ディケイドはディケイドと対峙していた。これは、誤植でも、誤字でもない。正真正銘の真実である。双方、ライドブッカーをソードモードにしてつばぜり合いの状況となっていた。
「クッ!」
だが、これは一対一ではない。ディエンド、ゴーカイレッドの銃が火を吹き士を襲った。それを寸での所で避けた士ではあったが、その隙を付かれて偽物のディケイドの剣が袈裟切りに士の身体を捉える。さらにその流れで右上から左下に移動した剣先で士を左から右に真一文に切り裂く。
「グアッ!……ガハッ……」
それに加え、ディエンドとゴーカイレッドによる追撃の銃弾が士の身体を撃ち抜いていく。誰がどう見たとしても士の劣勢にしか見えなかった。
「フッ!ハアァ!!」
一方、さつきはゴーカイグリーン、ゴーカイピンクの二人と戦っていた。グリーンとピンクは二人とも二丁拳銃を使う者であり、人工コミューンツヴァイによって身体強化しているとはいえ、当たればまずい。そのため、さつきは、素早くパルクールをするように動いたり、物陰を利用したりして銃による攻撃を避けていた。しかし、銃による弾幕によって近づくこともできないため、攻撃することもできない。つまり、完全な防戦一方である。
「さて、どうするか……」
さつきは、物陰に隠れながら次の手を考えていた。だが、考える時間など与えられなかった。さつきの真上に吊り下げられていた巨大な箱に目を付けたのだ。それを吊り下げていた鎖に向けてゴーカイピンクが放った銃弾は見事にソレを捉え、巨大な箱がまっすぐさつき目掛けて落ちてくる。
「チィ!」
さつきは寸での所でソレを避ける。しかし、おかげでゴーカイグリーンとゴーカイピンクの目の前にその姿を現してしまった。このまま動かなければ蜂の巣だ。さつきは考えるよりも早くに体が動いた。さつきは、二人に向けて走り出した。
「グッ!ヌァ!!」
そして、熊本はゴーカイブルー、ゴーカイイエローの二刀流コンビと、そして槍上の武器ゴーカイスピアーを持ったゴーカイシルバーの三人と戦っていた。だが、こちらはみるなりに劣勢と分かる。熊本が剣一本に対して相手は合計五つの武器を使用しているのだから。つばぜり合いなど、乱戦の途中にできるわけがないので、攻撃をいなすことしかできない。しかし、もちろんそれは時間稼ぎにしか他ならない。相手には熊本の眼から見ても剣の達人であると思わしき人間が二人いる。その攻撃をいなしているだけであっったとしても熊本の技量の高さがうかがえるが、しかし次第にその攻撃が熊本に当たっていく。そして、ついに恐れていた事態になってしまった。
「グァ!」
ゴーカイシルバーのゴーカイスピアーが、熊本にクリーンヒットし、その腹部を貫通してしまったのだ。ゴーカイブルーとゴーカイイエローがそれを追撃しようとするが、熊本はゴーカイスピアーを無理やり引っこ抜くと、大きく後ろに跳んで回避した。
「ハァ、ハァ、ハァ……グッうぅ……」
『熊本!!』
「心配せんでもええ……こんなもの唾でもつけとけば……ごふっ!」
いつきの通信に対応した熊本は立ち上がろうとするが、しかしまた膝をついてしまう。流石にダメージが大きすぎるのだ。内臓を損傷したのか、口からは血が噴き出した。流石にPC細胞を体内に入れている熊本でも、これは致命傷である。他にPC細胞を持っているプリキュアであったとしたら、先ほどの攻撃が腹部を貫通するという事はないだろう。しかし、熊本は後天的にPC細胞を入れた上に、定着するのにも時間がかかっていた。それが関係していたのかどうかは不明であるが、しかし少なくともPC細胞が上手く機能してくれなかったという事は確かである。
「熊本!しっかりしろ!!」
そんな熊本を救助するべく、さつきと士の二人が相手をしていた者たちを振り切って合流した。しかし、集まったところで自体が好転するわけではなかった。そんな中、クロノスが三人の前に現れて言った。
「どうだ、これが俺の力だ……全ての仮面ライダーになり、全ての怪人たちを呼ぶことができ、名だたるヒーローを呼ぶことのできる……この最強無敵の俺に敵うはずないだろう」
