仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 今回展開上で「え?なんで?」という場面が多数登場します。これも全て……
尾上タクミって奴の仕業なんだ
 ……本当はまず一つ目に敵仮面ライダーに無理をしないと倒せない奴がいるからというのと、あともう一つは書いている流れでなぜかそうなってしまった。あと、あるキャラが一人歩きしたからというのもあります。というか、ある意味で完璧超人産み出した気がする……。


プリキュアの世界chapter67 なんだか、世界の果てに行ってそうだな

 諸星学園高等学校。そこは、あることを除けば普通の公立の学校であった。

 今から約20年前、この学校に所属していた5人の高校生が、とあるスーパー戦隊に選ばれておよそ一年の間秘密裏に世界と自らの学生生活を守るために戦った。自らの学生としての時間もまた消費しながらも彼らは命を懸けて戦ったのだ。

 しかし、彼らに待ち受けていたのは残酷な運命だった。

 彼らの正体がばれ、そして五人の学生は学校から追われた。彼らは自らが守ろうとしたものから裏切られたのだ。そう言ってもいい。

 彼らを真っ先に守るはずの先生は率先して学校から出ていけと言い、彼彼女たちを仲のよかった友達もまた彼らを非難し、まるで本当の悪者は彼らだったと言わんばかりの迫害に追われたのだ。

 その迫害の輪は恐るべき速さで広がり、ついには何の関係もない学校外の人間にもお前たちがいるから俺たちは命の危機にさらされているのだとわがもの顔でまだ世間もほとんど知らない若者たちの心を傷つけた。それだというのに、いざ敵が現れれば助けてくれという始末。

 だがそれでも彼らは戦った。誰も自分たちの事を迎えてくれないかもしれない。誰も、自分達の事を祝福なんてしない。でも、それでも彼らは前に進んだ。人類を見限った人間に、人類は愚かなのだという人間に、立ち向かった。

 そして彼らは勝った。勝って、無事に学校を卒業することができた。

 だが、この時彼らの心におった傷は相当な物だった。結果、五人中三人は日本を出て海外に渡った。それは、まるで自分たちを迫害した日本という国を見限ったようにも見れるかもしれない。

 だが、私は信じている。彼らは決して日本を、人間を見限ったのではないと。人間を、この歪んだ世界をそれでも信じるからこそ、日本を出て海外で様々なことを学んで、科学によって人を幸せにするのだと信じて出て行ったのだと。

 そしてここにも一人、もう間違ったことを繰り返させないために学校に残った者がいる。誤った考えを持つ者が産まれないように、そして間違った道を歩まないようにと戦っている者がいる。

 そして今、その諸星学園高等学校を舞台とした戦いが繰り広げられようとしていた。

 

「ッ!ハァッ!」

「フッ!よっと!思ったより高~い!」

「フッ!ハァァ!!」

「フッ!ハァッ!」

 

 九条貴利矢、夢原のぞみ、春日野うらら、秋元こまち、そしてスティンガーがデンジマン、仮面ライダーマッハ、仮面ライダーチェイサー、そして多数のライオトルーパーと学校の校庭で戦いを始めていた。

 スティンガーは、ライオトルーパーの四方八方からの攻撃を避け、蹴り倒していく。さらに、さそり座系の出身である彼にはサソリのような尻尾が生えており、途中囲まれながらも自らに生えるサソリのしっぽによって次々と刺し貫いていく。

 貴利矢は、諸星学園の玄関の天井において、側転等をしながら戦い、大体のライオトルーパーを倒し終え、その場から跳び下りる。何か楽しんでいるような気がするのは気のせいではあるまい。

 のぞみとうらら、そしてこまちはともにデンジマンの五人と戦っていた。のぞみは、デンジレッドのパンチを自らの拳で殴り返すと、さらに左足を軸として一回転し力を加えての蹴りをお見舞いする。

 うららは、デンジブルー、デンジグリーンのデンジスティックをスレスレで躱しながら攻撃の機会を狙っていた。しかし、その前にブルーとグリーンは地面にデンジスティックを突き立てる。その瞬間、地面から火花が放たれた。それは、一直線にうららの元へと向が、うららは高く飛んでそれを回避し、そのまま二人の後ろに降り立った。ブルーとグリーンは後ろにいるうららをすぐさま攻撃したが、つかさず二人の腕を掴んで捻り倒されてしまった。

 残ったデンジイエローとデンジピンクを相手にしているこまちは、デンジイエローの放つデンジショックガンによる攻撃をかわしながら近づく。そして、その手を取ろうとした寸前にデンジピンクがデンジスティックを振るってこまちが近づくのを制止した。一度下がって間合いを取るこまち、そしてその隙に並び立ったデンジイエロー、デンジピンクの二人。さぁ、どうするか。こまちの考えは決まっていた。一度深呼吸をして心を整えたこまちは、またも二人に向かって走る。そして再びデンジイエローがデンジショックガンを放つ。それを避けながらまたも二人に近づくこまちだが、行動が同じであれば敵の取る行動も同じもの。デンジピンクが再びデンジスティックを振って牽制するだけである。だが、こまちは避けることなくまっすぐに進み、剣の先が当たる寸前にリンボーダンスのように上体を後ろに反らして二人の間に滑り込んだ。そしつかさず両手を広げて足払いを仕掛ける。イエローとピンクはなすすべもなくうつぶせに倒れこんだ。一方こまちの方はすぐに立ち上がり、倒れこんでのエルボードロップを食らわせ、すぐさまその場から回転しながら離れて、のぞみとうららと合流を果たす。

 一方のデンジマンもまた五人そろった。思えば、多くのスーパー戦隊の基本の配色は自分たちプリキュア5初期のメンバー構成、くるみを除いたメンバーとかぶっている。いつの日にか、こうして戦うことが宿命づけられていたのかもしれない、そうのぞみは心の中で思った。だけど負けない。例え相手が何十年も前から地球を守ってきたスーパー戦隊だったとしても、偽物には絶対に負けられない。のぞみはうららとこまちにアイコンタクトでこの後の行動を伝えると、三人ともがデンジマンに向かって走った。一方のデンジマンは、それぞれのデンジスティックを合わせてデンジブーメランを作りのぞみたちに向かって投げる。デンジブーメランは火花を散らして三人に向かっていくが、しかしそれは彼女たちを止めるには頼りないと言ってもよかった。

