仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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プリキュアの世界chapter43 旗を立てし者

ー四葉本社屋上 03:46p.m.ー

 

「いい夕日だ……」

「あぁ、この景色はどこの世界に行っても代わり映えしない……」

 

 ビルの屋上というのは、普通は施錠されているため関係者でなければ出ることもできない。この場所のような高層ビルでは特に。今回は士がありすに鍵を借りたため何とかなったが、海東が大森ゆうこの店でやったように鍵を無理やりこじ開けようとして、危うく警備の人間が飛んできそうになったことは記憶に新しすぎるほどだ。なお、それを止めたのは彼らのことが気になったマナほか数名の野次馬だ。暇なのだろうか。否、もちろん士たちの事が気になったのだ。そもそも、マナたちが二人に仲直りすることを促したのだから、彼女たちには事の顛末を知る義務がある。だから彼女たちはここに来た。

 四葉の本社が高層ビルであったことも関係し、強い突風が吹き荒れているが話ができないというほどではない。そこからはかなり遠くの景色も見通すことができ、空には当然綺麗な茜色の混じった青空と、少しばかりの白い雲が鎮座していた。ここまで開けた場所なのだから、心を開いて話を始めることができそうだと、柄にもないことを士は思っていた。まず、最初に話しかけたのは海東だった。

 

「教えてくれ士。あの時……どうして士が何の相談もしてくれなかったのか」

「……色々と理由はある。が、一番の理由はお前が……俺たちの真意に気づいてくれると信じていたからだ」

「……」

 

 あの時、それはもちろん士が大ショッカーの大首領となってスーパー戦隊と戦った時の事だ。しかしそれは、士と大ザンギャックの帝王となったマーベラスの立てた敵を欺くための作戦に過ぎなかった。だが、そんな事もちろん海東だって気づいていた。

 

「信じていたさ。君は、よく人を裏切るからね。何か裏がある物だと、ずっと考えていた。だから、僕は君の真意を知るためにゴーカイレッドに会いに行ったり、過去にまで向かった……けど、それすらも君に利用されたわけだけどね」

 

 元々士は、やることなすことが自分勝手で、そのせいで誰かを傷つけることが多かった。そのたびに、周りの人間のフォローが入り、もしも夏海やユウスケがいなかったら士の人間関係はボロボロになっていたのではないかと思われるほど。そういった士の性格は、海東自身よく把握していた。

 

「あぁ、俺が黙っていたらきっとお前が動いてくれる。そのおかげで鳴滝達への目くらましにもなった。過去やら未来やらを行き来していて居場所のつかめなかったモモタロス達の協力も得ることができた」

 

 これは事実だ。海東が上手くかき回してくれたおかげで、鳴滝達は士やマーベラスを信頼し、色々な時代を行き来しているために正確に居場所をつかめなかったデンライナー組もまた、経緯は不明だがモモタロスのプリンを海東が盗み出してくれていたおかげで餌に引っかかった鳥のようにおびき出されてくれた。

 

「だが、確かにあの作戦のせいでお前の心を傷つけたのも……」

「僕だけじゃない」

「なに?」

 

 海東は、忘れたかと言わんばかりの鋭いまなざしで、ディエンドライバーの銃口を士に向けて言った。

 

「ゴーカイブルー……ジョー・ギブケン」

「……」

「彼は、君とマーベラスの作戦のせいで傷ついた……僕が傷つくのは別にいい、裏切られることには慣れているからね。けど……彼が泣くのは許せない」

「……」

 

 ジョー・ギブケン、海賊戦隊ゴーカイジャーのブルーである男。海賊戦隊ゴーカイジャーのマーベラスを除く五人もまた、海東のように真意を知らせなかったことによって多方に動き回ってくれていた者たちだ。最も、作戦の途中彼らが自分の目の前に現れ、怪しまれないようにその内の三人を早々に消した(という言葉には少し語弊があるが)ために、最後まで残ったのはゴーカイブルーとゴーカイグリーンの二人だけだったのだが。そういえばと、士はあの時、残ったライダー、スーパー戦隊を集めて同士討ちのふりをした時のジョーの顔を思い出した。

 

『お前……それでも俺たちの仲間か!』

『お前たちを仲間と思ったことなど……一度もない』

『俺は……最後の最後までお前を信じていた……それなのに……』

 

