仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 自分の首を絞めている状況であることは間違いない。
 後、一つ言っておきますが。作者≠遠藤止ですからあしからず。私はこんな奴などに絶対にならない。
 あと、今までさんざんとディスってきましたが、私にはある個人を攻撃する意志はありません。ただ書いていると自然にそうなっているだけです。ただ、利用規約の禁止事項に抵触する恐れがあるため、作中放送禁止用語ぽくぼかしている箇所がございます。以上。
 結局このプリキュアの世界がクリスマスの前日の話なのに、24日までに終えることができなかったぜ。


プリキュアの世界chapter46 この世界の管理者

「TVの存在……私たちが、アニメの中だけの存在というの……」

 

 青天の霹靂とはこのことか。まさか自分たちの人生がアニメ化されているなんて、そんな事考えたこともなかった。それでは、自分たちの人生が監視されているのと同じ事ではないか。いや、監視なんて生ぬるい物じゃないかもしれない。もしも自分たちがアニメの中の人間であるというのなら、自分たちの苦悩も、自分達の心も、そしてここにこうしている自分という人間も全て作られたものではないか。妖精と出会って、プリキュアになって、辛い思いをしながらも、命がけで戦って、たくさんの別れ、中には死別までした女性もいる。それら全ての人生が、偽物だというのだろうか。自分たちがプリキュアになって戦って、そして平和な世界を手に入れて、それが全部最初からシナリオとして作られていた物だというのか。なら、ある人間の手のひらの上で自分達が踊っていたのであれば、ならば、なら、だったら……。

 

「下らないね」

「海東……」

 

 しかし、海東は立ち上がりながら言う。

 

「例え僕達がTVやアニメの中の人間だったとしても、今ここにいるのは僕達……そして、いまこうして歩いているのは僕たちの人生だ。それは紛れもない事実だ。例え誰かに作られた道であろうとも、例え……それが苦難な道のりであろうとも、僕たちは僕達だけの人生を歩いている。……僕たちは、ここにいる」

「そうじゃ……俺たちは、血の通った人間じゃき……だからこそ泣き、笑い、苦しみ、そして極悪非道なお前に怒ることができるんじゃ!」

「あぁ……俺の妹を、妹の友を苦しめる貴様を、許しておくわけにはいかない!」

「僕たちが架空の人間であったとしても構わない。だが、お前が今ある現実から逃げて、大勢の人間を泣かすような人間であり、倒すべき人間であることに変わりはない」

 

 自分たちは生きているのだ。操り人形なのではない。自分で考え、行動し、そして今目の前にいる敵を倒す。そう考えるのは、自分に意思があるからだ。これは、誰かにやれと命令されたからじゃない。自分がこうしたいから選択したことなのだ。だからこそ、理不尽な悪である遠藤止に対して、怒ることができる。それは事実なのだ。

 

「君たちがどう思おうとも勝手だよ。だが、少なくとも君達架空の存在が、僕という現実の存在に勝てるという事実なんて存在しない。その世界で一番強く、そして世界を支配できる権利を持つ物、それが転生者なんだよ」

「くだらない話は後にしろ……出なければ、後悔するぞ!」

 

 さつきは、そう言うとクロノスの懐へと飛び込むと、その胸部へとアッパーカットのように拳を突き刺す。だが、まるで鉄の板を殴っているかのような痛みが彼の手を襲った。だが、それでクロノスがダメージを受けている様子はなかった。

 

「フフフッどうしたそれで精一杯なのか?」

「硬いっ!」

 

 クロノスには、あまり知られていないかもしれないが時間停止能力の他にも能力がある。腕の『セイヴァーファイトグローブ』、足の『セイヴァーファイトシューズ』は攻撃を当てるたびに各々の攻撃力が十%上昇する能力、さらに同じ部位にある『メックハンドレッドガード』には百トン以下の攻撃を完全に受け止められる能力がある。さらに胸部の『ロングライフガード』には時間経過とともに防御力が上昇する機能があり、時間経過とともに撃破することが困難になるのだ。もしも、これが本当のゲームのラスボスの能力であれば多分、いや正直匙を投げるほどのクソゲーだろう。現在、遠藤がクロノスになってから長い時間が経っている。そのため、それに伴ってクロノスの耐久能力はかなりの物となってしまっているのだ。

 

「ハァッ!」

 

