仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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プリキュアの世界chapter11 ブルースカイ王女失踪事件

ーブルースカイ王国大使館(仮) 00:09p.m.ー

 

「はぁ、今日もスケジュールが埋まって大変ですわ」

 

 と、リボンは手に持ったメモ帳の中身を見てため息をつきながら歩き、いや浮かび慣れた大使館、前のぴかりが丘にあった大使館が耐震工事やらなんやらで使えなくなったので作られた仮の大使館の中を行く。彼女はプルースカイ王国の王女、次の女王である白雪ひめの付き人兼パートナーを勤めている妖精だ。このたび一年前にお忍びで日本に来た時以来の外遊で、日本の大臣やらなんやらと会う約束があり、とてもじゃないがひめの望む場所へと行ける暇なんてない。果たしてどう説得しようかと考える。ひめのワガママで駄々をこねる性格は十年前から変わっておらず、もう少しはるかのような丁寧な言葉も使ってもらいたいところだとリボンは思っていた。初対面の人間相手に隠れるという性格は何とか克服したものの、あまりにもなれなれしすぎてここ最近ハラハラしてばかりなのだ。ともかく、どうやって彼女を説得しようか。

 

「ひめ、入りますわよ」

 

 リボンは、ひめがいるはずの部屋のドアをノックして開ける。果たして、彼女が見た物は……。

 

「ひ、ひめ?」

 

 ソファの背もたれにかかっている、先ほどまで彼女が来ていたドレスであった。それを見たリボンは察した。だがどうやって厳重な警備の中から抜け出したというのだろうか。いや、そういえば今日きた外務省の職員は確かマナの代わりに……。

 

「うかつでしたわ!今日来たのは!?」

 

 リボンは、窓の外、空高くを見る。そこには、コメ粒ほどの大きさではあるが、だがシルエットから判別することができた少女がいた。彼女たち二人が乗っているのはどう見ても箒。そう、今回彼女たちの所に来た外務省職員は、魔法使いなのだ。

 

「大変ですわ!ひめが失踪しましたわ!」

 

 リボンは大急ぎで大使館内を走り回る。いや飛び回る。慌てていた彼女は、窓から出て追って行った方が早いということに一切気がつかなかった。そんな彼女の事を厨房から覗く一つの影があった。

 

ーブルースカイ王国大使館(仮)上空 00:10p.m.ー

 

「ふぅ、ありがとうみらい。ここ最近リボン一段と口うるさくて」

「でも、それはひめの事を思ってじゃないの?」

「それでも流石に限度があるって」

 

 ブルースカイ王国の王女、日本名白雪ひめ。本名、『ヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイ』を箒の後ろに乗せているのは、マナと同じく外務省職員の朝日奈みらいだ。この二人もまたプリキュアである。白雪ひめは、キュアプリンセスとしてハピネスチャージプリキュアのメンバーで、朝日奈みらいはキュアミラクルとして魔法つかいプリキュアのメンバーで戦っていたのだ。そして、魔法使いプリキュアはその名前の通り魔法を使うことのできるプリキュアだ。彼女は、変身していない状態で飛ぶことのできる唯一のプリキュアなのだ。無論、魔法使いなので箒で。ちょっと前まで彼女は、魔法の力ともプリキュアとしての力との一切のかかわりを絶っていた。これについて詳しく説明すると長くなるので大事なことだけ言っておくと、彼女のパートナーと離ればなれになって、魔法の一切ない世界で元通り日常生活を送っていたからだ。文字通りプリキュアを卒業していたのだが、大学生の頃、パートナーである少女達と再会し、またプリキュアに変身できるようになった。そして魔法の力もまた使えるようになった。とはいえ、乱用してはおらず、ここぞと言った時に使うようにしているそうだ。いま、この時がここぞという時なのかどうなのかは謎であるが。あと、彼女の図太さを物語るエピソードが一つあるのは見逃せない。

 

「モフ、久しぶりモフひめ」

「モフルン久しぶり。一年ぶりね」

「モフ!」

 

 みらいの背中のバッグから見え隠れしていたぬいぐるみがしゃべりだす。そのぬいぐるみはモフルンという名前で、みらいが幼き頃に祖母から持らったぬいぐるみで、彼女がプリキュアになったころに妖精のようにしゃべり始めたのだ。このモフルンを、彼女は大人になった今でも堂々と持ち歩いているのだが、羞恥心はないのだろうかと思ってしまう。ただ、見た目から見ても可愛いというのは確かだ。

 

「ほら、この先にマナ達が待っているから早く行こう。しっかり掴まっててね!」

「うん!」

「モフ!」

 

