シャフティング・マインド(凍結)   作:lock

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こんばんは。
サブタイトルの英単語が正しいのか不安で仕方ないlockです。
3話「驚愕ーAstonishmentー」を投稿します。


驚愕ーAstonishmentー

「くっ・・・!」

 

電流の蛇が何匹も生まれ、ユウトの立つ位置を床から天井まで、(まゆ)のように覆っていく。

ユウトは蛇に絡みつかれたまま、抵抗する様子もなく繭に閉じ込められた。

 

「俺の電流は、能力をある程度妨害できる!時間を稼ぐから、その間に囲め!」

 

両手から電流を放ち続けながら叫ばれたその一声に、十数人が繭に向かって走る。

窓際で火花を(くすぶ)らせる紫電の檻を半円形に囲んだ彼らは、一斉に能力を発動させ・・・・・・

 

「あらよっと」

 

バン!と何かを強く叩いたような音が響く。その瞬間、ユウトを覆っていた電流が掻き消えた。

 

「なっ・・・!」

 

「いない!?」

 

そこに捕えられていたはずのユウトがいないことに、驚愕の声が上がる。

そして、彼らは自分たちにいかに知識と経験が不足しているのか、身をもって知ることになった。

 

ドガアァァァァァァンッ!!

 

攻撃系の能力が互いに干渉し合い、発動が失敗したそれぞれの能力が、彼ら自身も巻き込む大爆発を引き起こした。

 

「キャアアッ!」

 

教室の前側で、女子生徒が悲鳴を上げる。

 

「みんな、伏せて!」

 

防御壁を張っている女子生徒が、能力をより強く発動させた。

膜のようだったそれが硬さを伴い、ガラスのような確かさをもつ。

割れてしまいそうなガラスのイメージとは裏腹に、防御壁はその役割を十全に果たした。

爆風に押されながらもその威力を殺し、後ろで伏せている生徒たちを守りきったのだ。

そしてもうもうと立ち込める爆発の煙が収まった時には、窓際に立っている男子生徒は一人もいなかった。

 

「お前ら、『信頼』のサポートも無しに密着して能力使うなって、まだ習ってないのか?」

 

爆発が起こった場所から遠く離れた廊下側から、呆れたような声。

防御壁に守られた生徒たちが、そちらに視線を向ける。

そこには電流を起こしていた生徒が、呆れた顔で佇むユウトの足元でぐったりとしていた。

 

「ウソ・・・なんで平気なの、あの人・・・?」

 

「なんで爆発を受けてないの・・・?」

 

「一瞬、教室の外にテレポートした、とか・・・?」

 

女子生徒達の驚愕と疑問に答えをもたらしたのは、当人ではなく。

 

「違う」

 

クラスメイトを止めようともがきながらも、四面楚歌のユウトをずっと目で追っていた、ユキだった。

 

「あの人は・・・爆発が起こる直前で、窓ガラスのサッシを蹴って、包囲の向こう側に跳んで・・・そばの机を盾に使って、爆風を避けた。でも、その前にどうやって電流の拘束を振り切ったの?机だけで、あそこまで爆風のダメージを受けずに済むとは思えない。きっと、何か補助的な能力を・・・」

 

だが、半ばブツブツとした呟きになっていたユキの声は、そこで遮られた。

 

「おーい、そこの無事な誰か!こいつら回復してやってくれよ。命にかかわるほどじゃないと思うが、念のためにな」

 

ユウトは、至って平然とした顔で言った。

まるで大した事は起こっていないといわんばかりの、気楽な調子で。

ユキは、自分を抑えていた友人達を「もう大丈夫」と退かせ、立って彼に向き直った。

 

「・・・ねえ、キミ」

 

ユキは問いかける。

 

「能力による自信があるのだとしても・・・なんで、そんなに平然としていられるの?」

 

それは、ユウトを除いた、この教室にいる全員の疑問を集約させた問いだった。

ユウトは面倒そうに、バリバリと頭を掻く。

 

「んーと、まず一つ、誤解を解いておくとだな・・・」

 

だが、彼が答えるよりも早く、教室の前のドアが開いた。

 

「おいおいおい、なーにやってんだお前ら」

 

そこに立っていたのは、黒いスーツをビシッと着こなす、背の高い女性。

髪は短めの黒で、白い手袋を両手にはめている。

持っている物が、出席簿とカバンでは無くティーポットとカップなら、何処(どこ)ぞの執事かと言いたくなる出で立ちだった。

 

「元気なことはいいことだがなー、教室直すのだって面倒なんだぞ?そこんとこはきちっと配慮してくれると、先生嬉しいんだけどなー」

 

つかつかと教卓に歩み寄り、その上にバンと出席簿を置く。

 

「はい、5分遅れたけどHR(ホームルーム)始めるぞー。名前呼んで答えなかった奴は遅刻扱いになるから、大きな声で返事しろー?」

 

「あ、あの、白山(ハクサン)先生・・・」

 

そこでユキが手を上げ、スーツの女教師に発言を求める。

だが、

 

「こら、ユキぃ!苗字で呼ぶなって、いつも言ってるだろ!」

 

彼女のマイペースさに遮られる。

それでもユキはぐっと(こら)え、めげずに再び口を開く。

 

「はい、えっと・・・千夏(チナツ)先生、少しいいですか?」

 

「うむ。なんじゃ、ユキくん?」

 

「(なんですかその口調・・・)はい、あの、彼らが・・・」

 

ユキは、教室の後方を指し示す。

 

「気絶しているので・・・応急処置と、保健室へ運んでいってからでいいですか?」

 

「ん、いいよー。じゃあその間はマンガ読んでるな。終わったら教えてー」

 

そう言うと彼女はカバンからマンガを取り出し、本当に読み始めた。

その余りのマイペースさに、クラス全員が言葉を失う。

そして、回復能力を持つ女子生徒たちが、けが人のもとへ行き、応急手当を始めた。

ユキはユウトに言う。

 

「ねえ、キミも保健室にみんなを運ぶの、手伝ってよね。キミが出したけが人と言えるわけだし、男の子はほとんど気絶しちゃったんだから」

 

「それはいいけどさ・・・その『キミ』って呼ぶの、止めてくれよ。俺にも(カノウ) 勇人(ユウト)って名前があるんだ。」

 

ユキはハッとした。

 

「そうだよね、ごめんなさい。・・・そう言えば私も、きちんと自己紹介してなかったね」

 

ユキはユウトに向き直り、口を開く。

 

「私の名前は・・・黒萩(クロハギ) (ユキ)。これからよろしくね、叶君」




1分前って…
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