何となく燕ちゃんをヤンデレにさせてみる。   作:心太マグナム

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どーも、初めまして内臓マグナムと申します。

普段はこういった話は書かないんですが、私事ですが少しスランプになってしまいまして……ちょっとした気分転換に一風変わった作品を書こうと思い、この作品を書きました。気分転換に書いた軽いお話ですが、そんなものでもよければお付き合いくださいませ。

登場人物紹介

松永 鳶(まつなが とんび)
本作主人公のオリ主くん。事故で両親を無くし、なんやかんやあって松永久信に引き取られ松永燕の弟となった。姉である松永燕の事は家族として好きで、尊敬しているが同時に優秀な姉に対して劣等感を抱いている。

松永燕(まつなが つばめ)
マジ恋S人気投票1位の女の子、小悪魔カワイイ、ヤッター!この作品ではいろいろ強化されており、独占欲、束縛欲が強く、愛情が原作よりちょっと深い。


プロローグ
とある姉弟の回想


【とある少年の目標が歪むまで】

 

俺、松永鳶には姉がいる。松永燕、綺麗で、頭も良くて運動もできて、誰からも好かれる素晴らしい姉が。俺はそんな姉さんが自慢で、大好きで、幼いながらも尊敬していた。お姉ちゃんっ子だった俺は何時も姉さんの後ろについて行き何をするにも一緒だった。

 

だけど幼い頃のある時、俺の友達の言った何気無い一言が俺を姉離れさせ、そして俺の今後を決めた。あれは俺と姉さんがまだランドセルを背負っていた頃だ。姉さんは昔からなんでも出来て俺にとっては頼れるヒーローみたいな存在だった。

 

その日は俺の家で友達と宿題をしていたんだ。友達は苦戦しながらもどうにか宿題を解いていくけど、俺はその友達よりもはるかに苦戦していた。俺が宿題に悪戦苦闘していると委員会から帰って来た姉さんがやって来て悪戦苦闘している俺を見かねて助け船をしてくれた。姉さんの教え方はとてもわかりやすくて俺は姉さんのおかげで宿題を友達よりも早く終える事ができたんだ。

 

俺が宿題を終え、姉さんは友達と約束があるからと支度をしにいった。そして暫く経つと友達も宿題を終えた。やる事もやったし俺と友達はゲームをしてたんだ。それで俺と友達がゲームをしていると友達はふと姉さんの事を思い出したのか俺を数秒見つめてからこう言ったんだ。

 

『お前、何時もお前の姉ちゃんに助けられてばっかりだよな』

 

友達が言った一言に小さな頃の俺の心臓が"ドクン!!"と大きく鳴ったのがわかった。自覚はしてたから。幼い頃の俺は何をするにも姉さんが一緒で姉さんに頼ってばっかだったから。

 

友達の言った一言に俺は何かが覚めるような感覚と共にこのままじゃいけないって思うようになったんだ。

 

『……そうだよね。このままはダメ、だよね』

 

俺がそう言うと友達は何も言わずにランドセル背負っている年齢なのにドラマに出るカッコいいオヤジみたいにフッと笑うと視線をゲームへと移した。しかしその直後、友達のいた所からスパーンッ!という音が聞こえた。気がつけば隣にいた友達の姿は消えていて、友達は二、三メートル先の壁に叩きつけられて気絶していた。いきなり友達が壁に叩きつけられて訳がわからずポケーッとしていると、横にはいつの間にか姉さんがいて俺の頭を笑いながら優しく撫でていた。俺はいきなり隣にいた姉さんに戸惑いながら姉さんの名前を呼ぶ。

 

『つ、燕お姉ちゃん。』

 

『まったく、酷い子だね。弟がお姉ちゃんに頼るのは当たり前の事なのに。鳶、あんな子の言う事なんて信じちゃダメだよ?鳶はお姉ちゃんだけ信じてればいいの。お姉ちゃんの言う事だけを聞いて、お姉ちゃんにだけ笑顔を見せてくれればいいの。そうすれば鳶は幸せになれるんだよ。だけどこの子はそんな鳶の幸せを邪魔しようとしてる。よくない事だよね?だからこんな子とは付き合っちゃダメだよん。鳶、この子と絶交しよ、ね?』

 