 そしてみらいは箒の速度を上げる。この辺りの風はかなり強く、一つ間違えればバランスを崩してしまいそうだし、凍え死にそうにもなる。魔法の力によってギリギリまで風量を制限しているために何とかなっているのだ。何故彼女たちがここまでの高度まで上がったかと言うと、簡単に言えばあまり人に見られたくないからだ。もし自分たちの姿を見られて大騒ぎになったらパートナーが暮らす魔法界に迷惑をかけてしまう。だからと言って逆に高度が高すぎるとジェット気流で吹き飛ばされる問題があるのだが、そうなったらそうなったで新しい出会いがあるかもしれないと彼女たちはポジティブに思っていた。

 

ー海岸 00:19p.m.ー

 

「だから、二人とも意地張ってるからどんどん話がこじれていくんじゃないかなって思うの」

「僕は意地なんて張っていない。ただ正論を言っているだけさ」

「俺もそうだ」

「そういうものが、ご意地をお張りになっているとおっしゃっているのではありませんこと?」

「それはともかく」

「もう、そうやってすぐに話を逸らそうとしないの!」

 

 士、海東の二人は女性四人に説教を受けていた。何がきついと言うと、夏海のようにいざとなったら笑いのツボのような強硬手段で何でもかんでも解決しようとするような人間でなく、言葉だけで説得しようとしているところだ。正直言ってこちらの方がキツイ。因みに、身体検査の結果はどちらも問題はなかったらしい。あそこまで派手な動きをしておいて体に傷一つないというのは、やはりマナの言う通り、プリキュアの加護という物なのだろうか。

 

「それで、士さんはどうして海東さんが怒っているのか分かっているつもりなの?」

「あぁ、そうだ」

「だったらどうして話し合おうとしないシャル?」

「……」

「もしかして、怖いの?」

「ん?」

「分かっているつもりだけれど、それが違っていたらどうしようって思ってるんじゃないってこと」

「……」

 

 もしかしたらそうかもしれない。自分自身、海東が怒っている理由は自分を裏切ったからだと思っている。だが、ここまで意固地になっているのだからもしかして違うのではないか、という不安。だったら、他にいったい何が考えられるのだろうかという疑問が浮かぶ。そして、その答えを見つけられなかいからこそ、彼は海東と話し合うことをやめて、そしてナイーブな気持ちとなっている。正直言えば、ここまで悩むようなことは初めてだ。何故だろうか。士には分からなかった。

 

「士、君にわかるはずないさ。僕の苦しみ、そして悲しみは……」

「海東さま、貴方様も少しだけでもよろしいですから心軟らかになってはいかがですか?」

「分からないなら教えてあげればいいということシャル」

「……彼は自分で考えなければならない。自分のしてしまったことの罪の重さを」

「だッ……ゴホン、ですからお一人お一人が考えることができる事は限られてしまいます。で、あるからして皆さんでお言葉をお交わしになってお知りになることがお大事なのです」

 

 はるかの言い分ももっともである。人が一人で考える事にはきりがあり、そして元々人の考えというのは固執する傾向にあり、一つのことが正しいと思うと一直線にしか道が開けない。それを正しいと思って自分が間違っているなんて一欠けらも思わないのだ。それでも時には自分が間違っているのではないかと迷うときが出る。そうすると、その人間は一歩も前に進まなくなってしまう。そう今の士のように。だからこそ話し合うことが大事なのだ。話し合って、自分の間違いを正し、相手の間違いを正し、一緒に前に進んでいくために。

 その時、空高くから女性の声が聞こえてくる。

 

「お~い!!」

「二人も来たみたい」

「あれは……」

 

 士が見たのは、箒にまたがっている二人の女性。その内前で箒を操縦している様子の女性は、とんがり帽子をかぶっていて、まさにそのまんま魔女のように見える。

 

「魔女、か?」

「さようでございますわ。朝日奈みらいさまは、魔法使いであらせられるのです」

「この世界にもそう言うのがいるのか……」

「この世界……ですの?」

「あぁ、仮面ライダーにも一人魔法使いがいる」

 

 因みに、士は現在仮面ライダーウィザードまでの仮面ライダーを知っている状況であることは明記しておく。

 女性はボートの真上に来るとゆっくりと降下してくる。

 

-ハルケギニア 現在-

 二人ともズボンを履いていることについては別にどうでもいいし明記することではないが。

 

『女性のパンツ見てどう思った?』

 

 と鳴滝姉妹に言われたらいやなので仕方なく書いておく。

 

「チッ残念……からかう材料ができたと思ったのに」

 

 おい鳴滝姉、勝手に残念がるな。以上現在の様子の描写終了。

 

 

 ともかく、ゆっくりと降りてきた女性たちは箒から降りると、箒は女性のバッグの中に光と共に仕舞われる。

 

