ロキ・ファミリアには【ファミコン】の最強幼女がいるそうです 作:京狼婢娜姫
「……ゲッカ、武器は?」
「んー?置いてきたよ?」
「…テントの中に?」
「もちろん!」
「忘れそう……」
炊事場でティオナが豪快な料理を作っている間。
やっと追い付いたゲッカはアイズとの会話を揺れながらしていた。
どうも最近は、武器にばっかり聞いてくるアイズに首をかしげながら、忘れないよー!と反論する。
「流石に『下剋上』を忘れたら、もう帰れないよぅ…」
彼女の武器の名は、『下剋上』。
特注品(オーダーメイド)であり、そして不壊属性(デュランダル)が着いた大きな刃物。
その形状は、強いて言うなら両刃の日本刀。
反りが小さく、刀身には細かい傷のような切れ込みが入っている。
その傷は、空気を掴み形状を一定にし、見えない鎌を作り出す。
「……かまいたち、だっけ…?」
「アイズお姉ちゃんなら、【風(エアリアル)】で作れるんじゃない?」
『下剋上』を扱うには特殊な技術が必要となるが、風を使うアイズには問題ないだろう。
遠距離攻撃が彼女に増えたら、怖いな、なんて思いながら言葉をのべる。
「風で刃を作るんだったら、やってるじゃん。できるよ、きっと!」
ティオネの怒りが噴火した所で、話を切ってレフィーヤを見る。
自分より後から入ってきた姉は、良い匂いを漂わせていた。
「できましたっ!『ダンジョン産野草のクリームシチュー、四色ハーブ幸せ盛り』です!!」
「「「「おおーー!!」」」」
「この料理はですね、_____」
塩分がどうとか、種族がどうとか聞こえた時点でゲッカは思考を停止させた。
隣のアイズが反応したのを聞いて、すごいね、とだけ言うものの実際は聞いてすらいない。
やったー、と舞うレフィーヤが、足元の石につまずいて、転倒。
同時にお皿もひっくり返してしまい、シチューは地面へと吸い込まれていく。
「うわー、全部こぼれちゃってるよ」
「どうにもならないわね」
「うう………」
落ち込むレフィーヤにアイズが近付いていく。
そっと手を伸ばし、ぎこちなく頭を撫でると、はっと上を向いたレフィーヤに優しく声をかける。
「……大丈夫。次は私の番だから」
「アイズさん………」
何やら感動した様子の後輩に首をかしげながら、アイズは調理台の前に立つ。
……乾パンだけをまな板に乗せて。
包丁を二本逆手に持つと、腰を軽く落とし、戦闘体勢に。
「アイズさん、頑張って!」
「握りがナイフに成ってない?」
「食材なんて乾パンだけよ?」
「うぅん、大丈夫かなぁ……?」
目に見えない速さで包丁が振るわれる。
止まった時にあるのは五等分された乾パンのみ。
「……………!(ドヤ)」
「アイズ、それは料理じゃない」
「………!?」
「でもでも!ちゃんと食べれますから!!」
「………!!(ズイッ)」
「えっ、乾パンだけはちょっと…せめてスープも」
「…………!?!?」
「スミマセンスミマセン!!私がぜいたくでしたぁ!!」
そんな中、アイズの、持つ皿に近付く者が一人。
「いただきまーす!!」
ゲッカが乾パンを一切れ掴み口へ運ぶ。
モグモグと口を動かしながら、小動物のように頬を膨らませる姿は愛らしい。
「ふふっ」
「じゃあ優勝はあったしー!!」
自然とティオネの口から漏れた笑いに、ティオナが宣言を被せる。
パチパチとなるまばらな拍手を身に受けて、ティオナは手に持った皿をアイズの前に差し出した。
「じゃあこれはアイズが食べて!」
「私……?」
「うん!今日レフィーヤのこともひ皆のことも、助けてくれたでしょ?けど、さ……」
一瞬で天真爛漫な笑顔が曇り、何処か悲しそうな表情になる。
「なんであんな無茶したの?みんなを守って、壁を維持するだけでよかった。フォモールの中に飛び込む必要なんてなかった。あたしも大概だけどさ……アイズはもっと危なっかしいよ」
親友からでた予想外の言葉に、小さく目を瞬かせると、下を向いて小さく謝った。
「……ごめん、ティオナ。だけど私はもっと強くなりたい。だから……ごめん」
それは、命を投げ出すのをやめられない、という宣誓。
立ち止まったりは出来ない。
そう伝えるアイズに、ティオナの優しい声が降ってくる。
「………アイズ、私だって強くなりたいよ」
「そうね。私も現状で満足したつもりはないんだけど?」
「わっ……私も早く足手まとい卒業したいですっ!」
「だからさ」
目を見開いたアイズの手に、自分の手を重ねて言う。
「一緒に強くなろう、親友っ!」
その言葉に、優しい笑みが浮かんでくる。
「……うんっ!」
人形、とまで言われる感情の乏しい顔に浮かぶ、極上の笑顔。
驚いた表情を見せると、ティオナは飛び付き、ティオネは愛しい人が見てないか焦り、レフィーヤはもう一度、とせがむ。
途中から出てきたベートにティオナがムッツリ狼、と言えばいつもの口論が始まる。
それを上から眺める三人は、ほっとしたように笑った。
「僕らの出る幕はなかったね」
「騒々しいものばかりじゃ、くよくよさせてもくれんじゃろ」
「………そうだな」
母は話の中心で笑う少女を見て、嬉しそうに笑みを深めた。
「良き仲間に巡り会えたな……アイズ」
「………………」
目の前で騒ぐ兄姉を優しく、寂しそうな姿で見る妹が一人。
「私は、一緒に強くなれないよ………」
悲しそうに、声を染めた呟きは
喧騒に掻き消されて行く。
____早く強くなりすぎたせいで。
皆と一緒に歩けない。
____後ろを見なかったせいで。
もう近くには、誰もいない____
こんなはずじゃなかったのに。
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