仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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プリキュアの世界chapter44 犯人と罪人と正体と

ー横浜某倉庫 04:00 p.m.ー

 

「ここか……」

 

 熊本は、一人その倉庫へと現れる。四葉本社とここは少し離れてはいるが、ふしぎ図書館を使うことによってショートカットが簡単にできたため、それほど苦ではなかった。そこは、港町横浜らしく埠頭がすぐそばにあり、かなり強い潮の混じったしょっぱい風とその匂いに、クラクラとしそうになる。

 

「こちら熊本、ありす聞こえるか?」

『えぇ、見えますし聞こえますとも』

 

 熊本は、今着ている服に付けている小型マイクで四葉財閥本社にいる面々と連絡を取る。今彼の着ている服には、小型のカメラもついているため、これで本社にいる者たちにもその場の様子が文字通り見て取れる状態だ。

 熊本は、ありすからの連絡の後、すぐに動き出した。目の前には大きな扉がある。罠を仕掛けるのであれば、確実にそこには何かがあるだろう。開いたら、矢が飛び出してくる、爆弾が爆発すると言ったオーソドックスな仕掛けはまず確実にあると考えていい。そのため、熊本はまた別のルートから倉庫に入ることにした。倉庫には、基本的に明り取り、換気のために天井近くに複数個の窓ガラスがはめ込まれている物だ。そこからならば、気づかれることなく侵入することができるかもしれない。

 案の定、熊本はすぐに窓ガラスを見つけることができた。そこまで跳ぶことは、PC細胞をその体内に入れ、筋力の上がっている彼にとっては簡単なことであった。窓の外側から内部の様子を探ってみる。少し薄暗いが、分からないと言うまでではない。どうやら、誰も見張りはいない様子だ。熊本は窓を開けると、あっけなく侵入に成功した。さて、まずはプリキュアの少女たちの居場所を探らねばならない、跳び下りている間にそう考えていた彼が着地したその瞬間であった。

 

「ッ!」

「ようこそ、わが愛の巣へ……クモジャキー君」

 

 いくつものスポットライトの光が急激に熊本の身体を襲う。暗闇の中の突然の光に、熊本は目を守るように手で守った。その先、コツンコツンとわざとらしく靴の音を鳴らしながら現れたのは、確かに会議資料の写真の中にあった緑色の仮面ライダーの姿。クロノスだ。それにしてもである。

 

「クモジャキー?それはとんだ人違いじゃのう……俺の名前は熊本じゃ」

「ククク……まぁ、お前がどう思おうとも構わないが……」

 

 仮面ライダークロノスの手には、一本の剣が握られた。それは燃えるように、いや実際に燃えている剣。仮面ライダーエグゼイドの世界、仮面ライダーブレイブがよく使う武器であるガシャコンソードである。それは、炎剣モード、氷剣モードの二種類があり現在のモードは、炎剣モードである。だが、なんだクモジャキーというのは、どうしてこうも頭の片隅をくすぐっているような感じがするのだろうか。自分は知っているというのだろうか、その名前を。だが、思い出そうとしてもまるで南京錠でも書けられてしまったかのようにその記憶が呼び起こされることはなかった。果たして、クモジャキーとは何なのだ、どうしてこうも嫌な、そして懐かしく嬉しい気持ちとなるのだろうか。分からない、分からなかった。

 

「お前たちにやられた手の痛み……十倍返しにしてやるわぁ!!」

 

 クロノスは熊本目掛けて殺意を持って駆ける。手の痛みというのはやはりあの時に手を撃ったことと、押さえつけた時の事を言っているのだろうが、あれは完全な自業自得、逆切れも甚だしい行為だ。クロノスは、すぐ目の前にまで現れる。しかし、熊本は落ち着き払って、腰に差している杖のようなレイピアのような剣を抜き、その剣を止めた。

 

「フッ!」

「!その剣……」

「なんでか分からんがのう……変身したらなんでか出てきたんじゃ」

「変身だと?」

「そうじゃ……」

 

 熊本は、この倉庫に来る前に人工コミューンツヴァイを使用して変身した。これによっての変身の場合は、通常のプリキュアのようにフリル等のついた衣装などではなく、変身者の思い浮かぶ服装が出てくる。それと同時に、武器もまた四葉本社の地下から転送されてくるのだが、何故だか彼はその服装と剣がなじんでいた。そのような服を着たことも、剣も使ったことはなかった。だが、まるで何年も逢っていない友人に再会した時かのように懐かしく、それでいて親友だったかのようにすぐに戦い方を理解することができた。

 

「おまんを抑え込むには十分すぎる得物じゃ!!」

 

 仮面ライダークロノスVS熊本の戦いが始まった。

 

「向こうは、始まったみたいだ」

「あぁ……こっちも急ごう」

 

 無論、ここに突入したのは熊本一人ではなかった。彼がクロノスを引き付けている間に、明堂院さつきと海東大樹の二人が別のルートから少女たちを探しに出たのだ。倉庫の裏手にあるドアから侵入した二人は、さっさと地下に通ずるドアを発見し、長い階段を降りる。一階、二階分は降りたであろうか。一つのドアを発見した。