 確かに、彼は悲しそうだった。信じていた者に裏切られたという悲しみ、そんな男を信じてしまったという悔しさ、色々な思いのこもったあの男の表情は、確かに辛い物であった。

 

「君は、僕だけじゃない。マーベラスと彼の友情をも傷つけた……」

「それが理由か……」

「あぁ……」

 

 この時、士にとって意外だったのは、彼が自分の思っている以上に友情という物を重要視しているということであった。そうだ、自分が一度死んだときも彼は泣きそうな顔をして必死になって声をかけてきてくれていたではないか。死ぬなと叫んでいた。スーパーアポロガイストとの決戦の場に行くときも、彼は止めようとした。そう、彼は友情を大事にしていたのだ。仲間を大事にしていたのだ。だからあの時……。

 

『君は作戦遂行のために、友情とやらを踏みにじった』

『友情?』

『僕はそんなものに興味ないが、その心の痛み……君も味わいたまえ』

 

 あれの主語は自分の事じゃなかったのだ。あれは、自分の友であるジョーを主語としていた言葉だったのだ。それに、ジョーの心が傷ついたことに傷ついた自分の心にも。彼がそこまで友情に熱いとは思ってもみなかった。友情、そういえば……。

 

「なるほど……大体わかった」

「なに?」

 

 あの戦いの後、彼はいつも士が使用しているピンク色のカメラをわざわざ返却した。その代わり、ディケイドのカードを盗んでいった。あの行動の意味がよく分からなかったが、なんとなくわかった気がした。士は、自身のトイカメラを海東に見せながら言った。

 

「あの時、お前はカメラは返した……だがその代わりにカードを盗んだ。俺には、あの行動の意味がよく分かっていなかった。だが、奏の店をみて分かった」

 

 彼女は、あの店を響が帰る場所にしていた。あそこが、響が帰ってくる目印にしていた。もしも、海東が無意識にでも同じようなことを考えていたのだとしたら……。

 

「……カードをお前が持つ限り、俺は必ずお前を追う。お前は、そのカードを俺たちの友情の証としていたんじゃないのか?」

「……」

 

 海東は、その言葉を聞くと、懐からカードを一枚取り出した。ディケイドのカードである。海東はそれを一瞥すると、フリスビーを投げるように屋上から投げ捨てた。だが、カードはまるで操られているように風に乗り、不思議なことに士の手元にピッタリ戻ってきた。

 

「……やはり、君のカードも君の事を選ぶようだ……どれだけ裏切られようとも、必ず戻ってくる」

「海東……」

「僕自身、どうしてそのカードを盗んだのか分からなった。気がついたら、手の中にカードがあった。だが、世界を渡る中で時折そのカードを見て、君の事を思い返していたのは事実さ……やはり君とは、切っても切れない腐れ縁らしい」

「フッ……」

 

 やはり無意識だった。だが、話をしてみるということがどれだけ簡単に人を知る方法であるのかがよくわかった。海東が怒っている理由がまさか他人のためであったなど、おそらく自分がいくら考えても思いつかない事であろう。その時海東が、だが、と言って士に聞いた。

 

「一つ、分からないことがある……彼、ジョーは何故マーベラスを許したのか……」

「……」

 

 確かに、彼の言う通りだ。あの後他のゴーカイジャーの面々と共に戻ってきたジョーはマーベラスに対してそれほど怒っていなかった。それどころか、またマーベラスと共に肩を並べて、共に戦った。敵となった海東大樹と違って。何故彼は、割り切ることができたのだろうか。

 

「さぁな、しいて言えば……一緒にいた年数の違い、かもな」

「なに?」

「ゴーカイジャーは、地球で出会った凱以外のメンバーで宇宙を旅してまわっていた……ずっとな。だから、いざとなったら味方をだますということもあり得るだろうと知っていたのかもしれない」

 

 それはあるのかもしれない。しかし、もしもそうだとするならばそれが意味する物は……。

 

「皮肉なものだね……彼もまた僕と同じ、相手がそうするかもしれないと考えていたというのに、その対応が全然違っていた」

「自分の事だからな……自分の事だったら、どれだけでも割り切れるものだ」

「なるほど、僕は友情を大事にするあまりに盲目だったということか……新しい友情を気にするあまり……もっと昔からの友情をおろそかにしてしまっていた」

 