悔しいがまさにその通りだ。これ以上戦ったら、確実に死人が出てしまう。そう考えた士は、すぐに行動に移した。士は、オーロラを出現させると言った。
「俺が遠藤を抑える、さつきは熊本を連れて脱出しろ」
「なっ、しかし……」
「心配するな、俺は……世界の破壊者だ。ハァッ!」
そう言うと士は、偽物のヒーローの元に向かった。さつきは、もちろん彼の事を助けたかったがしかし、自分一人が行っても何ら分からないのは明らか。それに、熊本をすぐに病院に連れて行かなければならないのも確かだ。それならば、悔しかったがしかし、さつきは逃げる道を選んだ。さつきは、熊本の腕を自身の肩に乗せて、熊本の身体を支えた。
「熊本、行くぞ」
「あぁ……ッ!」
「なッ……」
その時だった。熊本が突然さつきの身体をオーロラに飛ばしたのだ。さつきの身体はオーロラを抜けた。
いったいどうしたというのだろうか。四葉本社に戻ったさつきは、熊本の取った行動の意味が分からなかった。
「熊本!」
しかし、画面の向こうにいる熊本、そして画面に向かって叫んだ妹の様子をみた瞬間、全てを理解した。熊本の首に糸が巻き付いていたのだ。それは、確かあのマンティストロフィーというモンスターが口から放出していた糸だったはず。それが水中から伸びているかのように波紋を描いて鏡からまっすぐと熊本の首を絞めていた。
「グッ、くそ……」
熊本には、先ほどのように剣で糸を切る力が残っていなかった。熊本はゆっくりと、しかし確実に鏡の方に引きずり込まれていく。
「熊本!クッどけ!!」
士は、そんな熊本を助け出そうとする。しかし、ゴーカイジャー六人と、仮面ライダー三人を相手にそんな器用なことができるほど、士は強くはなかった。隙を付かれた士は、クロノスを除いた八人からの一斉射撃をその身に受ける。
「グアッ……ガハッ……」
何発、何十発受けたであろうか。次第に士は膝から崩れ落ち、変身が解けてしまった。そして、なすすべもなく熊本が鏡に引きずり込まれている様子をただ眺めているだけであった。
『ま、まずい……』
そんな熊本の耳に、息も絶え絶えな海東大樹の声が入ってきた。
『まずいって何が?』
『ミラーワールドは、人間が生きることのできない場所。一定時間を過ぎたら、その身体が粒子化して消えてしまう……』
『なっ……』
『そんな……』
事実である。ミラーワールドはまさにミラーモンスターだけの世界。ミラーモンスターが捕食するために人間を引きずり込んだら、その人間に待っているのはモンスターに食われるか、運良く逃げて身体が粒子化して消滅するかのどちらかである。ミラーワールドを行き来することができるのは、唯一十三人の仮面ライダー+αのみ。そのため、人間がミラーワールドに放り込まれれば、待っているのは確実な死のみ。それから逃れるすべなどないのだ。
『熊本!何とかして脱出しろ!熊本!!』
脱出しろと言われてもあまりにも無茶なことだ。と、熊本は内心で思った。しかし、いつきの言いたいことも、その思いも分かる。ただ、自分に死んでほしくないのだ。自分も、まだ彼女に言いたいことが山ほどあった。こんな糸を抜け出して、彼女を抱き寄せ、耳元で言いたい言葉が沢山あった。だが、そんな彼の思いとは裏腹に、鏡はすぐ目の前に迫っている。
「ハッ!クモがクモの糸に巻かれて死ぬなんてお笑いだな!」
「さっき、から……お前はッ何をッ!」
と、遠藤は嬉しそうに熊本に向けて言い放った。熊本は、それに対して先ほど遠藤が言ったクモジャキーという言葉に関連する者であることを察した。しかし、当然熊本はクモジャキーなどという名称を聞いたことがなかったため、糸に巻かれて苦しい中での返事は、その『クモ』という単語に対する疑問であった。だが、先ほどから何なのだろうか。この『クモ』という単語を聞くたびに、脳裏を駆け巡るこのもやもやは。自分は何か大事なことを忘れているのではないだろうか。だが、一体何を。
「忘れているのなら、冥途の土産に教えてやろう!クモジャキーってのはな……お前が砂漠の使途で幹部をしていた時の名前だよ!」
「何ッ?」
『ッ!』