 

「二人は下から行って!私は上から!」

「「YES!!」」

 

 のぞみはそれだけを言うと飛び上がってブーメランを踏み台とし、うららとこまちはスライディングによってブーメランの下を通り抜ける。無論、三人に一切のダメージはない。

 武器を手放した今こそがチャンスだ。そう言わんばかりにうららとこまちはまるで鏡合わせのようにお互いの行動をシンクロさせ、それぞれ端にいたピンクとグリーンを上段の回し蹴りで倒したその足で逆回し蹴りを行って隣にいたイエロー、ブルーを倒す。

 そして残るはレッドのみ。のぞみは、空中からのかかと落としをレッドの頭に当てると、さらにその身体が倒れる前に逆方向に回転して着地し、腹部にアッパーカット、そして少しだけ後ろに飛んで間合いを取って見事な旋風脚を決めた。デンジレッドは左に吹き飛んでいき、学校の壁にぶつかると他のデンジマンのようにレンジャーキーに戻っていく。

 

「これで何体目だ?」

「分からない。とにかく同じ仮面ライダーが多いから……」

 

 そう、彼女たちがここで戦い始めてかなりの時間が経っている。しかし、戦っても戦っても一向にその数が減る気配がないのだ。倒しても倒してもライオトルーパーズは増え続け、ついには学校の内部にまで侵入を許してしまった。

 

「とにかく、今は固まって動きましょう!中に入っていった他の人達が出てくるまで」

「そうだな……」

 

 実は、この世界に来ていたプリキュア、仮面ライダーたちはのぞみたちだけではなかった。先ほど、学校の内部にライオトルーパーズが侵襲したと話したが、その侵入したライオトルーパーズによって学生たちに被害がでる可能性がある。そう考えた面々がライオトルーパーズを追って学校の中に入っていったのだ。

 ここでいくらライオトルーパーズを倒したとしても、どうせ次から次へと湧き出してくる。ならば、学校内部にいるライオトルーパーズを全員出してから変身して一気に殲滅したほうが早く終わらせることができるかもしれない。

 そう、今から自分たちが行うのはいわば籠城戦。それも、城の外に出て一人の侵入も許すことなく終わらせなければならない戦い。その事を察した彼女たちは皆、一同に気を引き締め直し、ライオトルーパーズとの戦いに臨むのであった。

 一方の学校の中では複数のライオトルーパーズに混じった仮面ライダークウガ、仮面ライダーアギト、仮面ライダーギルス、仮面ライダー響鬼と、異世界から来た戦士たちの戦いが繰り広げられていた。

 

「ぐあッ!!」

「きゃあぁ!!」

 

 教室のドアを突き破って現れた宝生永夢は、仮面ライダーアギトと戦っていた。その瞬間、逃げ遅れた女子生徒が悲鳴を上げる。

 やはり偽物とはいえ仮面ライダー、一筋縄ではいかない。自分の繰り出す攻撃はどれも簡単に防がれ、少しの隙を見せたらすぐに反撃を受けてしまう。それは、元々の仮面ライダーアギト、つまりは津上翔一の戦闘スタイルをコピーしたからと言えるかもしれない。

 津上翔一の戦闘スタイルはどちらかと言えばカウンター型である。攻撃を止め、好きができたら少ない動きで攻撃を繰り出す。そう言ったものだ。

 腕にある金色のリングもまた攻撃を受け止めるための物であり、もしも相手が本物であったならば生身の宝生永夢の攻撃など、その辺に落ちている木の枝で叩かれるかのようにか細い痛みしか感じない事だろう。

 ともかく、この戦況を何とかしなければならない。ある有名な格闘ゲームであれば、防御を繰り返す相手に対しては投げ技を用いる。またあるゲームでは、攻撃を繰り返してガードをクラッシュすることによって相手の動きを一時的に止めてその間に会心の一撃を繰り出すという方法があるのだが、あいにく相手はゲームのキャラなのではないためそれはできない。

 ここで、宝生永夢が決めた作戦は至極簡単でかつ、行き当たりばったりな物であった。つまるところ、ゲーマーの勘というものに頼るという物だ。果たして、それが吉と出るのか凶と出るのか、彼には分からない事ではあったがしかし、これ以上戦いを長引かせると、体力の消耗から相手のほうに分があるのは明らかである。

 永夢は、立ち上がるともう一度アギトへと立ち向かう。

 

「フッ!ハァッ!!」

 

 宝生永夢の攻撃、アギトはそれを左腕で受け止める。その瞬間に宝生永夢は左足を上げてアギトの腹部を蹴ろうとした。しかし、アギトはそれを予見していたように脇で足をがっちりとロックし、永夢の動きを止めた。

 そして、アギトは上体を後ろに反らしていき、永夢の身体を持ち上げ、近くにあった机の上に勢いよく叩きつけた。

 永夢は肺の中にあった空気が全て出て言ったような感覚と、背中に大きな激痛を感じる。しかし、それでアギトの攻撃は終わらない。さらにアギトは腕を振り上げて永夢にとどめを刺そうとした。その時、教室に一人の男性が入ってくる。

 

「永夢!」

 

 ゴーカイジャーのジョー・ギブケンである。ジョーは手に持ったゴーカイガンをアギトに向けた。

 

「ッ!」

 

 が、それを放つことなくゴーカイサーベルに持ち替えると、アギトに斬りかかる。だが、それすらも防がれ、さらにカウンターパンチまで喰らってしまう。

 偽物のヒーローたちは、元々の世界で戦っていた記憶やその戦いで得た経験がないはず。それなのにどうしてここまでこのアギトがここまで強いのか。理由は明白である。元々アギトとは戦い始めから完成されていた仮面ライダーだった。既に仮面ライダーである男と言われるほどに。そのため、経験や津上翔一として強さがなかったとしても、元々からの強さが表面に出ているのだ。

 

「ッ!やるな……」

 