 人は、友情のためにという名目だったら何だってすることのできる愚かな生き物だ。友のために、見ず知らずの場所へと足を踏み入れる。友のために、死地へと赴くという事も躊躇しない。友のために、どれだけの犠牲を払ってでも構わず、友のために、自分の人生を捨てても構いやしない。友のために、友のために、友のために、だがそれは本当は友という言い訳を使ったただの自己満足。友のために犯罪に手を貸すのも、友のために人殺しをするのも、友のために泣き、苦しむのもすべて、自分の行いによって生まれた悲劇。人は自己中でなければならない。まず他人の事よりも自分がどう思うのかを考えなければならない。本当に友が望んでいるのかを考えなければならない。怒りに狂ったとしても、悲しみに押しつぶされようとも、本当に友のことを思うのなら、まず自身の行いが友にどう影響を与えるのかを考えなければならない。そして、他の友のことまで考えなければならない。友のために何かするという事は、一見美しい言葉のように見える。だがその実態は綺麗事なのだ。だからこそ、一旦落ち着いて考える必要があるのだ。それが本当に、友を救うことになるのか、自分が傷つかないのか、友以外の友が傷つかないのかを。海東は、自傷するかのように寂しく笑った。それを見た士はフッと息を吐くと言った。

 

「俺が言う事じゃないかもしれないが……世界に完全に正しい答えなんて存在しない。それと同時に、完全に間違った答えなんてものも存在しない。誰もが正しいと思った道を歩けるわけでもなければ、間違いだと気がつかずに歩く道だって存在する。俺たちは、間違いや、正しいことを繰り返して、成長することができる。人間というのはそんな生き物なのかもしれないな……」

「全く……それに気がつくのが遅すぎた……」

「この世に遅すぎたという結末なんて存在しない……だから……」

「ん?」

 

 士は、その言葉と同時に海東に手を伸ばす。あの時、海東が取ることのなかった手だ。そう、あの戦いに敗れて座り込んだ彼に差し伸べた時と同じように見える。違うのは、海東が立っているという事実だけ。

 

「今度こそ……手を取ってくれるか?」

「……」

 

 もう十分士には分かってもらえた。そう思った海東は、その言葉に恥ずかしそうに笑みをこぼして、士の手を取ろうとした。その時である。

 

「士さん!もうそろそろ時間だって!!」

 

 相田マナの声だ。そうか、もうそんな時間だったか。時間が経つのは速いものである。

 

「この続きは帰ってきてからだ海東」

「あぁ」

 

 そう言って、二人は下へと降りていった。だが、今になって思う。もしもこの時、手を取り合っていたらあんなことには……。この時の二人は、まだそんなことを知る由もなかった。

 

ー四葉本社会議室前廊下 03:56p.m.ー

 

 熊本は、一人廊下に出て心を落ち着かせようとしていた。いや、落ち着かせられなかった。何故なのか分からない。このような大事な試合の時になって、心が揺さぶられると大抵の試合で負けてしまう。しかも今回は文字通り命を懸けた戦いになる。精神を集中させなければならないのだ。だができない。なにか集中できない理由があるというのだろうか。あるとすれば、何か気にかかるようなことがあるからではあるのだが、それが分からないでいた。こんなことは、あの時目が覚めてから初めての事だ。目をつぶり、ゆっくりと深呼吸すること十数回、それでも集中できない。何かが頭の片隅にあって、それが自身の集中を途絶えさせているかのようだ。だが、それが何なのかがよくわからないから困っているのだ。もう作戦決行の時刻が迫ってくる中、さてどうしようかと熊本が思っていたその時、声がかけられた。

 

「熊本」

 

 そこでようやく気がついた。自分のポケットに入っているソレの存在を。

 

「大丈夫か?やっぱり私も一緒に……」

「なんじゃそういうことじゃったか」

「え?」

 

 熊本は彼女に、いつきに向き合うとポケットの中にずっと入れてあった四角い箱を黙ってその手の上に乗せた。いつきはソレを見て、一度熊本の顔を見てからもう一度その箱と向き合って、手に取った。その四角い箱は、どうやら開くことができるようだ。何だろう、そう思いながらいつきはその箱を開いた。そこにあった物は……。

 

「これって……」

 

