シャフティング・マインド(凍結)   作:lock

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こんばんは。
ポケモンGOが楽しすぎて、うっかりすると痩せてしまいそうなlockです。
5話「黙秘ーKeep silentー」を投稿します。


黙秘ーKeep silentー

ぬかるんだ地面に足を取られてしまいそうな、シダの葉が(しげ)る熱帯雨林。

 

「どわあああああっっ!?」

 

ドガン!バコン!と音を立て、毛むくじゃらの巨腕(きょわん)がユウトめがけて振り下ろされていく。

ユウトは、それら全てをギリギリで躱しつつ、必死で走っていた。

 

「無理だ無理!こんなの絶対無理―――っと!」

 

叫びながら、紙一重のステップ回避を成功させていくユウト。

そこへ、チナツの声がアナウンスで響き渡った。

 

『おらおら、どうしたー?さっさとボール捕っちまわないと、時間が無くなるぜー?』

 

「てめえ、ふざけんな!これ明らかに難易度設定おかしいだろ!」

 

『知ったことではないなあ!ほれ、観念してさっさと能力使え!』

 

「くっそ、上等じゃねえか・・・絶対に使ってやらないからな!」

 

なぜ彼らは、こんな状況になっているのか。

それは、遡ること約30分―――

====================================================

「テスト?」

 

商業エリア、自動販売機の前。

ユキと話しているところを呼び止められたユウトは、チナツから『新入生 能力測定テスト』の話を聞かされていた。

 

「そうだ。能力と言っても、状況判断能力や、危機対処能力を測るためのものだな。新入生は毎年、4月始めにやるんだが・・・お前はタイミングが悪かったからな、やってないだろ?」

 

「確かに、そんなもの受けた覚えはないですね・・・どんなテストなんです?」

 

その疑問に答えたのは、チナツではなくユキだった。

 

「仮想訓練室で、立体映像で作られた街の中で闘うの。銃を装備した人間が相手で、銃から出されるレーザーに当たったら減点。でも、当たっても痛くないよ」

 

「そうだ。ほとんどの奴らは、能力を使ってサッサとクリアしたぞ。お前も能力を使えば瞬殺だ、瞬殺」

 

最後の台詞を言いながらニヤリ、としたチナツに若干の寒気を覚えたユウトは、チナツに尋ねた。

 

「・・・命の危険とか、ないですよね?」

 

「おう、平気だぞ」

 

そのあっさりとした返答で少しばかりホッとしたユウトは、チナツの運転するバイクで校舎に戻ってきたのだが・・・

 

(『お前はこっちだ』ってエレベーターで相当な深さを降りて、実技演習室に連れてこられた辺りからなにかおかしいとは思ってたけど・・・あれ(・・)はないだろ!殺す気かあいつ!)

 

ユウトに与えられた課題は、《対象の頭部に取り付けられたボールを奪取せよ》というものだった。

それだけ見れば、そこまで難易度の高い内容という訳でもないだろう。だが・・・

 

「グログォアアアアーーーー!」

 

―――大音量の雄叫びで空気を震わせる、その《対象》が問題だった。

身の丈3メートル、丸太のように太い腕の長さは2メートル。

落ちくぼんだ眼窩(がんか)では、赤い目が凶悪な光を放っている。

体形としてはゴリラに近いだろうが、サイズが全くもって規格外だった。

頭部には、オレンジに発光するボールがベルトのような器具で取り付けられていて、それを回収することが出来れば課題は達成らしいのだが・・・

 

「ギャルオッ!」

 

「うおっ!」

 

ズドン!と、怪物の右腕が、ユウトが直前まで立っていた地面を抉る。

ぬかるんでいるとはいえ、地面を30センチ余りも(へこ)ませてしまうようなパンチを食らえば、無事で済まないことは明らかだった。

 

「ひぃ・・・!」

 

ユウトの喉から、情けなく(かす)れた声が漏れる。

だがそれでも、彼に能力を使おうとする様子は全く見られなかった。

 

「ちっ!なかなかしぶといな・・・」

 

モニタールームでその様子を見ていたチナツは、舌打ちを漏らした。

そこへスライドドアが開き、タクシーを捕まえて(神威学園は余りにも広すぎるため、各種交通インフラが整備されているのだ)校舎に戻ってきたユキが姿を現した。

 

「これは・・・一体どういうことですか、先生!」

 

モニターに表示されている映像を見て、おぼろげにではあるが状況を察したユキは、チナツに詰め寄った。

だが、チナツは平然と、

 

「どういうことって・・・あいつの能力を見ようとしているだけだが?いやあ、『お前の能力について教えてくれ』って頼んでも(がん)として黙秘権行使だからさ-、それなら実際に見ちまおうっていう?」

 

と返す。ユキは、続けてチナツを怒鳴りつけた。

 

「能力を見るって、それなら私たちが受けたテストと同じで十分じゃないですか!なんであんな危険な合成獣(キメラ)と闘わせているんですか!?あれ、どう見てもAランク以上ですよね!?」

 

合成獣(キメラ)》とは、クローン技術の発達により生み出された、変種の動物のこと。

2、3体の動物の遺伝子情報を元に、それぞれの特性を併せ持つ、全く新しい獣を創り出すことができるのだ。

欠点としては、生み出す際の成功率がとても低いということと―――

 

「まだスペックの測定してないからな、あのゴリちゃん。Aランクの認定は受けてないんだよ。第一、本当にAランク相当の力があるのかもわかんないしな、試運転も兼ねてるんだ」

 

予知能力者でもない限りは、どのような能力を持って生まれてくるのか、誰にも分からないということだ。

 

「し、試運転って!どこの世界に自分の生徒を実験台にする教師がいるんですか!正気ですか!?今すぐに止めてください!」

 

チナツのあまりの言いように、ユキは完全に取り乱していた。

だがチナツは冷静に、とどめとなる事実を告げた。

 

「『一級合成獣(キメラ)取扱』って資格があってな?その資格を持っていれば、合成獣(キメラ)に関する大抵の事は許可されるんだよ。創ったり研究したり・・・闘わせたり、な。つまりこのテストは、法的に認可されているってことだ。お前の権限で止めることはできないぜ、ユキ」

 

「そ、そんな・・・」

 

説得の糸口を失ったユキは、いくつもの視点でユウト達を映すモニターを見つめた。

ユウトが怪我をした様子はない。だが、ぬかるんだ地面を走り回ったせいだろう。完全に疲労困憊していることは、誰の目にも明らかだった。

チナツは笑う。

 

「さあ、見せてみろ・・・お前の能力を!」




あんまりセリフ無かったなー、主人公。

(7/27修正)
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