼らに対し、程度はどうあれイギリスもロシアも先の第3次大戦で国力に甚大な被害を負い、未だ復興し切れていない事は変わりなく、いくら英雄とはいえ財政界の重鎮でもない例の部隊の残存メンバーをテロリストの報復から保護する為に随時厳重に警護し続けるのは、疲弊しきった今の両国にとって大きな負担になります。
尤も彼らは最後の任務達成後、病院から姿を消していた訳ですが、それがよりにもよって全員日本に潜伏し、今回の騒動で姿を現したのはロシア・イギリス双方にとって好都合だったでしょうね』
『だから第3次大戦に巻き込まれなかった日本に厄介者になった彼らの保護を押し付ける、そのついでに特地に送り込ませて独自の情報源を確保、ってぇのがロシアとイギリスの魂胆か』
『その分、情報公開以外にもロシアには主に中国の、イギリスには欧州各国から特地に関する要求を求められた時の宥め役をしてもらうよう約束しましたので、一概にこちらの損にはなりませんよ』
『ロシアとイギリスに関しちゃ分かりましたよ本位さん。ですがアメリカにはどう対処するかに関しては答えてもらってませんよ』
『……油田の火災を消す時のように、大爆発で酸素を奪い炎を消す事が出来たとしても、消えるまでに生じた被害が無くなる訳ではありません』
『本位さん?』
『こちらが情報公開を行うまでに流出した機密情報、そして箱根と伊豆大島で発生した大規模な戦闘、この2つの責任問題だけで遅かれ早かれ政権は潰れるでしょう。あるいはその前にアメリカが閣僚のスキャンダルをばら撒く方が先かもしれません。
いずれにせよ、壊れてしまうなら被害が広まらない内に潔く解体してしまう方がよっぽど良い。そうは思いませんか』
『本位さん、アンタまさか』
『私は今回起きた騒動の全ての責任を取るという名目で辞任するつもりです。政権を投げ捨てれば全てはご破算、握られた秘密も価値がなくなりますから』
『だが、そんな事をしたら政治家としておしまいだぞ!』
『構いやしません。どうせやるならこの際、歴史に名前が残るくらい飛び切り派手にやってやりますよ。特に散々好き勝手にこちらを振り回してくれた野党や、裏で蠢いていた外国勢力には痛い目を見せてやるつもりなので、楽しみにしていて下さい』
『本位さん、アンタそこまで……』
『……聞いて下さい嘉納さん。国民と国益の為に自国の兵士を戦場へ送るのは、人としてはどうあれ、国を動かす政治家として当たり前の選択だと私は思います。
ですが、国民の為でも国益の為でもなく、余所の国の不始末を隠蔽する為に自国民を、それも世界を救った英雄の死刑宣告書にサインを強いられる……政治家以前に1人の人間として、こればかりは認める訳にはいきませんでした』
『…………』
『嘉納さん、今回の事は可能な限りそちらに迷惑がかからないよう手を回すつもりです。ですから、後は――日本を頼みます』
通信切断。
『あの馬鹿、腰抜けの癖に最後は粋がりやがって……いや、もう腰抜けなんて言えねぇな』
<同時刻>
クレムリン宮殿
『大統領閣下、あのような取引をモトイ首相と結ばれて本当によろしかったのですか?』
『当然だとも同志補佐官。考えてもみたまえ、いくら狂犬マカロフら超国家主義派の暗躍があったとはいえ、WW3を引き起こした当事者として世界の悪役扱いされているのが今の我々ロシアだ』
『それは重々承知しております』
『しかしマカロフを止めた例の部隊には、元スペツナズや政府支持派のPMCといった同胞も複数参加していたそうではないか。
マカロフが悪いロシア人ならば、彼らのような善いロシア人もいる。確かに我が国は正しき道から1度は足を踏み外してしまったが、彼ら忍耐強き善良な人々がこの国に存在し続ける限り、ロシアはより強く、より栄えるであろう――
今のをメモしてスピーチライターに渡しておいてくれたまえ。国民向けの演説に使えそうだ』
『了解しました閣下』
『ともかく例の部隊の情報が公開され、我が国の人間もマカロフ排除に深く関わっていたと知らしめる事が出来れば、ロシアはどのような時であっても自浄作用を持つ国であるとして諸外国へ宣伝できる。
特に先の戦争で直接的な被害を受けた欧州各国には良いアピールとなるだろう。それに――』
『それに、何でしょうか』
『同志ワルシャフスキーは私の旧来の親友なのでね。友人とその家族を助けてくれた恩人らに、少しは借りを返したいと思うのは理由としては不十分かな、同志書記官?』
『いえ、納得いたしました大統領閣下』
『よろしい。では早急に記者会見の準備を頼む』
<更に同刻>
ダウニング街10番地
『マクミラン長官、日本からの提案を我が国が受け入れるに足るメリットを述べてちょうだい』
『分かりました首相。まず第一に我が国出身の駐在武官を特地へ送り込む事で日本が独占していた『門』の向こう側へ他国、特にアメリカに先んじてイギリス独自の橋頭保が設置される事となります。これだけでも大きな成果と言えるでしょう』
『それはロシアも同じ事が言えるけれどね。続けてもらえるかしら』
『特地に我が国独自の足場を確保出来ると同時に、マカロフ亡き後も未だ活動下にある超国家主義派の残党、彼らの標的リストの上位を独占している例の部隊の生存者の面倒を日本へ一任する形となります』
『ロシア軍による直接侵攻は免れたとはいえ、化学兵器による指揮中枢への被害はまだ完全に立ち直れたとは言えない現状、余計な労力をかけずに済むのは確かにありがたいわ』
『第3に、国内への世論。マカロフ率いる過激派の策謀が原因とはいえロンドンにおけるテロならびに第3次大戦によって家族や友人を喪った国民の中には、ロシアに対し過剰なまでの報復を求める声が今も多く上がっているのが現状です』
『復讐は次の復讐を生む』
『ジャーナリストも時に真理を突きますが、個人としてはこちらが好みですな――復讐を思い止まる者は、それを望む敵よりも優れている』
『フランシス・ベーコンね。つまり同胞によって血の報復が遂げられたという点を国民へ知らしめる事でロシアへの過剰な悪感情を抑え込みたい、と?』
『血は十分過ぎるほど流れました。我々も、向こうも、お互いに、多くの兵の血が』
『問題はアメリカよ。我が国だけならまだしも、よりにもよって日本が同盟国である自分達を差し置いてロシアの人間が特地への立ち入りを許したともなれば、いきり立つという表現も生ぬるいほどの反応を見せるでしょう。今の大統領なら尚更ね』
『僭越ながら首相、その心配はまず不要でしょう』
『理由を教えていただけるかしら、マクミラン長官』
『相手の金玉を握っているのは我々の方です。自ら潰されに行く覚悟がない限り、アメリカ側に出来るのは大人しく日本に頭を下げながら我々に便乗する事ぐらいですな』
『政治――主義・主張の争いという美味のもとに正体を隠している利害関係の衝突。私益のために国事を運営する事』 ――悪魔の辞典
いつも言った事が守れない作者で申し訳ありませんorz