仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 なんか、時間稼ぎっぽく見られそう。
 実は今、あるキャラの登場シーンに苦戦しており、調整の最中のため、chapter51以降の投稿計画がたてられていません。台詞回りと戦闘シーン、それとあまりチートにならないように調整しなければならないため意外と難しいです。


プリキュアの世界chapter50 彼女のいた街は?

 転生者遠藤止の与えた衝撃、それはいつき以外の者たちにも波及していた。例えば、ここにいる春野はるかもそうであった。

 

「……」

 

 遠藤止の語った過去。その中で、彼女は少し気になったところがあったのだ。だが、これがどういう意味をもたらすというのだろうか。ただの偶然だろうか。しかし、あまりにも状況が似すぎているのだ。それに気づいていたのは、大人のはるかだけではなかった。

 

「あの、未来の私……」

「……やっぱり、貴方も気になった?」

 

 子供のはるかだ。彼女もまた、遠藤の話の中に気になる言葉があった。それは、まるっきり大人の遥香が感じた疑問と同じものだった。

 

「……うん。横断歩道、トラック、そして動かなかった足。遠藤止が死んだ原因って……」

「えぇ……私の先生が死んだ時の状況と似すぎている」

 

 まるっきり同じと言っても間違いじゃない。遠藤止が死んだときの状況、はるかの恩師が亡くなった時の状況、まるでデジャヴであるかのように似ているのだ。違っているとすれば、遠藤止には看取ってくれるような人間がいなかったという事、はるかの恩師には、はるかが最後まで側に寄り添って、看取っていたという事ぐらいだ。だが、これがどういういう意味を持つというのだろうか。ただの偶然であると片づけるにはあまりにもおかしすぎるのは目に見て明らかだ。

 

「どういう事なんでしょう……」

「……考えたくない。でも、もしかしたら」

「もしかしたら?」

「……何者かの意思が働いた結果……ということも考えられる。遠藤止の前世の人間を殺し、私をも亡き者しようとした」

「そんな、だって、遠藤止は別の世界で生きてた人なんですよ。もしも、そうだとしたら……」

 

 あまりにも突拍子もない話だ。しかし、もしも自分と遠藤止の前世の人間を殺そうと画策した人間がいて、それを成しえることができたというのならば、それはまさしく神の所業と言ってもいい。果たして、自分たちは一体何と戦っているというのだ。運命という物か、それとも宿命か。いや、今ここで考えたとしても分からない。だが、一つだけ確かなことがあった。

 

「……決めた」

「え?」

「この一連の事件が終わるまで、お嬢様言葉は封印する」

「えっと……話し始めからそうだったような気が……」

 

 確かに、この一連の会話を見ればわかるが、大人のはるかの言葉は、お嬢様言葉等という丁寧なものではなく、普通の会話に見える。これは、彼女がお嬢様言葉を捨てなければいけないと考えたから。ここから先は、もしかしたら自分にとって、恩師の復讐に移り変わってしまうかもしれない。たとえ、それがどんな理由であったとしても、それがたとえ復讐ではないと自分で言ったとしても、復讐であるという事は紛れもない事実だ。そこに、恩師から譲り受けたお嬢様言葉を、プリンセスらしさを連れて行くわけにはいかない。だから彼女は封印するのだ。この一連の事件が終わるまで、そして、恩師の死の真相を突き止めるまで、彼女は恩師からもらったものを一時返還したのだった。

 ほのかは、一人黄昏ながらあることを考えていた。転生者、という言葉を。もしも、自分の記憶が正しければ、あの時に出会った者がそれだった可能性が高い。しかし、ならば一つ疑問点が上がるのだが……。

 

「ねぇ、ほのか」

 

 そんなほのかを心配してか、なぎさが声をかける。ほのかが、どうしたのかと聞くと、なぎさは言う。

 

「ほのか、さっき言ってたよね。『彼も』って……あれってどういう意味?」

「……」

 

 そう、確かに自分は遠藤止が転生者だと判明したその時にそう口走ってしまった。それは、彼女が遠藤止と似たような経験をしたからに他ならない。

 

「そうね、隠すほどの事じゃないし言うわね。……私、大学で一度死んじゃったじゃない」

「え?……う、うん」

「痛かったな……あんなのもう二度とごめんね」

 

 なんだか、あっけらかんと言われたが、よく考えると怖い話だ。自分が死んだときの話を聞かされる方としては。

 

「その時に、私神様らしきものに出会ったのよ」

「あぁ、そういえばそんな話してたような……」

 

 そう、確かに自分とほのかが精神世界らしきもので邂逅した際に、彼女は神様らしき者に出会ったと言っていた。しかし、その時は聴いただけで、深くは話を聞くという事はなかった。