 その後ろから、さらに熊本が剣をクロノスに向けて跳んだ。しかし、その剣がクロノスに届くことはなかった。

 

「……」

「チィッ!」

 

 その隣にいたマンティストロフィーがその手に持ったカマで熊本の剣を止めたのだ。甲高い音が鳴ったことから、そのカマも熊本の持つ剣と同じような強度と鋭さを持ったものであると推測される。熊本は、マンティストロフィーの腹を蹴って、また後ろへと跳んだ。しかし、マンティストロフィーはそれを追撃するかのように羽を羽ばたかせて熊本へと詰め寄った。空中にいる熊本には、それを避けるすべはない。

 

「フッ!」

 

 そう考えた海東による援護射撃がマンティストロフィーに当たる。それによって、マンティストロフィーはバランスを崩し、熊本へとそのカマが届く前に、熊本は地面に足がついた。

 クロノスもそうであるが、あのミラーモンスターも厄介である。多くの人間の命を吸い込んだことによって、強化されたミラーモンスターは、恐らく強大な力を持っていることだろう。少なくとも、生身の身体にあのカマの攻撃を受けることは避けなければならない。海東は、リスクを押してでも変身しなければならないと感じた。

 

「ミラーモンスター……厄介だね。変身!」

「フッ、無駄だ」

「ッ!」

≪ポーズ≫

「ぐあ……!」

 

 海東が、ディエンドライバーにカードをいれる寸前またもその身体が宙を舞い、何度も地面を転がって、近くにあった荷物にぶつかって止まった。今度は、ディエンドライバーを取られることはなかったが、その身に受けたダメージはかなりの物だ。

 

「今のは……」

 

 その中、あることに気がついたのはクロノスと対峙していたさつきである。クロノスは、時間を停止させようとした直前、ベルトを両手で触っていた。恐らく、ベルトの両端にあるボタンを触ったのだろう。その瞬間、クロノスの姿は一瞬のうちに消え、海東の目の前へと一瞬で移動していた。という事は……。

 

「えりか、いつき、そっちでも見えたか」

『うん、ばっちり……遠藤がベルトを操作した瞬間に消えた』

『という事は、時間を停止させるためにはベルトを操作しなければならない』

「そう、つまり……」

 

 さつきには、クロノスの攻略方法が見えた気がした。いや、正確にいえば時間停止能力の攻略方法だ。クロノス自体の攻略方法はまだ見つかっていないのだ。例え、時間停止能力を破ったとしても、その頑丈な身体にダメージを入れる方法は見つかっていない。一つの攻略方法を見つけたとしても他の攻略方法が分からなければ、それは徒労となってしまう。ともかく、試してみる価値はあるか。さつきは、一度深く呼吸をし、心を整えると跳び上り、かかと落としを繰り出した。

 

「ハァッ!」

「無駄だと言っている」

 

 しかし、クロノスはそれに対して避けることなくその身で攻撃を受けた。やはりダメージは与えられていない様子だ。やはり人工コミューンツヴァイを使用しているとはいえ、人工は人工、本物のプリキュアのような力を出すことはできない。さつきは、この場でクロノスを倒すことは不可能だと判断し、先ほどの通信で何かすることを示唆していた士のバックアップと、カメラの向こうにいる妹達へクロノスの戦闘データを送ることに重点を置くことにした。

 

「無駄かどうかはお前が決める事じゃない。僕が……俺が決めることだ!」

 

 さつきとクロノスの拳は激突し、瞬間火花が散った。

 

 

「あの人達……先輩の仲間なの?」

 

 一方、物陰から彼らを覗く影があった。少女たちは皆、この季節に似合わない薄いシャツのような服を着ている。無論、好きでそんなものを着ているわけじゃない。これは、遠藤止の趣味のような物だ。そう、彼女たちは現役のプリキュアである少女達である。地下に閉じ込められていた少女たちはしかし、海東大樹によって鍵が開けられたドアから何とか地上にあがってきた。そして、彼女たちが見た物は、あの遠藤止扮するクロノスという物に倒された銃を持った男性と、それに立ち向かう長髪で道着を着た、女性のような男性。そして、自分たちを見張っていたモンスターと戦う赤髪の男の姿だった。しかし、その戦闘をどう見ても、劣勢にしか見えない。このままでは彼らが負けてしまうのは必至だろう。