 そこに光る物は、元旦の朝の光りが目の中に飛び込んできたようにいつきの目を貫いて、それが何なのかを脳が判断する前に、いつきの心臓を大きく跳ねさせ、美少年のような顔立ちを、一瞬にして女性のソレに変えさせるほどの魔力があった。

 

「まだ適当な言葉を考えられなかったんじゃが……持っといてくれ」

「熊本……」

「帰ってきたら、浮かぶ限りの愛の言葉を言っちゃるけん」

 

 そして、熊本はまだ呆けているいつきの横を通って、先ほどまでいた部屋へと戻ろうとした。それにしても、愛の言葉を言うとはなんとも恥ずかしい言葉を言った物だ。昔の自分だったら絶対に出ない言葉だ。だが、彼女に言う言葉が思い浮かばなかったというのは本当の事だ。

 十年という長きにわたって、道場の師範の妹と、生徒という関係で付き合いを重ねて、本格的な交際を始めてからも一緒にいる時間が多く、逆にどんな言葉をかけてソレを渡せばいいのか分からなかった。いっそのこと、黙って手渡そうとも考えたが、それだと彼女に申し訳ない。ソレは、女性にとっては人生でたった一度きりの神聖で美しきもの。そこに込められる言葉は、この世界のどんな綺麗事よりも煌めきを放ち、どんな恨み事も無へとかえしてしまう物。野生の動物ですらできるが人間だからこそでしかできないような大切で重い物。女性にとっては一生涯に渡って忘れることのできない言葉になるのだ。だから、彼は必死で悩んだ。だが、結局答えは出ることなく、ポケットの中にそれをずっと忍ばせていた。そう、これが集中できなかった理由なのだ。もしも、この戦いで死ぬようなことがあれば、自分は彼女に自分の気持ちを伝えることなく逝くことになる。そんな事、自分自身が嫌だった。だから、彼はソレを彼女に渡したのだ。自分の彼女に対する精一杯の愛情表現として。

 いつきは、まだ頭の整理がつかないでいた。彼を見送りに来た。ただそれだけのはずだったのに、まさかそのようなものを渡されるなんて、驚き二割、嬉しさ七割、戸惑いが一割と言ったところか。ソレを受け取ったという事は、すなわち自分の人生が大きく変わるという事。もちろん、考えていなかったわけではない。昔から、自分がプリキュアになるずっと前から、自分もいつかはこうして誰かの真剣な愛情を受け取る時が来るのだろうなとは考えていた。しかし、これから戦場へと行く男から受け取るというすさまじく限定的な状況で渡されるなど、想像もしていない。自分の心は、まるで海の中を漂うクラゲのように揺れ動いていた。自分はどうすればいいのだろうか。彼に対して、どう反応をしてあげたらよいのだろうか。早くしなければ、彼が行ってしまう。どうすればいい、どうすれば……。だから彼女は……。

 

「熊本」

「ん?なん……ッ」

 

 感情に身を任せることにした。自分の性格からしたら絶対にしないようなことだ。今までのソレは、大体が彼から、それも突然行われることで、自分自身急には止めてくれと熊本に言っていることだった。それをまさか自分がすることになるなんて、昔の自分だったら絶対にしない行動だ。多分、後からこの時の突然の行動を思い返すと身もだえるのだろうなと思いながらもしかし、彼女と彼の唇とシルエットは重なった。心のドキドキが止まらない。トキメキが止まらない。愛の流出が止まらない。ただ、彼女の頭の中は真っ白になっていた。一体何分間その体勢を維持していたことか、何分間下を絡ませていたか、何回唾液の交換を行ったことか、もう何も考えられなかった。そして、唇を離したいつきは一言彼に向かってつぶやいた。

 

「……死ぬなよ」

「……こん事件が終わったら、十倍返しにしちゃるきに、覚悟しちょけよ」

「あぁ……楽しみにしている」

 

 熊本の頭は、十分すぎるほどの愛によって澄んでいた。




 夕日って日没一時間前に見えたっけ?一応調べたところ 2026年12月24日の日没は16時33分だそうです。
 ……てか、さっさとあの展開を迎えなければある方に怒られそう。
 余談だが、このプリキュアの世界書きはじめてからふと思い出したのだが、デジモンアドベンチャー02の最終回と、魔法先生ネギま(漫画)の最終回が同じような終わり方なのにネギまの最終回が受け入れられないのはなぜだ?年数が違うからか?
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