 ジョーは、後ろに下がると、再びゴーカイサーベルを構える。その間に永夢はアギトから離れ、教室の外側の窓の下で蹲る。

 どうするか、飛び道具が使えない状態で、接近戦に強いアギトとの戦いはかなりきつい。剣の腕に自身のあるジョーではある物の、同じくこちらの世界に来ていたハカセやアイムからもう一つの剣を借りてこなかったために得意の二刀流も使えない。ちょっとやそっとの攻撃が通用したとしてもアギトは恐らくカウンターを仕掛けてくるはずだ。あのカウンターを潜り抜けて、致命傷となる一撃を与えなければならない。さぁ、どうするか。

 その時だ。

 

「これでも食らえ!!」

 

 教室の外から現れた一人の男性が、消化器の消火剤をアギトにかけたのだ。その結果、辺りは霧が立ち込めたように消火剤が舞い始める。

 

「二人ともいまだ!」

「なにッ!」

「そうか!見えなければッ!ハァッ!!」

 

 見えなければ、攻撃を防ぐこともできない。ゲームでよくある『暗闇状態』という物だ。永夢は、その男の真意に気がつくと、すぐさま立ち上がり、アギトがいた位置に向けて右足を振り上げて回し蹴りをする。これは、アギトが少し位置を変えていてもいいようにするためだ。普通の蹴りや跳び蹴りは、少し位置がずれているだけでも効果は薄いし、その瞬間に位置がばれてしまう恐れがある。しかし、回転蹴りであれば、少なくとも前180度はカバーが可能。そして、当たりさえすれば……。

 

「当たった!ジョーさん!そっちに!」

「あぁ!」

 

 当たった。この感触からすれば、恐らく左側にいたジョーの方にアギトを寄せられたはずだ。その考えを読み取ったジョーは、すぐにゴーカイサーベルを構える。そして……。

 

「そこだ!」

 

 一瞬だけ、霧に中からアギトの金色のボディが見えた。永夢の攻撃によって隙ができたアギトは、ジョーの姿を捉えることができていたとしても、今度は防ぐことはできない。ジョーは二度、右斜め上、左斜め下からアギトを斬る。そして、最後に横一文字に回転切り。

 アギトはそれに耐えることができず、崩れ落ち、一枚のカードとなった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「ふっ……」

 

 二人、いや三人の連携でアギトを倒すことができた。しかし、それと同時に考える。自分たちを助けてくれた男性は何者なのだろうかと。

 ジョーが剣を振った風によって切れた霧の向こう側から、その答えとなる人物が現れた。男性は、座り込んだ永夢に手を差し出すと言う。

 

「いいコンビネーションだったぜ」

「あの……貴方は?」

「俺か?ヘヘッ、俺はこの学校で教師をしている。電磁戦隊メガレンジャー、万能戦士メガレッドの……伊達健太だ」

「伊達……健太?」

 

 伊達健太。電磁戦隊メガレンジャーとして邪電王国ネジレジアから学校を、世界を守った戦隊の赤い戦士だった人間だ。当時高校生であった彼も、今は母校諸星学園高校の先生、そして自分たちが所属していたデジ研の顧問をしている。なお先ほど、この学校在学中に戦隊、つまりメガレンジャーとなった者たち5人は無事卒業したと述べた。確かに彼らは卒業することはできた。しかし、彼のみ進学先も就職先も決まらず、浪人生となってしまったという事実は秘密だ。

 

「おう!お前のことはよく知ってるぜ、天才ゲーマーM。俺と同じで、ゲームが得意だから戦士に選ばれたってな」

「え?それじゃ、健太さんも?」

「あぁ!」

 

 そう、実は健太はメガレンジャー他の四人と違い、ただ一人正式にスカウトを受けてメガレンジャーとなった人間なのだ。

 『メガレンジャー』という名前のゲームによってゲームセンター荒しを追い払った。その時の様子を、メガレンジャーの関係者に見られていたのだ。要は、ゲームが得意だから伊達健太はメガレンジャーに選ばれたという事だ。一応、宝生永夢も宝生永夢で、実際にはかなり根深い理由も見え隠れはしている者の、確かにゲームが得意だからという理由で選ばれたという理由にも一理あるため、健太と同じと言っても過言ではないのかもしれない。

 

「久しぶりだな」

「おう!確か、ジョーだったか?」

「あぁ」

 

 ゴーカイジャーは、以前メガレンジャーの大いなる力をもらい受けるためにこの学校に来たことがあった。その時に、彼と出会っていたのだ。その時は、メガレンジャーの大いなる力を貰うために、ゴーカイジャー6人は制服を着て、一日限りの学生生活を送っていた。と言っても、それぞれに勝手に動き回っていて、ジョーはアイムと共に青春を満喫している一組の甘酸っぱい男女を遠くから見てりしていただけなのだが。

 

「さっきはありがとな!」

「何?」

「あの仮面ライダーの後ろに逃げ遅れた生徒がいたから、お前は撃たなかったんだろ?」

「……」

 

 先ほど、ジョーがゴーカイガンを構えた先。アギトの向こう側には、逃げ遅れた女性とが数人いたのだ。もしも弾を撃って、アギトに当たればいいが、もしも避けられてしまえば女生徒たちに被害が出てしまう。そう考えたためにジョーはゴーカイガンによる攻撃を避けて、ゴーカイサーベルでの攻撃に切り替えたのだ。

 

「勘違いするな、俺は銃よりも剣のほうが得意だっただけだ」

「そう照れるなって!」

「照れているわけじゃない。それより……」

「お?」

 

 その時、教室の外から複数のライオトルーパーズが侵入してきた。見ると、まだまだたくさんのライオトルーパーズがいるようだ。

 

「どうやら、休んでいる暇はないみたいですね」

「あぁ、行くぜ!この戦いが終わったら、ゲームで勝負だ!」

「!受けて立ちます!」

「行くぞ、ハァッ!!」

 

 ジョーたちが学校の中で戦いを始めていたその時、中にはの動物小屋の目の前では、また別の者たちが戦いを繰り広げていた。

 

「フッ!ヤァッ!」

「うわぁぁあ!よっと!ハッ!」

「ハッ!参ります!」

 

