しかし回りこまれる   作:綾宮琴葉

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 本文中に若干の残酷的な表現が出ます。苦手な方はご注意ください。


第6話 逃避は出来ない

「馬鹿な! 気と魔力の合一(シュンタクシス・アンティケイメノイン)だと!?」

 

 信じられないものを見る様な目で、エヴァンジェリンはアスナを凝視している。

 

 それは私だって同じ気持ちだ。アスナが神楽坂明日菜として成長せずに居たのだから、良く考えれば当然なのは分かる。けれども、ここで魔法を使った戦いになってしまえば、もはや原作どころではなくなってしまう。

 何とか止めたい所なのだが、エヴァンジェリンに血を吸われたせいで身体がだるくて動けない。そう考えると、今私が、正常な思考に戻れただけでも運が良かったのではないのだろうか。

 

「しかも魔力が充実している私の魔法障壁を貫くとはな……」

「マスター、彼女が危険です」

「今そんな事はどうでも良い!」

 

 危険……。どの意味で危険だろうか。絡繰茶々丸が言っている事は出血による貧血だろう。しかし私から見ればそんな事こそどうでも良い。

 これからこの世界はどうなってしまうのか。もしかしたら、ここで私が死んでしまった方が原作にとって良い方向に行くのではないだろうか? でもそうしたら、次は私ではない私に、新しい私の人生を押し付けてしまう……。

 

 纏まらない思考を何とか整えようとするが、頭から考える力を奪われて段々と脱力していく自分が分かる。どうしようも無いのだろうかと思って居ると、もう何度目になるか分からない聞きたくない言葉が発せられた。

 

「アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアが、フィリィを守る。貴女たちが傷つけるのは許さない。ここから帰って!」

「ほう……」

 

 ……何を、言って。駄目だ、考えが纏まらない。

 

 抱き留められたままアスナを見上げる。すると若干怯えながらも、いつもの清楚な顔付きをしていた。けれども、神楽坂明日菜だと思える強い視線。その瞳でエヴァンジェリンを貫いていた。

 しかし、私を抱えるその腕が震えているのが良く分かる。それでも何とか、アスナを止めようと思い立ち、声だけでも掛けようと喉の奥から搾り出す。

 

「あす……なぁ……。――っ!?」

 

 自分で出した声に自分で驚いた。何故かと言えば先ほどエヴァンジェリンに血を吸われた時の影響なのか、驚くほど艶っぽい声が出たからだ。これではまるで相手を誘っているかの様ではないか。

 

 顔が真っ赤になり思わず逃げ出したくなるが、血が足りないのはどうしようもない様で、アスナの腕の中でもぞもぞとするに留められた。すると。

 

「フィ、フィリィ! かわいい!」

「――ぇ?」

 

 パッと顔を輝かせて、とびっきりの笑顔を見せられた。だからそれは、ネギ・スプ――。

 あぁもう、神楽坂明日菜の面影はどこに行ったのやら。

 

 そうかと思えばいつもの顔付きに戻り、いきなり――キスをされた。

 

「ふぐぅ!? ――っ!? んっ、んん――!?」

 

 ちょっと待って! 何故こんな事に!?

 今の展開はキスをするところではなくてエヴァンジェリンと戦うか、逃げるかするところで、キスを誘ってなどいないしましてやこんな長いキスなんてー!? て言うかファーストなんだけど!?

 

 思いっきりパニックになりながらもアスナの口づけが止まる事は無く、突然の事にエヴァンジェリン達も釘付けになっている様子が視界の端に見える。

 

「おっ? おぉぉ?」

「何故でしょうか……。モーターの回転数が上がっています」

 

 それでもアスナの動きは止まる事は無く、ショックの余り意識を手放してしまった。なんだか高畑先生の声が聞こえたような気がするが、何が起こったのか覚えて居たくなかった。

 

 

 

 

 

 

 ふと、意識が戻る。身体は先程の様なだるさは無く、なにやら言い争う声が聞こえる。ぼーっとしながらも、近くで聞こえる会話に耳を傾けると。

 

「エヴァ。どうして真常君に手を出したんだ!」

「言う必要はない」

「フィリィには、手を出しちゃいけない約束」

「お前だって手を出しただろう?」

 

