ロキ・ファミリアには【ファミコン】の最強幼女がいるそうです 作:京狼婢娜姫
こんなのですがお楽しみいただければ幸いです。
前の芋虫型モンスターから距離を取り、先程の通路へと駆け込む。
ガレスが担ぐラウルの腕が変色し、しゅうしゅうと嫌な音を立てる。
その腕に回復薬をかけると横目で深紅の瞳を見たまま、考える素振りを見せ、フム、と呟いた。
「じゃあ順番的に……ベート」
「わぁってるっての。……ほらよ」
目を血の色に染めたゲッカの前にベートはしゃがみこみ、首筋を晒す。
こくり、と頷いたゲッカはその首に躊躇わずに噛みついた。
「………っ」
いつの間にか狼人のベートより鋭く醜悪な色を見せていた犬歯が、首の皮膚を破り、太い血管に突き刺さる。
その痛みは決して小さくはない。
それでも耐えること数秒。
血が吸われる感覚に、目の前が眩んだ。
人為的な貧血状態は通常よりも酷く、辛い。
今までにも経験したことは何度かあるが、それはこれ以上。
昇華した器が痛みを緩和し、平衡感覚を取り戻させる。
「…っ…ふぅ……」
血を吸い終わったのか、息を漏らすゲッカの唇は紅く染まっている。
ペロリ、と舌を出すと血を舐め笑う。
「ありがと、ベートにい」
少し大人びた口調に変わったと思えば、目の前の幼女は少女へと成長した。
【神の恩恵】で止まったすべての成長。
それと同時に服も伸び、少女にあったサイズに変わる。
舞うように『下剋上』を持って前進。
そして、叫んだ。
「『台風一過』!!」
その叫び声に同調し瞳の深紅は更に深くなり、『下剋上』は銀の刀身に文字を浮かび上がらせた。
___『神聖文字』。
神々が使うその言葉は、神の一部との併用で多大な力を人に与える。
また、武器の神であればその武器にさえ。
与えられた力は、【台風】。
鎌鼬を起こす要因の神聖文字は、キーワードで正しく暴力を発揮する。
「やっ、ぁあああああああああッ!!!」
返した手首をもとに戻し、肘を極限まで曲げて、横に振り抜く。
その勢いで広い範囲の敵を切り、自身に向かう武器破壊の体液を地面に『下剋上』を突き刺すことで浮き上がり、回避。
地面ごと切り上げ、舞った土煙で刀身を隠してもう一度鎌鼬を造り出す。
____後ろにいる家族の存在を守れ、と本能が訴えてくる。
理性は力を使いきれ、と命ずる。
その二つに従って、ゲッカは大きく振り被る。
「『奥義、飛翔』」
目先の地面に吸い込まれるように獲物を振り落とす。
爆音と同時、発生した鎌鼬は残りのモンスターを切り裂き、戦闘の終了を告げる。
後ろに跳躍したゲッカの体が縮み、服さえも元に戻る。
先程の戦闘の面影と言えば、少々溶けた靴ぐらいか。
「ベートお兄ちゃん!」
壁に寄りかかるようにして立っていた青年に、走りより首筋を見る。
そこには小さな穴が空いているだけ。
___彼女の魔法【悪】は、ゲッカの身を成長させる付与魔法(エンチャント)。
【神の恩恵】で止まった成長を、自分より成長している人物の血を飲むことで強制的に行う魔法だ。
それに合わせて、性格も一時的にだが大人びる。
全アビリティに高補修がかかり、戦闘時の効果は絶大だ。
代わりにデメリットも存在する。
アイズのリル・ラファーガよりはましだが、一時的でしかない成長は力を奪われ___
「今回は酷くないよ。きっと」
ステイタスの減少を引き起こす。
これが魔法を躊躇っていた原因。
そして、ここで使った原因でもあった。
熟練度の鍛え直し。
同じ1でも、種族の差やLvの差がある。
また、努力の差。
その積み重ねが全体の力の上昇に繋がる。
少々伸び悩んでいるらしいゲッカへの思慮。
必要事項だとフィンが割り切ると同時、泉に響く破壊音。
『ッ!?』
そこにいるのは先程を上回る数の緑黄色の化物。
「チッ___撤退だ!!」
団長の声に駆け出す。
ちらっ、と後ろを向いたゲッカはそこにあったものに驚愕した。
「あのモンスター…他の食べてる!?」
「となると、魔石の味を覚えた強化種か……」
ラウルを担ぐガレスが苦々しく呟く。
『強化種』。
その言葉で思い出されるのは『血濡れのトロール』。
Lv4で勝負をし、ギリギリ勝ったあの決闘を浮かべてしまい悪寒が走る。
それを振り払うように頭を振ると、ゲッカは更に速度をあげた。
魔法しゅうりょうっ!
実はまだ……?
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