 ハカセ、アイム、そして山吹祈里である。彼らは、高速戦隊ターボレンジャー、そして仮面ライダーゴーストと戦いを繰り広げていた。

 祈里は、レッドターボのGTソードを避け、腕を取って地面に地面に一本背負いで叩きつける。

 ハカセは、ブラック、ブルーの攻撃をコミカルな動きで避けると、空中で一回転して二人の後ろに周り、ゴーカイガンを放つ。

 アイムは、イエローのBボーガンの攻撃をゴーカイサーベルで撃ち落とすと、ピンクのWステッキによる攻撃をさらにゴーカイサーベルで受ける。そして、無防備となった腹部にゴーカイガンの乱れ撃ちを決めた後、すかさずピンクの影から言えろーに向けて弾丸を放つ。これで高速戦隊ターボレンジャーは沈黙した。 

 

「ターボレンジャーさんたちのレンジャーキー、回収しました」

「これで後はライオトルーパーズと……」

「仮面ライダーゴーストって人……でもどこに?」

 

 この戦いを始めた時には確かにいた仮面ライダーゴーストではあるがしかし、彼らがターボレンジャーと戦いを始めたころには姿が見えなくなっていた。どこかに逃げたわけではないはずだ。しかし、どこに行ったのか。

 三人は、互いに背中合わせとなってゴーストがどこから来ても対処できる陣形を取る。これで、ほとんど死角はないはずだ。

 今見えるのは、周囲を囲んでいる学校、中庭に生えている大小さまざまにある木、それとウサギ小屋ぐらいか。果たしてどこからくる。どこから……。

 

「気配は感じます……けど」

「一体、どこにいるんだろう?」

「この背筋が凍るような感覚は一体……」

 

 間違いなくこの近くにはいるはずだ。しかし、気配はすれど姿は見えず。背筋が凍るような感覚に、何か鳥肌が立つような感覚。あたりの空気が一変し、冷えてしまったかのような感覚が彼女たちを襲う。

 耳に草木が揺れる音、鼻にはウサギ小屋の動物特有の匂いが蔓延する。そこまで神経を研ぎ澄ましているというのに、どこかにいるはずのゴーストの気配は感じ取れなかった。

 どこに、どのように、そしていつ姿を現すのか、無限のように感じる時間がその場に流れ始める。少しでも集中力を切らす時間が与えられることがなく、極限状態を強いられる。

 一筋の汗が、水玉となって落ちそうになる。その瞬間であった。

 

「三人とも!後ろだ!!」

「え!」

「ッ!」

 

 後ろ、しかし後ろは他の人達によって死角になる場所はないようにカバーされているはずだ。いや、三人ともとはどういうことか、三人共通する後ろと言えば、人っ子一人入ることができないであろう隙間しかない。いや、確か敵は……。そう三人が一瞬で思案し田瞬間、ハカセはそのかたに異様な重さを感じた。

 

「うわぁぁ!!」

「後ろに飛んでください!」

「はい!!」

 

 アイムのその言葉に、祈里、そしてハカセもまた肩の上にあった手を払いのけると後ろへと跳んだ。そう、相手は仮面ライダーゴースト、姿を消すこともでき、どこでも通り抜けることのできる能力を持った相手だ。

 

「この!」

 

 しかし姿を現したのならこっちの物、ハカセは、すぐに手持ちのゴーカイサーベルからフックをゴーストに向けて投げる。フックは、ゴーストの周りを一周して彼を縛った。

 

「よし!」

「いえまだです!」

「ッ!」

 

 これでゴーストは動けないはず。そう思ったが、ゴーストはすぐに姿を消してフックから逃れた。

 

「また姿が見えなくなっちゃった……」

「どうしよう……」

「慌てるな。まだ近くにいるはずだ」

「あ、あなたは確か……」

 

 先ほど自分たちに声をかけた男性。その姿をはっきりとみたアイム、そしてハカセは思い出した。その男性の正体を。

 

「知合いですか?」

「はい、この方は……」

「俺は獅子走、獣医だ」

 

 獅子走、百獣戦隊ガオレンジャーのガオレッドとしてオルグから地球に住むすべての命を守った男だ。そんな彼は現在、というよりも当時から獣医としてたくさんの動物たちを治す職を続けている。ゴーカイジャーが地球に来た際、ガオレンジャーの代表としてであったのが彼で、その時はアイムとハカセの二人と相対し、ゴーカイジャーの事を認めてガオレンジャーの大いなる力を渡した。

 

「貴方も獣医何ですか」

「そう言うってことは、君もか?」

「はい、父の医院で……まだまだ半人前ですけどね」

「いや、立派に働けてるってことは、それはもう一人前だってことだ」

「ありがとうございます」

「二人とも、そんな話をしている場合じゃないよ!」

「まだゴーストさんの居場所がわかりません……一体どうすれば……」

 

 そう、ゴーストの姿を再び見失ってしまった今、その姿を見つけなくてはならない。しかしもしも見つけられたとしても再びその姿を消されてしまったら通る攻撃も通らなくなる。果たして、どうすればいいのか。

 その時、走は、ニヤリと笑って言う。

 

「大丈夫だ。俺に考えがある」

「え?」

 

 そう言って走は、小屋の裏側に回る。そして戻ってくると、その手にはリードを持ち、その先には犬が二匹繋がっていた。

 

「この犬は?」

「今日俺はこいつらの健康診断のために来ていたんだ。知ってるか?犬ってのは人間の何倍も嗅覚があって、おまけに動物には危機察知能力が人間の何倍も備わってるんだぜ」

「知ってますけど、それが……まさか」

「その、まさかだ」

 

 まさか、犬にポインターさせるつもりなのだろうか。だが、例えそれができていたとしても普通獲物に対してポインターができるのは、猟犬として訓練された犬ぐらいではないだろうか。

 

「大丈夫なんでしょうか?」

「……もしかしたら、大丈夫かもしれません。動物は私達人間が考えるよりもその内に秘めたる力を持っているはずですから」

「あぁ、頼んだぞ」

 

 そう走に促された犬は、地面の匂いをかき始めた。どうやら、本当にゴーストを探してくれているようだがしかし、ここでアイムが一つ気がついて走に聞いた。

 

