仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 ふと、オリジナルのパワーアップってどこまでだろうと思い始めました。現在の士だったら多分ここまでバージョンアップするだろうなと思って、平成二期のカメンライドとコンプリートフォームのファイナルアタックライドをさせてもらっていますが、結局のところこの時点でオリジナルのパワーアップなんですよね。
 現在、ディエンドが電王の映画で使ったファイナルアタックライド劇場版と、ディケイドのアタックライドてれびくんに該当するカードのバージョンアップの一度限りの使用を考えています。しかし、これも読者によっては忌避される要因に当たるため、だそうかださまいか悩んでいます。どうしよう……。


プリキュアの世界chapter25 師弟と姉と祖母と

ー明堂院家 02:13 p.m.ー

 

 熊本は、久しぶりに明堂院家の道場に足を踏み入れた。十年前、医師すらも手をこまねいた謎の昏睡状態から、これまた医師が首をかしげるほど唐突に回復した。自分は、目覚めるまで力だけが全てであると、愛や思いなどという精神的なものは戦いに必要のないもの思っていた。だが、力以上に心の力が、思いの強さがどれだけ己に力を与えるのか、何故かは不明だが目を覚ました時、全てを悟ったような気がした。そして、自分は故郷であるこの街に帰り、これからどうするか迷っていた矢先にある人物に出会った。

 

「久しぶりだな、熊本」

「師範……」

 

 明堂院さつき。十年前まで病弱だった彼も手術のおかげで元気になり、今や立派な明堂院流師範代となっている。彼の許へと、熊本は歩を進める。

 熊本と彼が出会ったのも十年前。ふと、ある道場が眼に入った。そこにいたのが明堂院さつき。一人瞑想をして気を高めていた彼の姿には、なにか自分の脳裏をくすぐる物があったように感じた。彼は、こっそりと道場に足を踏み入れた。

 

「僕に何かようかい?」

「……」

 

 瞑想していたはずの彼は、自分の気配を感じたように目を開けてゆっくりと、しかしどこか力強そうに立ち上がった。この男、できる。野生の勘だったのだろうか、熊本は瞬時にそう感じた。知らず知らずのうちに腕に力が入っている感覚がする。この男と戦いたい。いつの間にか、彼の口からその言葉が出ていた。

 

「手合わせ願いたい」

「断る」

 

 しかし、さつきは即座に熊本の提案を断った。

 

「何故!」

「病み上がりなのだろう。体の使い方を見ればわかる」

「ッ!」

 

 確かに、当時の自分はまだ目が覚めて間もなかった。そのため、昏睡状態の間に筋肉量はかなり落ちた。とはいえ、まさか体の使い方一つでそこまで見抜いたのは驚きしかない。

 

「だが、明堂院流師範として、向かってくるものを拒むのも気が引ける」

「……ッ!」

「お前、名前は?」

「……熊本」

「そうか……熊本、しばらくこの道場で修行してみるのはどうだ?」

「なに?」

「お前はなにかに迷っている。その迷いも消すことができるかもしれない」

「……」

 

 その日から、彼は明堂院流の門下に入った。その後、十分に修業を積んで三年がたった時のことだ、彼はその道場から出ることとなった。その日のさつきとの真剣勝負は、結局自分の負けに終わったが、その時ほど心が震え、そして胸が高鳴ったことはなかった。負けたというのに、どこかすがすがしかった。心の力、それを彼はこの道場で学んだ。

 

「……」

「……」

 

 久々に会った弟子、熊本。警察へ就職するためにこの道場を出た彼はしかし、それからも鍛錬を続けていたようだ。いや、鍛錬を続けているということは妹から聞いていた。しかし、実際にその顔を見るのはあの日、いつきもまた警察への就職を決め、そして大事な報告をするためにこの道場に来たあの時以来である。今、彼はゆっくりと自分の目の前まで来た。その時。

 

「フッ!」

「ッ!」

 

 さつきは、その顔目掛けて正拳突きをする。熊本は、それを右手で受け止める。瞬間、さつきは跳びあがり、腹部目掛けて横蹴りを繰り出す。しかし、それもまた彼は今度は左手で掴んだ。一見して、さつきの動きは封じたように見えるがしかし、さつきはそれで終わらず、左わき腹目掛けてカニばさみのような風体で蹴りを繰り出す。熊本は両手が塞がっているためそれを防ぐことはできない。しかし、熊本は右足を大きく上げてその蹴りを膝で防いだ。その行動を見たさつきは一瞬ニヤリと笑い、熊本もその表情を見て保持していた手と足を放す。すると、自由になったさつきは回転しながら体制を立て直し、見事な三点着地を決める。