 

「ここか?」

「他には見当たらないから、そうだろうね……開けるよ」

 

 そこからは海東のコソ泥力の発揮で……。

 

『やっぱりコソ泥じゃないか』

「怪盗だ」

 

 怪盗力という物があるかはさておき、通信での士のツッコミを軽くいなした海東は、あっという間に鍵を開けることに成功した。そして、ドアを開くとその先には、大勢の少女の姿。間違いなく誘拐された子供達だ。中はかなり広い部屋で、およそ百人はいるというのに、それほど狭いとは感じさせなかった。そして、異様な嗅ぎなれた臭いもさることながら、彼女たちの顔は暗く、その表情からは笑顔という物を見ることができないでいた。

 

「大丈夫か、助けに来た」

「遠藤は上で仲間が押さえている今のうちに逃げよう」

 

 そう言って、さつきが一人の少女に手を差し伸べる。しかし、少女は怯えた表情のまま言った。

 

「…………て」

「え?」

「……げて」

「どうしたんだい……ッ!」

「逃げて!!!」

 

 その時、一枚の鏡が波立った。

 そのころ、上にいる熊本はクロノスと互角の戦いを繰り広げていた。それは、熊本の鍛錬のたまものであると同時に、クロノスがある能力を使わないことも要因であった。つばぜり合いから、クロノスの腹を蹴って後ろに飛びのいた熊本が言う。

 

「何故に時間停止の技を使わん」

 

 そう、海東と士をボロボロにし、変身アイテムを瞬時に盗んだ時の時間停止の技を、クロノスはいまだに使っていないのだ。何か策があるのだろうか。

 

「ポーズ機能を使わなくても、お前程度の男に負けるわけないだろう……」

「余裕を持っていられるのも今の内じゃ……」

 

 この作戦の目的は二つ、一つはもちろん囚われのプリキュアたちの救出、そしてもう一つが彼、遠藤止の時間停止能力の解明だ。そのために小型のカメラも付けて時間停止の技、ポーズ機能というらしいそれを記録しなければならない。だが、男が余裕をかましていられるのも今の内、もうじき海東とさつきが彼女達を救出しているころだ。それを遠藤が知れば、少しは取り乱すだろうし、二人が増援に来てくれれば、彼もポーズ機能を出さざるを得ないだろう。そう思ったのもつかの間だった。

 

『熊本!』

「なんじゃ、どうした?」

 

 イヤホンから、叫びにも似たいつきの声が届く。その声から、何か想定外の事が起こったのは間違いない。まさか、伏兵でもいたというのだろうか。熊本は、何があったと聞こうとしたその刹那であった。

 

「ぐあぁ!!」

「クッ……」

 

 さつき、海東の二人が倉庫の奥から転がりながら現れた。一体何があったというのか。

 

「ふっ……あいつを忍ばせておいてよかった。備えあれば患いなしってね」

「一体、何が……!」

 

 その時だ、天井近くにある窓ガラスから一つの糸が伸びたのは。糸は、熊本の首を捉え、その首を絞めながら窓ガラスの方にまで熊本の身体を引きずっていく。熊本は、そうはさせるかと、手に持った剣で糸を切ったため、何とか事なきを得た。起き上がった熊本は、瞬時に窓ガラスの方を見る。やはりどう見ても窓から糸が伸びているように見える。それも、まるで水面が波立っているかのようにその糸の出所を中心に波紋が広がっている。一体なんだというのだあれは。

 

「なんじゃ……あれは……」

「紹介しよう……我が下僕……」

 

 その瞬間、窓ガラスから一体の怪物が出現した。緑色をした怪物、手に持っているのはカマであろうか。あの姿はまるで……、そして怪物は遠藤の真上からゆっくりとその隣へと降りると、遠藤は言った。

 

「マンティストロフィー……僕の能力を利用して使役しているミラーモンスターさ」

「ミラー……モンスター」

 

 ミラーモンスターは、仮面ライダー龍騎の世界の敵だ。元々はある兄弟が絵に描いた存在だったそれが実体化したもの。簡単に言えばイマジネーションから生まれた物だ。つまり、本来ならばミラーモンスターはその二人が考えた種類しかいないと考えていいし、二人が考えたミラーモンスターの中には遠藤が言うようなモンスターはいなかった。

 

「驚いたものだよ……あくる日ミラーワールドを探検していた時、こいつに出会った時はな……。この世界にはミラーモンスターどころか、もちろん仮面ライダーすら存在しない世界。神崎優衣も神崎士郎もいない世界のはずだからな。多分どっかの平行世界からでも流れ込んできたんだろう」

「神崎優衣に神崎士郎……誰じゃその二人は?」

 

 しかし、遠藤は答えなかった。二人は、龍騎の世界においてライダーバトルの鍵を握っていると言っていいような人間たちだ。ここで話すには話が長くなるが、ともかく、二人がいなければミラーモンスターはいないと言っていいだろう。

