仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 今回は、ディケイド救援のために奔走しているあの人の描写です。また、あるキャラの説明、というか作品の説明を簡単にしました。ネットで調べれば自分が説明するよりも詳しい説明が乗っており、自分が説明したら逆に訳が分からなくなると思ったためです。
 また、ここに出ているキャラ三名に関しての設定は、公式の物ではなく私的見解ですのでご注意ください。


プリキュアの世界chapter31 キングとジョーカー邂逅

ー某国 某所ー

 

 激戦の中に晒される子供というのは後を絶たない。それは、実際に戦争をする少年兵、戦争もしていないのに親兄弟を殺される戦災孤児、その他諸々大量にいる。この国もそうだった。何年も続く戦争の中で、一体何人の子供が死に、何人の子供が人を殺しているのだろうか。一体どれだけの悲しみを産んで、どれだけの怒りを産んだのだろうか。紅渡は、ボロボロになった家屋を見ながらそう思っていた。

 彼が、この国に赴いた理由は一つ。現在この国で戦っているある一人の仮面ライダーに出会うため。おそらく返事は思わしくないものとなるだろうが、現在の彼の状況を見るためにもいいのかもしれないと彼は思っていた。舗装されてもいない道を歩いて、いつの間にか人里から離れた場所に彼は来る。確か、この辺りだったはずだ。その時、一匹の蝙蝠が渡の名前を叫びながら近づいてきた。

 

「渡ッ!」

 

 キバットバットⅢ世。彼の相棒のようなものだ。彼は渡の目の前に浮かびながら言う。

 

「あいつを見つけたぜ。この先だ」

「ご苦労様です」

 

 この国では、ある都市伝説があった。獣とも、人ともつかない姿の何物かが、身寄りのなくなった戦災孤児たちを戦火から遠ざける姿がたびたび目撃されているというのだ。時には、戦争に介入し、双方の武器を奪い、破壊して回っている。その化け物のような姿から、軍部では悪魔を意味する『ディアブロ』という名前が付けられていると、もっぱらの噂だ。渡は、その人物が何者なのか知っていた。だからこそこの場所まで来たのだから。

 その内、一つの小さなテントを見つけた。こじんまりとした一人用のテント。紅渡はその男の名前を呼びながら、入口から中を覗く。

 

「久しぶりだな、渡」

「えぇ、お久しぶりです。ブレイド」

 

 『剣崎一真』、かつて仮面ライダーブレイドとしてアンデッドと呼ばれる怪人と戦い、一人を除いて仲間達と共に封印した仮面ライダーだ。

 

「今、昼ご飯を作っているところだったんだ。渡も食うか?」

「いえ、遠慮しておきます」

 

 彼が作っていたのは、どうやらインスタントのラーメンである。彼はある事情によって死ぬことはできないため、別に餓死なんてしないのだがしかし食という物は生きているうえで、人間であった時からの習慣なので切っても切り離せない物の様子だ。

 

「ブレイド、貴方に会いに来たのは世間話をするためではありません」

「それじゃ、なんで?」

「現在、他の世界にてディケイドがピンチに陥っています。それは、彼ら以外の戦力を合わせても倒せるかどうかの敵……そこで、僕たちも彼らの救援に向かうことになりました」

 

 剣崎は、渡のその言葉にうんざりしたようにため息をついて言った。

 

「渡、知っているだろ?俺はこの世界から出ることはできない。もし、この世界から離れてしまったら。この世界にいるアンデットは一人になって……世界はバトルファイトのルールに従って消滅してしまう」

 

 剣崎一真はアンデッドである。最初は、彼も人間であった。しかし、一人の男のためにとある方法によってアンデッドとなり、親友を、そして世界を救った。順を追って説明しよう。

