最初はいざこざがあったものの、それも千冬の鶴の一声と拳骨で一段落し、四人の少女はそれぞれのISを光が纏うと同時にその身に装着する。
「全く、結局このメンバーでやることになるんですわね」
「まったくだ。おまえたちが下がっていれば私が嫁と組めていたというのに」
「まぁまぁ、もう終わったことなんだし」
「そうだぞ。今日は無様な真似などさらせん。ここからは本気で行く!」
四人はそれぞれに言葉をかけると空高くへと飛び上がった。なるほど、初速はなかなかに素早いようだ。あれほどの大きさの機体なのだから重鈍であると思いきやかなり機動性が高いようだ。そして、ある程度の高さまで止まった四人は地上にいる千冬の指示を待っていた。
「準備はできたか? では、組み分けを確認する。Aチーム篠ノ之箒、シャルロット・デュノア。Bチームラウラ・ボーデビッヒ、セシリア・オルコット。勝負は相手のシールドエネルギーがなくなるまで行う。分かったな」
『『『『了解!』』』』
チーム分けは千冬が独断で決めた。どうやら赤い機体の少女と黄色い機体の少女がAチーム。黒い機体の少女と先ほど士に突っかかってきた青い機体の少女がBチームということらしい。一方余った織斑一夏とそれから楯無に関しては士たちへの解説役を回されたそうだ。
ところで楯無は彼女たちのように授業にでなければならないのではないか、と疑問に思ったユウスケが聞くと。
「ふふ、ちょっとした権限と、怪しい不審者さんたちを見張るためって言ったら許可貰えたの」
との答えが返ってきた。まぁ彼女自身かなりの自由人の面があるように思えるので、こう言ったことも許可されているのだろうと士が考えたその時、模擬戦が始まった。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「甘いですわね! さぁ、踊りなさい!」
最初に仕掛けたのは赤い機体を纏う箒だ。一直線に青い機体を纏うセシリアへと向かうあの機動性なのだから、奇襲は有効な手段の一つであるのは間違い無いだろう。
しかし有効な手段だからこそその対処もまた容易であるともいえる。セシリアはそれを予想していたため、砲身の長い銃をとりだし箒に発射する。それに加えて空中に板のような長細い物体を浮かび上がらせると、その先端から箒に向かって光線が乱射される。
「クッ!!」
箒は、下へと回避したが、その方向には黒い機体を纏ったラウラの姿があった。
「そこ!」
ラウラの機体の側面から鞭のようなものが伸びる。それが箒の身体を捉えようとする瞬間、箒は身体を捻らせて見事に鞭を回避する。彼女はかなり反射神経が高いようだ。機動力、それに加えての反射神経。たとえ成功しなかったとしても攻撃を避け続けていれば撃墜されることはない。先ほどのような奇襲を仕掛けたのそんな自信とも慢心ともいえるものがあったからかもしれない。
箒は体勢を立て直すとすぐラウラとの交戦に入った。一方そのラウラを空中から援護しようと再び銃を構えたセシリアであったが。そんな彼女を狙うもう一つの銃口があった。
「忘れてない? これがタッグマッチだってこと!」
シャルロットである。その銃口から放たれる攻撃に対応するセシリア。これで実質1対1同士の対決となった。2対2のタッグマッチは実質的には1対1が2組あり、その途中にチャンスが訪れたらもう一方の敵を二人で襲うというものが鉄則。そう士は考えているのだ。
「うっわ、すげぇ」
「うん! なんか見てて凄い迫力がある!」
「まだまだ、箒たちの実力はこれぐらいじゃねぇんだ。もっと凄くなるぜ!」
このタッグマッチ、互いにクラスメイト同士での戦いということで、相手の手は知り尽くしている状態それに実力が拮抗していることもあり、しばらく展開が硬直するだろう。
「おい、あいつらの機体の事を教えろ。名前も知らないままじゃ記事にもならないからな」
と、士が自らの役割であるジャーナリスト風味で楯無と一夏に聞く。この世界でこの先何が起こるのか分からない。今までのことを考えると、今戦っている四人とも共闘することがあるかもしれない。だから、機体の情報をなるべく手に入れておいた方がいいだろうと考えたのだ。
「あ、あぁそうだったな。それじゃ、まずはセシリアから」
「セシリア……あのお嬢様様言葉の奴か」
「あぁ、セシリアのISはブルーティアーズって言って……」
イギリス代表候補生セシリア・オルコットのIS、ブルーティアーズは射撃を主体とした機体、いやほとんど遠距離攻撃しかないといっても過言ではない極端な機体。
続いて黄色い機体。フランスの代表候補生であるシャルロット・デュノアのISラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。この機体は、多数の武装を搭載することが可能であり、遠距離、中距離、近距離どのタイプでの戦闘も可能となるバランスの良い機体である。
黒い機体、シュヴァルツェア・レーゲンの操縦者はドイツ代表候補生のラウラ・ボーデヴィッヒ。両肩に大型のレールガンや、AICと呼ばれる特殊な兵装が特徴の機体だ。この学園に来た当初はもっと大きな特徴が一つあったのだが、現在その機能は無くなってしまっているため今回は割愛する。
そしてISの開発者である篠ノ之束の妹である篠ノ之箒の操縦するIS、紅椿。前述した3機のISが、それぞれに技術進歩とともにつけられた第2世代や第3世代と呼ばれる物であるのに対して彼女の紅椿は世界が未だ第3世代機の実験段階にあるというのにそれらを置き去りにして束が自ら設計開発した第4世代機にあたる機体だ。結果、その性能も他のISよりも高性能な機体となっている。
「と、まぁ簡単に説明したけど、なにか質問ある人?」
「はいはい! 一夏さんのISはどんなのなんですか!」
「俺のか?」
「確かに、初めての男性IS操縦者のISがどんな物なのか興味あるかも」
桜子の言葉も一理ある。IS学園、否世界で初めてのIS操縦者となった一夏の機体がどのような物であるのか興味深い。世界初の男性IS操縦者である一夏には、様々なデータを取るために今上で飛んでいる機体よりもより実験的な機体、つまり今後のISに取り付けられるであろう機能を持っている可能性もある。それをみておくのも悪くないかもしれない。
「そうだな、俺の機体はこの……」
そう言いながら一夏が右手首にある白いブレスレットを見せようとしたその時だ。
「!」
「何だ!」
「え?」
地上から凄まじい音が聞こえたとと同時に放たれた無数の弾丸、そして光弾。それらは全て空中にいる箒たちに向けて放たれた物だった。
この模擬戦は、当然のことながら突然の武力介入を予期しての訓練などでは無い。だからこの攻撃が指し示すものの意味、それは間違いなど微塵もない、敵の乱入を示すサインであった。
それぞれのISの特徴に関しては、私がアニメをみて抱いた印象でそれぞれの適性距離等を考慮しました。
ISの戦闘シーンって書いてみて思ったけどかなりむずかしいんですよね……。挙句の果てに次回には……。