「初めまして、詳しくはマナから聞いてるよ。私は朝日奈みらい」

「あたしは、日本名白雪ひめ。ブルースカイ王国の王女だよ」

「モフルンモフ!」

「……まて、色々と情報量が多いぞ」

 

 魔法使いの名前が朝日奈みらい、そこまでは分かる。問題はその後だ。日本名ってなんだ。ブルースカイ王国ってどこだ。あとぬいぐるみがしゃべった。この世界はカオスが蔓延しているというのだろうか。考えたら頭が痛くなりそうだ。そして一番の問題、というか疑問点が、ひめは自分の事を王女というが、どう聞いても彼女の言葉は王女が使うような言葉じゃない。どちらかと言うと王女らしい言葉を使うのは……。

 

「お久しゅうございます。朝日奈さま、モフルンさまそして……」

 

 はるかは、そう言うと姫の前に片膝をついてかしこまって言う。

 

「日本にようこそおいでくださいました。ヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイ姫殿下」

「もう、そんなかた苦しい言い方しなくていいって、昔みたいにしゃべってよ」

「そう言うわけには参りませんわ。淑女たるものいついかなる時にもお気を抜いてはいけませんこと」

「だから……はぁ……」

 

 そう言うとひめはため息をつく。どちらかと言うとはるかの方がよっぽどプリンセスらしい。ひめの言い方からすると、昔はもう少し砕けたようなしゃべり方だったようだが、一体何があったのだろうか。士はマナに耳打ちする。

 

「おい、俺にははるかの方が王女のように見えるぞ?」

「ははは……まぁ、はるかも十年前は今のひめみたいなしゃべり方していたんだけどね」

「この十年で何があった?」

「色々あったの色々と。因みに、はるかは去年のミス日本で、世界大会で優勝した実績を持ってるの」

「あぁ、あいつなら大和撫子って言葉がふさわしいと思っちまうな……」

 

 ミス日本。それは日本で一番美しい女性であるという証とともに、世界四大ミスコンの一つに数えられる世界大会に出場する権利を与えられたと同様の事である。そして、世界大会優勝という称号は、世界一美しいということの証と栄誉を与えられたということ。ただ、はるかはそれに対して胡坐をかくこともなく、立派なプリンセスへの道のりの一つだととらえているのだとか。

 

「それはともかく、ひめ、まずはどこ行こうか」

「う~んもうお昼時だし、まずは腹ごしらえかな?」

「それだったら候補はたくさんあるね。たこ焼き屋?それともお好み焼き屋?」

「もちろんお弁当屋さん」

「よし、それじゃはるか……」

「申し訳ございません。相田さま、しばらくおボートのご運転をお替りになってよろしゅうございますか?」

「え?……うん、分かった」

「ありがとうございます。重ね重ね申し訳ございませんが、屋根もお閉めになってくださいまし」

「うん、分かった」

 

 こちらもボートを運転するための免許を持っているらしいマナは、操縦席に付くと青色のボタンを押す。すると、屋根はどんどんと閉じ始めて、一瞬真っ暗になり、ぼんやりとライトが点き始める。なんというか、幻想的と言ってもいい光景に見える。そして、はるかは改めてひめに向き直ると正座して言った。

 

「さて、ヒメルダ王女殿下。お弁当店にご到着するまで、少しの間レッスンをいたしましょう」

「れ、レッスン……なんだか嫌な予感が……」

「立派なご淑女を目指しましょう」

「えーリボンみたいなこと言わないでよ」

 

 と言ってひめは胡坐をかいて座る。

 

「正座!」

「は、はい!」

「姫たるもの、いついかなる時も自分が女性であることをお忘れになってはいけません。よろしゅうございますか?」

「はい……」

「お声が小さいです!」

「はい!」

「ははは……ひめ、大変だね」

 

 まさに、他人の不幸は蜜の味とは少し違うかもしれないが他人事のように周りの人間は見ていた。だが、それがいけなかったのだろうか。はるかは言う。

 

「朝日奈さま、それからレジーナさまと菱川さまもご一緒にどうぞ」

「え、私達も?」

「はい、あなた方にも、淑女という物が何たるかをご指導しますわ」

「えぇ……」

「な、なんで……」

「はぁ、まぁ悪くはないかもしれないわね」

「面白そうモフ!モフルンもするモフ!」

 

 と、みらいとレジーナと六花、それに加えてモフルンとシャルル、ラケルも横に座る。なお、士はと言うと……。

 

「まぁ、暗いが光があるだけましか」

 

 のんきに写真を撮っていた。

 

「ついでですから、門矢さまと海東さまも」

「「……」」

 

 どうしてこうなった。




 この世界観でのみの超裏設定。朝日奈みらいには、血のつながっていない妹がいる。

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