「けれど、もしもゴーストさんが見つけられたとしても、どうやって倒すんですか?」

「そうだよ、すぐに逃げられて……」

「そっちも大丈夫だ。実は、頼りになる仲間が一緒に来てる」

「仲間?それって……」

 

 ガオレンジャーのお方ですか?そうアイムが聞こうとしたその瞬間、犬が何もないところに向けて吠え始めた。という事は……。

 

「そこか!」

 

 走は、その方向に向けて石を投げた。その瞬間、その場にオレンジ色の仮面ライダー、ゴーストが姿を見せた。そして……。

 

「今だ!」

「チェック!」

≪exceed charge≫

「え?」

 

 その瞬間、青い三角錐状の波のような物がゴーストに突き刺さった。どうやら、ゴーストは動くことができないようだ。そして……。

 

「ハァッ!この!」

 

 体育館では、尾上タクミが一人で仮面ライダーガタック、ザビー、パンチホッパー、キックホッパーと戦っていた。しかし、どう見てもそれは防戦一方であった。なにせ一対四という圧倒的な不利な状況なのだ。元々一人で複数のオルフェノクとも戦う機械のあったタクミだからこそ、ここまで持ちこたえることができているが、しかしこのままではまずい。

 

「はぁ、はぁ、まずい……このままじゃ……」

 

 その時、背後から仮面ライダーザビーがザビーゼクターから針を飛ばした。タクミは、それにまったく気がついていない。このままでは針が無情にもタクミの背中を貫いてしまう。だが、その時である。

 

「危ない!」

「うわ!!」

 

 一人の男性がタクミの命を救った。その身を投げ出して彼を倒したのだ。針はそのまま、タクミの目の前にいたキックホッパ―へと当たる。

 つかさず、さらに三人の女性、いや一人は男性のようだ。三人の男女がタクミの元に駆け寄った。

 

「大丈夫!?」

「はい……えっと、貴方たちは確かあの世界にいた」

「えぇ、知念ミユキよ、それから……」

「来海ももか」

「明堂院さつきだ」

「そして、俺は番ケンジだ。危ないところだったな」

「あ、はいありがとうございます」

 

 PC計画、その一巻として人工コミューンツヴァイによって変身し、戦っていたプリキュアの知り合い四人衆(内二人は兄妹姉妹)である。そう、実は彼らもあの場所でもう一人と共に遠藤止に立ち向かっていたのだ。因みに、そのもう一人はというと……。

 

「ん?そういえば、彼女は?」

「え?あれ?そういえばどこに……」

「私は、ここよ!」

「!」

 

 体育館の二階、そこに現れた一つの影。太陽を背にして手すりの上に立ち、一階にいる者たちを見下ろしている女性。その立ち振る舞いはまさにその道を究めし者と言ってもおかしくはないほどに勇敢で、名状しがたい圧迫感を放っていた。その女性の名は……。

 

「芸能界のトップバラドルにして、これからトップアイドルに返り咲く美少女!一条らんこ!見参!!」

 

 お前かい。というか、お前も人工コミューンツヴァイに選ばれし者の一人だったんかいという、彼女の事を知っていてかつ、この計画について知らなかった者がいれば言うはずであるごくごくありふれたツッコミがありそうではある物のしかし、紛れもなくトップバラドルとしてフロントランナーを走っている勇猛果敢なコメディアン、一条らんこの姿がそこにはあった。

 

「とぅ!!」

「あっ、危ない!」

 

 らんこは、手すりから跳び下りた。少し格闘の心得がない者がそのようなことをすれば、下手をすれば骨折してしまう恐れすらもあった。だが、着地したらんこは微塵もそんな様子もなく仮面ライダーたちの中心へと突き進んだ。

 

「こんなの、スタッフがバンジージャンプの計算を間違えて地面に足がついた時に比べたら蚊に刺されたような物よ!」

「えっ?」

「え?」

「えッ?」

「それは……すごいね」

 

 ようは、バラエティの乗りを知ってるものからすれば、このような運動は大したことがないという事だ。というか、実は彼女について四葉ありすが極秘裏に行った健康診断で驚くべきことが判明しているのだ。

 なんと彼女、元プリキュアや注射器などで直接体内に入れる、もしくはプリキュアから産まれた人間ぐらいしか持っていないPC細胞をその体内に持っていたという。それこそ、本当にプリキュアとして戦っていないと手に入らないであろう量のである。

 今までも、プリキュアと関係のない女性たちからPC細胞が検出されたことはあった。しかし、それでもそこまで多いということはなかったために、検査では写ることはなく、そもそもPC細胞自体よく検査をしなければただの白血球と同じ形をしているために気がつかれることはなかった。しかし、らんこのはその限りではなく、これは異常事態と言っても差支えのないほどであったのだ。

 その原因不明の事態に、ありすは困惑し、彼女についてどうしようか悩んだ挙句、ほのか等のごく限られたメンバーにだけこの事実を伝え、その対応を協議、結果来るべき時にらんこにも人工コミューンツヴァイを渡そうという判断になった。

 そして今回の事態に際して、ありすはらんこにある自分の中で画策している計画といっしょに、PC計画についての話を伝え、協力者となってもらったのだ。なお、PC細胞についてもその時に伝えて聞いたらんこはただ一言。

 

「へぇ、だったらもっとバラエティで無茶もできるんだ」

 

 どうしようかな、こっちの世界も気に入ってるし、とまでいったそうだ。今までのらんこのバラエティ活動を見てみると、どう考えても怪我をしてもおかしくないようなバラエティロケに出されているというのに一切ケガをした形跡がなかった。これは、ただらんこが頑丈であるだけだと考えられていたが、実はPC細胞の能力であったのだ。逆に、どうしてそこまでPC細胞があるというのにプリキュアにならなかったのかが不思議ではあるが。

 

「ふッ!ハァッ!!そりゃぁ!!」

「す、すごい……」

 

 らんこは、四人の仮面ライダーに対して、数の差などないかのように様々な動きを見せる。その動きは空手、合気道、カポエラー、功夫、テコンドー、ジークンドー等々多数の格闘技の技が混ざった物であった。

