仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 問題回問題回と言っておきながら、本当に問題回にするやつがあるか。
 実はこの先1.5話ぐらい書けているのですが、実は今回の話に出てくる子関連がかなりややこしくなっているため書きたくても書けないというか、本当に今までのように~の世界前編後編ってまるまる40話くらい使わないといけない話を3話にまとめようとしているというか……。なんか方向性を見失ってる気がするな……と思ってきた今日この頃、この話を見て皆さんがどう思うのか意見が聞きたいところです。では、本編どうぞ。


プリキュアの世界chapter60 最も絶望しやすい魔法少女

「ッ!」

 

 少女はその日、親の経営している喫茶店の手伝いで『とある店』に来ていた。今度、新しく出すケーキを、そのお店とコラボして売り出すため、その調整のために来ていたのだ。そのお店は、洋菓子業界ではそこそこ名前の知れたお店。店員は、オーナーの女性以外は全員が女子高生のアルバイト。元々洋菓子屋以外にも小道具(?)屋、花屋、雑貨屋等々をしていたそうだ。一度閉店したものの、今年になって復活を果たしたお店。そこに並ぶケーキなどの洋菓子は、本場で修行した女子高生が作った物のためになかなかにおいしく。さらに、子役として、そして現在は舞台女優として再ブレークを果たしているとある少女もまたそのお店でよくバイトをしているとのことからもかなり有名になった。

 そんな『とある店』は、今度、二つのお店とコラボして商品を出すこととなった。一つは、上記した喫茶店。そしてもう一つは、このお店と同じく洋菓子屋さん。そちらの店もまた『とある店』と同じように本場で修行をした中学生(他に店を持っているためたまに手伝いに来る程度らしい)を含めた極わずかなメンバーで経営しているという、どこかしらが似ている両者が出会うという事は必然だったのかもしれない。余談だが、ここ最近この店の従業員が平日にも店先に立っていたり、時々同じ少女が二人一緒にいる姿を目撃されたりと、かなりオカルトチックな噂が流れているのだが、それはまた後述しよう。そんな事はさして重要ではないのだ。

 少女は、相棒から近くに異常な魔力反応があることを知ると、すぐさまその店を飛び出していった。彼女の事を止めようとする女の子たちの声、相棒の声も振り切って。

 少女はしばらく走り、ある高架橋の下にまでたどり着いた。周囲を見渡すが、誰もいない。しかし、彼女には分かる。何かが潜んでいるという事が、何かが自分の近くでその寝首を掻こうとしている事実、それを彼女は認識していた。

 

「どこにいるの……?」

≪Master, it is dangerous. Evacuate immediately……(マスター危険です。すぐに退避を……)≫

「ダメ……もしも悪い人がいたら、みんなが……」

≪However, the master's injury has not been cured yet. Fighting in the state of convalescent, also dance at that time……(しかし、マスターのケガはまだ治り切っていません。病み上がりの状態で戦っては、またあの時の二の舞に……)≫

「……」

 

 少女、高町なのははそう言われて、おもむろに懐から赤い球、自らの相棒であるレイジングハートを取り出した。彼女、高町なのはは魔法少女である。プリキュアと同じく、変身して戦う戦闘系の魔法少女。魔導師と自分たちの事を呼称しているそうだ。そんな、魔導師の中でもなのはの魔力量は大きい物であるそうで、現在まだ小学生ではある物の、すでに異世界の軍に就職して、日夜多くの敵と戦っている。しかし、彼女は正式な訓練を受けて軍に入ったわけではなかった。プリキュアと同じように、突然魔法の力を手に入れ、そこから天賦の才を用いて二年間戦ってきた。しかし、訓練を受けていない事、そして二年間ぶっとうしで戦ってきたツケが回り、ある任務からの帰還途中に不意に現れた敵の攻撃を避けることができず、重症。一時は立って歩くことすらもできないと言われるほどの大怪我を負ってしまった。今では、リハビリの甲斐もあって歩けるし走れるし、見た目では依然と変わらない様相を見せていた。だが、度重なる無茶で疲労した彼女の心と、魔導師の心臓といってもいいリンカーコアへのダメージが抜けきることはなかった。リンカーコアとは、魔導師が持っている魔力を放出する臓器の事である。数か月前のケガの際に、その臓器にも物理的なダメージを負ってしまったがために、いわばひび割れたフラスコのようなものとなっている。そのため、その治癒にはまだまだ時間がかかることが予想されたが、それでも彼女が戦場へ向かうであろうことは仲間たちにとっては容易に想像ができたため、無理やり実家へと強制送還、強制療養の最中なのである。そんな時のこの一件である。