微笑み、優しく俺の頭を撫でながら俺にそう語りかける姉さん。そう、俺は何時も姉さんの言う通りにしてきた。姉さんの言う通りにしてれば何もかも上手くいってたし困った事なんて何一つなかった。この時俺がウンと言ってたら俺は今まで通り何も困らず、姉さんに助けられながら過ごせてたんだろう。だけど目の前で気絶している友達のお陰でこのままじゃよくないと思った幼い頃の俺は頭を撫でる姉さんの手を掴んでキュッと掴み、決意を込めて姉さんに話したんだ。

 

『ダメ、燕お姉ちゃんに頼ってばっかりじゃ僕はダメになっちゃう。僕はもう燕お姉ちゃんに頼るのはやめる。大丈夫、僕は燕お姉ちゃんの弟だから。大変だろうけどきっとなんとかなるよ。』

 

幼い頃の俺の決意は確かなもので姉さんは何かを言おうとしてたけどその言葉を飲み込んでニッコリと笑った。

 

『……そっか。鳶も成長したんだね。わかったよん。』

 

姉さんはそれだけ言うと壁に叩きつけられて気絶している俺の友達を背負って"送る"と言って部屋から出て行った。俺は気絶した友達が心配だったから一緒について行くと言ったけど姉さんは大丈夫と言って部屋から去って行った。部屋から出て行く時、姉さんは俺の方へ向くと何故か悲しい表情を浮かべながら俺に向かって話しかけた。

 

『鳶、お姉ちゃんは何時でも鳶の味方だよ。大変だったら何時でもお姉ちゃんを頼っていいんだからね?』

 

『大丈夫だよ!今まで助けられて貰った分今度は僕がお姉ちゃんを助けるんだ!』

 

『……そっか。楽しみにしてるよん。鳶がお姉ちゃんよりも強くて賢いヒーローになるのをね?』

 

『うん!』

 

俺は何故か悲しんでいる姉さんを励まそうと、思った事を大きな声で言うと姉さんは未だに悲しい表情を浮かべながらも微笑みながら部屋から出ていった。

 

その日から俺は決意した。憧れの姉さんに追いついて、姉さんの弟だと自信を持って言えるような男になるって。その日から俺は変わった。嫌いだった勉強も真面目に一生懸命取り組み、姉さんと一緒にやっていた武術の練習も前より真面目に取り組んだ。幸いにも俺は姉さんほどじゃ無かったけど一定以上の才能を持っていた。友達と遊ぶ時間を無くし、そして好きだったゲームやマンガを止めてひたすらに努力した結果、俺は姉さんの弟という名に恥じないくらいには強く、賢くなった。だけどこれでハッピーエンド、っていう訳にはいかなかった。

 

『流石は燕ちゃんの弟だね!』

 

『松永の弟なら出来て当然か』

 

最初の内は憧れの姉の弟として認められていると思い俺は嬉しく思った。だけどそれも一瞬の事で、俺は気づいてしまった。気づきたくなかったんだけど気付いてしまったんだ。

 

 

 

松永燕の弟だから松永燕の弟だから松永燕の弟だから燕ちゃんの弟だから燕ちゃんの弟だから燕ちゃんの弟だから姉さんの弟姉さんの弟姉さんの弟

 

 

 

誰もが俺の事を松永燕の弟としか見ておらず、誰も俺を松永鳶として見ていない事に気づいてしまった。いくら努力して結果を残そうとも"松永燕の弟"だから、その一言で片付けられてしまう。そして悪い事は続いてしまうもんで、追い討ちをかけるようにいろんな人の声をいろんなところで耳にしてしまった。

 

『優秀は優秀だが、松永の姉の方ほどでは無いな』

 

『ちょっと凄いと思うけどやっぱり燕ちゃんに比べたら大した事ないよね〜』

 

『惜しいなぁ、これで弟も姉並みに優れてたら我が校の名も売れてよかったんだが……』

 

 

悔しかった。いくら俺が血の滲むような努力をしても姉さんの弟だから出来て当たり前。この一言で片付けられてしまった。いくら努力しても追いつける気がしない姉さんの後ろ姿。何時だって姉さんは俺よりもいい結果を残す。誰も俺の努力を見てないし、誰も俺を鳶という一人の人物として見てくれない。そのことが悔しくて、とても嫌だった。

 