 

「強くなったな。熊本」

「あぁ、妹君をもらい受けたんじゃ。当然じゃき」

 

 警察への就職を決めたいつきが、熊本と一緒にこの道場に現れた時彼女は言った。

 

『自分は、熊本と付き合うことにした』

 

 その時は、ひどく驚いたもののしかし、考えてみれば当然かなとも思った。熊本が自分の門下だった当時から、いつきは彼の事を気にかけていたようであるし、熊本自身もそれには悪い気はしていないようだった。熊本は、初めて会ったばかりにいつきを強者と認め、彼女にも教えを請うていたらしい。朝は共にランニングに行き、いつきが学校から帰ってくるとすぐに道場で一緒に鍛錬をして、そして二人は共に成長していったとも言える。まさに一心同体、自分に報告に来た時はむしろまだ付き合っていなかったのかともつい言ってしまったほどだ。熊本は、流石に十ほど年の離れた自分たちが付き合うのは、世間体的にも配慮が必要だったと言う。しかし、自分は別にそう言ったものは気にしないがなと彼も、そして家族全員が言い、彼といつきの付き合いを認めた。

 

「そうか、それで今日はどうした?」

「あぁ……」

 

 さつきは、熊本の取り出した物を見て顔をしかめる。ついにこの時が来たかと。

 今から数年前、四葉財閥の令嬢がこの道場を訪ねてきた。彼女とは、何度か手合わせをしてきた仲であったために他人行儀など必要のなかったのだが、その日彼女はかしこまって自分を訪ね、そして自分に「PC計画」という物に参加してもらいたいとかなり丁寧に、土下座までして頼み込んできた。最初は、もちろん驚いた。プリキュアがいなくなった場合の防波堤として、いつの日にか人工のラブリーコミューンというもので変身して戦ってもらいたいという計画。

 彼は、正直その申し出を受けるべきか、断るべきか悩んだ。確かに彼女の言っている意見は最もな物だろう。プリキュアがいなくなってしまえば、この世界が滅びかねないという懸念。現に何度も滅びかけるような危機が訪れているのだからそう考えるのは当たり前だ。だがどうして自分なのだろうか。確かに、自分は明堂院流の後継者。ただの人間よりも強いだろう。しかし、他にも強い人間はいるだろうに何故、その中で自分だったのだろうか。彼女はありすに聞いた。確かに、他にも選出はしたが、中でも貴方でなければならないのだと。何故、そう聞くと彼女は言う。その時になったら話す。

 ついにその時が来た。本当は、こんな時なんて来ない方がよかった。だが、どうして彼女が自分の事を選出したのか聞きたかったのも確かだった。

 

「熊本」

「あぁ、ついにこの日が来たぜよ」

 

 さつきは目を閉じ、そして言う。

 

「では、教えてくれるか。彼女が自分を選出した理由」

「あぁ、俺も伝えなければならないとは思っていたからな」

「……」

 

 熊本のその言葉に、何かある。それも、自分が驚くような何かが、そう思ったさつきは、深呼吸してから言った。

 

「どんなことでも受け止める。だから言ってくれ」

「……承知したぜよ。実は、いつきは……」

 

ーフェアリードロップ 02:17 P.M.ー

 

「そう、つぼみちゃんとえりかがね……」

 

 来海ももかは母が営んでいる服屋、フェアリードロップにていつきからその報告を聞いていた。彼女は来海えりかの姉であり、現役のファッションモデルである。仕事のない日は休日でない限りこの店に出て売り上げに貢献している。いつきは、ももかから出た言葉に少しばかり驚きを生じた。

 

「ゆりさんについては驚かないんですか?」

「何年あの子の友達をやってると思ってるの?何かあるとは思ってたし、えりかもなにか隠してるだろうなとは思ってたけど、まさかプリキュアだったなんてね……」

 