 

「ミラーモンスターか……なるほど」

「大樹?」

 

 その時、海東が何かに納得したかのように言った。そうか、使役しているという言葉から察するにあの事件の犯人は……。

 

「ウィーンでの無差別大量失踪事件……そのモンスターの仕業だったという事か」

「なっ……」

 

 あのコンクールの当日の事。響が遠藤止に襲われた日、近くにある飲食店から人の姿が消えた。それまで明らかに人がいたはずであったのに、まるで写真から人だけを消してしまったかのようにその場所から人間の姿は消えてしまった。それはまるで、積み荷や衣服、食料だけを残して乗組員だけが消えてしまったかの有名な失踪事件、マリーセレスト号事件のように。

 

「この世に人の姿を消すことのできるモンスターは数あるが……」

 

 主にオルフェノク、ファンガイア等だ。しかし、そのどちらも明らかに痕跡の残る物ばかり。しかし……。

 

「痕跡もなく人間を消してしまえるのは、ミラーワールドに連れて行って捕食するミラーモンスターぐらいしかいないだろう」

『そんな……』

 

 カメラの向こうで彼らの様子を見守っていた響はその海東の推理に慄いた。自分が聞いたところ、百人を超える人間が蒸発したと警察は言っていた。それだけの人間を彼は殺したというのだろうか。だが、いったいなぜそんなことをする必要があったのか。そして、遠藤は笑いながら言う。

 

「ハハッ!そうさ……全部僕とマンティストロフィーがしたことさ」

「何故そんなことを……」

「理由は二つ……まず僕が我が嫁と会うときに目撃者を作らないため」

『何それひどい……』

『我が嫁って頭おかしいんじゃないの?』

『そもそも目撃者って言っている時点で犯罪って自分で気づいているってことじゃない……』

 

 と、女性陣による酷評ではあるがもちろんそれを遠藤は聴いていない。自身過剰な遠藤は、そんなことも露知らず自慢するかのように話を続ける。

 

「そしてもう一つ……ミラーモンスターは餌を食べることによって力を上げることができるのさ。そう、おかげでマンティストロフィーは僕の使役する怪人たちの中でもトップクラスの力を持つモンスターとなった」

「餌……だと」

「そう……嫁と愛を確かめ合うことができ、なおかつマンティストロフィーの力を上げることができたまさに……一石二鳥という物さ」

「貴様は……ッ!」

 

 間違いなくこの男は狂っている。それが、熊本の結論だった。この男は、欲望を操作することによって自身の願望を現実のものとして、それを実現させるためにいとも簡単に人を殺し、それを反省する気もない。熊本は、心の中では遠藤の事を少しは人間扱いしていた。しかし、今奴に対する扱いは全て捨てた。遠藤は獣、いや獣以上の猛獣、ド外道。人間としての楔を外し、自分のしていることを完全に正論であると信じ切っているド外道だ。間違いない、この男はプリキュアに、いつきたちに逢すことなどできない。いや、それどころかいま真下にいる現役のプリキュアの少女達も一刻も早くこの男から離さなければならない。だが今の状況、どう行動すれば最善なのだろうか。どうすればこの男の気を逸らし、少女たちを助けに行けるか。その時だった。

 

『海東、奴の気をひけ。俺に考えがある』

 

 その声の主は士だった。彼は海東一人に言ったつもりではあるが、それはもちろんさつきと熊本にも伝わっていた。何か策があるというのならば、今のこの膠着状態を溶かす要因になるかもしれない。ならば、と熊本は気になっているある一つの事を聞いた。

 

「遠藤止……この際じゃけん、結局お前が何者なのかを教えろ」

「何者?僕は僕さ……この世界の主人公、救世主、支配者……」

「戯言はいい。要は、お前が何者なのかだ……」

「怪人を使役する能力、僕たちのしらない仮面ライダーに変身できる力……そんなもの、ただの一般人が持てる力じゃない」

「一般人?……フフッアハハハハハ!!!僕が一般人……ね」

 

 遠藤は笑う、狂ったように、嘲笑う様に、馬鹿にするかのように。そして言った。

 

「いいさ……君たちに教えてやるさ……僕は」

 

 そして、彼の放った言葉は……。

 

「転生者……この世界のすべてを手に入れる権利を貰った選ばれし者だ」

 

 誰も知らない言葉だった。




 ミラーモンスターの名前の法則は、英語で形容詞+動名詞又は名詞らしいが、法則とかも考えないで色々と考えた結果、『グラトニーマンティス(暴食のカマキリ)』もしくは、『マンティストロフィー(カマキリ+破局)』のどちらかにしようかと考え、結果何となくカッコイイ方にしました。
 このミラーモンスターの原案は、読者の『マスターD』様です。そこに色々と設定を肉付けしました。
 そして、ついにその正体が暴露されました。そう、彼こそが私の中の転生者のイメージ、その集合体です。なんか口調というか、性格が前回登場時よりもかなりねじ曲がっていますが、それは、私の中の転生者のイメージを色々とねじ込んだからです。
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