 

「その時に私も言われたの。別の世界に転生してみないかって……」

「え?」

 

 彼女もまた、神によって転生を薦められた。それは、遠藤止とほとんど同じ事。違うところで言えば、結局彼女は転生をえらばなかったという事である。

 

「私、少し戸惑っちゃって……それで、気がついたらなぎさが迎えに来てくれていたの」

「そうなんだ……」

 

 それを聴いたなぎさは、ある疑問がわいてしまった。正直、これは聴いていいものなのかと少しだけ悩む。だが、気になった者はしょうがない。なぎさは、意を決心してほのかに聞いた。

 

「その……ほのかは……」

「何?」

「えっと……もし、私が会いに行かなかったら、転生してた?遠藤止みたいに……」

「……」

 

 どうなのだろうか。彼女は遠藤止のように不幸な人生を送ったわけではない。どちらかというと自分達プリキュアの中ではかなり順風満タンな人生を送っていると言っていいだろう。しかし、それでも記憶を持ったまま、次の人生を送りたいと願うのだろうか。

 

「多分、迷っちゃってたかな……」

「え?」

 

 ほのかからの返答は、曖昧なものであった。ほのかは続けて言う。

 

「だって、なぎさやひかり、メップルやミップルにポルンやルルン……ベローネや、プリキュアの皆それからおばあちゃま……楽しい記憶を持ったまま次の人生を始められるのよ。そう考えると、少し悩んじゃってたかなって……」

「ほのか……」

 

 ほのかの気持ちもわかる。次の人生に進むと、記憶は全部リセットされてしまう。この人生で送った楽しかったことや、辛かったこと、そして友達との出会いも全て忘れてしまうのは、拷問に等しいのかもしれない。だから、その記憶を持ったまま次の人生を置く得るのだったら、もしかしたら転生していたのかもしれないと。

 

「でも、やっぱり、転生しなくてよかった」

「え?」

「だって、この記憶は、雪城ほのかの記憶だもの。他の誰かに渡すことなんてできないわ」

「ほのか……」

 

 ほのかのその顔は、まるで何かを悟ったかのような顔つきであった。まるで、彼女一人が別の次元に行ってしまっているかのような、そんな尊い表情をしているように見えた。

 

「この雪城ほのかは、多くの人間に出会えたことで出来上がった人格、一人の人間だから。……次に同じような出会いがでいるか分からない。もしかしたら、来世の私はギャルとか不良になっているかもしれないわね」

「……」

 

 なぎさは、そう言われてほのかが不良になっている姿、ギャルになっている姿を想像してみた。しかし、想像できなかった。今までの雪城ほのかを見続けたなぎさにとっては、それを想像するという事は難しいことこの上ないことであったのだ。

 

「でも、それが次の私の人生だから、今の私がどうこう言う資格なんてないわ。だから……雪城ほのかはもうこの人生だけで十分。まだ私は生ききったわけじゃないけれど、でも……もう一回人生をやり直したいなんて思いたくもないわ」

「ほのか……」

 

 自分はどうだろうか。思えば、今までたくさんの人々に出会ってきた。もしもメップルに出会わなければ、もしもほのかに出会わなければ、もしも……。今の自分という人間が作り上げられたのは、一体どうしてなのだろうか。大人になってみて思い返すと、やはり一番は父や母がいたからだろうか。そのおかげで自分という土台が造られて、その後の出会いで人格や性格が肉付けされて、今の自分になって……。

 なぎさは、うつむきながら言った。

 

「もしも私だったら、転生していたかも……」

「なぎさ?」

「私、今までたくさん失敗してきたでしょ……大学受験で失敗して、会社選びにも失敗して、先輩も……遠距離恋愛に耐えきれなくて別れちゃって……」

 

 なぎさには、高校に入った時から付き合っている男性がいた。ベローネの元サッカー部のキャプテンで、ほのかの幼馴染の男性だ。自分が大学に入ったころから、彼はドイツの方に行ってしまい遠距離恋愛となってしまった。しかし、会いたいときに会えないという遠距離恋愛の成功率はわずか二十%程度、約八割近い人間が分かれてしまうと言われている。なぎさもその八割の中井は行ってしまっていた。元々恋愛に奥手であったなぎさであったからしょうがないとはいえ、実は彼女はまだ知らない。実はこの先に彼女にとって残酷な運命が待ち受けているという事を。

 

「それで、何度も何度も後悔して、あの時あぁしておけばって何度も思った。もしも、人生をやり直すことができればどれだけいいだろうかって……」

 

