グリトニル戦記   作:ヒナヒナ

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籠城戦

「籠城戦」

 

 

 

 

 

基地防衛部隊が各所で奮闘し、バイドの侵攻を遅らせているそのとき、研究区画の方からゴロゴロという何かを転がすような異音が聞こえてきた。防衛部隊員がバイドかと思わず振り返ると、白衣を着た研究員らがキャスターの付いた何か重そうに押していた。あり合わせの部品を組み合わせたらしき何かの射出機構と、その中央には熱を感じないのにオレンジの光が漏れる巨大な杭があった。英雄艦隊から連絡員として来てそのまま居着いてしまった研究員。その中年の男――ドクが大きな声で呼びかけてきた。

 

 

「待たせたな。Team R-TYPE特製BBS投射機だ!」

「BBSだって!? 巫山戯んな、それは解放同盟が暴走させたってアレだろ!」

「解放同盟の本隊は、あまり良いバイド種子がなかった所為ですね。これは膨れてその場に停止するという単純命令に限定しているので、時間稼ぎにはなるはずです」

「つまり?」

「この投射機でBBSロッドを射出して、通路を進んでくるバイド体に打ち込みます。バイドは命令に従ってその場で止まって後から来るバイドに対して栓になってくれる」

「……どのみちバイドは来るし、使える物はすべて使おう、ただし失敗した俺達の命が飛ぶがな!」

 

 

相手がTeam R-TYPEとあって、信用できるのか。と皆で見合ってしまった防衛部隊だが、不定形の肉塊になるまで成長したバイドが奥の変形した隔壁を打ち破って侵入してきたため、隊長は緊急事態だからと協力を要請した。それを受けた研究員達はあり合わせ板を車止めに噛ませて、通路の奥に手動で方向を調整する。研究員が手元のツールを弄ると1mはある杭がほのかに輝いた。そして、投射機から離れる様に合図したあと、ドクが発射を叫ぶ。圧力さえ感じる硬質な爆音に耳を塞ぎながら、通路の中頃まで迫っていた小型バイドにアンテナ付きの杭が刺さっていた。

 

 

「うわっ! 生で見るパイル射出はおっかないな。おい、BBS起動信号送信してくれ」

「ちょっとまってください。……バイドバインドシステム改起動します」

 

 

受け答えをした研究員がさらに手元で操作する。紫色の小型バイドに突き刺さっていた杭は見る間にオレンジ色の光を放つと、バイドがビクリと反応し、続いてバイドはむくむくと通路幅いっぱいに膨らむと、中から人の顔のような物がわき出てくる。苦悶の表情のような物を浮かべるそれは、次々といくつも浮かび上がっては溶けていき、そのうち膨れあがったバイド体は少し萎みながら角質化していった。隔壁の影から見守っていた防衛隊と研究員達はそれを確認して喜ぶ。それから防衛隊のリーダーがドクに訪ねる。

 

 

「なんだって、あんたらは指令室からの通信を無視してたんだ?」

「いや、研究員総出でこいつ弄ってたら何にも気づかなかったよ。誰か気がついた?」

「あ、呼び出しは気がつきませんでしたけど、僕、通信機のスピーカープラグを抜きました」

「はあ?」

「これの部品としてちょうど良い長さだし目に付いたので、組み込んだんです」

「ああ、それで呼び出し音が鳴らなかったんだ」

 

 

ドクは得心のいった顔をしていたが、原因を作った若い不健康そうな研究員は防衛部隊員から拳骨を貰う。パワードスーツの出力は抑えられていたが、拳部の堅い外装で殴られた研究員はしゃがみ込んで悶えていた。そんな彼を気の毒そうに一瞥したドクは、防衛部隊員に声を掛けて、後ろを指しながら誇らしげに「まだあるんだ」と言ってのけた。

 

 

「あっちが作りかけのR機フレームからもぎ取ってきた波動砲コンダクタ。ただし威力は本家の数百分の1、チャージに20分かかるし、一部部品は毎回交換だ。そっちが簡易ビット生成機、外郭が無いから攻撃にはとても弱いが、バイド素子は焼ける。奥のが……」

 

 

明らかに急いで作ったと分かる不格好な防衛用兵器らしき物を説明するドクと、次々と妙な機械類を搬出してくる研究員たち。すでにやりきった顔をしている彼らに、防衛隊リーダーはにやりとして罵倒する。