 どうやら高畑先生とエヴァンジェリン。そしてアスナが私の事で言い争っている様だった。

 

 意識を起こしながら、現在の状態を指先や雰囲気で確認していく。

 指先には柔らかなシーツの感触。それから薬品の臭い。どうやら、保健室のベッドに担ぎ込まれたのだろう。三人は私が起きている事に気付いていない様子で、とりわけ高畑先生とエヴァンジェリンが激しく言い争っている。

 

「ちゃんと説明をして欲しい。どうして真常君の血を吸ったんだ」

「貴様らが契約不履行だからだろう? 呪いをかけたまま卒業できずリセットだ。解呪の可能性にかけて何が悪いと言う」

 

 あぁなるほど……。やっぱりネギ・スプリングフィールドと同じく、解呪の為に血を狙われたという事なのか。それならば不本意だが狙われた理由が分かる。しかしこの様子だと登校地獄の呪いは解けなかったと言う事だろう。

 

 とりあえず現状はどうするべきだろうか。もう回避は不可能に近い気がするのだが、先程の事を思い出しながら逃げ出すための方法を考える。

 これ以上係わり合いになって原作が狂うのは、どんな災難が降りかかってくるか分からない。

 

 そうして考えて居ると……。アスナにキスされたことを思い出した。

「キッ!? あぁぁっ!?」

「フィリィ!」

 

 気付いた時にはもう遅かった。うっかり盛大に声を上げた事で気づかれてしまい、ベッドに仰向けになった私に向かってアスナが乗りかかってくる。

 ご丁寧にいつも通りしっかり抱きついてくるおまけ付き。これではもう逃げられない、と言うよりも感掛法をアスナが使えるならば最初から逃げ道が無いのと同じではないだろうか。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて」

 

 とにかく上半身を起こし、抱きしめてくるアスナを離そうともがく。すると、なんだか微妙な雰囲気が伝わってきた。

 

 この雰囲気はなんだろうか? 私はまた何か、手遅れにしてしまったのか?

 

 考え込むが理由が分からない。アスナを見るといつも通りの顔付きに戻っており、とにかくぎゅっと抱きしめられている。

 高畑先生やエヴァンジェリンを見るととても形容しがたい、悩んでいる様な困っている様な複雑な顔付きだった。

 

「おい小娘。何故動ける? 茶々丸の見立てでは輸血が必要だと言っていたぞ」

「え?」

「まさかっ!? 口を開けろ、今すぐだ!」

 

 そう言うと抱き付いているアスナを強引に引き離し、指を差し込まれて無理やり口を開かされる。正直かなり痛いのだが、エヴァンジェリンの行動を考えると。まさか、吸血鬼化!?

 突然思い当たったその結論に身体が震えるが、エヴァンジェリンの答えは予想とは大きくかけ離れたものだった。

 

「小娘、お前本当に人間か? 吸血鬼ではない事は確認出来た。だが先程のお前の血は、人間であるにも拘らず異様な特質性がある。答えろ」

「なっ!?」

 

 鋭い視線でエヴァンジェリンに詰め寄られ、襟首を持ち上げられ、逸らす事ができない。

 

 ど、どうすれば!? 落ち着いて、落ち着いて考えなくてはいけない。今私の目の前にいるのはあのエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。そしてこの状況は完全に原作に関わっている状態。アスナといいエヴァンジェリンといい、高畑先生まで巻き込んでもう言い逃れは出来ない状況なのだろうか。

 

 私自身の秘密と言えば、生まれ変わってこの世界に来たこと。この世界にはない魔法が使えること。体力・魔力・体調が良好に保たれる体質。どれも普通の人間にはない性質だから、もしかしたらそれが関係あるのかもしれないけれど、言ってしまえば一体どうなる事か……。

 

 悩み答えを出しかねていると、エヴァンジェリンが更に言葉を続けてくる。

 

「まぁ良い。だが聞け小娘。貴様の血は、所謂エリクサーやアムリタなどと呼ばれるものに似た効能がある。万能たる霊薬だ。黙っているのも良いが、貴様の実力では直ぐに狩られて絞り続けられるぞ?」

