仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 これ昨晩書き上がったものを投稿しています。そう、一週間に一投稿もきつくなってきております。そういった事情のため、もしかしたら文章が可笑しくなってるかも?


プリキュアの世界chapter38 鉄の味

 ハッピー、ブルーム、イーグレットの三人は、なぎさを必死で食い止めていた。しかし、それは防戦一方で、むしろ押されていると言われてもおかしくない。

 

「なぎささん!目を覚まして!!ジョーカーなんかに負けたらだめ!!」

 

 相手が仲間であるということも災いしているのはもちろんだが、それだけが原因ではなかった。彼女たちは確かに優しいが、相手が友達であったとしても、先輩であったとしても簡単に手加減をするなどという、状況判断のできていない者たちではない。それに、手加減しようにもできないのだ。気を抜けば負けるのはハッピーたちかもしれないからだ。

 

「ッ!」

「ハッピー!!」

 

 ハッピーは腹部への攻撃で大学の壁にまで吹き飛んでいった。ブルーム、イーグレットの二人が精霊の力を借りた聖なる楯を用いてさらに追撃を加えようとするなぎさの攻撃からハッピーを守る。しかし、それも刹那の間の事であった。盾は、彼女の攻撃に耐えきれずに破壊され、ブルームとイーグレットの二人もまた吹き飛ぶ。そして、なぎさは勢いを増してハッピーへと向かう。だが、その間に入る黄色い影があった。ロゼッタだ。

 

「ラブハートアロー!!」

 

 ロゼッタがその言葉を発したと同時に、黄色い光が拡散して、ピンク色のハートの形をしたモノが出現する。ロゼッタの言葉から察するにそれは弓なのだろうが、ボウガンのようにも見える。ロゼッタは、ソレのハート型のアクセサリー部分に、キュアラビーズをはめ込み、柄の部分に4つ直列に並んだ4色のハートをなぞる。すると、弓の先についていた宝石がまばゆい黄色の光を放ち始める。

 

「プリキュア!ロゼッタリフレクション!!」

 

 ロゼッタは、ラブハートアローの突き出ている赤い部分を差し込む。そして、腕を目の前で自分から見て反時計回りに回して円を作る。それは、ただの輪っかであったが、次の瞬間光が満ちて、四葉のクローバーの形となる。これは、彼女の防御技だ。これによって、なぎさの攻撃を少し弱めることに成功する。その間に、エースがハッピーを救出し、ロゼッタはそれを確認すると、横に大きく跳んで彼女の攻撃範囲から離れる。飛んでいる途中、ハッピーはエースに言った。

 

「ありがとうエース」

「プリキュア五つの誓い、愛することは守り合うこと。礼には及びませんわ」

 

 プリキュア五つの誓い。一つ、プリキュアたる者、いつも前を向いて歩き続ける事。一つ、愛は与える物。一つ、愛することは守り合うこと。一つ、プリキュアたる者、自分を信じ、決して後悔しない。一つ、プリキュアたる者、一流のレディたるべし。一つ、みんなで力を合わせれば不可能はない。これら五つの言葉は、キュアエースの提唱するプリキュアたちを待ち受ける数多の試練に対する心構えらしい。因みに、五つと言いながら六つあるのだが、最後の言葉はキュアハートが付け加えた言葉である。五つ目までの誓いは、ドキドキプリキュア各人に割り振った言葉であるとするならば、最後のソレはドキドキプリキュア5人全員が共通する誓いなのだとか。着地したエースとハッピー、その二人に士と海東、ハートの三人が合流した。

 

「おい、大丈夫か?」

「うん、なんとか……」

「美墨なぎさ……とてつもないね彼女……」

「うん、プリキュア歴で言うなら、ムーンライトの方が長いけれど、戦闘経験で言うなら、どちらかと言ったらなぎささんの方が……」

 

 プリキュアの経歴としたら、ムーンライトの方がなぎさ達よりも約二年早くプリキュアになっていた。しかし、なぎさはプリキュアになった年、その次の年の二年間通して休みなく戦っていたという経験がある。さらに、戦闘スタイル的なことで言えば、必殺技以外にも技を持っていたムーンライトを含めた他のプリキュアたちと違って、彼女の攻撃は打撃のみ。だが、それが逆に格闘一択で攻撃を質を高めたことに繋がり、格闘だけならば、右に出る者はいないほどの力を持つようになったのだ。格闘技の世界チャンピオンに完全勝利するありすと力が拮抗している姿を見ていれば、そのすごさが分かる。ならば遠距離から攻撃してみればどうか。たとえばディエンドライバーによる射撃。否、その場合は瞬時に距離を詰められ引き金を引く暇すらもないはずだ。なにせ、相手はただ殴るだけでいいのだから。ともかく、格闘技しか持たないというのは遠距離攻撃に対応できないというデメリットを取り除けば、究極の戦術たりえるのだ。

