仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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※一か所修正させていただきました。流石にこの間違いはスカイツリーを設計した方に失礼にあたるため、書き直させてください。あと、お気に入り登録をしている方、最新話投稿ではなくてすみませんもう少しだけ待ってください。
 修正内容674m→634m


プリキュアの世界chapter4 昔は私達も戦ってた

-東京クローバータワー 08:27 a.m.-

 

「さて、この世界にあるたくさんのお宝……どれを貰って行こうかな?」

 

 海東大樹は、一人何らかのリストを見ながら虚空に向かってしゃべりかけていた。今彼がいるのは大貝町にある東京クローバータワーだ。全高は999m。東京タワーは333m、東京スカイツリーが634mだと言えばその大きさのすさまじさが分かるだろう。四葉グループのご令嬢がオーナーを務めるこの場所の、工事関係者ぐらいにしか立ち入りの許されていない場所から見るその景色は格別な物であろうし、高所恐怖癖の人間からしたら昇るのも嫌な場所だろう。

 

「プリズムストーン、クローバーボックス、ミラクルドラゴングレイブ……色々あるから迷うな……」

 

 どうやら、獲物を探しているようだ。彼が言った物も含めて、この世界にはお宝と呼ぶべきものが沢山ありすぎる。そのためか、逆にどれから手を付けようか迷っているのだ。そしてリストをカバンに仕舞って立ち上がり、帽子が風で飛ばされないように押さえながら言う。

 

「とにかく、まずは近いところから行ってみようか」

 

 次の瞬間、彼の姿はオーロラの中へと消えてしまった。それを見ていた人間は、一応いなかった。

 

ー城南大学 09:37 a.m.ー

 

「……と、言うことだ。」

「世界の破壊者……ディケイドね……」

「どうだ?突拍子もない戯言のような話だ」

 

 とりあえず、時間の許す限りに士はすべてを話した。自分が仮面ライダーディケイドであるということ。世界の崩壊を防ぐために世界の破壊者となって様々な平行世界を回り、そして最終的には救ったということ。そしてスーパー戦隊と協力し、世界を救い、結果として親友と喧嘩をしたということもすべてだ。

 

「分からないわよ。多元宇宙論という物はかなり前から提唱されていた倫理物理学の説の一つだし」

「それに士、私達には、それを信じる根拠があるわ……」

「ん?」

 

 ゆりは、手に持ったスマホを操作し、ある画像を見せる。それは、空の画像のようだ。だが、おかしい。二種類の空が見える。その中間点を見ると、まるで鏡にヒビが入っているようになっている。まるで、そこにあった鏡が割れて、向こうの景色が通り抜けているような……。

 

「この世界は、別の異世界とつながっているのよ」

「なに?」

「そう、トランプ王国っていうのよ」

「トランプ王国?」

「私たちも、今まで数多くの異世界に行ったものよ……」

 

 ほのかのその顔は、まるではるか遠くの昔を見ているかのように、もう戻らない時を思う顔だった。

 

「なんだ?異世界旅行というのがこの世界ではポピュラーなものなのか?」

「別にそういうわけじゃないわ。ただ、私たちが他の人より少しだけ違っただけよ」

「どういうことだ?」

 

 ほのかは、士の質問に一つだけ笑みを浮かべると、机の引き出しを開けて、中から携帯のようなものを取り出した。だがそれは、大人が持つにしてはややかわいらしすぎるものに思える。

 

「なんだそれは、昔に使っていた携帯か?」

「いいえ……ミップル、朝よ起きて」

「?」

 

 ほのかが携帯に向けて声をかけた。傍から見れば、一体何をしているのだろうかと思うのだが、しかし彼女がそう声をかけた瞬間、携帯が振動を始めた。バイブ機能なのだろうか。いや、違う。なんだか生物が起き上がろうとしているような動きだ。そして次の瞬間、彼女の持つソレはポンという音と共に煙に包まれた。そして次の瞬間現れたのは……。

 

「ふぁ~……おはようミポ、ほのか」

「ぬいぐるみ?」

 