 

「あの人達を助けないと……」

「でもどうやって?変身するにしてもプリチェンミラーはあいつにとられたままだし……」

 

 そう少女の一人が言った。確かに、自分たちの変身アイテムであるプリチェンミラーは、あの遠藤止という男に負けた時に盗られてしまった。今は、それがどこにあるのかすらも分かっていない。仮に、それがあったとしてもだ。

 

「それに……もしあったとしてあなたは戦えるの?」

「ッ!」

 

 それは、少女たちの共通認識に等しい物であった。もしも、目の前にプリチェンミラーがあって、変身できたとして自分たちは戦えるのか。答えは否だ。はっきり言えば、怖いのだ。戦うことが。彼女たちがプリキュアになったのは、まだ一、二年前の事。ある日突然プリチェンミラーを渡されて、異世界から唐突に、そして無尽蔵にかつ不定期的に表れる悪の組織達と戦って、その中で友達ができて、かつてプリキュアであった先輩達とも出会って、時に一緒に食事に行ったり、時に厳しくしごかれたり、花見に行ったり旅行に行ったり、楽しい毎日だった。楽しくて、楽しくて、プリキュアをやることが苦痛でもなんでもなかった。そんな時にあいつが、遠藤止が現れたのだ。

 自分も、友達も皆戦った。だが、気がついた時には負けて、自分たちは床を這えずりまわっていた。そしてプリチェンミラーは盗られ、自分たちはこの倉庫に連れてこられそして……。思い出したくもない日々が始まった。文字通り苦い記憶。思い出そうとするとあの時の感覚が思い出されて、吐き気がこらえられない。お腹の中にミミズを入れられた時のようなあの気持ちの悪い感覚が、口の中にコールタールを入れられたかのような苦しみが、そしてその感覚に次第に慣れてくる自分のようで自分でなくて、でも自分の頭感じたという事が悔しくて死にそうになる感覚が襲い、気がつけば自分は吐き気を通り越して嘔吐していた。だが、吐いても吐いても自分の中から感覚が消えることはない。頭の中にある苦杯によって自分の心が侵され、そして楽しかった記憶が消えていくような感覚。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。こんなことになるなら。こんな、経験をするのだったら。……誰か私を殺して。そんな考えをしてしまう私を殺して。

 彼女が嘔吐したことに対し、忌避する者はその場にはいなかった。誰もが、彼女と同じ経験を味わったのだから。中には本当に心が壊れかけ、遠藤止に屈しようとした少女もいた。だが、それでもここまで心を保つことができたのは、周りにいる友達のおかげだった。とはいえ、もし海東たちが来るのがもう少し遅かったのであればどうなっていたかは分からない。だが、少なくとも女は男が思っているほど弱くはないという事が彼女たちによって証明できた。あまりにも残酷で、身勝手な証明の仕方ではあるが。彼女たちが何をしたというのだろう。少女たちはただ少女でいたかったのだ。ただ、プリキュアをして、世界を守っていたかったのだ。ただ友達と、普通の平凡な日常を生きたかっただけなのだ。それなのに、それを許してくれない男がいる。身勝手な理由で少女を女に変えた男がいる。そして、彼女たちに過酷な運命を押し付けた者がいる。もしも、本当にこの世界がアニメで、アニメーターによって彼女たちの人生を操作していたというのならば、いったい彼女たちの役割は何だというのだ。女は男が思っているほど弱くない。ただその証明をするためだけに、逃げたくても逃げられない運命を彼女達に科したというのか。そんなもの悲しすぎる。だが、それでも彼女たちはその通りに動かなければならなかった。何故なら、それが運命だから。そうあらかじめ決められていたのだから。彼女たちが自分自身の足で動くことができないのだから。そう動くしかなかったのだ。そう、動くしか、無かったのだ。

 

「ォエ……ゴメン、ごめんね……こ、んな事言いたくないのに……こんな事言いたくなかったのに……」

 

 ひとしきりに腹にあったモノを吐き出した少女は、悲しげに言う。悲しげに、そしてそこには少しばかり恨めしい気持ちを入れながら言う。ただ、悔しい。こんなことを言ってしまう自分が、こんな事を言わなければならない自分が、こんな事を言わされている自分が悔しかった。

 

「こんなことになるなら、こんなにつらい思いをするんだったら……プリキュアなんかに」

 