「えっ?」

 

 エヴァンジェリンの言葉に、場が驚きに包まれる。高畑先生がエヴァンジェリンに抗議しているが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 

 彼女は何と言った? エリクサーやアムリタ? よりによってエリクサーとは時空魔法を使える私に対して皮肉でしかないだろう。

 どこまで効能があるのか分からないが、六百年を生きる伝説の魔女がそう言うのだからそれ相応のものと言う事だろう。

 

 と言う事は、私はネギ・スプリングフィールドの死亡フラグだけではなく、自分自身をその手の闇商人などから守らないといけないと言う事になる。つまり、この世界に生まれた時から死亡フラグが立っていたと言う事で……。

 

「はは、あはは……」

 

 正直もう笑うしかなかった。私の魂に付き纏う運命と言うのはそこまで酷い物なのだろうか。やっと生きられる道が出来たかと思えば、最初からこんなものが隠されていたなんて。

 

 嘆きのあまり、思わず乾いた笑いが零れたが、それを遮る痛みが突然に掌に走った。

 

「……え?」

 

 思わず感じた鋭い痛みに視線を送ると、エヴァンジェリンの指先の爪。冗談かと思うくらいあっさりと私の手の甲を貫いて、シーツに赤い染みが広がっていた。

 

「エヴァ! 何をしているんだ!」

「黙れ」

「うっ!?」

 

 重みがある一言だった。高畑先生やアスナが何かを言いかけるも、その一言で場が収まる。掌に痛みは感じるが、彼女の眼光と声に気圧されて誰も何も言えなかった。

 

 その様子を見ると満足したのか、私の掌から指先を引き抜く。すると。

 

「フィリィ、何で治ってるの?」

「え?」

「やはりな……。この程度ならば、その血で自己治癒できるのだろう。捕まれば実験動物だな」

 

 一瞬何か、ムズ痒い様な感触を掌に覚えたかと思えば、何事もなかったかの様に、傷一つ無く完治していた。恐らく神様が言っていた、重症でも自己治癒が出来る効果なのだろう。

 

「大丈夫! フィリィは私が守るから!」

 

 鳴き叫ぶ様な声を上げて、再びアスナが抱きついてくる。アスナを撥ね退ける気力はもう無く、されるがままにきつく抱きしめられる。

 

 そうは言われても、私にはどうすれば良いのかもう分からなかった。

 生き延びなくてはいけない現実に対して、余りにも死に溢れた私の身体。私が魔法を完璧に使って逃げる事が出来る様になっても、エヴァンジェリンと言う大魔女どころか、より格下の高畑先生クラスの実力者でも捕まる。そうすれば命はない。

 

「愚か者。あそこの姫たる貴様自身も狙われる身だろうが。寝ぼけたか?」

「エヴァ、それは!」

「何がおかしい? 第一貴様もだタカミチ。狙われるのを分かっていながら放っておくのが悪い。あぁ、なるほど。貴重な人材二人を纏めて管理するジジイの策略か?」

 

 今何と言った? もしかして、学園長は私の体質を知っている?

 その上でアスナと一纏めにして扱いやすくしていると言われたら……。あの学園長が知っているのならば、否定は出来ない。高畑先生の反応からして私の体質はバレていないのだろうが、時間の問題かもしれない。

 

 しかしそこで、高畑先生から信じられない言葉が出てきた。

 

「ならばエヴァ。同級生のよしみで頼むよ。彼女達の事、面倒を見てもらえないかい?」

「は? 何で私が、そんな面倒な事をしなくちゃならないんだ」

 

 全く持って意味が分からない。そんな声で呆れる様に高畑先生の言葉を跳ね除ける。

 

 確かにその通りだろう。彼女からすれば私の血に価値はあっても守る理由はない。彼女に気に入られる理由も無いだろうし、魔法使いとしても興味の対象外だろう。

 やはりこの先も逃げ続けるしか私に生きる道はない。それに、これ以上エヴァンジェリン達に関わってしまえば、ネギ・スプリングフィールドが来る前にどうなってしまうか予想が付かない。

 

 そう考えて、この場を去るために加速の魔法を唱える。

 