 ピンクを主体とした小さなぬいぐるみのようなモノ。それが眼をこすりながらしゃべっている。生き物のようではあるが、今まで多種多様な生物を見てきたものの、このような生き物は見たことがない。大きな耳を持ち、両方に赤色のハートの模様があるその生物は、ほのかの言葉をそのままにするならば、ミップルという名前であるようだ。

 

「いいえ、あの子は妖精。ほのかのパートナーよ」

「妖精だと?」

「ミポ!?」

 

 士の言葉を聞いた瞬間、ミップルはまた煙に包まれて携帯状になってしまった。

 

「ミップル大丈夫よ。姿を見せても」

「ミポ?本当ミポ?」

「うん」

 

 そしてミップルはまたも煙に包まれて妖精になった。この行動から察するに、妖精の状態という者は他人には見られてはいけない物のようだ。だが、それも絶対というわけではないようで、ほのかの許可を得れば大丈夫らしい。

 

「初めましてミポ。ミップルミポ」

「あぁ、俺は門矢士だ。それで、これがお前たちが他と違うということの正体か?」

「そう。私たちはプリキュアなの」

「ぷりきゅあ?」

「そうよ……プリキュアは伝説の戦士。はるか昔から代替わりを繰り返しながら悪の心を持つ人達と戦ってきた。それがプリキュア……まぁ、そんな私たちも十年前に戦っていたOGなのだけれど」

「十年?おい、お前らはいくつなんだ?」

「女性に年齢を聞くのはご法度よ。と言っても、そうね教えてあげるわ。今は私が25歳だから、15歳……中学三年生の時よ」

「私は今27歳だから、17歳で高校2年生のころ、いえ最初にプリキュアになったのは中学二年生の時だわ」

「それじゃ……子供の時から戦っていたということか?」

「えぇ、でも断っておくけれど、誰かに強要されてプリキュアをしていたわけではないわ」

「えぇ、私たちは自分の意思でプリキュアとして戦って、そして未来を勝ち取ったの」

「ほのかや、なぎさ達がいなかったら……今頃大変なことになっていたミポ」

「……そうか」

 

 士は思うところがあったが、しかし彼女たちのそのきれいな瞳を見る限りは嫌々やっていたということはないように思えたため、それからの追及は止めた。因みに雪城ほのかは、キュアホワイトとして、月影ゆりはキュアムーンライトとして戦っていた。因みに、キュアムーンライトが属していたのはハートキャッチプリキュアという名称があったが、雪城ほのかが属していたグループは、最終的に三人組で戦っていたグループなのだが、これと言った名前はなかった。そのため、仲間内ではその世代の中でも最初に誕生したプリキュアのチームであることから、『初代』という仮名がつけられているらしい。それにしても、である。

 

「だが、まさか俺よりも年上だったとはな……てことは、お前らの方が先輩ということか?」

「そう言うことになるみたいね。そういえば……結局、貴方はいくつなの?」

「……」

 

 確かに自分は一体何歳なのだろうか。色々な世界を渡ったため、時間の間隔がズレてしまい、実際の所の年齢は確実の物ではなくぼやけてしまっている。だから、正式な物は言うことができないがおそらく。

 

「多分、23と言ったところだろう。いろんな世界を渡っていたから正確じゃないがな」

「そうなの」

「それで、本題に入りましょうか」

「本題?」

「えぇ、貴方の友人の海東という男性……その人とどう和解しようと思っているの?」

 

 どう、と言われても。

 

「さぁな、なるようになるだろう」

「なるようになるって、何も考えていないミポ?」

「あぁ」

 

 記憶はあいまいだが自分と海東は、かなりの昔からの友人であるようだし、どうして海東が怒っているのかも把握できている。後は自然な解決を待つのみであると士は考えていた。

 

「……ゆりさん……」

「えぇ、そうね」

「なんだ?」

「士、本当にあなたは海東という人の事を分かり切っていると思っているの?」

「あぁ、あいつの思考は意外と単純だからな」

「単純なのは、貴方の方かもしれないわよ」

「なに?」

 