やがて俺の心の中は姉さんに対しての劣等感が半分以上を占めていた。そして俺の心の中の姉さんに対する劣等感は心を蝕んでいき、何時しか姉さんに追いついて、姉さんの弟だと自信を持って言える男になるという目標は歪み、姉さんを超えて松永鳶という存在をきちんと認めて貰いたいというモノへと変わってしまっていた。

 

俺は目標も決意も何もかも歪んでしまったという自覚はしていたがもう後戻りはできない。俺は認めて貰いたいんだ。姉さんの弟では無く俺個人として、俺自身をきちんと見てもらいたいんだ。

 

目標の為に俺はより自分を追い詰めていった。寝る間を惜しんで、友達もなにもかも切り捨てて勉強と武術の練習に打ち込んだ。

 

だけど現実は俺の想像以上に残酷なものだった。本当嫌になってしまう。俺が血の滲むような十の努力をして十を得られるとしたなら姉さんは一の努力で千を得ている。いくら努力しても俺と姉さんとの差は開いていく一方で、俺はそれを自分の努力が足りないからと決めつけ、より一層勉強と武術の練習に打ち込んでいった。時折ひたすらに勉強と練習に打ち込む俺の頭の中に才能の差、という言葉が頭をよぎるがすぐに振り払う。もうそんな言葉では後戻りできない段階まで来ている。

 

もう、今更引けないんだ。

 

 

 

【少女は弟を独り占めしたいと願う】

 

私、松永燕には松永鳶という弟がいる。ま、弟とはいっても血は繋がっていないんだけどね。あの子がウチの家族になったのは私が小学校低学年の頃だった。ある日おとんがおかんに、それはもう見事な土下座をしていた。土下座するおとんの後ろには喪服と思われる黒い服を着ている鳶が両親の遺影を両手で持って立ち尽くしていた。

 

事情をよく理解していないおかんがおとんに事情を聞くと、鳶はおとんが昔よく面倒を見ていた後輩夫婦の一人息子で、そのおとんの後輩夫婦は不慮の事故で亡くなってしまったらしい。

 

おとんは亡くなってしまった後輩夫婦の事を思い目尻に涙を浮かべながら後輩夫婦の葬式に参列したのだがそこでおとんが見た光景はとても見ていられないものだったらしい。おとんの後輩夫婦にはあまり蓄えという蓄えが無くて鳶を引き取るメリットが見当たらなかった為か、まるで腫れ物を扱うように誰が引き取るんだと揉める鳶の血縁関係にある者たち。

 

鳶は幼いながらも周りが自分をどんな風に見ているのかを分かっていたらしく、その現実から逃げるように心を閉ざしてしまったそうだ。心を閉ざした鳶は亡くなった両親の棺の前で遺影を両手で持ちながらずっと立ち尽くしていたらしい。この光景を見ても尚、誰が引き取るんだと揉める鳶の血縁関係にある者たちを見ておとんの中で何かがキレた。

 

『ふざけるな!貴方達は子供をなんだと思っているんだ!両親を亡くした子供の目の前で誰が引き取るお前が引き取れなんて会話をするのか!もう我慢できない!貴方達にこの子を任せられない!この子は僕が引き取る!!』

 

おとんはそう言って激怒しながら鳶の手を掴み、無理やり連れ出した。事情を話しながらおとんはおかんに向かって涙を浮かべ、何度も頭をぶつけながらおかんに頼み込む。

 

「いきなりの事で本当に申し訳ないって思ってる!だけど見てられないんだ!僕は後輩夫婦が生きていた頃にこの子に会ったことがある!この子はよく笑う子だった!だけど今はもう心を閉ざして笑わなくなってしまった!僕はこの子を昔のような子に戻したいんだ!頼む!この子を僕らの家族に入れさせてくれ!こんな頭なら幾らでも下げる!だから……!だから……!」

 

ひたすらに床に頭をぶつけながら頼み込むおとんを見ておかんは静かに溜息をつく。だけど溜息は付いているもののその顔には優しい笑みが浮かんでいた。

 

「ハァ……久信くん。そんな事言われたら断れる訳ないじゃない。それに見くびられたものね、久信くんには私がそんなに頼み込まないと良しと言わないような女にみえたの?私はそんなヒドい女じゃないわよ。事情はわかったわ。私はこの子を引き取るのに異論は無い。……燕はいいかしら?」

 

