FLOWER KNIGHT GIRL ~ディプラデニア団長の日々~ 作:トーゴー
着替えるために一旦部屋に戻るディプラデニアと別れると、団長は二人分の席を確保すべく食堂へと向かう。
「…良い朝だな」
早朝の逢瀬によるものか、上機嫌な団長。
窓からは心地よい陽射しが差し込み、朝を告げるように小鳥のさえずりが響き、廊下の片隅では黄色の少女が紫の少女に土下座している。
よくある朝の光景だ。何らおかしいところはない。
「…さてと、今朝は何を食べようかn」
「待って団長!スルーしないで!?」
そのまま素通りしようとしたところで、団長は足首をむんずとつかまれる。
「……今度は何をやらかしたんだ?イエローパンジー」
先ほどの余韻を台無しにされたためか、少し不機嫌そうな表情を浮かべる団長を見上げているのはパンジー三姉妹の次女、イエローパンジーだった。
「今朝、このアホ姉が私のプリンを食べたことが発覚しただけですよ」
そう言ってイエローパンジーをゴミを見るような眼で見下しているのはその妹、パープルパンジー。
姉が妹に土下座するというのは本来異様な光景のはずだが、この二人に限ってはそんなに珍しい光景でもない気がする。
「…それは許されざることだな」
パープルパンジーに味方する甘党団長。
「す、すぐに買いに…」
「ついでに言うと、そいつは期間限定品の最後の一個です。もう今年は買えねぇ奴です」
「うっ…」
黙り込むイエローパンジー。
「そういうわけですが、団長さんはどんな罰が適当と思いますか?」
「…そういえば、ナズナが事務に少し人員を回して欲しいと言ってたな」
「無理無理無理無理!書類の山なんかに放り込まれたらあたしの頭爆発するから!」
「いっそ一度爆発してみたらどうです?一周回って頭脳派になるかもしれねぇです」
「人生の転機、というやつだな」
「精神的に死ぬ!転機以前にあたしの人生そのものが終了する!」
イエローパンジーは顔を真っ青にして頭をブンブン振る。
「…じゃあどうするんです。プリンのゴミだけ返すとかふざけたこと抜かすならぶっ飛ばしますよ」
「……だ、団長!あたし、何でもするから!だから何とかして!」
「しょうがないなぁ…」
丸投げされた団長は少し考え込む。
「…そういえば、先日俺が買い込んだプリンがあったな。それを分けてやるから許してやってくれないか?」
「団長…つまりは貴族御用達の高級プリンですか。…団長の顔を立てると思って、そのくらいで手を打ってやらねぇこともないです」
より上等なプリンを貰えると聞いて、パープルパンジーは矛を収めた。
「当然、あたしの分もあるんだよな!」
「…お前にはイエローチューリップが持ってきた『強制知能強化剤ぶれいん☆うぉっしゅ君 プリン味』を試飲する権利をやろう」
「何でもすると言ったからには、薬学の発展のための尊い犠牲になってくるがいいですよ」
「やめて!?」
結局、イエローパンジーは対価として団長とディプラデニア、パープルパンジーの席を確保してくることになった。
ダッシュで食堂に向かうイエローパンジーを見送りつつ、団長とパープルパンジーはゆっくりと廊下を歩く。
「後でプリンを3つ届けさせておくぞ」
「そうですか。…全部欲しいところですが、駄々をこねられるのも嫌なので二番目の姉にもくれてやります。そうすると一番上の姉が仲間はずれだと落ち込むのでこっちにもくれてやります。…本当、仕様のねぇ姉たちです」
実に残念だ、とわざとらしく言うパープルパンジーに、相変わらずひねくれ者だなと団長は内心で苦笑する。
「…何か失礼なことを考えてねぇですか?」
「いや、全然」
ジト目で問いかけてくるパープルパンジーに、すまし顔で答える団長。
「まあいいです。そういや、席を取りに行かせて団長本人はどこに行くつもりですか?」
「ディプラデニアの部屋まで行って、一緒に食堂まで下りてこようかと思ってな」
「朝から晩まで一緒とは相変わらずのバカップルですね。そのせいで虫歯になったら治療費請求してやりますから」
「そんなもん払うか。たわけ」
そうやって軽口を叩き合っていた二人は、階段で別れることになる。
「…まあ、団長が色ボケしようが私の知ったことじゃねぇですが、二人で早々に寿退団なんてのはやめて欲しいです。ここの兵法書が読めなくなると困りますから」
「ひどい理由だな。まあ、すぐ廃業するような予定はないから安心しておけ」
苦笑しつつ、階段を上がっていく団長。
「…まあ、マシな団長がいるというのも理由の一つですけど」
団長の姿が見えなくなった後、パープルパンジーはポツリと呟いた。
「…一体何をやってるんです?」
「何って、ちゃんと団長、ディプラデニア、パープルパンジーの三人分の席を確保してるだけだぞ?」
「貴女は立って朝食食うつもりですか?」
「あ…」