 

 

「こんな物ばかり作って、お前ら変態だな!」

「最高の褒め言葉だ」

 

 

運動不足の研究者達は防衛隊員の力を借りて、各所に突貫施工の防衛用兵器を設置していった。

 

 

***

 

 

ラス中佐の指揮する工兵隊は最終の仕上げにかかっていた。対バイド素材のパネルに隙間が無いか見ながら走り回り、目を皿にして確認する。それが終わると工兵隊を指令区画まで下がらせて瞬間硬化充填剤のA材B材が各所に設置されていることと、そこに少量の炸薬が設置されていることを確認していった。もしどこかに不備があればそこからバイドの侵食が始まりグリトニルに籠城する全員が薄気味悪い肉塊となることだろう。

 

 

最後に炸薬が全て有線で繋がった発破スイッチを作業ハッチから室内に引き込む。線の引き込み口以外を厳重に封鎖する。すでに工兵隊員は司令区画内に待避させている。今まで作業を行っていた衝撃吸収スペースと司令区画との連絡用ハッチ前に残っているのは、ラス中佐と腐れ縁に成りつつあったオブライアン曹長だけだった。そこでラス中佐は司令室に連絡を入れる。

 

 

「こちらラス中佐です」

『デンバーだ。シェルター化工事の様子は?』

「準備完了しました。後は充填剤を起爆混合したら完了です。ただし、メイン通路の隔壁は先に下ろす必要がありあす。充填剤がロック機構入り込むと閉まらなくなります」

『分かった、すでに基地要員は司令区画に避難が済んでいる。バイドを押しとどめていた防衛部隊とTeam R-TYPEもだ』

「Team R-TYPE? あいつらもですか?」

『一応防衛には参加してくれたよ? ああ、今メイン通路隔壁の閉鎖が完了した。ラス中佐、君の選ぶタイミングで作戦を遂行してくれ』

「了解しました。これより最終工程に入ります。では後ほど」

 

 

ラス中佐が通信を終えて汗を拭う。司令区画閉鎖とともに空調関係も色々なところで寸断されているので、末端では空気が悪い。横にはあきらめ顔のオブライアン曹長がいる。ラスが残っているので、勝手に離れる訳にはいかないと残っていたのだろうか。

 

「さあ、曹長仕上げだぞ!」

「あのですね中佐殿、私がここに残っている理由ってありましたか?」

「お前は俺の女房役だろうが」

「それ、自分で言うことですか?」

「それに起爆から充填剤が反応して、あのハッチから溢れるまでにこの部屋を手動で閉鎖する馬鹿力が必要だ」

「始めからそう言って下さい。あの手動ハンドル重いんですから」

「今、言った」

 

 

焦り出すオブライアンにラスはどこ吹く風だ。ラスはギリギリまで下がって起爆スイッチを押し込むと、外に飛び出す。炸薬は小さい物で爆竹のようなパンパンという破裂音が聞こえてくる程度だ。しかし、ぼやぼやしていると急速に膨張している充填剤が溢れてきて巻き込まれるかも知れない。オブライアンが作業用通路の重い隔壁を下ろすために真っ赤な顔をしてハンドルを回す。その間も何かを圧迫する音が聞こえてくる。オブライアンがハンドルを回し終わって終わって、ラスとともに場を離れ、少し離れて連絡通路の様子を確認する。しばらく二人は息を詰めて見守っていたが、ミシミシという充填剤が膨らむときに壁を圧迫する音も無くなり特に問題は無いようだ。ラスは司令部に一報を入れると、その場にへたり込む。

 

 

「これで任務完了だ」

「後は駐留艦隊と援軍次第ですか。そういえば外の戦況って今どうなんですかね?」

「ずっと作業してたから知らん。でも好転はしてないだろうな」

「いずれにせよ、バイドに囲まれて籠城とはぞっとしません」

「司令部のかわいいあの子やその子といっしょに籠もると考えればいい」

 

 

虚脱状態で意味の無い会話をしていた二人だったが、

ラスはオブライアンに引き起こされ、任務完了の報告のため司令室に向かった。

 




おかしい、シリアスなのにTeam R-TYPEが出るだけでギャグになる。
なんなんだよ、こいつら。
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