 彼、剣崎一真は人類基盤史研究所、通称BOARDに所属する仮面ライダーだった。そこが壊滅してからは、白井虎太郎という男の住む牧場に居候し、全部で五十三体いるアンデッドと戦った。アンデッドは、一万年に一度開催され、勝った者の種族の繁栄を賭けた戦いであるバトルガイトという物を行う不死の生命体だ。前回のバトルファイトの勝者となったのがヒューマンアンデッドというアンデッドで、彼が勝者となったことで人類が地球の支配権を手にし、繫栄したのだという。彼らと戦う過程で、同じく仮面ライダーになって戦う仲間もできた、仮面ライダーギャレン、仮面ライダーレンゲル、そして仮面ライダーカリス。しかし、戦い続ける中である一つの事実を彼は知った。共に戦ってきた仮面ライダーカリス、相川始がアンデッドだったのだ。それも、ジョーカーアンデッドという特殊な物。他のアンデッドが勝者となれば、ヒューマンアンデッドが勝者となった時のような、種族の繁栄が起こるような現象が発生するが、もしもジョーカーアンデッドが勝者となれば、怪物を何十、何百と生み出し、地球に生きるすべての生命体を駆逐し、リセットするようなルール付けをされていた。

 最終的に、ジョーカーアンデッド以外のアンデッドは全て封印され、ルール通りに世界の消滅へのための侵攻が開始された。世界を救う方法はただ一つ、彼を封印することだけだった。しかし、剣崎はそれを拒否し、ある方法によって自分自身をアンデッドにすることによって世界に二体のアンデッドを存在させて戦いに決着がついていない状態に持ち込んだことで世界の破滅はま逃れた。しかし、もしも二人が鉢合わせると即座に闘争本能によってバトルファイトが始まってしまう。それを避けるために剣崎は一人仲間達の下から姿を消した。そしてそれから十数年の月日が経ち、彼はここにいる。

 様々な情報を端折ったが、簡単に言えばこうなる。因みに前述の、戦場で見られた人とも獣ともつかない怪物の姿、それはアンデッドの姿になった剣崎だったのだ。この説明で分かる通り、もしも彼が別世界に行こうとするならばこの世界にいるアンデッドは一体だけとなり、すぐに世界の消滅が始まってしまう。そのため、彼はこの世界の外に出ることはできないのだ。

 

「えぇ、ディケイドに会った時は全ての世界の崩壊が始まっていたため、何とかすることができました」

「ゲームの世界に行ってエグゼイドを助けた時も、渡達に負担をかけた……今回はどうすることもできないだろ?」

「はい……どうしても向かうことのできないあなたを含めた三名以外は、救援に向かう予定ですから……」

 

 渡の言ったディケイドに会った時というのは、以前ライダー大戦の世界に彼が赴いたときの事だ。あの時は、世界の崩壊の影響のために剣崎がこの世界を離れても何とか無事だったが、再生され、世界が安定したためにもうそれをすることはできない。剣崎が言っているのは、現在戦いも終盤に差し迫っている仮面ライダーエグゼイドがある策略にはまってしまってクリア不可能のゲーム世界に閉じ込められた時の事。あの時も、何とか渡を含めた多くの仲間たちが努力してくれたおかげで世界が崩壊することはなかった。しかし、今度は渡を含めた仲間達も救援に向かうためにそれは不可能。因みに、渡の言うどうしても向かうことのできない彼を除いた他の二人というのは……。

 

「龍騎とファイズ……か」

「はい」

 

 仮面ライダー龍騎、仮面ライダーファイズ。城戸真司と、乾巧の二人だ。

 

「前回は世界の崩壊の影響によって複数の平行世界の彼らの記憶や意識を集めたりできました。しかし、今ではそれをすることは不可能です」

 

 城戸真司は、今は仮面ライダーではない。いや、仮面ライダーであったという事実を無くしている。そのため、世界の再生が行われるまでは複数の平行世界があったこと、世界の崩壊の影響でそれらを実体化させやすかったということも幸いして、それらの記憶や意識を集めることで城戸真司という存在を形作っていた。乾巧もまた同じく。しかし、これまた世界の再生がなされて不可能に。この、渡の言葉を聞いて、剣崎は苦い顔をした。

 

「複数の平行世界…か」

「まだ気にしているのですか?いつか自分がたどるかもしれない未来のことを……」

「いや、気にしてもしょうがない。けど、いつかは天音ちゃんや虎太郎も死んで……自分の知っている人間のほとんどがいなくなったんなら、あの自分になるってのも納得するんだ」

 