おかんはそう言うと私に目を向けるとおとんもつられて目を向ける。まったく、おとんもおかんもなんでそんな目を私に向けるんだろうか。私は断る気なんて更々無いのにね。

 

「いいよ!これからよろしくね、鳶!」

 

元々弟が欲しかった私は鳶を受け入れる気満々で鳶に笑顔を向けながら鳶の手を握った。鳶は突然手を握られ目を見開いていたが私はそれでも構わず握った手をブンブンと振り回した。こうして私にとって最愛の弟、松永鳶が生まれたのだった。

 

鳶を新たな家族として受け入れたその後、これといって問題は無く鳶を養子として引き取る事が出来た。鳶の血縁関係の人たちは厄介払いが出来る、と嬉々として鳶を引き取る為に色々と協力してくれたらしい。この事をおとんは今でも愚痴ってる。ま、当然といえば当然か。

 

鳶を引き取ってから暫くして、おとんとおかんは私と大差無く鳶を愛情を込めて育てた。鳶の箸の持ち方が汚いと叱ったり、鳶が擦り傷をつけて帰って来れば大慌てで治療したり、鳶がテストで100点を取ってきた日なんておとんとおかんは私が軽く嫉妬するくらいには凄い褒めてた。まぁ私もおとんやおかんと一緒に鳶を可愛がってたからあまり強く言えないんだけどね。

 

こうして鳶は松永家の一員としてしっかりと愛情を込めて育てられたお陰かスクスクと育っていき閉じていた心を段々と開くようになっていった。段々と喋るようになり、少しずつコミュニケーションを取るようになっていた。

 

そして鳶が家族になってから半年が経とうとした時の夜、鳶が寝てる間に私はおとんとおかんにコッソリ起こされてテーブルに座っていた。テーブルについたおとんが言うにはもうすぐ鳶の誕生日がやってくるらしい。そこでサプライズパーティーをやろうとの事だった。おかんは勿論賛成していて私も賛成した。きっとビックリするだろう。私は思わず大声で賛成!と叫びそうになったけどおかんに鳶がおきるでしょっ!と口を塞がれた。

 

こうして鳶のサプライズ誕生日パーティーは鳶にバレないように水面下で動き続けていた。誕生日が近づくにつれ両親の事を思い出したのかどんどん暗い表情になっていく鳶を見るのがとても辛かったけど、サプライズパーティーまでひたすらに我慢した。

 

そして迎えた鳶のサプライズ誕生日パーティー当日、私は学校を仮病で早退しておとんとおかんと一緒にリビングで鳶が帰ってくるのをクラッカー片手に今か今かと待ち構えていた。そして、いよいよその時がやって来た。

 

玄関から「ただいま……」と小さな声が聞こえてくる。間違いない、鳶の声だ。リビングに待ち構える私たちはクラッカーを何時でも鳴らせるようにスタンバイしながら鳶がやってくるのを待ち構えているととうとうリビングのドアが開かれ、鳶の姿が目に入った瞬間私たちは思いっきりクラッカーを引いた!

 

「「「誕生日おめでとう鳶!!」」」

 

 

鳶は最初いきなり鳴ったクラッカーの音にビクッとしてその後何が起きているのか理解できず少しの間ポカーンとしていたがリビングに飾られた装飾とクラッカー、そしてデカデカと置かれた"とんび おたんじょうびおめでとう!!"という文字を見てようやく理解したみたいで鳶の目からはポロポロと涙が落ちていた。まさか泣くとは思わなかった私たちは泣き出した鳶に大慌てで駆け寄り、それはもう心配した。おとんやおかんが鳶に必死に言葉を投げかけるが鳶は泣き止まず、もうてんやわんや。そんな私たちを見て鳶はようやく泣き止み、嗚咽を混じらせながらゆっくりと口を開く。

 

「もう……誰もグスッ僕の誕生日グスッ……祝ってくれないって……思っグスッてた……パパとママ……死んじゃったグスッから……だけど祝ってくれた……おめでとうって……言ってくれた……っ!それッがッ、う、嬉ッしくて……」

 

鳶は涙ながらの告白におとんとおかんは涙ぐんでしまう。鳶は相変わらず涙ぐんで嗚咽を漏らしながらゆっくりと口を開く。

 

「だかッら……!ありがッとう……ッ!お父さん、お母さん、燕お姉ちゃん……っ!」

 