 もしも今無茶をしたら自分の命も危うい。そんなことは重々承知だった。だが、もしも謎の魔力を放っている者が悪人だったとしたら、もしもこの街で暴れるのであったら、今自分がいるこの街が、いやこの世界が滅亡の危機に瀕してしまうかもしれない。だが、彼女は知らなかった。敵の目的、それが……。

 

「!」

 

 自分であるという事を。

 なのはの前に現れたのは異形の敵、なのはが今まで見たことがないような敵であった。間違いなく、目の前に現れたそれが、レイジングハートが感じ取った異様な魔力の正体なのだろう。

 

「あ、あなたは……」

「お初にお目にかかる。私は、ファントム……ケツァルコアトルス」

「ファントム……?」

 

 なのはは、ファントムと名乗った怪物の身体を観察する。上から下まで身体中を覆っているその鎧のようなものは、バリアジャケットという自分たち魔導師が使っている服とは違う物、いや全くの別物のようだ。それに加えて、怪物から流れ出ている魔力は、悪意のあって粘り強く自分の身体に巻き付いているかのようだ。自分は、今までたくさんの魔導師に出会ってきたが、そのような魔力を感じ取ったのは初めての事だった。

 

「い、一体何が目的なの?どうして、この街に……」

「街?……確かに、この街にはお前の他にもゲートにふさわしい魔力を持っている人間たちがいるようだが……」

「ゲート……門?」

「しかし、今回の目的は高町なのは、お前だ」

「私……?」

 

 そう言うと、ケツァルコアトルスはゆっくりとなのはに向けて歩みを進める。どういう理由があるのかは分からないが、どうやら狙いは自分の様子だ。なのはは、レイジングハートに言う。

 

「行くよ、レイジングハート!」

≪NO,Master(だめですマスター)≫

「なんで!」

≪As I said earlier. It is dangerous to use magic now. advised here to evacuate(先ほども言いました。今魔力を使用するのは危険です。ここは退避を進言します)≫

「でも!」

 

 敵の狙いは自分なのだ。今逃げたとしても、奴は自分の事を追ってくるであろう。そうなれば、自分の周りの人間にまで被害が及ぶ恐れがある。それに、奴は自分と同じゲートと呼ばれるものが他にもこの街にいると言っていた。もしも、そのゲートと呼ばれた人たちも自分と同じように襲われるのだとしたら、ここで止めなければならない。自分にはその力がある。すべての人達を護れる力が。それを今使わないでどうする。自分の命が危ないという、そんな理由で誰かの命が奪われるなんて御免被る。そう彼女は考えていた。

 

「自分の命に代えても……か」

「!」

「肝心な時になって魔法を使えんとは、それでは魔法使いになった意味がないよな……。まさか魔法を手に入れて自分は何でもできるとでも勘違いでもしたのか?」

「ち、違う……」

「何が違う、逃げなかったことがその証拠だろうが」

「違う!」

「フン、所詮は子供だという事だ。結局お前は何も守れやしない、友も、友の大事な物も、自分自身でさえも」

「ち、ちが……」

 

 なのはは反論する。しかし、確かに怪人の言っている通り、自分は守り切れなかったものが多いのは事実。友の母親を救えなかった。友と将来を共に歩くはずの人間も守れなかったどころか、自分自身がとどめを指した。それに、自分自身も守ることができなかった。何も守れない、何も守れていない、魔法という自分だけの特別な力を手に入れても、何も守れなかったのだ。

 

「何も言えないか、だがそれでもお前は前に進まなければならないのだよ、なにせかつての友と共に歩む人生を犠牲にしているのだからな」

「ッ……ち、違う……アリサちゃんやすずかちゃんとは……今も……今も……」

 

 違わない。自分はこの二年間、普通の学校の生活を犠牲にして時空管理局という組織に入局して様々な世界を回っていた。確かに学校に行くこともたまにはあった。しかし、それもたったの数日。義務教育だから、出席日数が足りなくて留年なんてことはあるわけがないから、学校に行くよりも、誰かの命を助けたいという気持ちで動いていたから、自分の人生を犠牲にして、友達を捨てて。違う、捨てていない。自分は捨てていないはずだ。今でも二人とは仲のいい友達としている。『たまに』地球に帰ってきて、『たまに』学校に一緒に行って、『たまに』遊んでいる。そう、今だってリハビリの『合間』にいろんなところに出かけているのだ。それは、本当に友達といえるのだろうか。親友といえるのだろうか。自分は、友達と名乗っていいのだろうか。小学校を卒業して、中学生になって、その後にもまた自分は今と同じ日々を過ごすのだろうか。