「そう、お前は十年前にいつきやつぼみが所属していたハートキャッチプリキュアの四人と戦っていた砂漠の使途の幹部だった。最終決戦でプリキュアに敗北するまで、お前はたくさんの人間を傷つけ、心の花を奪い、怪物にし、そして多くの人間を不幸にしてきた……それがお前、クモジャキーの正体さ!」
「……」
熊本は、その言葉に驚くと同時に、だからかという思いもあった。今から十年前のある日、昏睡状態であった自分は突如何の前触れもなしに目が覚めた。その日にハートキャッチプリキュアが最終決戦を月で行っていたという事は後々に聞いたことだったし、実際にハートキャッチプリキュアの姿を見たことがなかった。しかし、ある時期に彼女たちの姿を見て、プリキュアの正体がいつきや、その仲間と聞いたとき、驚きという気持ちすら起こらず、むしろ懐かしいとすら思ってしまった。あの感情の意味は、まさしくそれだったのだろう。なるほど、いつきがあの道場でやたらと自分にかまっていてくれたのは、元々敵であったからというのもあったのか。熊本は、ようやく自分の中のモヤモヤが解決したように感じた。
『熊本……』
その時、イヤホンからいつきの声が聞こえた。その声は、かなり弱々しく、今までに聞いたことがなかったほどだ。それを聴いたことによって、彼は確信した。道場でいつきは自分と共に稽古をしたり、ランニングなどにも勉強する合間をぬって一緒に走ってくれていた。だが、彼女の事だからそれは監視のためという名目なんかじゃない。自分がまた、悪の道に行かないようにするためだったのだろう。そして彼女の事だから、自分と付き合い始めたのも憐みや同情なんかじゃないはずだ。熊本は、イヤホンから漏れる少しばかりの言葉だけでそう感じることができた。それだけで、何故か何となく嬉しかった。
「辛いだろう?苦しいだろう?自分が思い人の敵だったなんて知ったらな。そして、もう一目会うことなく死んでしまうのだからな。だが、安心したまえ、彼女の事は俺が面倒見よう……なぜなら、全てのプリキュアは俺の嫁なんだからな」
遠藤止の減らず口は止まらない。彼は、他人の心を読むという事ができないのだろうか。まったくもって的外れの言葉を言っている上に、矛盾で固められた言葉を言っているという事に気がついていない。熊本は、本社にいるいつきに対して、言ってやりたいことがあった。だが、それと同時に遠藤止にも物申したいことがあった。どちらを取るべきか、一瞬悩んだ末に、彼が出した結論、それは……。
「フッ、そう言う割には……子供のめぐみには冷たく当たった物じゃのう」
「フフッ、彼女はプリキュアじゃなかった。魔法少女だ。俺の対象外だよ」
「フン、腰抜けじゃのう」
「何?」
「お前はただ恐れとっただけじゃ。彼女が絶望し、魔女となって自分に襲い掛かってくることが。例えどれだけの能力を持っていたとしても、その心の本質を一人だけで変えるのは不可能じゃ」
『熊本……』
眼に涙をひっそりと溜めているいつきは、その言葉を一言一句逃さないように、耳を傾ける。周りも、彼の声を少しでもはっきりと聞こえさせるようにと、自然に静かになっていた。これが、彼の最期の言葉、遺言となってしまうかもしれない、そう考えるのに根拠はなかった。
「俺は、師範やいつき、大勢の人間のおかげで変わることができた。いつきたちのおかげで、自分を取り戻すことができた。あいつらがいたから、誰かと共に歩むことも悪くはないことだと思えた……。いつきに感謝することはあっても、何を恨む必要があるじゃ」
己の道をただ一人で行く、それが漢である。そう彼は考えていた。だが、昏睡状態から目が覚めて、たくさんの人たちに出会ったおかげで、誰かと一緒に歩くということも悪くはないと思えるようになった。そしてそのおかげで、自分は強くなることができた。これは、嘘でもなんでもない、本心から出た言葉である。熊本は、含み笑いを織り交ぜながら続ける。
「すべてのプリキュアは俺の嫁だと?見くびるなよ。彼女はな……」
万感の思いを込めて、そこにあった物は感謝、詫び、償い、励まし、そして……。
「こんな俺を愛してくれた優しい