 

「フフッ……番組の企画で一年間世界格闘技武者修行の旅に出ていてよかったわ」

「……」

「……」

 

 もはや何も言えない。というか、もはやそれはバラエティという概念を超えているのではないだろうか。因みに、この一年間世界格闘技武者修行の旅という物は、四葉テレビが企画したものである。最初はプロヂューサーの冗談だったらしいのだが、それを真に受けたらんこが自ら世界中の格闘技について調べ上げ、各国に短くて1週間、長くて一ヶ月ほど滞在し、各国のバイトや生活なども経験しながらそれぞれの格闘技について学んでいくという番組であったそうだ。もう一度言おう、それはバラエティという概念を超えているのではないだろうか。

 

「あの人、凄い……よし、僕も……うおぉぉぉぉぉ!!」

「なに?」

 

 タクミは、立ち上がると雄たけびを上げながら仮面ライダーへと向かう。そのさなかに、タクミの身体が変化し、灰色の身体をもつ怪人の姿となった。

 ウルフオルフェノク。尾上タクミは、元の自分の世界でオルフェノクでありながら、同じオルフェノクと戦っていた人間なのである。

 

「フッ!ハァァツ!!」

「あの子……」

「……俺たちも行くぞ!」

「おう!」

 

 ウルフオルフェノクは、その手についた爪で仮面ライダーガタックと戦うらんこの加勢に加わる。その姿を見て一瞬だけ驚き立ち止まったが、それに続く様にさつきたちもまた他の三人の仮面ライダーと戦いを始めた。

 

「貴方それ……」

「僕は、オルフェノクっていう怪物だ……それでも、一緒に戦ってくれるかい?」

「……私は何にも知らないから何も言えない!でもね、オルフェノクっていうのが何であっても、心が通じ合えばどうってことないでしょ!」

「そう言う事だ。敵としていつきと戦っていた熊本だって、心を開けばただの人間だった。タクミの姿がどれだけ変貌しようと、その心がタクミという少年のままであったなら問題はない」

「伊達に、ラブやせつなたちの先生はやっていなかったの、一目見ただけで貴方がとても優しい人間だってこと分かるわ」

「皆さん……ありがとうございます!ハァァァッ!」

 

 もちろん、ここで自らの秘密を暴露しなくてもよかった話。そもそも別世界の人間の話なのだから、彼女達には関係のない話ではあった。しかし、それでも明かしたかったのは自分のためでもあった。

 タクミは、プリキュアの世界に来る前に渡から聞いていた。プリキュアという物達はとても心優しく、例えどれだけ姿や形が変わった人間も、例え誰からも好かれたことのない人間でも時に話し合い、時に反発し合いながら分かり合える人間ばかりなのだと。その言葉を聞いた時、タクミは思ったのだ。そんな人たちに自分の本当の姿を隠してもいいのだろうかと。本当の事を言わないで一緒に戦ってもいいのだろうかと。

 自らの正体を隠して接して、傷ついた一人の少女。色々あって仲直りもしたが、その時の記憶はタクミの頭に鮮明に残っていた。その子もまた心の優しい少女で、とても活発な少女だった。彼女のような思いを他の、それも別の世界の少女にさせるぐらいだったら、最初から自分の正体を明かした方が良いのかもしれない。そうタクミは考えたのだ。

 そして、結果彼女たちは心が広かった。プリキュア本人というわけではない物の、しかし、プリキュアと十年以上接していた彼女たちの言葉は、心強い物だった。これで心置きなく戦うことができる。タクミは、胸を張って仮面ライダーとして、オルフェノクとしてそして人間尾上タクミとしての戦いを始めることができたのだ。

 その戦い、冷静に考えてみれば六人中三人は元々一般人、格闘かのさつき、オルフェノクのタクミ、そしてバラドルのらんこの三人以外の番、ミユキ、ももかは一般人であるため戦いには不慣れなはずだった。しかし、蓋を開けてみれば不慣れであるどころか三人はさつき達とも遜色がないほどにまで戦えている。これが流れに身を任せるという物なのだろうか。武術の心得という物も何もないはずなのに、次にどのように動けばいいのか、どう攻撃すれば致命的であるのか、それらが戦いの中で瞬時に頭に入って来るのだ。

 それはタクミのもたらした追い風と言っても過言ではない。恐らく、誰にも知られたくないであろう秘密を話してくれた勇気と、自分たちの事を信頼してくれたという誇らしさが、彼らに絶対に勝たなくてはならないという使命感を与え、その動きを活発にしているのだろう。

 

「今だ!」

「これで!」

「終わりだ!」

 

 そして終幕、最後の攻撃は四人の仮面ライダーに対して六人全員が、まるで示し合わせたかのように六人同時にクリーンヒットし、四人の仮面ライダーの身体は沈み、その身体をカードに変えた。

 

「よし、これで……」

「うん、体育館は大丈夫だね」

 

 ウルフオルフェノクは、再びタクミの姿に戻る。そして、壁に立てかけてあったファイズのベルトの入ったスーツケースを持ち上げると、また別の場所を目指そうとする。その時だ、一人の仮面ライダーが体育館に現れたのは。

 赤い目に、黒い身体、そして白いラインがいくつも入った仮面ライダー。その姿に、タクミはなには既視感のようなものを感じる。

 

「あれは……ファイズ、に似ている?」

「……」

「何人だって相手になるわよ!来なさい!」

 

 しかし仮面ライダーは何も行動を起こさない。その顔は、常に尾上タクミの顔を凝視していた。

 

「僕……?」

「……」

 

 そして仮面ライダーは、タクミの持っているスーツケースに一度目を向けるという。

 

「お前が、タクミだな」

「え?」

「言葉を話した?」

 

 今までに彼女たちの前に現れた仮面ライダー、戦隊の偽物は皆心がなく、無口一辺倒でった。そんな中で、しゃべる仮面ライダーが現れた。もしかするとこの仮面ライダーは……。そう考えていた時、仮面ライダーはさらにタクミに言う。

 

「どうなんだ?お前は、尾上タクミって名前なのか?」

「……うん、僕は尾上タクミだよ」

 