そう言って鳶は目に涙を浮かべて、初めて私たちの事をそれぞれお父さん、お母さん、燕お姉ちゃんと呼んでくれた。私たちの事を呼ぶ鳶の顔には確かな笑みが浮かんでおり、その笑みを見た時私たちの中で何かがキレた。

 

「「「と、鳶ィーーーー!!」」」

 

気がつけば私たちは鳶に飛びかかり力の限り抱きしめていた。鳶が苦しそうに呻き声を漏らしていたがそれでも構わず私たちは鳶を抱きしめていた。こうして私たちと鳶はようやく本物の家族になる事が出来たのだった。

 

誕生日から少し経ち、鳶はおとんが言っていたよく笑う子へとなっていた。あれからおとんとおかんはすっかり鳶に対して子煩悩になり、ひたすら鳶を甘やかしていた。ほんと、甘やかしすぎだと思うよ。私が小さかった頃あんな風に甘やかされたこと無いもん。ま、まぁ私も鳶を甘やかしてたからあまり強く言えないんだけどね……。

 

そんな中、鳶がよく笑うようになったある日の事、私は鳶を迎えに鳶の教室へ向かい、覗いた時だった。鳶はあの可愛らしい笑みを他の子に見せていた。その光景を見た時私の中でドス黒いモヤモヤが心を埋め尽くした。

 

何で鳶はあの子に笑顔を向けているのだろう?あの笑みは私たちが本物の家族になった記念すべき笑みなのに。何であの子はその記念すべき笑みを向けられているの?何でだろう?おかしいよね?あの子は鳶に何もしてあげてないよね?なのに何で鳶はあの子に笑顔を向けているの?そう思い、気がつけば私は鳶に笑顔を向けられている子の事を思い切り睨んでいた。

 

だが近くにいた鳶の同級生の悲鳴に近い声により直ぐに私は正気に戻った。私は鳶の同級生に一応謝っておき、笑顔を作ってから鳶の事を呼ぶ。鳶は私の声を聞きつけると笑顔を浮かべながら私の元へ笑顔で駆け寄ると私の手をギュッと強く握って帰ろと言うと私も笑顔で頷いて我が家へと向かっていくのだった。

 

自宅に着くと、鳶は部屋にランドセルを置いていち早く出かけてしまう。どうやら先ほどの子と遊ぶ約束をしていたらしい。きっと鳶は再びあの子にあの笑顔を向けるのだろう。そう思うと私の中で再度ドス黒いモヤモヤが心を埋め尽くしていく。ここで私は気づいた、私は自分で言うのも何だが同年代の子に比べて頭の出来がいい。他と比べて頭の出来がいい私はこの心を蝕むドス黒いモヤモヤの正体がわかった。

 

ああ、私は嫉妬してるんだ。

 

その事を自覚した時、心の黒い嫉妬の霧は私の心を一瞬で埋め尽くした。私の頭の中にはふざけるな!という思いや憎しみ、激怒といった様々な負の感情が埋め尽くされ、気がつけば唇は思い切り噛み締めていた所為で血が垂れており、握りしめた拳からも血がポタポタと垂れていた。

 

正直気が狂いそうだった。鳶の笑顔が他の見知らぬ奴に向けられる、そんなの許せない。いや、笑顔だけじゃない。泣き顔も可愛らしく怒った顔も、他の見知らぬ奴に向けられるのが許せない。鳶の笑顔も泣き顔も何もかも、それを見ていいのは私たち家族、ひいては私だけ。私の頭の中はそう言った考えだけで埋め尽くされ、心にドス黒い霧は私の心を完全に飲み込んだ。気がつけば私は自室でひたすらに鳶の笑顔を独占するための策を練っていた。

 

そして私は考えに考えて鳶から考える力を奪う事にした。考える力を奪い何もかもを私が決めてあげる、そうすれば鳶は私無しでは生きられなくなると判断した結果だった。それから私は鳶が何をするにしても一緒にいた。遊びに行く時も、宿題をやる時も、家事の手伝いをする時も、おつかいに行く時も、全て鳶と一緒にいた。ずっと鳶と一緒にいたお陰で数ヶ月も経てば効果は十分に発揮され、鳶はすっかり私無しではなにも出来ず、あたふたするようになった。あたふたする鳶は私を見かけると涙目になりながら駆け寄り、助けてとお願いをするようになり、私が助けてあげると鳶はありがとうお姉ちゃんと笑顔を私だけに向けてくれるようになった。