 これがありすが考えたPC計画の一つ。人工コミューンツヴァイ適合者の内、プリキュアの関係者がいれば、その正体を明かすという物。これには、一緒に戦う内に隠し通すことはできないだろうということと、そしてプリキュア側が隠しながら戦って、戦闘に支障が出ないように、それともしも戦闘中にばれた場合人工コミューンツヴァイ適合者が戸惑うということがないようにという配慮のためだった。

 ももかからしてみれば親友のゆりが高校、いや中学生の時から何か隠してるなということは気がついていた。高校に入るにあたって、その気配も段々と薄れてきたのだが、それはただ単に各仕事に慣れたからだと思っていた。そしたら今度は妹のえりかが何かを隠しているオーラが満載で、逆に笑ってしまうほどだった。だが、いざとなったら何か言ってくれるだろう。そう思っていたからこそ彼女は何も言わず。そして、十年の時が経ってようやく知ることができた。自分の親友、そして妹がプリキュア、そう考えると、なんだか二人が誇らしくなってきた。そして、目の前にいるいつきも、えりかの親友であるつぼみもまたプリキュアだそうである。そうなったら一つ、いつきに言っておかなければならないことがあった。

 

「大変だったでしょ?えりかは、調子に乗るようなところがあるから……」

「まぁ、そうですね。でも、えりかのおかげで助かったって時もありますし」

「そう、お役に立てて光栄だわ」

 

 いつきは苦笑いしながらえりかについてそう語った。ももかは、いつきのえりかに対する評価にまるで自分の事のように喜ぶことができた。そしていつきは言う。

 

「それで……PC計画の事なんですけど」

「大丈夫よ。何年も前に承諾していたことだし、むしろやる気が出るってものよ」

「そうですか、よかった……」

 

 いつきは、その言葉になんだか安心した。ありすの見立てだと、自分の知り合いが、親族がプリキュアとして危険な戦いをしていたと聞かされると躊躇して申し出を断ってしまう人間も出てしまうのではないか、そう思っていたらしいからだ。しかし、ももかはそうではなかったようでよかった。

 

「それじゃ、行きましょうかいつきさん」

「はい」

 

 ももかは、いつきを通した自室から出る。

 

「はぁ……」

「つぼみ、元気ないよ?」

 

 一方、つぼえりコンビはももかの部屋の前で壁にもたれかかって彼女たちが出てくるのを待っていた。いつきがこの店に来たことについてはおどろいたが、前々からありすから聞かされていたPC計画が発動したということ、そしてえりかの姉であるももかに会いに来たということを聞き、二人はついにこの時が来たと気を吐いたがしかし、双方に一つずつ気になることがあった。えりかのほうは、たぶん大丈夫と自分では思っているが、つぼみは自分自身が気になっていることが、気が気ではなかった。

 

「だってもし……もしもこれで番くんに嫌われたら……」

「もう、大丈夫だって心配しなくても」

 

 つぼみが気になっているのは、彼氏の番ケンジの事である。二人は、同じ大学に入った時に、番のほうから付き合ってくれと申し出が出て、それから今も付き合いが続いている。そして、あの宇宙飛行士選抜試験で自分が落ちたと知っても、彼は自分が立ち直るのを待ってくれて、それから慰めてくれた。だから、大丈夫だとは思っている。大丈夫だとは思うがしかし、少しばかりの心配はやっぱりある。

 

「でも……でも……」

「あんたね、ダンナの事を信じなさい」

「まだ結婚してません。……えりかは、心配じゃないんですか?」

「なんで心配することがあるの?」

「……え?」

 

 つぼみの隣にいたえりかは、つぼみの前に回り両肩を持っていった。

 

「番君は、つぼみが普通の女の子だから好きになったんじゃないでしょ。つぼみの性格が、人としてのつぼみが好きだからこそ、恋したんじゃない」

「えりか」

「そんな人が、つぼみがプリキュアってだけで別れるなんて言うわけないじゃん」

「えりか……」

 

 番は自分の夢が叶うその時まで、そしてつぼみは彼の夢が叶うその時まで待つということを約束した。何年かかるのか分からない。その約束が叶うかも分からない。ゴールの見えない道、二人してそれを目指すという選択は、大きな絆がなければできないものだ。そんな二人がたった一つ自分と違うというだけで別れるなど、えりかには思えなかった。

 

「でしょ、つぼみ。私も信じてるんだから、あんたも信じなさいって」

「……うん」

 