 どうやら、タクミに用がある様子だ。

 

「そうか……尾上……お前は、何のために戦っているんだ?」

「え?僕の戦う理由……」

「……」

「……」

「……」

「……友達の夢を守るため……かな」

「夢……」

「うん……」

 

 元の世界、スマートブレインハイスクールの同じ写真部に所属している女の子。その子の夢は写真集を出すことだ。本人はただの夢だと言っていたがしかし、それはオルフェノクとして生きる道しか与えられず、遠くない未来に死んでしまうという運命から逃れられないタクミにとって生きる糧となるのに十分なものになった。

 

「ぼくがいいと思ったものを、彼女もそう感じた。それだけのことが泣きたくなるくらい、大切だった……だから、僕は守ると決めたんだ、彼女の夢を、そしてそれを見届けることが、僕の夢になったんだ……」

「夢……か」

「……それより、そのファイズに似た姿は……」

「あぁ、そうだな……」

 

 そう言うとその仮面ライダーは、ベルトの右に刺さっている銃を抜いた。その瞬間、青い光と共にその姿が消え、一人の男性の姿が現れた。

 

「俺は三原修二、仮面ライダーデルタとして、こっちでオルフェノクと戦っている唯一の人間だ」

 

 三原修二、流星塾という塾出身の彼はデルタギアをある人物から託され、仮面ライダーデルタとして変身しオルフェノクと戦った男である。当時は、戦いになれていなかったこともあって敗北すること、逃げ出してしまうようなことも多かったが、それから15年の時を経て、一人前の戦士となったのだ。今では、唯一この世界に残った対オルフェノクの対抗手段である仮面ライダーデルタによって戦っているのだ。

 

「十年以上前に、こっちの世界のファイズ、乾巧と一緒に戦っていた……」

「乾巧、それがこの世界の……その巧って人は今?」

「……渡から聞いていないのか」

「え?」

「乾は……15年前のオルフェノクの王との戦いのすぐ後……オルフェノクとしての寿命が尽きて、死んでしまった……」

「……」

 

 三原は、左手を見つめながらそう言った。そしてその手を握りしめると、意を決したように言う。

 

「尾上、オルフェノクは、人間の理を超えた進化の結果、寿命が短い……もしかしたら、君の守る女の子の夢を見届けることもできないかもしれない。それでも、お前はその子の夢のために戦えるか?」

「……」

 

 知っている。オルフェノクの寿命が短いという事も、もしかしたら彼女の夢が叶う瞬間を見れないかもしれないということも。それでも……。

 

「それでも僕は戦う……彼女の夢が叶う瞬間を見たいから……もしも、僕の命が尽きたとしても、彼女の夢は続いていく……だったら、戦うことができる」

「夢は呪いと一緒だって、言った人が昔いる……お前の夢という呪いを、その子に背負わせることになるかもしれない、それでも……」

「大丈夫。夢を持つ人はすごく熱くなることができる。その人にとっては、夢は呪いなんてものじゃなくて目標にすることができる、希望だから……彼女なら大丈夫です。僕の呪いだって、背負って生きていくことができます」

 

 夢という物は結局は自分のためにしかならない。誰かの夢を叶えたいと願い、行動してくれるような奇特な人間はまずいない。他人の夢がもしかしたら自分の夢を潰すのかもしれない。自分の夢が、たくさんの人たちの夢を潰すのかもしれない。そう考えた時、人は行動に移すことができるだろうか。夢とは結局は呪いなのだ。一度持ってしまえば、あとは二択、それを叶えた達成感を得ることができるか、それとも叶えられない、無駄な時間を過ごしてしまったという絶望を感じるだけか。叶えられなかった夢は、そのままその人間の心の中に住み着き離れることもなく、また叶えられたとしても、その夢が自分の思った形じゃなくて絶望して、でも自分が昔から叶えたい夢だったから、もうこれしか自分の道がないからと無理やりにでも進んで、心を蝕んでいく。だが、そこに他人の思いが乗せられたら、夢は呪いという呪縛から解き放たれることができる。確かに夢は自分のためにしかならない。でも、誰かはそうとは思わないかもしれない。その夢は、その人だけじゃない。自分の事を、また別の誰かを変えてくれるかもしれない。そんな希望が一つあるだけで、人は夢を持つことに勇気を出すことができる。その時、たった一人だけで生きているという呪縛から逃れることができる。その時、人は他人という存在がいるすばらしさを改めて感じることができる。人に夢と書いて儚いとは良く言った者だ。人の夢は簡単に散って、呪いとして刻み込まれてしまうのかもしれない。だが、ここに一つだけ盲点がある。人に儚いと書いて夢、されどぎょうにんべんに夢と書いた、複数の人が集まった夢には付けられた文字がないのだ。確かに、ぎょうにんべんは道に関する漢字であるため、人とは一切の関係がないと言えるのかもしれない。だが、昔の人は信じたのではないだろうか。確かに、たった一人で叶える夢は儚く見えるのかもしれない。しかし、たくさんの人たちが集まって、支える夢は決して儚く散ることはない。夢幻のようにみえる果てしない夢の道かもしれないが、それでも一人ぼっちにならずに、多くの人たちで共に歩むことができれば、必ず夢をかなえることができる。その事を、未来にまで教えてくれているのではないだろうかと。

 

「……そうか……よかった」

「え?」

「いや、お前がファイズでよかったって思っただけだ……行くぞ、尾上」

「……はい!」

 

 彼らは行く、一人の女の子の夢を守るために、この学園の子供たちの夢を守るために。

 

「ハァッ!」

「そらぁ!!」

 

 外で戦っているのぞみたち。その目の前にライオトルーパーズ、そしてそれと同時に学園内部で戦っていた者たちが現れる。

 

「皆!」

「どうやら、学園の中の敵は全て排除することができたようだな……」

「はい!後は、ここにいるライオトルーパーズを倒すだけです!」

「おっし!ここからは変身して……」

「あっ……」

「え?」

 

 それぞれが変身するためのアイテムを取り出した瞬間である。人工コミューンツヴァイ所持者たちが、総じて声を上げた。

 