 あの時、ディケイドに接するときの自分は今の自分と全く違う感じだった。後にそれは、剣崎一真がたどる未来、また平行世界の未来の剣崎一真の影響を受けてしまったのではないかと推測された。そして、彼はその平行世界の自分の記憶も見てしまった。自分の知り合いが次々と亡くなって、その死に目に会えないで、自分の事を知っている人間がいなくなって、孤独に何百年とさいなまれた自分だったら、ありえない事ではない。結果、自分は今の自分でも想像のできないくらいディケイド、門矢士にひどい仕打ちをしてしまったように思える。ただ、何故かそれに安心している自分もいたことは確かであった。

 

「絶望しましたか?未来の自分に」

「いや、むしろ安心した」

「?」

「未来の自分も、運命と戦っている。人間らしく、絶望に悩むことのできている。それが知れて、なんだかよかった気がする」

「……そうですか」

 

 自分は、運命と戦う。あの言葉を否定することなく戦っているその事実に喜んだ。そして、悩む自分以外にも様々な方法で戦う自分の姿も見た。その中の一つで、今の自分のように戦災孤児を救う活動をしている自分もいた。その自分の真似事ではないが、自分もまたそれをして、そしていつかは戦い抜いて、いつの日にか知り合いの元に戻る方法を見つける。なんだか、それが目標のような気もしていた。

 

「では……分かり切っていたことですが、貴方を連れていくことは無理なようです」

「悪い。それで、渡はどうするんだ?」

「えぇ……もう一人のブレイドたちの下に行こうかと」

「……剣立カズマか?」

「えぇ、それに龍騎とファイズも」

 

 剣立カズマは、以前ディケイドと共に戦ったもう一人の仮面ライダーブレイドである人間だ。龍騎、ファイズ、そしてブレイドの三人は彼らに代役になってもらうことにしたのだ。だが、渡はすこし厳しい顔をした。剣崎は、その顔に秘められた葛藤を感じた。

 

「迷っているのか、あの三人を呼ぶのを……」

「……はい、三人は経験が浅い……それに今回の敵の性格から考えると……」

 

 渡は、二つ危惧していることがあった。まず一つ目に代役として連れて行こうとしている三人の戦闘経験がまだまだ浅いということ。特に龍騎の変身者は彼のいた世界の傾向から敵という存在がほとんどいない世界。リ・イマジネーション仮面ライダーの中でも一番経験が浅いと言える。他の二人は、ブレイドは仕事ということでアンデッドとの戦闘経験、ファイズは人知れずオルフェノクから学園の平和を守っていたという経験があったとしても、やはりまだ経験が浅いと言えてしまう。二つ目に渡が危惧していること、それはもしかしたら敵を逆上させかねないという危険。もしかすると、彼ら三人を危険にさらすことになりかねない。だが、それでも集められるだけの戦力を集めなければならない。特に遠藤止はさほど問題はないのだ。最も問題になるのは彼の背後にいる、彼を操る物。いや、彼を含めた数多くの人間の人生を翻弄する者の存在。そいつを止めるには……。

 

「……渡」

「え?」

 

 その時、剣崎はカバンの中からある物を取り出して渡に手渡す。

 

「これは……」

「剣立に言ってくれないか。俺には、お前をブレイドだと認める権利はない……ってな」

「……分かりました」

 

 渡はそれを受け取ると灰色のオーロラを呼び出してその中へと消えていく。剣崎の行動から、あることを思いついたからだ。一方は大変であろうが、もう一つのほうは今もあの店にあるかもしれない。渡は、彼と同じようにスケットを集めている鳴滝と合流するべく日本に向かった。

 剣崎は、テントの外に出ると空を見上げ、そして言う。

 

「始、この空の下に……お前はいる。二度と会えなくても、いつか孤独に押しつぶされても、かならず立ち直って見せる……俺は、未来の俺を信じる」

 

 世界がまだ滅んでいない。故に、始がこの空の下にいるのは間違いない。彼の、そしてかつての仲間達の事を思っている限り、覚えている限り、自分は運命と戦うことができる。そう、彼は空の青に誓った。




 一方は問題ないのだ。問題なのはすでに消滅しているであろう、そしてリ・イマジネーションの方にはないであろうあのカード……。イマジネーション?
 うってつけの子供たちがいました。
 なお、渡の言う仲間たちというのは誰の事なのか本編見ていても詳細不明のため、ディケイド放映当時で出ていた平成ライダー、渡以前の八人のことという私的見解です。

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