なんか、前回も同じことを言っていた気がしますが、こんな作品でも楽しみに待っていて下さった方々、本当にすいませんでした。
それではどうぞ。
有馬さんが乗り込んでから僅か数分後、俺の怒号と共に冒険者達は次々とデストロイヤーに乗り込んでいった。が、そこで俺達が目撃したのは一切の慈悲もなくバラバラにされたゴーレム達だった。
そんな光景に乗り込んだ冒険者達は唖然としていた。もちろん俺だって同じだ。
だが、普段から有馬さんの異常さに触れていたからか、俺はそんな光景から他の冒険者達よりも早く素の状態に戻るのが少しだけ早く、辺りを見渡すと一箇所だけドアが開いているところがあった。恐らく有馬さんが通った場所だろう。
俺がそこへ駆け出すと、惚けていた冒険者達も次々と素に戻り俺の後を追ってきた。
デストロイヤーの中は割と単純に出来ており、それほど迷うことなく有馬さんと合流することができた。
「有馬さーん、何読んでんですか?」
有馬さんはとある一室の中におり、白骨化した人の骨の横で手帳を読んでいた。
「…」
有馬さんは俺達が来たことに気付くとその手帳を俺に渡してきた。
俺は渡された手帳に書かれた文字を鳴り響く警告の中読み上げる。
「〇月×日。国のお偉いさんが無茶を言い出した。こんな予算で機動兵器を作れと言う。無茶だ。それを抗議しても聞く耳持たない。泣いて謝ったり拝み倒してみたがダメだった。辞めさせて下さいと言っても辞職願いを受理されない。バカになったフリをしてパンツ一枚で走り回ってみたが、女研究者に早くそれも脱げよと言われた。この国はもうダメかもしれない」
…思わず、みんなの視線が白骨化した骨に集まった。
「〇月×日。設計図の期限が今日までだ。どうしよう、まだ白紙ですとか今更言えない。だってヤケクソになって、報酬の前金、もう全部飲んじゃった。どうしようと白紙の設計図を前に悩んでいると、突然紙の上に俺の嫌いなクモが出た。悲鳴を上げながら、手近にあった物で叩き潰してしまった。用紙の上に。…このご時世、こんな上質な紙は大変高価なのに、弁償しろとか言われても金が無い。知るか。もうこのまま出しちまえ」
…空気が微妙になってきたが、それでも俺は読み続ける。
「〇月×日。あの設計図が予想外に好評だ。それクモ叩いた汁ですけど、そんな物よく触れますねなんて絶対言えない。ていうか、ドンドン計画が進んでる。どうしよう。俺のやった事ってクモ一匹退治しただけ。でもこんな俺が所長です。ひゃっほう!」
…みんなが俺の事を疑うような目で見てくる。いや、マジなんだよ。俺は書いてある事をそのまま読み上げてるだけだから。
「〇月×日。俺何もしてないのにどんどん勝手にできていく。これ、俺いらなかったじゃん。何なの?もういいや、勝手にしてくれ。俺は俺らしく好きに生きる。…なんか動力源をどうこう言われたけど知るか。俺最初から無理って言ったじゃん。そんなの、永遠に燃え続けるとか言われている、伝説級の超レア鉱石、コロナタイトでも持って来いと言ってやった。言ってやった言ってやった!持って来れるもんなら持って来い」
…。
「〇月×日。持って来ちゃった。どうしよう、本当に持って来た。なんか動力炉に設置を始めた。どうしよう、マジでどうしよう、持って来れる訳無いと思って適当に言ったのに本当に持って来た。これで動かなかったらどうすんだ。俺どうなるんだ。えっ、死刑?これで動かなかったら死刑じゃないの?動いてください、お願いします!」
みんなからの視線が気になる…。
「〇月×日。明日が機動実験と言われたが、正直俺何もしてねえ。やったのはクモ叩いただけ。この椅子にふんぞり返っていられるのも今日までか…。そう思うと無性に腹が立ってきた。もういい、飲もう。今日は最後の晩餐だ。思いっきり飲もう!この機動兵器の中には、今日は誰も残っていない。どれだけ飲んでバカ騒ぎしても、咎められる事は無いだろう。とりあえず、一番高い酒から飲んでいこう!」
ダメだ…みんなの視線が怖い。
「〇月×日。目が覚めたら、なんか酷い揺れだった。何だろう。何だろうこれ。俺どれだけ飲んだっけ。覚えてない。いや、昨日の記憶が無い。あるのは、動力源のある中枢部分に行って、コロナタイトに向かって説教してた所までしか覚えてない。いや待てよ。その後、お前に根性焼きしてやるとか言って、コロナタイトに煙草の火を…」
読み上げながら、俺はとうとうみんなに目を向けることが出来なくなった。
「〇月×日。現状を把握。そして終わった。現在只今暴走中。どうしよう、これ間違いなく俺がやったと思われてる。俺、絶対指名手配されてるよ。今更泣いて謝ったって許して貰えないだろうな…。やだな…。このまま機動兵器ぶっ壊されて、引きずり降ろされて死刑だろうか。畜生、国のお偉いさんも国王も、俺のパンツ脱がして鼻で笑った女研究者も、みんなみんなクソッタレだ!こんな国滅んじゃえばいいのに。もういい、酒飲んで寝よう。幸い食料と酒には困らない。寝て起きてから考えよう」
やがて、誰ともなく拳を握る、ギリッという音がその場に響いた。
「〇月×日。国滅んだ。やべえ、滅んだよ滅んじゃったよ!国民とかお偉いさんとか、人はみんな逃げたみたいだけど。でも俺、国滅ぼしちゃった。ヤバイ、何かスカッとした!満足だ。俺、もう満足。よし決めた。もうこの機動兵器から降りずに、ここで余生を暮らすとしよう。だって降りられないしな。止められないしな。これ作った奴絶対バカだろ。…おっと!これを作った責任者、俺でした!」
最後まで読み上げ、俺は困り顔で言った。
「…お、終わり」
「「「なめんな!!」」」
俺と有馬さん以外が綺麗にハモった。
実はこの作品地味に一周年迎えてたりします。