 その時、彼女たちの前にオーロラが現れた。

 

「ん?」

「あれは!?」

 

 そのオーロラは、若干離れた位置にいた海東たちにも見えていた。現れたオーロラの中から、現れたのは門矢士である。そして、それとほぼ同時にオーロラは後ろへと下がり、そこにいたプリキュアの少女たちを飲み込んで消し去った。

 

「何ッ!」

「気を取られすぎたな、子供たちは返してもらった。変身!」

 

 遠藤止がさつき達と戦っている隙を狙った即興での作戦だったが、どうやら上手くいった様子だ。士は、時間を止められる前に即座に変身をすると、ソードモードにしたライドブッカーでクロノスへと斬りかかる。クロノスはガシャコンソードにてその攻撃を受け止める。

 

「貴様……よくも俺のプリキュアたちを……」

「プリキュアはお前の所有物じゃない!」

「違うな……俺の……いや、俺の世界の所有物だ!俺がどうしようと勝手だろう!プリキュアの人生も!お前の命もな!!」

 

 遠藤が逆切れ気味に士に言い放った。そういえば、遠藤は先ほどプリキュアや仮面ライダーは自分たちの世界のTV番組であるという話をしていた。まさか、ただそれだけでこの男は命の管理者気取りをしているというのだろうか。勘違い甚だしい。自分たちの人生は自分たちの人生だ。例え、作り物であったとしても、自分たちが歩む自分たちの人生を管理する権利など、特にこの男にあるはずがない。

 

「なるほど、お前のような奴を××の×み。と言うのだろうな」

「あの男と一緒にするな!!」

 

 身勝手な怒りのこもった蹴りにより、二人はつばぜり合いの状況から解放される。いくら相手がクズであったとしても、その仮面ライダーとしてのスペック上では明らかにクロノスの方が上だ。勝ち目があるのかどうかわからないがともかく、プリキュアの少女達を解放したのだから、後は海東たちを連れて帰ればいいだけである。

 

「海東、殿は俺が務める。お前は先に帰ってろ」

「僕に命令するな!」

「その傷を癒してから言え、海東」

「チッ……」

 

 海東も分かっている。今のままでは足手まといになってしまうという事実を。

 

「先に帰っている……早く君も帰ってきたまえ」

「あぁ……すぐにな」

 

 そのため、海東は珍しく士の意見に従いオーロラを出現させて帰っていった。確かに後ろ髪を引かれる想いだったがしかし、あんな感じであったとしても、士はかなりの強者である。そのため、きっと今回も帰ってきてくれるだろう。そう思い、彼は帰っていった。そう思っていた。その時までは。

 

「さて、続きを始めるとするか、遠藤止」

「続き、フフッ……続きか……」

 

 遠藤は、含み笑いを浮かべ、そして言い放った。まるで、親に高級なおもちゃを買ってもらった子供のように、嬉しそうに言った。

 

「なら、こいつらと遊んでもらおうか!」

「ッ!」

 

 瞬間、ディケイド、さつき、熊本の足元で火花が散った。

 

「なんだ?」

 

 まさか、まだ仲間がいたというのだろうか。いや、遠藤の能力からすれば、ライダー怪人かスーパー戦隊の怪人かのどちらかの攻撃によるものであろう。しかし……。

 

「なっ……」

「あいつらは……」

「ディケイド……」

 

 事態は、彼らの想像を絶していた。

 

「言い忘れてたよ。俺が神からもらった三つ目の能力……それは……」

 

 暗闇から出現したのは、異形の怪人の姿ではなかった。自分と同じ人型の、自分と似たようなスーツを着た人間。いや、似ているのではない。瓜二つだ。何故ならそこにいたのは……。

 

「【全ての仮面ライダーとスーパー戦隊を召喚する能力】だ」

 

 仮面ライダーディケイド、仮面ライダーディエンド、そして海賊戦隊ゴーカイジャーの六人の姿であった。




 転生者遠藤止。神からもらった特典。
 ひとつ!すべての仮面ライダーに変身できる!
 ふたつ!すべての仮面ライダーとスーパー戦隊の怪人を召喚できる!
 そしてみっつ!すべての仮面ライダーとスーパー戦隊を召喚できる!
うわぁ、こんな奴が主人公の小説なんて書きたくねぇ……。絶対に面白く出来ねぇ……。

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