「どうしたの?」

「いえ、その……」

「これは……人工コミューンツヴァイが壊れていますね……」

「これは、すぐには直すことはできないよ……」

 

 今気がついたのだが、5人の持っている人工コミューンツヴァイが大きなひびが入ったりして壊れているのだ。恐らく、遠藤止の攻撃を受けた時だろうか。これでは彼女たちは変身することができない。先ほどまでの戦闘とは違い、ここからはもっと激しくなる。一般人も含まれている人工プリキュアチームでは、これ以上の戦闘は難しいのかもしれない。

 

「しょうがない……俺たちはここでリタイアか」

「そんな!ここまで戦ってきて!」

「あっ、そうだもしかしたら……」

 

 その時、何かを思い出した永夢は、懐からカードを取り出し、五人に手渡す。

 そのカードにはそれぞれ赤、青、黄、緑、桃の仮面ライダーの姿が描かれており、何故だか、温かみのようなものを感じた。

 

「それは、超スーパーヒーローカード、仮面戦隊ゴライダーのカードだ」

「ゴライダー?おい永夢、なんだよそれ」

「え?貴利矢さん……そっか、あの時の記憶は……」

 

 仮面戦隊ゴライダー、以前永夢がある事件の際に手に入れたカードから生み出される戦隊で、彼らは特定のある人物が変身する仮面ライダーというわけではないというのが特徴である。今までに、仮面戦隊ゴライダーに変身したことのある人物は十人おり、永夢、そして九条貴利矢もまたゴライダーに変身したことのある人間だった。しかし、貴利矢はどうやらその時の記憶がない様子である。実は、仮面戦隊ゴライダーとなった人間の中で、実際に現実的に生きている人間と言えるのは、宝生永夢、そして仮面ライダーブレイドである剣崎一真のみであるのだ。他の面々はゲーム世界のキャラで、現実の人間でなかったり、死人だったりしていてそもそも本物であるかも怪しい。九条貴利矢もまた、今はこうしてここにいる物の当時もそして今ですら半死人と言ってもおかしくない現状だ。結局九条貴利矢が変身したのはあのゲーム世界での話で彼もまたNPCとして選ばれただけのキャラクター、彼が死んでからこの世界の復活するまでの間の記憶は残っていないのかもしれない。永夢、その事に少しがっかりして肩を落とした。しかし。

 

「て、忘れるわけないだろ?あの神になる前の壇黎斗と戦った時の事だろ?」

「え?」

「あれ?乗せられちゃった?」

「貴利矢さん……」

「どうやら壇黎斗は他の三人とは違って、俺だけはプロトガシャットの中にあったデータを使ったらしいな。あの世界からはじき出された時、そのデータも元のプロトガシャットの中に戻されたらしい」

 

 他の三人、木野薫、駆紋戒斗、湊耀子とは違って、永夢とは知り合いだったから下手なデータを撃ち込んで怪しまれるよりもそっちの方がとくだと考えたんじゃないかというのは貴利矢の談である。その流れからすると、やはり他の三人はゲームの世界の偽物であるという事になるが、彼らはバグスターとも黎斗とも関係のない場所で死んだ者たちであるためプロトガシャットの中にも存在しないという事なのだろう。

 

「とにかく、これで私達も変身できるってことね!モモは私がもらうから!」

「あら、意外ね、あなたならリーダーの赤を選ぶと思ったのに」

「戦隊じゃ赤がリーダーでも、プリキュアのリーダーはモモだからな、なら赤は俺が」

「そう言うことだな、それじゃ俺は黄色にしよう……いつきと同じな」

「ももかが青ということは、残った私は緑ね」

「行きましょう、走さん!」

「あぁ!やる気満々だぜ!」

「久しぶりに……行くよ!」

「「YES!」」

「この世界、そしてプリキュアの運命は!僕たちが変える!」

「乾……俺はお前たちの分まで戦い続ける、全ての夢を守るために!」

「夢をかなえる、それが自分勝手と言われても、僕はそれも背負って戦う!」

 

 伊達健太はデジタイザーを、獅子走はGフォンを、スティンガーはサソリキュータマとセイザブラスターを、尾上タクミはファイズギアを、三原修二はデルタギアを、宝生永夢と九条貴利矢はそれぞれのライダーガシャットとゲーマドライバーを、夢原のぞみ、春日のうららそして秋元こまちはキュアモを、山吹祈里はピックルンとリンクルンを、そして番ケンジ、来海ももか、明堂院さつき、一条らんこ、知念ミユキは超スーパーヒーローカードを手に取って並び立った。そして……。

 

≪サソリキュータマ!≫

≪セイ・ザ・チェンジ!≫

≪standing by≫

≪マイティアクションX≫

≪暴走バイク!≫

「インストール!メガレンジャー!」

「ガオアクセス!ハァッ!」

「スターチェンジ!」

「変身!」

「変身!」

「変身!」

「変身!」

「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!」」」

「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!」

「「「「「変身!」」」」」

≪3・3・5≫

「サモン・スピリット・オブ・ジ・アース!」

【命の叫びがパワーアニマルに届くとき、自然の力と人の思いが一つになり、地球を守る戦士がうまれるのです】

≪standing by≫

≪≪complete≫≫

≪≪ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムアカメンライダー≫≫

≪ガシャット!≫

≪≪ガッチャーン!≫≫

≪レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!X!!≫

≪レベルアップ!暴走バイク!!≫




 何?ゴーストは死なないけど死ぬほど痛いから絶対に倒せない?そんなこと言ってたらいつまでたっても倒せません。
 というからんこさん、なんであんたそんな設定になっちまったんだ。最初はそもそも構想外のはずだったのに……。
 なお、この時点で元々あの世界にいたプリキュア、救援仮面ライダー戦隊陣の中で出てきていないのは、なぎさ、ほのか、ひかり、咲、舞、いつき、ゆり、エレン、みゆき、ゴーバスターズの三人、ショウ・ロンポー、辰巳シンジとなりますね、士や海東、ラッキー、ガル、あゆみ、ポッピー、神は元々の世界で戦っていますので。それ以外の14人をどう分けるか、それも見ものです。
次回→あばよ、熊本

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