「私はもう帰ります。これ以上は構わないでください。――ヘイスト」

 

 捲くし立てる様に一気に言ってから、小さな声で呟いて加速する。

 加速した身体でアスナを無理やり引き離し、そのまま一気に駆け出して保健室から出ようとすると。突然に身体が動かなくなった。

 

「まぁそう言うな。貴様の血を放置するのは、私から見ても勿体無い」

「そんな……」

 

 気が付けば、彼女の魔法の糸が体中に絡み付いている事が分かる。

 エヴァンジェリンが闇の魔王と呼ばれる力ではなく、【人形使い(ドールマスター)】と呼ばれる由縁である、糸繰りの術で絡め取られていた。

 

 あぁそうか、死亡フラグ完遂。これで終わり、かぁ……。

 

 正直もうちょっと生きていたかったと思う。この世界の親は居ないと同じだけど、逃げたくてアスナには冷たい事をしてしまったし、高畑先生に面倒を見てもらってそのお礼も出来ていない。

 来世の私は誰になってしまうのか分からないけど。でももし、私の自我が残っていたら、もう少し上手くやれるのかもしれない……。

 

「何を諦めている? 面倒を見てやると言っているんだ」

「エヴァ、それは本当かい?」

「ただし、毎月血を貰う。そこの馬鹿姫は百ミリリットル程度。小娘はその倍だ。安いものだろう?」

 

 彼女の言葉に、高畑先生が苦渋の表情で悩んでいる様子がはっきりと分かる。

 高畑先生から見れば、ナギ・スプリングフィールドが救い、彼の師のガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグが命を懸けて守ったお姫様だ。傷つけられる事を良しとはしないだろう。

 

 それにしても、エヴァンジェリンは突然どうしてそんな事を? 彼女の意図が全く持って分からない。血が欲しいというのは分かるが、それで面倒を見る理由が分からない。

 はっ!? もしかして、高畑先生に少しでも恩を返せるのではないだろうか。ここまで逃げることしか考えて無かった私だが、いや、原作からは逃げるつもりだけど、もしかしたら力になれるかもしれない。

 

「高畑先生。もしアスナが怪我をしても、彼女の言う通りなら私の血で治癒できるはずです。だから、私に協力させてもらえませんか?」

「ま、真常くん!? そこまでしてもらうわけには――」

「良いじゃないか。そこまで言ってるんだ。思う存分血を流してもらえれば良い」

「フィリィ、私そんな事してもらわなくても……」

 

 今まで黙っていたアスナが、いつもの顔で恐る恐る声を上げる。今の状態は、アスナ自身も迂闊に名前を上げてしまって起きた事態。やはり責任は感じていたのだろう。

 私もどうしてこんな事を言い出してしまったのかはっきりとは分からない。でもアスナ自身も本来、ネギ・スプリングフィールドなどに関わらず、逃げ続けるべき存在。

 

 これまでのアスナの好意は、それはもう並々ならない鬱陶しさがあったけれども、私の能力を知っているからこそ近いものを感じて寄り添っていたのかもしれない。こうなったらもう、アスナごと逃げてしまえば良いのではないか。何だか分からない内に、そんな結論に辿り着いてしまった。

 

「私がアスナを運命から逃がしたい。それじゃダメ?」

 

 今はっきり分かった。アスナの運命は私が変えてしまった事。仮にネギ・スプリングフィールドに関わる事になってしまったとしても、アスナの好意を無にしたくないって、そう思える。

 

「フィリィ大好き!」

 

 感激した様な声を上げ、キラキラとしたいつもの笑顔と美少女オーラ全開で抱きついてくる。そしてもう離さないとばかりに強く強く抱きしめられる。

 ……何かやってしまった気がするのは、気のせいだろうか? 手遅れじゃないと良いのだが、気のせいと言う事にしておきたい。

 

「決まりだなタカミチ。ジジイには鍛えるとだけ伝えておけ。どの道、反対する理由は無いだろう。ただし、小娘の体質は絶対に言うな。血について聞かれたら私が欲しいとだけと伝えろ」

「分かっている。彼女達に群がる敵をわざわざ増やす理由は無いからね」

 