 

それが一年も経てばあら不思議、鳶はお姉ちゃんである私にすっかり依存するようになった。何もかも上手くいきこのまま鳶の笑顔は私だけのものになる、そう思っていた時予期せぬ事態が起きた。近所のガキ大将ポジションだったクソガキが私たちの家で鳶と一緒に勉強をしており、その時は偶々私は半ば無理やり押し付けられた委員会の仕事で帰るのが遅れ、その後最近付き合いが悪いと言われてしまい仕方なく友達と遊ぶ約束をしてしまった日だった。

 

私は委員会が終わり次第急いで家に帰るとそこには鳶以外の子供の靴があり、それに気づいた私は駆け足で鳶と私の部屋まで行くとそこではクソガキと鳶が宿題をしていた。鳶は相変わらずあたふたしており、私は内心ホッとしながら鳶に宿題を教えた。宿題を終えた鳶は何時もと同じようにありがとうと私に笑顔を見せてくれる。その事に私はホッとしながら大丈夫だろうと思い、友達と遊びに行くための準備をする事にした。

 

諸々の準備を終え、洗顔場で最低限の身だしなみを整えた後に私は鳶に遊びに行ってくると伝えよう部屋に入ろうとした時だった。部屋ではクソガキと鳶がゲームをしていたようだったがクソガキが鳶の顔を見ながらその一言を言った。

 

「お前、何時もお前の姉ちゃんに助けられてばっかりだよな」

 

その一言を聞いた瞬間私の頭の中が真っ白になった。鳶が私に助けられてばかりと思う奴らは他にも沢山いただろう。だが誰も口に出してはいなかった。周りにとってそれが当たり前だと思うように仕向けたのだから当然だ。だがあのクソガキは言ったのだ。鳶の前で、鳶の顔を見ながら。その言葉は鳶に深く突き刺さったらしく、鳶の目は何かが覚めたような目をしていた。

 

「……そうだよね。このままはダメ、だよね」

 

クソガキの言葉を受け止め鳶の中で私に助けられてばかりなのを良くない思うようになってしまった。折角上手くいっていたのに。鳶が私に依存するのが当たり前になるように仕向けていたのに。あのクソガキは鳶が私に助けられてばかりでいいのか?と疑問を持たせてしまっのだ。

 

よくもッ……よくもよくもよくもッ……!!

 

気がつけば私は鳶の言葉を聞いて生意気に笑うクソガキの頭を力の限り引っ叩いていた。怒りのあまり引っ叩いていてしまった私だったがその後直ぐに冷静になり、目の前で気絶しているクソガキよりも疑問を抱くようになってしまった鳶をどうにかしないといけないと判断した。私は何が起きたのかわからずポケーッとしている鳶の頭を微笑んで撫でて鳶がこれからも私に助けられてもいいんだよと言葉を選んで伝える。だけどダメだった。鳶の目には決意が篭っており私の言葉を聞いても揺らいでくれなかった。

 

 

失敗した失敗した。失敗してしまった。

 

私は鳶の決意を聞き、私の心が絶望に包まれる。鳶が私を頼らなくなる、私にだけしか見せなかった笑顔を他の奴らに向けるようになってしまう。その事を考えだけで私の中はドス黒い霧に包まれる。今直ぐ計画を練りなおさなければいけない。鳶が再度私にだけ笑顔も何もかも向けてくれるようにしなければいけない。私は鳶の決意に対してどうにかこうにか言葉を選んで鳶を応援し、気絶するクソガキを背負って部屋から出て行く。

 

最初鳶もついていこうとしたけど私はソレをやんわりと断る。このクソガキに報いを受けさせなければ気が済まない。鳶と私の繋がりを断った報いを絶対に受けさせなければいけない。だけどその報いは鳶の心を傷つけてしまう恐れがあるため決して鳶に見せてはいけない。

 

鳶を置いて行き私はクソガキを誰も通らない所まで連れて行き、報いを受けさせてやった。殴り、蹴り、関節も外してやりながらもう鳶に関わるな近づくなと警告する。だがクソガキは生意気な事にそれは鳶が決めることだと言った。私は内心殺してやろうかと思ったが直ぐにそれ以上に効果のある事を思いつき、頭の中のコイツを殺したいという思いをかき消してから満面の笑みを浮かべる。

