プルトイド休戦協定
広間は静かながら妙な緊張感に包まれていた。
入り口から一番奥に当たる部分に演台が設置され、机が備え付けられている。その手前に当たる広間は大まかに二色に分かれていた。白い軍服の地球連合軍と、小豆色の軍服のグランゼーラ革命軍だ。きっちり左右に分かれて直立不動で整列している。その周辺に黒服の文官達ももちろん居るのだが、軍人らが目立っていた。今ここで行われているのは休戦協定の調印式なのだ。双方とも一分の隙もない様に異様な整然さを保っている。彼らは衣擦れの音さえ耳に触るほどの静寂さで誰もが固唾を呑んで前だけを見ていた。
バイド兵器の是非を原因に戦争状態にあった地球連合政府とグランゼーラ革命政府が、今日、休戦協定を結ぶことになったのだ。互いに主張を譲らず平行線を辿っていた両政府だが、今回休戦を合意したのには幾つか理由がある。
グランゼーラ革命軍キースン大将を中心とする革命軍上層部が太陽系解放同盟を名乗り、革命軍を離脱し、両政府に宣戦布告したこと。グランゼーラの重要拠点であった木星-土星間宇宙要塞ゲイルロズが一時的に地球連合に奪還されたこと。同じくグランゼーラ革命軍影響下にあった冥王星基地グリトニルを太陽系解放同盟軍が奪取し、その解放同盟軍を地球連合艦隊が下し、グリトニルが地球連合軍の勢力下となったこと、この第三次グリトニル戦役の間に、ゲイルロズは革命軍別働隊が辛くも再奪還しグリトニルで地球連合軍も戦力をすり潰していたこと。そして何より、太陽系解放同盟が新兵器を開発しながら太陽系外に逃亡し追撃しなければならないこと。これらの情勢から両政府の打算にまみれた協議の結果、休戦を行うことになったのだった。
つまりは双方ともに戦争を続ける体力が無くなったところに共通の敵が現れたため、数々の問題を棚上げにして右手で握手を行うこととしたのだ。もちろん左手にはナイフを隠し持って。
舞台両脇にはスーツ姿の二人の男性の姿。連合・革命軍の全権代表だ。二人が舞台の両脇から壇上に上がると、会場がわずかにざわつき空気がさらに張り詰める。官僚らしき人間が机の上に書類を用意すると、両代表はその内容をチェックし、二枚の書類の署名欄にそれぞれサインをする。チェックと言ってもすでに双方の官僚らが意見をすり合わせ何十にも確認したものだ。そして両代表は控えめな笑顔を浮かべ握手をすると、会場は今までの静けさが嘘のように歓声が飛び交い、隣り合った両軍将兵の中には握手を交わすものも居るほどだった。中には悔し涙を流すものや、怒りに拳を握りしめる者、ただ瞑目する者もいるが、全体としてはこの地球人同士の戦争が終わるのを喜んでいるようだった。
これをもって地球連合政府とグランゼーラ革命政府は人類を二分していた戦争を一時休止した。後にプルトイド休戦協定と呼ばれる出来事だった。
最新話書くのに昔の話を読み返していたのですが、
プロジェクトR!の様に編集がてら新しく投稿した方がいい気がしました。