 

「ハート!」

「ムーンライト!」

 

 その時、後ろの方に下がっていたムーンライトがハートたちの近くに駆け寄った。士は、そんなムーンライトに聞く。

 

「何かいい策でもできたか?」

「えぇ、ちょっと無茶苦茶だけれど……」

「それで、私たちはどうすればいいの?」

「彼女を大学の方にまでおびき寄せる。その後、ほのかの研究室にまで誘導させるの」

「……それで何とかなるのか?」

 

 士は、その作戦なのかどうなのか分からないムーンライトの言葉に疑問を感じた。あそこまでの強者であるブラックを誘導できるのかも分からないというのに、ピンポイントでほのかの研究室にまで誘導出来るというのだろうか。そう思った士ではあるが、ムーンライトは何やらできると思っている様子だった。

 

「大丈夫よ。せめて、大学の構内に彼女を誘導させたら、後はほのかが何とかするわ」

「何とか出来るっていうのか?」

「おそらくは……とにかくやれるだけやりましょう」

「了解!」

 

 しかし、士には疑問しか残らない。何故ほのかの研究室でなければならないのか。研究室というのは、十中八九自分が朝に訪れたあの部屋の事だろう。しかし、思い返してみてもそれほど特殊な物があったようには感じなかった。それに、相手はあのジョーカーという悪意の塊。いわば、超常現象の塊。ほのかは、一体どのようにしてそれを成功させようというのかまだわかっていない。だが、士は言う。

 

「大体分かった。やるぞ、海東」

「正気かい?まだ作戦の意味も分からないというのに」

「あぁ、俺はこいつらの事を信じているからな」

 

 海東はその言葉に一つ溜息をつくと、いつも通りディエンドライバーにカードを充填する。

 

「とにかく、方法があるのならまず試してみよう」

≪KAMENRIDE≫

「目には目を歯には歯を……ジョーカーには……」

≪JOKER BLADE CHALICE≫

「ジョーカーさ」

 

 瞬間、現れたのは漆黒の仮面ライダー。

 

『さぁ、お前の罪を……数えろ』

 

 風都を守る仮面ライダーW。その半分である左翔太郎が一人で変身する仮面ライダー、その名前はジョーカー。左翔太郎とフィリップという二人で一人の仮面ライダーWであるが、様々な事情でフィリップが変身に応えられない場合、左翔太郎一人でも変身できる仮面ライダー、まさに切り札であるのが仮面ライダージョーカーである。

 仮面ライダーブレイド、割愛。

 仮面ライダーカリス、ブレイドの世界の仮面ライダーである。彼らは三人ともジョーカーに関連する仮面ライダー、ジョーカーと戦うにはちょうどいい。本来は、もっとド直球な仮面ライダーもいたのだが、あいにくそのカードは一度使った後消滅してしまったため、残念ながら今回は無しだ。そして、三人の仮面ライダー、プリキュアたちはなぎさの元へと向かって走って行った。その場に残ったのは、士と海東だけである。

 

「信じる事……か」

「あぁ……あの時も、俺はお前の事を……」

「……そうじゃないんだよ、士」

「何?」

「君が悪ぶることなんて、今に始まったことじゃない。裏切られたぐらいで、怒らないさ。僕が、本当に怒った理由は……」

「来るぞ!海東!!」

 

 なぎさは、変身せずに無防備である士に向かって跳びかかった。士と海東は、それぞれ逆方向へと横っ飛びで回避し、地面に付いた瞬間に回転して受け身を取った。瞬間、なぎさの目が士を捉える。

 

「こっちだ!!」

 

 しかし、生身の士を狙わせるわけにはいかないディエンドは瞬間、なぎさの足元にディエンドライバーから発射された光弾ニ、三発を着弾させる。それによって、なぎさはディエンドの方へと目線を移した。その間に、士は距離をとる。そしてなぎさはゆっくりとディエンドへとゆっくりと向おうとしたものの、それは彼女が飛んできた方向からの攻撃でキャンセルされる。

 

「「はぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 キュアハートとカリスの二人によるダブルキック、しかしなぎさはその攻撃を左前腕で受け止める。その勢いで後ろへと下がったが、もちろんダメージを受けた様子などない。そしてハート、カリスは後ろへと跳び、カリスはその身体を消滅させた。その上空から、三人のプリキュア、ムーンライト、エースそしてビートの三人が現れる。

 

「プリキュア!シルバーフォルテウェイブ!!」

「ときめきなさい!エースショット!ばきゅーん!!」

「ビートソニック!!」

 