愛の言葉同然の物。熊本は思う。どうしてもっと早くに素直になれなかったのだろうかと。こんな死ぬ寸前になって、どうして言葉が浮かんでしまったのだろうかと。だが、それでもその言葉を言えて、悔いはなかった。かなり恥ずかしい言葉も混じっている気はするが、首に巻き付いている糸の痛みを忘れてしまっている彼にとっては、何ら関係のないことだった。もちろん、遠藤止が熊本に反論するほどの語彙など存在するはずがない。遠藤は、ただその言葉を黙って聞いているだけしかできなかった。
もう、鏡はすぐそこにある。処刑台に送られる死刑囚はこんな気持ちなのだろうかと、熊本は思っていた。あと少しで、自分は二度と戻ることのできない世界に行き、どんな行動をとろうとも最後には死んで、死体すらも残らないそうだ。だが、不思議と怖くはなかった。すべてを彼女たちに、託すことができたのだから。いや、まだ一つだけやり残したことがある。彼女に、彼女だけに伝えなければならない。この言葉を、最後の最期に浮かんだ、この一番シンプルで、優しくて、この世界で最も力を持っているこの言葉を。
「いつき……」
『ッ!熊本……』
「……愛してる」
『あッ……』
「ありがとう……こんな俺を愛してくれて……お前は、最高のプリキュアじゃ」
『くま……ッ!』
「じゃあな」
『ッ!---!!』
熊本は、その言葉を聞くことはなかった。彼女が言ったその言葉、それは、熊本の名前だった。師範であるさつき以外で唯一知っているいつきが、初めて叫んだ。本当に愛する人の名前だったのだ。
元、クモジャキーはマンティストロフィーの糸に手繰り寄せられ、ミラーワールドへ消えていった。彼は勝ったのだ。しかし、まるで勝った気がしなかった。いや、むしろ完敗だったようにも感じる。自分は圧倒的な強さを見せて、海東大樹も、門矢士も、明堂院さつきも砂漠の使途の幹部であったクモジャキーですら倒した。なのに何なのだこのやり切れない思いは。まさか、あのクモジャキーの最期の言葉が心を蝕んだとでもいうのだろうか。いや、そんなはずはない。何故なら、奴は、いや奴以外の自分以外のすべての人間は作り物なのだから。偽物の命なのだから。そんな者の言葉なんかでどうこうするわけがない。だったら何故だ。何故……。
「くっ……」
そうか、こいつか。
「グッ!くっ……グアッ!」
立ち上がろうとした士はしかし、すぐさま遠藤止に胸元を掴まれて無理やり立たされ、投げ飛ばされてしまった。
「はぁはぁはぁ……」
外に飛ばされた士は、海を背にしてゆっくりと立ち上がる。しかし、傷だらけの士にとってできたのはそれだけであった。見ると、遠藤止がすでに銃、『ガシャコンマグナム』を自分に向けていた。逃げる時間なんて与えられるはずもない。まさに、万事休すだった。
「く、士ッ!」
その様子をみた海東もまた、傷だらけの身体をおして立ち上がり、先ほど自分がここに来た時のようにオーロラを出そうとする。しかし、そんな彼を相楽誠司が止めにかかった。
「やめろ海東!そんな体で何ができる!」
「離したまえ!僕の身体がどうなろうと構わない!だが、士は!!」
『海東……』
「ッ!」
『……後のことは、頼んだ』
「士……」
恐らく、遠藤止にも聞こえないほどの小声だ。その時、海東は気づいた。門矢士は死を覚悟してしまったのだと。クロノスの攻撃から逃れるすべはない。もし運よく逃げれたとしても、その先にはゴーカイジャーの偽物や、二人の仮面ライダーの偽物がいる。彼に逃げ場などありはしなかった。唯一あるとするならば、直真後ろにある海ではあるが、この時期の海の水温は、想像を絶するほどに低くなっているはずだ。そんな海に入って、遠藤止の追撃が来ないところまで泳ごうとしても、凍死してしまうのがオチだ。だからこそ、逃げ道などないのだ。
無駄なことだろうが、士はゆっくり、ゆっくりと後ろにすり足で下がっていく。人間は、自分の命の危険があるのならば、それが例えどんな無駄な努力であろうとも、行動に移す生き物だ。それが無意識の状態であったとしても、である。そして、ついに士は自信を市へといざなうかもしれない海と一番近い場所に立った。もはやこれまでである。
「最後に言い残すことはないか?門矢士……」