 

「所詮、お前は優越感に慕っていただけだ。友達が決して手に入れることのない力を、家族が絶対に手に入れることもない力を手に入れて、友人を下に見ていた、だからお前は友の事等をないがしろにできたのだろう」

「違う……違う!二人は私の大事な友達だし、お父さんやお母さんやお兄ちゃんやお姉ちゃんも大事な家族で……皆私にない力を持っていて……私には、何も……無かったから……」

 

 かつての自分には母のような抱擁感はなかった。父のように偉大な背中を持っていなかった。兄や姉のような運動神経なんてなかった。アリサやすずかのような将来のビジョンなんてものはなかった。だが、二年前、自分は魔法という物に出会い、自分だけの力を手に入れ、魔法という物に魅了されて、しまいには別世界で魔導師という仕事に就いて、辛くても、苦しくても、自分で選んだ道だから、自分にしかできない事だから、誰にも任せることができない事だからと頑張って、頑張りすぎて大怪我をした。それは、確かに他人をみくだしているこ都に他ならないのではないだろうか。自分は、アリサとすずかを見下しているのではないだろうか。アリサやすずかにできない事だから、それができる自分は凄いと彼女たちに自慢したいだけなのではないだろうか。また、何もなかったあの時に戻りたくなかったから、自分は辛いリハビリを頑張っていたのではないだろうか。誰かを守りたいとか、助けたいとかじゃない、自分はただ、自分のことが大切な自分勝手な人間だったのではないだろうか。

 人は、夢という物をどうやって持つのだろうか。生まれた時に持っている物か、ふとした時に急に懐から湧いてくる厳選なのだろうか。違う、多くの人間を見て、たくさんの仕事を見てこの仕事が自分に合っているのかもしれない。この仕事をすれば、楽しいのかもしれない。そんな考えが生まれて人は夢を持つことができるのだ。そして、その夢を持つには時間がかかる。幼稚園の時の夢は、あまりにも遠すぎて、実際に夢を叶えている人間が1割にも見たない砂漠の中から米粒一つを見つけ出すほどの夢。小学生の時の夢は、少しづつ現実が見えてきてこんな事をしたいなと夢を語り合い、少しづつ現実を知って徐々に夢の幅を狭めていく時期。そして、中学生になってようやくこうなりたいと完全にビジョンが生まれてくる。それは、成長とともに心が強くなって、絶対にこの職業についてやる、この仕事をやりたいという覚悟が生まれる時期だから。だから、多くの人間は中学生の時に夢が決まる。しかし、もしも小学生の時に人生を決めてしまうような大きな出来事に出会ってしまったら。例えば、災害にあい、その際に自衛隊員に助けられたから自衛隊に入りたい、消防隊員に助けられたから消防の仕事をしたいと考えてしまうだろう。そう、それは憧れ。多くの人間は、その憧れを現実にするために努力する。多くの時間をかけて努力する。その中で挫折し、もうだめだと思ってしまうことがあるのかもしれない。だが、それでもあの時のあこがれを現実にしたいという思いが燃えだし、人を突き動かす。どれだけ苦しくても、辛くても、それでも立ち上がって進み続ける。立ち止まり、後ろを向き、あの時助けられなかったら自分はどんな夢を見ていただろうかと一度考えて、でも今の自分はこれなのだと考え直して走り出し、やがて憧れを現実にすることができる。それが多くの人間だ。高町なのはは走りすぎたのだ。魔法に出会い、二つの世界を揺るがす大事件をたった一年の間に解決に導き、多くの人間から感謝され、仕事を紹介され、すぐにその職業へと足を踏み入れてしまった。もうそこから挫折してしまっても、立ち止まっても、後ろを向いても、そこには自分はいない。魔法を知った時のトキメキを知った自分しか存在しない。それ以外の自分なんて存在しない。だから彼女は走るしかないのだ。どれだけ苦しくても、辛くても、それでも立ち上がって不屈の心を見せなければならないのだ。それが、小学生の内に全ての人生を決めてしまった高町なのはの人生なのだから。

 

「違うというなら俺を殺してみろ。そうすればまた今まで通りの生活に戻ることができる。魔法少女としてのお前の人生がな」

「……」

 