 それだけ伝えると、私達は彼女の別荘まで連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 

 それからの訓練の日々は、アスナは基礎を知っているからまだしも、私に対しては一切容赦の無いものだった。そう、たとえば。

 

「遅い。それで逃げ切れると思うな」

 

 愉悦を含んだ声を放つ彼女は、既に私の背中の上。両腕を背中に回されてうつ伏せにされている。

 

「エヴァンジェリンさんが早すぎるんです! 加速しても意味が――」

「魔力を纏うのが遅いからだ。何もかもが遅い。いくら時間を操れても基礎が出来ていない」

 

 くっ、確かにその通り。その通りだが何でこんな事になってしまったのだろうか。もう、これでもかと言うくらい彼女に関わってしまっているし、アスナも原作の学園祭レベルには既になってきている。これでネギ・スプリングフィールドの従者になった日は一体どうなってしまうのか。

 

「余計な事を考えるな。それから『なんで私が?』などと今更思うなよ? 一歩踏み出した者ではなく、貴様は最初から踏み込んでいる者だ。まずその甘えた考えを叩き直してやろう」

「えっ? あ、あぁぁぁぁ!?」

 

 一瞬何をされたのか理解できなかった。両腕が異常に熱いと思ったら、とても軽い音を立てて折れていた。腕の肉に骨が当たり、あらぬ方向に曲がる感触。それがハッキリと伝わってくるものの、十数秒後にはそれを自然治癒していく自分の身体。

 涙を流しながら正直気持ちが悪いと思うが、この体にして欲しいと願ったのは自分。彼女が言っている事も間違ってはいないし、こうして教えてくれるのはありがたい。ありがたいがもっとやり方があると思う!

 

 こんな鬼とも悪魔とも正面からはっきりと分かる相手に、よくぞネギ・スプリングフィールドは耐えたものだと、今更ながら実感と敬意を抱いていた。

 

「貴様の最大の武器は時間だ。ワンスペルでの魔法発動は、戦況を覆す最大の武器になる。それをむざむざと捕まっている時点で死んでいると思え」

 

 鞭の上に鞭を重ねるその発言。どうしてこんな事になったのかと思えばまた腕を折られるので、とにかく動く。動いて手数を増やし、応用が出来る様になって行くまでひたすら叩かれる毎日だった。

 

 

 

 それから西洋魔法式の詠唱を覚えるのは無意味とされて、無詠唱で身体強化魔法『戦いの歌』が出来るようになるまで、ひたすら訓練させられた。そして魔法障壁。あっさり捕まってガードも出来ないのでは話しにならないと、西洋魔法の知識も無いのにとにかくやらされた。

 

 そして攻撃魔法。せっかく重力魔法が使えるのに押し潰すだけの稚拙な考えはやめて、全方向で考えろと、私の理解を超える事を言い出された。もともとグラビデは相手を圧迫するか、取り込んで重圧を与える魔法。

 しかし神様がこの世界に合わせて調整すると言っていたせいか、考え方が変わったら横方向への重力操作も出来る様だった。もっとも私の頭がそれを認識して、使える様になるまで時間が掛かったのは言うまでもない。

 

 そして肝心のアスナ。幸いルームメイトだったおかげで、夕方から夜にかけて部屋に居ない事をごまかすのは楽だった。ここまでくればもう諦めが付くというものだが、訓練している時の目付き以外は、普段の良く知っているアスナそのままだった。

 アスナの事は守りたいと思ってしまった事だし、何とか上手くネギ・スプリングフィールドの敵から逃してあげたいと思う。

 

 そうして月日が経ち二年生の三学期。そう、彼と出会う時間が近付いてきた。




 エヴァの吸血による洗脳の解除は、体調を最善に保つ能力です。
 五話で効いていたのはエヴァの魔力の上昇と、生命力の低下が原因と考えています。
 (タグのご都合主義の部分もあるのですが、単に吸血シーンが書きたかったと言うだけでもあります。)
 エヴァはオフィーリアの血を吸って花粉症が治り、襟首を掴んだ時に噛み後が完治している事で、身体の特異性に気付いています。それで掌に爪を刺して確認しています。

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