「ない。しいて言えば、お前は負けるってことを予言するだけだ」
「フッ……」
この顔、自分は負けないと自信を持っている顔だ。自分が何度もしたことがあるから分かる。どう考えても、彼の中には慢心の二文字が常に宿っている。今四葉本社にいるプリキュアや海東がそれに気がつきさえすれば、勝ち目は十分にあるだろう。何故だろうか。やはり、彼女たちが負ける様子なんて思い浮かばない。それは、この一日、多くのプリキュアを回り、多くのプリキュアの戦いを見てきた門矢士の主観であった。しかし、あながち的外れではないと、確信はあった。そんな士に対して、遠藤止は言った。
「お前にも冥土の土産に教えてやろう。仮面ライダーディケイドはな、俺の世界では仮面ライダー史上に残る駄作なんだよ。お前に壊された世界の数々によって、俺の世界の多くの仮面ライダーファンが傷つき、怒りを覚えた。門矢士、お前の仮面ライダーとしての人生は実に……」
「くだらない話は後にしろ、耳が腐る」
「チッ……」
「最後に一つ言っておく。俺の人生を評価できるのは俺自身だけだ。それ以外の人間が何を言おうとも、それはただの言葉に過ぎない。それに俺は……誰かに自分の人生を評価してもらいたくて旅を続けてきたわけじゃない。ただ……それだけだ」
ただそれだけを言うと、その場には沈黙が流れた。深く、そして延々に続くのかもしれないと思わせるほどの時間がその場を通り過ぎていく。士は、頭の中で思う。自分の人生は間違っていない。自分の旅は間違っていないのだと。今までの仮面ライダーとの出会いは間違いじゃなかったはずだ。間違いなど、認められるわけがない。それは、自分自身の生き方を否定するという事と同意義だからだ。だから、自分は間違っていない。そう思ったその時、士はあることに気がついた。自分は間違っていない。それは、遠藤と同じ
最低なことなんではないだろうか。思えば、自分が間違えたと判断できていれば海東との仲がこじれることも……。
「なるほどな、これが未練、後悔って奴か……」
その時士は思った。
「悪い、なつ」
その時だった。一つの銃声が空を切り、映像が途切れたのは。そして、士が海に落ちた音がした後、音声にもノイズが走り、何も聞こえなくなった。
「士さんまで……」
「くそっ……」
四葉本社は、おそらく史上最も最悪の空気に包まれていた。確かに、現プリキュアの少女達は助けることができた。しかし、その代わりに大切な物を無くしてしまった。さつきは悔しかった。あの時、もしも自分が帰ろうとせずにそのままとどまっていれば熊本や士を助けられたかもしれない。だが、そんな物は後の祭りだった。いつきが、一人その部屋から出て行く。その後をゆりとめぐみが追っていく。いや、むしろ彼女を追うことができるのは、その二人だけだったのかもしれない。そして……。
「自己犠牲……か」
確かにプリキュアの少女たちは助かった。
「いい台詞だ……」
確かにさつきは助かった。
「感動的だな……」
確かに自分は助かった。だが……。
「だが、無意味だ……」
そんなもの、誰かが死んでしまったら……。
「ッ!無意味なんだよッ!!士ァァァァァ!!!!!!!」
ただの薄っぺらい言葉だったのだ。
「全く、面倒なことをしてくれる。彼女達を取り戻す手間ができてしまった」
「では、協力しましょうか?」
「?あんたは確か……いや、今の声はもしや」
「えぇそうです。私ですよ」
「ジョーカー……ククク、いいねぇ面白い。世界の管理者と、凶悪な敵の最凶タッグの誕生だ」
「では、利害の一致ということで」
「ククク、待ってろよプリキュア……」
スピンオフで企画していたものが公式にやられました。(子育て物)
まぁそれはさておき、今後の登場人物の件で、いい加減はっきりさせておかなければならないものが一つありまして、詳しくは活動報告のほうに書いときます。
というか、2017年最後の投稿でこんな大ピンチになるなんて、どうなるんだ2018年。てか、今更ながら多方面に喧嘩を売っているこの小説。もしかしたらヤバイところにも喧嘩を売る可能性も出てきました。もう展開が濃すぎて高血圧になるわ。