 魔法少女としての人生。そう、もう高町なのはとしての人生じゃない。高町なのはとして多くの人間に笑顔を振り撒く人生じゃなく、魔法少女として顔もしらない誰かの事を守る『仕事』をしなければならない。それが、魔法少女高町なのはの人生。残された、高町なのはの余生。辞めてしまったら、もう何もなくなる。ただの高町なのはとしてつまらない人生を過ごさなければなくなるのだ。自分はもう、高町なのはを演じ切るしか方法がないのだ。そんな人生、悲しすぎるではないか。

 

「ッ!」

 

 高町なのはは悲しくなった。高町なのはは憐れに思った。高町なのはは、自分自身が分からなくなった。こんな事なら、魔法になどで会わなければよかった。しかし、魔法がなければ自分は高町なのはではなかった。高町なのはは魔法という不可思議な服を着ている状態なのだから、それを脱いでしまえば自分は裸一貫、何もない素肌の自分となってしまう。

 

≪Confirmed the release of abnormal magic from the linker core. Be sure to have a master mind(リンカーコアから異常な魔力の放出を確認。マスター気を確かに持ってください)≫

 

 レイジングハートが何かを語る。しかし、なのはの心はそれを聴けるほど冷静ではなかった。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」

 

 これは、過呼吸とでもいうのか。いくら吸っても肺に空気が入って行かない。思わず、跪いてしまった。苦しい、気持ち悪い、それに重い。体中が鉛にでもなってしまったかのように体中が重くて、立ち上がることができない。痛い、心が痛い。心が抜き取られてしまうような、思い出が消えてしまうような、黒く塗りつぶされていくような、そんな感覚がなのはを襲った。

 一体、自分に何が起こっているのだろうか。なのははその時、身体の表面を見る。すると、そこにはおかしなことが起こっていた。表皮剝離とでもいうのか。体中がひび割れて、次々と皮膚が細かくなって、剝れて行っている。不思議なことに、身体の中は赤色ではなかった。紫色で、まるで液体か何かが自分の中に詰まっているかのよう。

 

「な、なに……これ?」

「そうだ、絶望しろ……そうすればお前は、新たなファントムを生み出す」

「ファン……トム……」

 

 ファントム、それは確かに目の前にいるソイツが自分の事を話していた時に出た言葉。恐らく、種族の事だろう。という事は、自分もまたソイツのようになってしまうという事なのだろうか。

 

「そう、ファントムは絶望したゲートから生み出された怪物。そして、ファントムを生み出したゲートは、その瞬間に……死ぬ」

「死ぬ……って……」

 

 死。高町なのはは今までたくさんの死に関わってきた。この前など、自分自身が死にかけるような事故に遭った。死ぬ。自分が死んでしまう。まだ、何もできていないのに、まだ守れていないのに。自分は、死んでしまう。

 

「嫌だ……死にたくない」

「フン、だが生きていて何になる?」

「え……?」

「これからお前の事を待っているのは、辛い現実ばかりだ。そんなものを味わいながら生きていくのだったら、今のうちに死んでた方が得じゃないか?」

「そんな……そんなの……」

 

 なのはは嫌になった。ファントムが語った人生にではない。そうなのかもしれないと納得してしまった自分自身の弱い心にだ。こんな弱い自分が、誰かを助けられるのか、誰かを守ることができるのか。その事に高町なのはは不運なことに疑問を持ってしまった。その事実に気がつかなければ、絶望などしなかったのかもしれないというのに。

 

「嫌……そんな人生……嫌だ」

 

 今ここに、新たなファントムが生まれようとしていた。




 プリキュアどころか仮面ライダーすら一人も出なかった。というか、マジで次の次の世界でやる予定の話を先取りする形になっているが、どうするんだ?リリカルなのはの世界は?ネタバレしますと、実は2パターン考えていたうちの没にしたものを書いているのですが、どうしてそれをこの世界でやったのかが大きな謎です。というか、今回この子を救うためと諸々の事情により仮面ライダー、スーパー戦隊と一切関係のないアニメのキャラの参戦とキーワード(魔法)に関連した戦隊仮面ライダーの参戦、さらに前回の森関連で出しそびれた戦隊四人、さらにさらに出す予定じゃなかったあの子たちの参戦と人数が予定よりも多くなる。
 一言言わせてください。なのはどうやって助けるの?というか、なのはちゃん詰みかけてないか?てか、こう書いてみて思う。あの世界、魔境魔窟だ……。

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