 瞬間、ムーンライトの持つムーンタクトから銀色の花の形のエネルギー弾が、エースの持つラブキッスルージュから打ち出された光が、そしてラブギターロッドを弾いたビートの周辺に無数の紫色の音符が出現し、それぞれがなぎさへと向かう。もちろん、これでなぎさを倒そうなどと誰も思っていない。実際その攻撃は彼女の足元へと直撃し、土煙が舞い上がった。そして、その中からなぎさは一筋の線を描いて空中へと飛び出した。

 

「「はぁぁぁ!!」」

 

 しかしその隙を見逃さず、ブルームとイーグレットの二人がなぎさへ攻撃を仕掛ける。なぎさは、その攻撃を相殺するべくこぶしをパンチを繰り出した。しかし、二人は攻撃を仕掛ける寸前に、それぞれが左右に回転して避ける。なぎさは、それには対応することができず大きく空ぶって隙ができた。そんな彼女に、空中からの電撃を纏ったライダーが迫る。

 

「ウェェェェイ!!!」

 

 仮面ライダーブレイドの必殺技ライトニングブラストである。無論、彼女がそれを防ぐことができずに大きく吹き飛ばされてしまった。ブレイドは、その攻撃が決まった次の瞬間カリスと同じように虚空へと消えていった。

 なぎさは、地面に激突するとその勢いを保ったまま転がり、何とか止まった彼女はしかし、何のダメージを受けていないという風に立ち上がった。そして……。

 

≪JOKER MAXIMUMDRIVE≫

「ライダーパンチッ!」

 

 黒い炎を纏った拳を振り上げて、ジョーカーが上空からなぎさへと迫る。なぎさは、先ほどと同じように拳を握り、そして今度こそ二つの鉄拳は重い衝撃と、火花と共にぶつかった。二つの物体のぶつかり合いは、大きなエネルギーを作り出し、爆発した。その衝撃でジョーカー消えさり、なぎさは大学の壁を吹き飛ばしながら構内へとたどり着いた。

 かなりの衝撃だったはずだが、彼女はそれをものともせずに自分の身体の上に乗っているガレキを取り除くと、すぐさま立ち上がってまたもそのへと出ようとする。もはやここまで来ると、彼女は本当に人間なのか疑ってしまう。例えジョーカーにその身体を乗っ取られようとしていようとも、その身体はなぎさ自身の身体なのだ。だから、その頑丈な身体はまさしくなぎさの物である。だが、それにも限界があるのは間違いなかった。何故なら、彼女は怪物などという物ではなく、一人の人間なのだから。

 歩き出そうとする彼女に向けて、一つの長細い円柱の物体が投げつけられた。なぎさが、それを裏拳で粉砕すると中から白い粉がまき散らされた。消火剤だろうか。ということは、彼女の殴ったソレは、消化器であったのだと思われる。そして、それが投げつけられた方向を見る。するとそこにいたのは……。

 

「こっちよ!なぎさ!!」

 

 雪城ほのか、その人だ。彼女は、そう言ってなぎさを先導すると、自身の研究室へと誘導していく。外にいる仲間たちは見事に彼女を大学の構内に誘導してくれた。後は自分が作戦を成功させればいいだけ。それだけで、『なぎさは』助けることができる。今の彼女は、なぎさを助ける事、それだけしか考えていなかった。

 

「なぎささんが出てこない……ということは」

「あぁ、ほのかがなんとかしたらしいな」

 

 外にいるプリキュア、士達はなぎさが出てきてもいいように身構えていたが、どうやらその気配がないようで一瞬だけ気を緩めた。そして、ほのかの手助けをするために自分たちも大学内に行こうという話になったのだが、ムーンライトはそれを拒絶して言った。

 

「危険すぎるわ。それよりも外から二人の様子を見ましょう。彼女の研究室は、反対側にあるから」

「えっ?はい……」

 

 その言葉に、その場にいた者たち全員が何故だと疑問を感じた。確かに、なぎさは強い物の、全く太刀打ちできないわけではない。現に実力差が開いていたのなら、なぎさを大学の内部に送り込むことなんてできなかったはず。大学内部が狭いから戦いにくいということを考慮したというのだろうか。いや、だったら最初からほのかの研究室へと誘導なんてしない。そう、ほのかの研究室へと誘導する。この作業が必要だった。だったらどうしてそれが必要だったのか。彼女たちは大学の裏手に向かって走りながら考えた。

 大学の裏手、サッカーグラウンドとフットボールコートが大学に隣接されているほど広い物だった。彼女たちがそこに到着し、そして研究室がある四階へと目を向けたその時だった。

 

「え?」

「……」

 

 美墨なぎさと、なぎさにお姫様抱っこをされている雪城ほのかの二人が窓を突き破って跳び下りたのは。後に、士はその時の様子をこう語っている。

 

 

 

 ほのかがなぎさにキスをしているように見えたと。

 

 

 

 

 

 ファーストキス、それは鉄の味でした。


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