 これは、なぎさのみならず誰もが思う事。例え、どれだけ充実した人生を送っていたとしても少しぐらいは心の中に渦巻いてしまう願望だ。だが、ほのかはうっすらと笑みを浮かべながら言う。

 

「そうね、確かにそうかもしれない。でも、なぎさは大事なことを忘れてるわ」

「大事なこと?」

「そう、後悔する理由よ」

「後悔する……理由?」

 

 なぎさは、ほのかの言葉の意味が分からなかった。後悔する理由、それはもちろん悔しいからに決まっている。もしも、自分があそこであんな選択をしていたら。もしも、自分にもっと勇気があったら。そんな悔しさが集まって後悔という物に繋がっていく。そうなぎさは思っていた。しかし、ほのかは違うという。

 

「後悔する理由……それは」

 

 その時だ。突然近くにあった本棚が光を放ち始めた。

 

「え?」

「なに?」

 

 突然の光に驚いた物の、多分ふしぎ図書館を何者かが使用したのだろうとすぐに検討が付いた。だが、果たして誰が……その時、本棚から緑色の髪を持った女性が現れた。ほのか、なぎさはその女性の正体を知っていた。彼女もまたプリキュアである。しかし、彼女は確か色々な事情で合流できないはずだったのではと思ったその時、なぎさとほのかの方を向いて女性が言った。なぎさ相手には少しぎこちない顔つきで。

 

「ほのかさん、それから……な、ぎささん……すみません遅れました」

「いいえ、それはいいのだけれど……でもいいの緑川さん?」

 

 緑川なお、ドイツにサッカー日本代表として選ばれて遠征中であった女性だ。といっても、彼女のホームチームはドイツの別の街なので、遠征と言っても小距離なのである。彼女は中学時代、女子サッカー部に所属していた。元々運動神経が高く、それに加えてプリキュアとしての必殺技がサッカーのシュートと似たようなものという事もあって、サッカーの腕前が上達し、中学三年生の時にはキャプテンとして七色ヶ丘中学校女子サッカー部を全国優勝に導き、進学した高校の女子サッカー部でも優秀な成績を残し、それがプロサッカーチームの目に留まりプロ契約を結んだ彼女は、昨年から海外のプロリーグに挑戦中である。

 ほのかは、そんななおがここに来たことについて少々心配となった。何故なら、まだありすからは日本サッカー協会を説得したという話は伝わっていないからだ。なおは、そのほのかの心配に対してあっけらかんとした笑いを浮かべながら言った。

 

「あはは……実は、日本で事件が起こっているっていうのを聞いて、無断で来ちゃった……」

「無断でって……でも、そんなことしたら……」

「まぁ、日本代表を外されるかもしれないし……ドイツのリーグからも怒られるかもしれない……それでも、私はここに来たいと思った」

「すべてを捨てても?」

「捨てるんじゃない……」

 

 その時、部屋に入ってきたのは……。

 

「なおちゃん!」

「なお!」

「なおちゃん!」

「……守りに来たのさ、今度こそ……」

 

 なぎさは、久々になおの顔を見たが、随分と凛々しくなったものだと思った。だが、なにか違和感を感じたのは気のせいだろうか。

 ふと、ほのかの頭に何かがよぎった。何だろうか、今何かとんでもない考えをしようとしていた。死という物を経験してからどうにも神経が研ぎ澄まされてしまっているのか、なんでなおのいたチームの地名を思い浮かべただけでこんなにモヤモヤしてしまうのだろうか。

 しかし、彼女は知らなかった。それが、今回の事件の真犯人であるという事に。それが、全ての元凶であるという事に。そう、転生者という存在はいうなれば子供。その子供を導いた存在、それが転生神。この構図を簡単に示すことのできるある伝承が、ドイツのある町にある。彼、もしくは彼女が裏切られ、その復讐に村中の子供たちを誘拐したという伝承。彼、もしくは彼女が行き場を失った魂たちを集めたという事実。結果、たくさんの恨みつらみ、欲望が結集され、よき世界をもたらした者もいれば、私利私欲のために世界を壊し、人間を殺し、ただただ自己の欲望をまき散らすための存在となってしまった者もある。そう、それはもはや神の所業であったと言えよう。しかし、それは偽造神であったともいえる。その神の名前は……。




 ……実は、あるキャラの名前が決まらず。いっそのこと肩書を名前という事にしようかなと思ったのですが、それだとあるキャラの決めゼリフが締まらないという事に気づいてしまいまして、じゃあどんな名前にしようかなと考えた結果どういうわけかこの名称しか浮かばなくなりまして……。まぁ、大丈夫だよな多分、別に罵っているわけじゃないですし。

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