 そのときつぼみは思った。やっぱり、えりかと親友でよかった。彼女とは中学の時にあの中学校に転校してからの友達。いや、親友。辛いときも、悲しいときも彼女がいつも自分を支えてくれて、そして一緒に進んでこれた。そして、多分それはこれからも同じことだ。つぼみはえりかと、えりかはつぼみと親友で本当によかった。そう思っていた。

 その時、ももかの部屋のドアが開いた。

 

「お待たせ、二人とも」

「いいえ、大丈夫です」

 

 まず、つぼみがいつきにそう言った。そして……。

 

「さぁ、行きましょう。つぼみ、えりか」

「はい!」

「やるっしゅ!」

 

 つぼみ、えりかがももかに返事をし、ももかの本棚を使ってまずはつぼみの祖母の植物園に向かうことになった。そこに、自分のパートナーたちがいるから。つぼみの祖母は、もう還暦を越えている女性。もうそろそろつぼみもひ孫を見せてあげたいなとは思っているが、先も言った通り結婚はまだまだ先になる。以前祖母にそう言ったら。大丈夫、私は何年でも生きるからと。そう言ってくれたのがうれしかった。

 

「つぼみ」

「え?」

 

 つぼみ達がシプレたちを迎えに行き、植物園から出ようとしたとき、彼女に声をかけられた。つぼみが振り返ると、祖母は言った。

 

「リュウゼツランがまた、咲きそうなのよ」

「本当ですか!早いですね……」

 

 リュウゼツラン、別名万年蘭と言われるそれは、花開くのに十年から最悪数十年はかかると言われており、さらに一度花開くと枯れて死んでしまうのである。前回の開花からちょうど十年、前のリュウゼツランから成長したとすれば、逆に早すぎるとは思うのだが……。

 

「前のとは別の物よ。それが、開花の前兆を見せているの」

「それじゃ、見ないといけませんね。皆で!」

「えぇ」

 

 つぼみは、祖母に笑顔を向けてそしてえりかたちの許へと向かった。つぼみの祖母、薫子も、元プリキュア。キュアフラワーとして一人で戦った経験を持つ。本当は、自分もまた彼女達と一緒に戦いに行きたい。彼女のパートナーの力を使えば、かつてのような姿になって戦うことができるから。しかし、今日はすこし調子が悪いのかあまり動くことができない。だから、彼女は一人ここで待つことにした。

 

「つぼみ、みんな……頑張りなさい。あなたたちのーーーが生きる未来を守ってあげて……私のように」

 

 少し、眠くなってきた。薫子は目を閉じることにした。ゆっくりと、ゆったりと、永遠とも続くような時間が彼女の周囲に纏い、小鳥の鳴き声、噴水に入る水の音、どれもがきれいに、そして耳に反響して綺麗な音楽を奏でている。その時、彼女は夢を見た。今は亡き、夫の夢を。




 今回、あとがきにて謝罪と注意事項を再度させてください。また、長くて見たくないという人は、飛ばしてもらっても結構です。
 数話前、このプリキュアの世界において、あるキャラクターを辱める行為をさせてしまいました。私は、あれを恐怖の最上級の表現として、多用することがあります。しかし、この表現によって読者の方々を不快な気持ちにさせてしまったらしく、お叱りのようなものを受けてしまいました。
 あと、妹にこの表現の一件を親にばらされました。
 読者や、キャラクターのファンの方々、そして当事者であるキャラの気持ちも考えず、不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。

 注意事項。
 めったにないことだとは思いますが、今後もまた同じような行動をさせてしまうこともあるかもしれません。その点をご承知の上で呼んでいただけるようご配慮申し上げます。また、キャラの数がインフレしてきております。そのため、特にプリキュアについてよく知らないという方々が、混乱すると思います。私も、その点色々と配慮しておりますが、それが行き届かないと感じる方もいると思います。プリキュアについてよく知っているからでも、混乱させていると思っているので、このキャラクター何?という場合はインターネットで検索等を、また、すでに独自設定やオリキャラ、原作に近いオリキャラが多くなり、原作を知っている方も混乱していると思います。私は、ともかく設定を作って突っ走っているので、一緒についてきてくださいとは言いません。ただ、わかる範囲でご付き合いください。
 長々と書いたこの文章を見てきただき、ありがとうございました。

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