 

「いいのかな〜?そんな事言って。そんな事言うと今度はキミの弟と妹を狙っちゃうよ?」

 

私が満面の笑みを浮かべて言った一言にクソガキの顔に驚愕の表情が浮かぶ。驚愕の表情を浮かべるクソガキを見て私の笑みはより深いものへと変貌する。

 

フフ、やっぱり効果あった。

 

クソガキは私の足を掴みながら必死に弟と妹を巻き込まないでくれと懇願するが私は私の足を掴むクソガキの腕を振り払い、満面の笑みを浮かべたままクソガキに顔を近づけて話す。

 

「じゃあ、わかるよね?」

 

クソガキは必死に悩みに悩み抜き、とうとう首を縦に振ってしまう。アハハ!やっぱり血の繋がった兄弟は大事だよね!友達よりも遥かに大事だよね!

 

上手くいった!上手くいった!

 

私はクソガキにこの事は誰にも言わないと約束させた後、偉い偉いと頭を撫でてその場から去る。余計なモノの所為で友達との待ち合わせに大分遅れてしまっている。私は駆け足で待ち合わせの場所に向かっていった。

 

迎えた次の日。鳶を迎えに教室へ向かうとそこでは一生懸命問題に取り組む鳶の姿、そして鳶の事を罪悪感たっぷりに遠巻きから眺めるクソガキの姿が見えた。私はその光景に言いようのない満足感を覚え、鳶を家に連れ帰る。

 

クソガキから鳶を引き離す事に成功はしたものの私の中ではまだ懸念事項があった。鳶が私に追いつこうとする中で私といる時間を疎かにしてしまっている事だった。これはどうにかしないといけない。だけどどうすれば良いのだろうか。鳶を独占するためにどうするか考えている時、あるモノがその時の悩みを吹き飛ばしてくれた。

 

私の弟、というレッテルの存在だ。鳶がいくら頑張って結果を出しても私の弟だから、その一言で片付けられる。最初鳶は私の弟、というものを褒め言葉として受け取っていたがそれも束の間で鳶の中で私という存在がどんどん大きくなっていった。

 

やがて鳶の中で私に追いつきたい、立派な私の弟になりたいという思いが私を超えたい、私の弟ではなく松永鳶として見てもらいたいという思いになっていくのを私は見抜いた。それを見抜いた時、私はこれしかないと思った。

 

これから私は鳶の目の前に立つ絶対に超えられない大きな壁になってあげよう。鳶がいくら頑張っても追いつけない存在になってあげよう。鳶は私を越えようと必死に食らいつくだろう。だけど絶対に追いつかせてあげない。その過程で鳶の何もかもを奪い、砕いてあげよう。何もかもを奪い、砕き鳶の心が絶望色に染まったその時、私が助けてあげる。そうすれば鳶はきっとまた私無しでは生きられなくなる。鳶をイジメるみたいで少し心苦しいことだけど、これが上手くいけば今度こそ鳶の全てを私のものにすることができる。

 

そう考えた私は今まで以上に努力した。鳶が私に絶対に追いつけないように、何時までも私の弟というレッテルが鳶の邪魔をするように。やがて鳶は自分から何もかも切り捨てて私を越えようと、自分自身を見てもらおうと一生懸命努力するようになった。ああ、なんて都合いいんだろう。私に追いつけない、私の弟と一蹴される事に対して嫌だと思うほど鳶の心はだんだんと弱っていく。弱っていく鳶を見るのはとても心苦しいけれど同時にいずれやって来る時の事を考えとても楽しく、嬉しく思えた。

 

大丈夫だよ鳶、今はとってもツラいだろうけど、いつかきっとお姉ちゃんが助けてあげるから。

 

ま……鳶の心が絶望色に染まってから、だけどね?




ハイ、以上が回想となります。

いかがでしたでしょうか?こういった話は初めて書くので皆さんがどう思うのかちょっとドキドキしてます。

ああ、そうだ。まだプロローグに入ったばっかりですがプロローグはもう一話くらい入れる予定なので本編はもう少し先になります。

次回は久信の日記から始まり、オリ主がとある学園に行くまでの過程を書く予定です。

それではみなさん、良い週末を!!

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