 単純なのは自分の方とはどういうことか。士は、次にゆりの口から出てくる言葉を待った。

 

「貴方は人の心を分かっているようには思えないわ。どちらかと言うと、分かったふりをして他人の心に土足で踏み込んで踏みにじる。そんな感じね」

「……」

 

 分かったふりをしている。それは確かにあるかもしれない。少しの間だけ接して、それで相手の事を分かったような気になっているだけ。そしてさもすべてを把握したように偉そうな言葉を吐いていく。確かに自分は、何もわかっていなかったのかもしれない。だからこそあの時最後の最後で海東がビッグマシンを完成させて自分たちに襲い掛かってきたのだから。海東は、信頼していた自分に騙された、裏切られたからあんなことをしでかしたとばかり思っていた。しかし、その心の内は違うのかもしれない。だとしたら、何なのだろうか。自分が彼にしてしまったことは一体……。その時、ゆりが言った。

 

「がんばって悩みなさい。悩んだその先に、きっと答えがある。でも、一人で悩み続けるのもだめよ。相談したいことがあったら私達にも話して。私たちプリキュアは、何だって相談に乗るわ」

「……あぁ」

 

 果たして、この悩みが解決される時が来るのか、士にはよくわからないままであった。ところで、とゆりが言う。

 

「ほのか、あなたマナに渡すカップケーキは買ってきたの?」

「あっ、いけない……昨日は研究に没頭していたからすっかり忘れてたわ……」

「だから、この時間を使って買いに行く予定になっていたミポ」

「なるほど、大体わかった。つまり俺のせいってことだな」

「別にそう言う意味で言ったわけじゃないミポ」

 

 とミップルは弁明する。しかし、実際の所時間を使ってしまったのは自分の責任である。さてどうするか。ほのかによるとあと三十分もすれば一コマ目が終わってしまう。二人はその後にある二コマ目の授業の準備もしなければならないし、この大学からそのお店までは往復で一時間はかかる。そのため、今から飛ばして買いに行っても次の授業に間に合わないのだそうだ。その時、ゆりが言った。

 

「だったら士。彼に行って貰えば?」

「え?」

「だな、どうせ俺は暇だからな……雑用ぐらいしてやる」

 

 と、なんだかやさぐれたように士は言った。

 

「それならお願いできるかしら。車のキーはここに……」

「必要ない」

「え?」

 

 車のリモコンキーを出そうとしたほのかはしかし、士のその言葉に止められる。そして、次の瞬間士の目の前に灰色のオーロラが出現する。

 

「これは?」

「このオーロラを使えば、瞬時に場所を移動することができる。その店はどこにある?」

「便利ね……みゆきたちの『ふしぎ図書館』に似ているけれど」

「それじゃお願いするわ。住所はこれね」

 

 といって、ほのかはメモ帳を一枚破いてそこに住所を書いた。どうやら加音町という町にあるらしい。彼女の筆圧はかなりの物のようで、その下には前に書いたと思われるメモが少しだけ浮き上がっていた。『PC細胞、マナ、レジーナ、ありす……殖実験』後は、良く読めない。それはともかくとして。ほのかはメモ帳を机の中にしまった。先ほどから見るに、そこに大体の物が置いてあるようだ。

 

「それから、ミップルもついていってどのケーキを買うか教えてあげて」

「分かったミポ」

 

 と言って、士の胸元に飛び込みながらミップルは携帯の姿に変化する。士はそれを落とさないようにしっかりとキャッチした。と、ここで士には一つ疑問が生じた。

 

「だがいいのか?妖精の姿は見られたらまずいんだろ?」

「大丈夫よ。そのお店の店長もプリキュアだし、それに……」

「?」

「……ある理由でいつも閑古鳥が鳴いているのよ」

「つまり売れていないということか?」

「身もふたもないことを言っちゃえばそうなっちゃうわね」

 

 その士の言葉にほのかは笑みをこぼしながら言った。

 

「で、その店の名前は?」

「LUCKYSPOONよ。LUCKYSPOON SONORAMENTE」


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