そもそもコメントあるわけないと思いつつも批判が怖くて感想欄を見れないlockです。
2話「挑発ーProvocationー」を投稿します。
「キミ…誰だったっけ?」
彼女は問いかける。
ユウトは、彼女を素早く観察した。
日本人らしからぬ、長い銀髪。
サイドをそれぞれ水色のリボンで纏め、後ろはそのまま流し。
一本一本が細いのだろう、僅かな動作でも頬をなでるように揺れ動く。
前髪は目に掛からないようにヘアピンで留められ、それが如何にも委員長然とした雰囲気を醸し出している。
また、小さな顔の要所にはバランスの取れたパーツが嵌り、瞳は、目を合わせれば吸い込まれてしまいそうな蒼。
そして視線を下にすれば、女性特有の豊満さが
つまるところは、百人に聞けば百人が答えを同じにするであろう、文句なしの美少女だった。
世界に様々な能力が誕生してからは変わった見た目をした人間も現れ、外国人と
そういう例なのだろうとユウトは解釈し、一秒にも満たない時間で観察を終えた。
そして、ユウトは素っ気なくまた窓の方を向き、彼女の問いに答えた。
「会った事があるみたいに言ってるが、人違いじゃないのか?俺はお前の事なんか知らん」
その途端、またクラスが、今度はより一層不穏な空気を纏ってざわめき出した。
『あ、あいつ、ユキさんに話しかけられといてなんだあの態度!』
『なに話してるのかよく聞こえん…転入早々ユキさんと、内緒話、だと…!』
『ありえぬ!我らがユキさんと、あ、あんな至近距離で…うらやま、もとい全身腐って死ねあの不良!』
……主に怨嗟に満ちた男子達の呪詛で。
ユキと呼ばれた彼女は、クラス内でも一際目立つ、可憐な容姿をしている。
男子たちの反応もなるほど、というものである。
ユウトはちょっと声の方を横目で見やると、顔を前に向けた。
そして誰に向けてという訳でもなく―――爆弾を投下した。
「なあ、このクラスの男子はヘタレしかいないのか?」
ビキビキビキッッ!!
堪忍袋の緒が、十数本同時にブチ切れる音がした。
「てめえ、フザケんなよ!」
「不良気取りが調子乗ってんじゃねーぞ?おい!」
「そしてとっととその席から退け!ってか代われ!」
ガタガタッと椅子を鳴らし、クラスの男子ほぼ全員が立ち上がる。
ユウトを“不良”と認識してもそんな挑発的な台詞が言えるのは、数の利によるものと、もう一つ。
「覚悟くらい出来てるよな…?転入生」
一人の両の掌に紫の電流が生まれ、バチバチと音を立てる。
別の生徒は中空から短剣を取り出し、また別の生徒は机を片手で軽々と持ち上げる。
神威学園の別称は≪異能学園≫。
ここに籍を置く生徒は皆、超常の力を持っているのである。
そして能力は、相性の良いもの同士を組み合わせることで、より大きな力を発揮する。
よって、1+1=2と言い切ることはできず、3とも4とも、もしくはそれ以上になる可能性すらあるのだ。
その事実による安心感が、彼らの暴走を助長していた。
彼らは、右手を宙にかざして叫ぶ。
「「「
すると彼らの体が青い光で覆われ、
欠点は、使用可能時間の短さ。かなり大量のエネルギーを必要とするので、1日あたり1時間程しか使用できない制限が掛けられている。
そして、ダメージを防ぎはしても痛みはある、ということも大きな欠点である。実際にほとんど怪我はしていないので、すぐに退く痛みではあるが。
「みんな止めて!先生の監督外で能力を使うことは禁じられてるでしょ!」
ユキが慌てて止めに入るが、自身のプライドを傷つけられた彼らの耳には届いていない。
もはや、今にも全力でユウトを攻撃し始めそうな雰囲気になっていた。
そこへユウトは、
「事実だろ?美人なクラスメイトと付き合いたけりゃ、告白すればいい。そうする行動力がないってことは、要はヘタレってことだろ?」
と、更に火に油を注ぐように挑発した。
「ちょっと、キミ!なんでそんな喧嘩腰に…」
ユキが、ユウトをいさめようとする。が、
「優等生サマは黙ってろよ。今はこいつらと話してんだから」
眼力と、発せられた低い声にうっと言葉を詰まらせる。
このユキの反応で、彼らの怒りが爆発した。
「この野郎…ユキさんになんて口きいてやがるッ!」
机を持った一人が、ユウトめがけて走り出す。
それを皮切りに、彼らは次々とユウトに襲い掛かった。
「おっと・・・
ユウトの体も青い光を纏い、一瞬で
「ユキちゃん!」
そこへ女子の甲高い声が響き、ユキの姿が掻き消える。
次の瞬間、教室の反対側、前の方にユキが現れる。誰かが能力で張ったのであろう膜のようなバリアの中に、これも誰かの能力か、ユキがテレポートしたのだ。
「ちょっと、止めなきゃ!」
「ダメだよ!絶対巻き込まれちゃう!」
「ちょ、すごい力……アズサ!あんたも能力使ってよ!」
もう春だというのにマフラーを巻いた、アズサという名前らしい少女は、首を横に振った。
「先生の監督外では、使わないべき。それに……そもそも友人に対して、能力はつかわないべき」
「まあ、それもそうなんだけどさ…!あとアズサ、その若干違和感のある日本語、どうにかならない…?」
「……?別に、不便もない」
「ハァ……まあ、後でね」
そしてその時。
「オラアッ!」
決して軽くはないであろう机が気合とともに、椅子に座ったままのユウトめがけて振り下ろされた。
ズガンッ!という激しい音と衝撃。
余りにも凄惨な光景が予想され、女子の数人が目を逸らす。
「ちょっと、やりすぎじゃ……」
誰かが呟き、教室が沈黙に覆われる。だが、その直後。
「なるほど、身体強化ね…『喜び』に多いって聞いてるし、ってことはお前、それなのか?」
その声の呑気さが、教室内の全員を驚かせた。
ユウトは全くの無傷で、自分の机の上に立っていたのである。
「な…テレポートか!?」
「俺の能力なら関係ない!」
バリバリッ!
教室内に紫電が満ち溢れていく。
ユウトの足に火花が触れると、電流がまるで紫の蛇のように細長くうねり、ユウトの胴体に巻き付いた。
「食らえ!」
蛇がユウトを締め付けていく。継続的な電流の痛みで気絶するのが先か、締め付けによる酸素不足で気絶するのが先か……
だが、またしても予想は裏切られた。
「な……なんで平気なんだよ!!
紫電の蛇に絡みつかれたまま、彼は笑って言った。
「全力で来い。せいぜい遊んでやる」
その顔には、余裕の表情がありありと浮かんでいた。
日付変更ギリギリになってしまった……
8/3つじつま合わせに、諸所変更入れました